トレースマップ (カシミール3Dで作成)
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)

御望山 (225m 岐阜市) 2007.4.8 晴れ 2人

神明神社(13:45)→奥の院(13:52)→稜線(14:10)→御望山山頂(14:11-14:22)→稜線西端(14:32)→御望山山頂(14:43)→最低鞍部(14:58)→鉄塔(15:10)→稜線東端(15:19)→鉄塔(15:25)→鉄塔(15:35)→果樹園上部(15:50)→神明神社(16:15)

 岐阜市は桜が満開。手力神社の境内で散り始めた桜を見ながら、来週に迫った火祭りの竿立て作業を町内役員総出で行う。作業を終えて、天に向かって伸びた竿を見上げると、太陽に傘がかかっていた。花曇りのうららかな午後、市内の低山を歩くこととし、まだ登っていない御望山に行くことにした。

 御望山は岐阜市北部にあり、百々ヶ峰、城ヶ峰に続く標高200mほどの低山である。この山は、東海環状自動車道西周りルートのトンネル工事をめぐって騒動が起きていることでも知られている。

 城ヶ峰を背景に岐阜大学や大学病院を北に見ながら、北西に向かうと、右前方に東西に細長い稜線を見せる低山が近づいてくる。萌黄色をした山腹のところどころに桜色がにじんで、水彩画を思わせる。春霞の薄いベールが包み込む春色の里山は美しく、不思議に懐かしい。道は次第に御望山に近づき、岐北中学校の前を通過。中学校のすぐ西側に神明神社の鳥居があり、その前に1台駐車可能なスペースがある。ここに車を停めて、出発。

 桜が満開の神社の参道を歩いて、社の右の階段を登る。シハイスミレがたくさん咲いている。斜面につけられた階段をジグザグと登る。この辺りは奥の院への参道。たくさんのサクラの木が植えられており、かなりの高木となっている。満開のサクラは、散り始めており、春風に吹かれて花が雪のように舞う。よく踏まれた道には、まるで雪が降り積もったように真っ白になっている。

 サクラを楽しみながら斜面を登りきって、水平道になるとサクラの木の間から奥の院の建物が見えた。2本ののぼりを見ながら奥の院の右側を通過して樹林帯へ。ひと登りで尾根に出た。この尾根は山頂東から南に派生しているもので、右にも道があったが枯れ木が横たえられて止められている。ここを左へ。新緑の中、ヒヨドリが飛び交う。ソヨゴやヒサカキなどの常緑樹が多い。

 落ち葉の積もった平らな道を歩いて、すぐに急登にかかる。岩の多い急斜面をまっすぐに登っていく。羽毛に包まれたコナラの新芽が美しい。周囲の林床には、この辺りの山によく見られるコシダが茂っている。前方に大岩が現れた。落石しやすい斜面を息を切らして登り、大岩を迂回してすぐに谷に突き当たる。この谷は山すその寺から続く谷であり、大きな満開のサクラが見下ろせた。南から東の展望が得られ、金華山や城ヶ峰が望めた。御望山の東にある鉄塔も見える。帰路、ここから見える鉄塔の下を通ることになろうとは、この時、全く思いもしなかった。

 左に向きを変え、やや急な尾根を登る。シートで覆われた人工物が左に現れた。ネット情報によるとボーリングによる地質調査の場所らしい。急斜面をジグザグ登って、周囲の小枝がうるさい細道を抜けると稜線に出た。ここも右への道は倒木が横たえてある。テープを追って、左へ。樹林帯の尾根で展望はほとんど無い。稜線は、ほぼ水平。

 すぐに三角点のある山頂に着いた。歩き始めて30分かからずにあっけなく山頂に到着。山頂はヒノキ林となっており、北側にわずかな切り開きがあった。眼下に水田、遠くにはモヤに霞む高賀山が見える。写真を撮って、地図を確認。稜線はさらに西へ水平に続いている。下り始めるところまで、西に続く道を歩いてみることにした。

 踏み跡は比較的しっかりしており、テープも続いている。しかし、稜線はかなり荒れており、倒木や枯れた枝が道をふさぐ。右へ左へとルートを探りながら西へ向かう。ここを歩く人はほとんどいないと思われたが、それでもテープが付けられている。山頂から10分歩いて、下り始めたので、GPSで西端まで来たことを確認して、ここで引き返す。西端辺りも全く展望はない。

 山頂に戻って、さらに分岐まで歩き、今度は東側の稜線を探索することにした。分岐を直進。この辺りは、潅木が多く、明るい尾根歩き。一部、南北の展望が得られる場所があり、北には対面する里山が望めた。南には岐阜市街、そして眼下にはため池が見える。地面に白い花びらを見つけて見上げれば、山桜が赤茶色の葉を広げている。

 枝を分けるが、道は明瞭。なだらかに下っていく。分岐点から10分ほどで鞍部に。そして、常緑樹の多いゆるやかな登りにかかる。数分歩いて、小さなピークを通過。GPSを見ると、さらに東へなだらかな稜線が続いているので、先へ進む。高木の樹林帯となり、コシダの群落に道が消える。北側に道があることに気が付き、ルートファインディングを楽しみながら東へ。倒木の多い林で人の入りは少ない。足元にはヤブコウジが葉を広げている。

 前方が明るくなり鉄塔が見えた。枯れ草で覆われた鉄塔下に出た。南側に鉄塔巡視路が下っており、東にはさらに道があった。もう少し東へ歩いてみる。咲き始めたミツバツツジが美しい。ここから、さらに10分ほど荒れた道を歩いた。倒木で道がふさがれてヤブをこぐところも何度かあった。196mピークを通過して下りにかかったので引き返す。北側から山すその車道を走る車の音が聞こえた。

 鉄塔まで戻って、今来た稜線を戻るか、鉄塔巡視路を下るか迷ったが、地図を見て、下山後、山際を歩けば車まではさほど遠くないと推測して、鉄塔巡視路を下ることにした。オレンジ色のヤマツツジが美しい急坂を下る。目の前に広大な濃尾平野が広がる。すぐ下に、山腹の鉄塔が見える。左手に金華山が美しい山容を見せる。

 写真を撮ろうとしたら、デジタルカメラのスイッチが入らない。なんと電池の蓋が開いて、電池が無くなっている。落としたと思い、鉄塔手前まで戻って探したが見つからない。よく見ると、ウエストポーチの中にあった。ポーチの中で蓋が開いたようだ。スミレの花を見ながら、一気に滑るように鉄塔まで下った。

 鉄塔からは大展望。電線が下方の山すそに立つ鉄塔に向かって延びている。眼下にはサクラの木々や2つのため池が望めた。山際の墓地や岐北中学校も見える。霞んで遠くの展望は無いが、春の里山にはこの霞がよく似合う。鉄塔からさらに急斜面を下って、大岩を通過し、樹林帯へ。落ち葉の道をジグザグと歩いて、ウラジロやコシダの群落を見ながら下る。ウラジロは新芽がダブルの渦巻きを作って面白い。

 鉄の短い階段が現れ、草の茂った林道のようなところに出た。階段の下には鉄柵があり、「柵の中に入らない、登らない」と書かれてあった。さて、道が消えた。周囲をよく観察すると、モノレールがあることから、林道ではなく、耕作放棄された段々畑のようだ。東西に分かれてルートファインディング。東側のタイヤのある小さな谷を渡ったところで、柿畑の上部に飛び出した。金華山がなだらかな稜線を描く。

 きれいに幹の皮が削り取られた柿を見ながら、果樹園の草むらを下る。西側に隣接した果樹園は放任園で、先ほど下りて来た鉄柵のあるところはこの放任園の上部だった。農道まで下りて振り向けば、歩いてきた鉄塔2本と萌黄色の山肌が望めた。ため池の奥にある寺の周辺の桜が美しい。道端にはホトケノザやカラスノエンドウなど春の草花が咲き乱れ、ツクシを採る人、犬と散歩する人、春の里山の写真を撮っている人などのんびりとした田園空間は、子供のころのふるさとを思い起こさせる。忘れてしまった懐かしい思い出を紐解きながら、果樹園を抜けて中学校の前を通って駐車地点に戻った。

 ジャスト2時間半という駆け足山歩きではあったが、いくつかの発見をすることができた。場所は特定しないが、ピンク色の花が咲き始めたイワカガミやジガバチソウの新芽、シュンランなどを見つけた。濃尾平野の前面に位置する超低山ではあるが、まだまだ自然が残されていることがうれしい。山頂まで30分の山歩きもたまにはいい。

 下山時、我々は鉄塔巡視路を下まで下ったが、鉄塔巡視路を下ると途中で巡視路は消え、果樹園に入り込んでしまうため、山腹の鉄塔まで下って展望を楽しんだら、引き返して稜線を戻り、登りに使った道を下って神社に下りたほうがいい。サクラが開花するこの時期にはお勧めの山である。
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