トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作あり・赤点線は推定トレース
大谷山・赤坂山・三国山の展望と植物を見る
大谷山・赤坂山・三国山 (814m 824m 876m 滋賀県) 2009.5.3 晴れ 2人
マキノ高原登山者用駐車場(7:02)→ゲレンデトップ(7:32)→西山林道分岐点(7:40)→展望台(7:58)→寒風(8:45)→大谷山山頂(9:11-9:30)→寒風(9:56)→ピーク(10:29)→粟柄越(10:44)→赤坂山(10:55-11:10)→明王ノ禿(11:21)→黒河峠分岐点(11:49)→三国山(12:02-13:11)→明王ノ禿(13:44)→赤坂山(14:07-14:12)→粟柄越(14:22)→ブナの木平(14:59)→駐車場(15:57)
今年のゴールデンウィークは大型連休となったが、山へ出かける日は2日午後と3日の1日半。遠距離はあきらめて近くの山に行くことにした。前回に登った大野町の大谷山・滝谷山の情報をネットで収集していたときに、同じ名前の山が滋賀県湖北地域にあることを発見。滋賀県の2つの山は位置的にも近距離で同じ山系にある。名前つながりで、まずは大谷山を選んだ。滋賀県の山については全く知らないことから、ネットで調べると大谷山と並ぶ赤坂山は花の名山として全国的にも知られた山だった。
さらに調べてみると、これらの山がある山系は「中央分水嶺 高島トレイル」と呼ばれ、マキノの愛発越から今津の山並を経て、朽木の三国岳へ至る80kmに及ぶ道となっている。日本海側と太平洋側を区切る中央分水嶺の中央部にあって、トレイルからは琵琶湖と若狭湾を同時に望むことができる。また、東西南北の気候や植生を併せ持つという。さらに、京の都に近いことから若狭越と呼ばれる古道がいくつもこのトレイルを越えている。このトレイルは、古道や古い山道を整備して、今の登山道が作られ、高島市のシンボルとなっているそうだ。
多くのレポートを参考に、地図に歩行ルートを落とした。マキノ高原キャンプ場を起点に、大谷山、赤坂山さらに三国山の3山を踏む周回コースを計画し、高島トレイル第一段とした。
2日の午後は予定がなかったので、登山口で前夜泊をすることとし、2日の昼過ぎに岐阜市を出発。関ヶ原から国道365号で木之本へ。国道8号線を経由して国道303号線に入り、道の駅「マキノ追坂峠」手前の信号交差点から右折して、マキノ高原キャンプ場へ向かった。道の駅やメタセコイアの並木道に寄ったりして、夕方にキャンプ場に着いた。登山者用の広い未舗装駐車場がキャンプ場の入口に設けられている。
マキノ高原キャンプ場は古くからオートキャンプのメッカで、この連休も大勢のキャンパーで混雑していた。明日の登山に向けて、登山口の下見に出かける。草原の高原にはテントが並び、夕食の準備が始まっていた。年に数回、家族でキャンプに出かけた昔がなつかしい。今ではキャンプスタイルも変わり、大きなメッシュのドームテントの中にテーブルやキッチンを持ち込むのが流行のようだ。タープのほうが解放感があっていいような気もするが・・・。
高原サイトの車道を少し上ったところに、分岐があり右は赤坂山、左は寒風とある。大谷山へのコースは寒風方向。キャンプサイトから左に向いスキー場のゲレンデに出るが、標識がなく広いゲレンデのどの方向に登って行くのか分からなかった。下見はここまでとして、キャンプ場まで戻り、管理棟で登山口を確認すると、登山コースの地図をもらうことができた。寒風への登山口はゲレンデトップの左端にあることも分かった。管理棟の近くにある温泉施設「さらさ」で湯につかって、車内泊。
キャンプ場のざわめきで目が覚めた。6時頃から歩き始める登山者も見られた。7時に駐車場を出発。ナラの林のキャンプサイトを抜け、川を渡って高原サイトからゲレンデに向かう。後方から単独男性が登って来る。赤坂山に向う登山者に比べて、寒風方向に登る者は少ないようだ。2本のリフトの間の道を登り、左のリフト降り場を目指す。いきなりのゲレンデ歩きに息が切れる。振り向けば、テント群がどんどん小さくなり、後方にはすばらしい展望が広がる。リフト降り場を過ぎ、さらに上に広がるゲレンデをジグザグと歩く。トキワイカリソウが草むらでピンク色の花を咲かせている。
道はゲレンデトップの左の樹林帯に入り、新緑の中をジグザグと歩き、右山でトラバースしていくと尾根に出た。左は西山林道、右は寒風3.5kmの標示。足元にイワカガミやチゴユリを見ながら尾根をジグザグと登っていく。尾根の右には樹間から下界が見下ろせ、左の谷からは川の音が聞こえる。その向こうには対面する尾根とその上方にはササの主稜線が望めた。
満開のイワカガミの群落に感動。パンフレットによるとこの辺りのイワカガミはオオイワカガミらしい。杉の人工林を左回りで巻くように歩くとベンチのある展望台に着いた。マキノの田園は田植直後で白く反射し、メタセコイアの並木道が水田を横切っている。その先は琵琶湖。あいにく霞がかかり、琵琶湖と空の境が分からない。真下にはゲレンデやキャンプ場が見えた。
人工林を回り込むと掘り割りの道となる。土手にはイワカガミやタチツボスミレ、そして終わりかけたカタクリの花も見られる。この先、美しいブナ林に入る。下草は背の低いササであるが、葉がすっかり無くなっている。シカにでも食べられたのであろうか。ブナ林を抜け、再び潅木帯を通過。この辺りまで登ってくると、カタクリが最盛期で、可憐な花を咲かせている。掘り割りの道で、イワウチワの花を一輪みつけた。この地域ではイワウチワの変種であるトクワカソウで、葉の基部で見分ける。
明るい尾根を歩いて、展望地に出る。琵琶湖を見て先に進むと、すぐに広い丘陵地に出た。寒風と呼ばれる場所で、北から東側は遮るものが無い。北には小さな赤坂山の向こうに大きな三国山が望めた。まずは大谷山を目指す。寒風での休憩無しで、平らな尾根のササの道を西に歩く。ササに覆われた大谷山の頭が見える。潅木帯を抜けて小ピークに出ると、前方が開け大谷山が全貌を現す。登山道がまるで地上絵のようにササ原を横切って大谷山に続く。大谷山山頂は遠くに見える。そして、大下りが待ち受けている。
道は下りにかかり、芽吹き始めた林を通過しササ原から斜面を稲妻形に下っていく。前方の琵琶湖に竹生島が見え始めた。鞍部まで下って登り返す。春霞の琵琶湖を見ながらササ原を登り、一旦なだらかになって、最後の登りにかかる。一歩一歩、息を切らして登ると大谷山山頂に着いた。360度の大展望地である。三角点といくつかの山名標示板がある。道はさらにササ原の稜線を南へ下っていた。日本海側には雲谷山が美しい山容を見せ、また、これから目指す三国山は北の遥か遠くに望める。琵琶湖の竹生島が完全に見えている。朝、早いためであろうか、ここまで誰にも出会っていない。パンを食べて登ってきた道を下る。
少し下ったところで、単独男性とすれ違った。寒風への登り返しがきついと思っていたが、それほどでもなく30分かからずに寒風へ戻った。団体さんが休息中。ようやく登山者が増えてきた。赤坂山まで3.6kmの標示を見て、寒風からゆるやかに下る。小ピークから右へ直角に向きを変えて美しいブナ林をさらに下る。いきなり前方が開け、草原に飛び出した。目の前の雄大な光景に凍りついた。滑らかなささの丘陵地に続く一本道の先に三国山が美しい三角形を作る。きれいな風景写真のグラビアに溶け込んだように、意気揚々と歩く。涼しい春風がササ原を流れる。オオバキスミレがササの中に見られた。
広い稜線を緩やかに下って登り返し、岩のある小ピークを越える。左手には日本海が見える。もちろん右には琵琶湖が見える。まさにここは中央分水嶺。右にカーブしながら稜線を歩く。前方に木の茂る山が近づき、東斜面を登るパーティーが見えた。潅木の斜面に取り付いて一直線の道を登る。なだらかな道が続いたので急登に感じる。足元に咲くスミレはシハイスミレと思われたが、この辺りには変種のマキノスミレが多いと聞く。濃い赤紫色の花が美しい。
この登りの途中で下ってくる登山者に出会った。先ほど見えた斜面を登る皆さんだった。ピークから再び展望地を下る。道は右へ90度折れて吊り尾根を歩く。赤坂山が近づいてきた。尾根左の斜面に咲く白い花木はムシカリ。葉と花が同時に展開している。足元の白いスミレはミヤマツボスミレだろうか。南には寒風が見える。だいぶ歩いてきた。潅木帯を抜けるとアンテナや鉄塔が立つ台地に出た。赤坂山と三国岳が重なって真正面に見える。前方の植層が一変し、濃い緑色の丘陵となっている。ツゲである。どの木を見ても剪定鋏できれいに刈り込まれたような状態になって、異様な光景が広がる。シカの仕業であろうか。新芽が食われることから、細かい枝が出て塊状態になっているようだ。
鉄塔の脇を下って標識のある分岐に出た。粟柄越と呼ばれる昔の峠であり、キャンプ場から赤坂山へのコースの合流点でもある。日本海側への道はこの分岐の100mほど上にあり、福井県美浜町まで13kmの標示が立っていた。このすぐ上の右側の大きな天然石の窪みに石仏が祀ってあったので手を合わせる。赤坂山を目指す多くの登山者に混じって鉄塔を左によく踏まれた道を登っていくと山頂に着いた。
ここも360度の眺望が得られる。北には三国山が目の前に迫っている。北東に見えるザレた岩場は明王の禿。その奥には乗鞍岳。南東には琵琶湖が広がり、メタセコイアの並木道も見えた。西には雲谷山。その左にはなだらかな大御影山が横たわる。南には鉄塔群と、寒風から歩いてきた稜線が見られる。
11時を過ぎたところであり、ランチは三国山でとることにし、シャリバテ防止にパンを食べて出発。明王の禿の方向へ向かって急な階段を下りる。こちらに向う人の数は少ない。潅木帯を抜け、トキワイカリソウを見ながら登り返すと10分ほどで崩壊地に出た。明王の禿である。クサリの柵があり、危険箇所への侵入ができないようになっている。南側は風化が進み、奇岩が並ぶ崖となっており、人の顔やモアイ像に似た岩がいくつか見られた。
崩壊が進む丸木階段を登り、トクワカソウの群生地を抜けると、再びザレ場となる。燕岳や甲斐駒ケ岳を思わせる光景であり、アルプスに登った気分を楽しみながら明王の禿山頂へ。左手に三国山の山頂が見えるが、道は逆方向の右へ下っていく。ここからは県境を歩かず、滋賀県側から回り込んで三国山を目指す。
後方に明王の禿の奇岩を見ながら下って折り返すように向きを変え、左山で水平の道をトラバースしていく。小さな谷に架かった橋を渡り、雪で大きく曲がった潅木を見ながら歩く。クロモジの花が満開で美しい。なだらかな道は目まぐるしく向きを変える。トクワカソウの群落地が多数見られ、遅いと思っていた花もこの辺りは満開。芽を吹いたばかりの木が多く、ヤマザクラやタムシバが頭上を飾る。高島トレイルの黄色いテープを追い、谷を巻き、赤坂山歩道の木柱が立つ展望地を通過。正面に三国山の丸い頭を見ながら歩くと、左手の山側の林床には一面にトクワカソウの群落がある。木漏れ日の中で咲く淡いピンク色の花が美しい。
小さな流れを渡ると三国山0.4km・黒河林道1.3kmの表示がある分岐点に着く。三国山方向へ向い、川を渡って気持のいい天然林の中を歩く。明王の禿を下ってからほとんど標高を稼いでいなかったが、最後に急登が待ち受けていた。一直線の階段を頑張って登り詰めると、三国山山頂に着いた。木々に囲まれているが、山頂にある岩の上に乗れば、寒風から乗鞍岳まで南から北の展望が得られた。
ちょうど正午。山頂の一角でランチにする。メニューはラーメンとドライカレー。狭い山頂のため、すぐに下山して行く登山者が多い。男性が登ってきて「RAKUさんですか?」と声を掛けられびっくり。すっかり山男になったKAZUさんだった。KAZUさんとは4年前に、これも偶然に能郷白山でお会いしたことがある。すぐにASAKOさんも登ってみえた。久しぶりの再開。お二人はキャンプ場から赤坂山を経由して三国山まで足を伸ばしたとのこと。しばらく山談義をして、4人で記念写真を撮った。
1時間ほど三国山山頂でゆっくりして、4人で登ってきた道を引き返し赤坂山まで戻った。寒風からの稜線歩きがすばらしかったことを伝えると、KAZUさんたちは帰路は寒風経由でキャンプ場へ戻ることになった。やや時間が遅いのが気になったが、道はしっかりしており、また日が長い時期で、寒風方向に向う他の登山者も見られたことから問題ないと判断。粟柄越で再開を期待してお二人と別れた。
帰路はキャンプ場まで赤坂山自然遊歩道を下る。登ってくる登山者と挨拶をしながら、潅木の中を歩くと、左へ鉄塔巡視路が派生していたので、鉄塔下まで寄り道。ここも大展望地だった。遊歩道に戻り道端のお地蔵様を見ながらザレた道を下っていく。ジグザグ下っていくと前方に明王の禿が望めた。イワカガミの群落を見ながら掘れた道を下ってブナの樹林帯へ。そして丸木階段を下る。時折、鉄塔への分岐があるが、寄らずに直進。石畳があり、今でも古道の面影が残る。
ミツバツツジを見ながら下っていくと谷川に突き当たり、大勢の登山者が休息中。谷に沿って歩き、堰堤の縁のクサリ場を通過すると東屋の建つ広場に出た。ここが「ブナの木平」と呼ばれる場所のようだ。アオダモの花が満開。急な階段を下り、雨水で浸食された赤土の道を軽快に下っていく。ベンチで休息して食べたグレープフルーツが美味しい。キャンプ場を見下ろす展望台を通過して、さらに続く階段を下る。この付近は遊歩道がいくつか整備されており、調子ヶ滝やせせらぎの森などに向う道が派生している。ゲレンデが見え始め、キャンプ場のざわめきが聞こえてきた。高原サイトを見下ろす位置まで下りて驚いた。広大な草原がテントで埋め尽くされている。アウトドア人口が減っているとはいえ、まだまだオートキャンプの人口は多い。高原サイトのど真ん中を突き抜けて車まで戻った。
大谷山・赤坂山・三国山はうわさどおりの花の山であり、この時期トクワカソウやオオイワカガミ、カタクリ、オオバキスミレ、トキワイカリソウなどが楽しめる。稜線からの展望はバツグンで、すばらしい山歩きだった。この高島トレイルをもっと歩いてみたいと思った。温泉施設「さらさ」は大勢のキャンパーが押し寄せ入場制限となっており、白谷温泉の日帰り入浴もいっぱいだったため、帰路は全線2車線化となった国道303号線で岐阜県に入り藤橋の道の駅の温泉に寄って帰宅した。
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