トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平21業使、第478号)
菩提山 (401m 垂井町) 2010.2.7 晴れ 2人
駐車場(9:24)→白山神社(9:30)→鉄塔・明神湖分岐(10:06)→稜線・明神山分岐(10:34)→菩提山山頂(10:38-10:53)→鳥居(11:51)→鳥居南440m付近(12:11)→鳥居(12:18)→展望地(13:25-13:32)→鳥居(13:36)→菩提山山頂(14:07-14:14)→鉄塔(14:26)→林道(14:49)→車道(14:56)→明神湖(15:04)→駐車場(15:48)

 この休みは遠出をして雪山を歩きたいと思っていたが、またまた前日に雪が降った。アプローチが容易な近場の低山で、雪の上を歩けそうな山として、垂井町の菩提山を選定した。菩提山は10年前に登ったことのある低山であり、ハイキングコースとして整備されている。山頂からの展望は僅かであるが、西美濃最大級の山城の跡が残り、麓の岩手集落には竹中半兵衛の陣屋跡や墓など歴史的遺産も多い。山頂までのコースタイムは1時間であり、いつもより遅めに家を出た。

 国道21号線を西進し、大垣の市街地から国道の北を平行して走る県道53号線に入り、垂井町へ。菩提山の標示を見て右折し、岩手集落に向う。昨日の雪が凍結しており、ゆっくりと集落内を北上。岩手郵便局を左に見て、すぐに岩手小学校の手前を左折。一直線の田園の中の道を走り、東海道線の踏み切りを渡る。踏切を渡った直後の右側のトイレに寄って、さらに西へ。菩提集落への道を左に見て、ここを直進し雪で車の腹を擦りながら坂を登ると白山神社の石柱と菩提山城跡ハイキングコース案内図のある駐車場に着いた。数台駐車できる広場は深い雪に覆われて、車を停めた痕跡はない。看板の前に前進後退しながら駐車スペースを確保、雪はバンパーの中ほどまで積もっていた。これほど雪があるとは思わなかった。ここの状態から推測して、山にはかなりの雪があるに違いない。

 靴を履いて車を後に、石柱左にある階段に取り付き、新雪を踏んで歩く。鳥居を潜り、境内を進むと本堂が現れた。これが菩提寺のようだ。境内の桜の木は昨夜降った雪で白い花を咲かせている。本堂前でお賽銭を入れて安全祈願。白山神社の左を抜けて、倉庫の横からハイキングコースに入る。昨夜の雪で木々にも雪が積もり銀世界の中を歩く。雪で道が分からないのではないかと心配したが、道幅の広いハイキングコースは明瞭。雪の下に丸木階段があることがかろうじて分かる。ただ、雪の重みで倒れこんだ潅木が多く、ストックで潅木の雪を落として隙間を通過。倒木で通過できないところは遊歩道を外れて迂回。おまけに陽が当たり、頭上から雪が落ちてくる。ペースが上がらない。遊歩道は鉄塔巡視路でもあり、鉄塔番号の書かれた黄色い標識が見られた。

 左にベンチと灰皿を見ながら人工林に入る。西風により雪が幹の西側に張り付いて美しい光景を作っている。なだらかな道には動物の足跡が残っており、カモシカの足跡に似ているが、雪面を擦って歩いている状態からイノシシの足跡のようだ。人工林を抜け、潅木のトンネルを歩くようになると、積雪量が増えてきた。

 歩き始めて40分ほどで、前方が開けて目の前に大きな鉄塔が現れた。標示板があり、東へは明神湖1時間、岩崎神社35分の標示がある。鉄塔の横で大きな木が倒れて道を塞いでいたので、鉄塔の立つ広場を迂回。雪が深く、膝上まで沈む。鉄塔の向こうには東にある山の稜線が見える。

 再び遊歩道に戻り、人工林に入る。鉄塔からは左に向きを変えて山頂を目指す。道は溝状で、分岐があるところには標示がある。西の方向から猟銃の発砲音が聞こえる。気持がいいものではないのでクマ鈴を鳴らしながら歩く。人工林を抜けると、右手が開けているところがあり、大垣方面の田園が見えた。右山でトラバース気味に歩き、深い雪の斜面を上がると稜線に出た。ナラの幹に標示板がかかっており、右は菩提山10分、左は明神山2時間の文字。明神山は初めて聞く名前であり、持ってきた地図にも見当たらなかった。右に折れて深い雪の北斜面を回り込むと大きな看板の立つ菩提山山頂に着いた。

 南側に切り開きがあり、青空の下、雪に覆われた濃尾平野が広がっている。先ほど通過してきた鉄塔が真下にあり、南宮山が半分ほど望めた。山頂は植林された木が大きくなって暗いが、平坦な地形はかつて山城が建っていたことが伺える。カバーが掛けてあるものは双眼鏡のようだ。大きな看板には菩提山城の説明と図があり、説明によると、竹中遠江守重元が1559年に築いた城で、重元の子である竹中半兵衛重治がこの城に住んでいたとのこと。当時も雪の降った日の濃尾平野は真っ白だったに違いない。はるか昔の様子を思い浮かべながら、広い山頂をぐるりと歩いた。

 11時前だったので、もう少し雪山を楽しむために、山頂から西南に延びる尾根の途中にあるピークまで歩くことにした。地図を見ると西南尾根は比較的なだらかな尾根で、簡単に歩けそうだ。山頂でワカンを履いて、明神山の標示のある分岐点まで戻った。ここから尾根を直進する。遊歩道の痕跡はないが赤テープが目に付く。また、比較的疎林であり、倒木を避けながら平坦な尾根を歩く。ワカンは歩きやすい。もっと早くワカンにすればよかったと思った。

 すぐに急斜面を下って大きな2つの溝を越える。城がある当時につくられた空堀と呼ばれる溝のようだ。人工林に入り、ゆるやかにカーブする尾根を歩き、登り返すと、目指すピークに立った。展望は無い。ここまで来ると、もう少し先まで歩きたくなる。地図で現在地点を確認して、この先、標高差70m程を登れば南北の稜線に上がる。登りの傾斜はたいしたことがないので、時間の許す限り歩くことにした。
 
 鞍部から緩やかな登りとなる。倒木も多く荒れた尾根の雪は深い。右手は人工林で、強い北風でできた雪の盛り上がりが美しい縞模様を作っている。盛り上がった部分はワカンでもかなり沈み込む。急緩繰り返しが続く。急といってもたいしたことはない。尾根に沿って獣の足跡が続き、それを追う。痩せた尾根を通過。樹間から右手に北の山が望める。下山後に調べてみると、右前方に見える山が明神山と分かる。
 
 ゆるやかになった尾根は右に弧を描き、アカマツや落葉樹の天然林となる。2つ3つと小さなピークを越えながら、気持よく歩く。急傾斜となり、息を切らしながら登る。GPSを見て稜線が迫ってきたことを知る。赤テープは途切れることなく続いている。先行者は獣だけ。雪をきしませながら、新雪を踏んで歩くすばらしさは体験しないと分からない。この低山で、雪山体験ができるとは思いもしなかった。
 
 息を切らしながら、青空に向って登り、ピークに着く。思わず声が出た。太陽を正面に、石造りの鳥居が雪の上に立っているではないか。ヤブ山の中に突然現れた鳥居は、まさに月面のモノリス。2001年宇宙の旅のシーンが甦った。何故ここに・・・。しばし、鳥居を見上げた。雪で路面の状態がわからないが、鳥居への参道があるのだろうか。この先に神社があるのだろうか。次々と疑問が沸き起こった。鳥居の後ろには大正九年九月の文字が読み取れた。100年近く、ここに鳥居がある。繰り返す季節をじっと見つめてきた鳥居は古さを感じさせず、最近造られたように美しい。

 GPSで南北の稜線に到達したことを確認。地図を見ると、南に425mの三角点があったので、そこまで行ってみることに。南の溝状の谷を歩き右回りで人工林から天然林へ。イノシシのトレースを観察すると、雪の浅い風上の尾根を歩いているのが分かる。天然林に入ったところで、いきなり黒いものが飛び出してきた。前方30m先を全力で逃げていくイノシシを発見。深い雪の中を必死に走り、尾根から南斜面へ下りて行った。突然、遭遇すると向ってくることもある。クマ鈴を付けていてよかったかもしれない。イノシシに遭遇した小ピークは425m三角点よりも北にあるピークで、周囲を見回してもこれ以上高い所がない。三角点はもっと低いところにあるようだ。時間も正午を過ぎているので鳥居まで引き返えしてランチにすることにした。

 10分ほど歩いて鳥居まで戻り、陽だまりの雪の上でランチの用意をした。メニューはおでんと鮭雑炊、缶詰。ジャケットを羽織るだけで十分に温かい。この時期、ここに人が来ることはほとんどないであろう。ゆっくりと流れる時間の中で最高のランチを楽しんだ。この稜線の西側の下には岩手峠を越えて春日村に抜ける林道が走っている。林道からこの鳥居に登れる道があるのかもしれないと思った。雪の張り付いた木々の間から垂井町の田園を見ながらコーヒーを沸かす。時折、冷たい風が吹き抜ける中、熱いコーヒーを楽しんだ。

 昼食の後、北側の尾根の100mほど先に雪原が見えたので、そこまで行ってみる。緩やかに登って、雪原を登り返すとすばらしい展望が目の前に広がった。伐採地と思われ、南180度の展望が得られた。左に南宮山、正面に笙ヶ岳、藤原岳、右に見える高い山は霊仙山。ここでランチにすればよかったと思った。北に見える山は明神山。この先はまたいつか歩こう。写真を撮って引き返す。

 鳥居を後に、登ってきた道を軽快に下った。菩提山山頂で記念写真を撮り忘れたので、もう一度、山頂まで戻って写真を撮った。午前中に見えなかった恵那山が確認できた。また、西には伊吹山の真っ白な頭が木々の間に見えた。
 
 登ってきた道を鉄塔まで下って、分岐点で明神湖方面に下るか、登ってきた道を下るか思案。雪山の鉄則は雪のないときに一度歩いて、道の状況を把握していること。往路の道は一度登っているので道の状態は分かっているが、ここから明神湖への道は歩いたことがない。ネット情報で地図に書き込んだルートを確認すると、尾根道のようだ。ここの標高は300mで、登山口との標高差は150m。この標高差なら、道が危うくなれば引き返せばいいと判断して、明神湖方面に下ることにした。

 標識から東に向って、鉄塔の下を水平に歩き、人工林の中に入る。こちらもハイキングコースで道ははっきりしている。鉄塔の標示もある。数分歩くと、分岐点が現れた。標識はどちらを指しているか微妙であるが、よく観察すると左を指している。鉄塔標示も左である。やや不安を覚えながら左へ進む。道は北へ北へと進み、人工林の急斜面となる。道が拾いにくいが、雪の下の丸木階段が確認できた。GPSと地図で現在地点を把握。記入してきたルートよりも北にいる。しかし道があることは間違いないので、さらに進んでみる。

 尾根を外さないように、道を確認しながら下っていくと、鉄塔標識は尾根から右の斜面を下りるように指している。いやな予感。道は急斜面のジグザグトラバース道。これ以上雪があると、道は消える。滑り落ちないように、狭い道を下っていく。既に2時半を回っており、谷底に近づくにつれて、暗くなってきた。倒木が道を塞ぎ、慎重に斜面を迂回。なんとか谷底に降りた。雪に埋もれた谷沿いの道を歩くと、木道が現れた。遊歩道であり、道は間違っていなかったようだ。再び倒木が木道を塞いでおり、谷に下りて進むと林道が現れた。菩提山城跡まで1.1km35分の標示を見てほっとする。ここからは林道を東へ歩く。倒木が激しく、何箇所かで林道が寸断され、谷の斜面を慎重に歩く部分もあった。
 
 林道を5分ほど歩くとガードレールのある車道に出た。明神湖への道である。車道の下のトンネルを直進すれば岩手集落に向う。車道の脇には小さな神社があった。せっかくここまで来たので、北にある明神湖を見学することに。車道はここで通行止めになっていたが、湖から雪の道を下ってくる車もあり、明神湖を見に来る人は多いようだ。凍り始めた道をワカンで歩き、すぐに明神湖に着いた。水量は少なかったが大きな池である。写真を撮って引き返し、雪が無くなったところでワカンを外し、車道を下った。

 谷集落から岩手集落へと岩手川に沿って歩いていくと、竹中半兵衛重冶の墓や竹中氏陣屋跡などがあった。歴史的遺産の多い集落のようだ。時間があれば見学していきたいところだが、駐車地点までは結構距離があるので、歩き続けた。東海道線の高架下を潜って東海自然歩道の案内に沿って右折し、岩手小学校の北から田園に出て、正面に菩提山の裾野を見ながら、強い西風の中、踏切を横切って駐車地点まで戻った。明神湖から45分かかった。

 菩提山はハイキングコースが整備されており、山頂までは1時間。歴史散策の楽しめる初級向きの山である。菩提山山頂から明神山方向への夏道の状態は分からないが一般的ではない。雪の時期は慎重な行動が必要。帰路に下った明神湖方面のコースは雪のあるときは歩かないほうが無難であると思った。今回は、鳥居や展望地など思わぬ発見ができた。また深い雪の稜線のワカンハイキングを楽しむことができ、短時間の山歩きのつもりが1日かけての山行となった。今度は無雪期に明神山を目指したい。
★菩提山からの展望
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