御在所岳 (1212m 三重県) 2005.1.23 曇り 3人
鈴鹿スカイラインゲート(8:50)→裏道登山口(9:16)→中道への分岐点(9:47)→日向小屋(9:36)→藤内小屋(9:58-10:13)→天狗の踊場表示板(10:20)→5合目(10:34)→藤内壁分岐(10:38)→6合目(10:55)→国見峠(11:27)→9合目・遊歩道合流(11:49)→山頂三角点(12:56-13:33)→山上公園(13:57-14:10)→岩のピーク(14:50-15:00)→地蔵岩(15:09)→負ばれ石(15:17)→裏道への分岐(15:39)→スカイライン合流・中道登山口(15:52)→裏口登山口(16:09)→スカイラインゲート(16:25)
鈴鹿の山といえば、真っ先に御在所岳の名前が思い浮かぶ。ロープーウェイで誰もが簡単に山頂に立てる山でもある。鈴鹿の山を登るなら、まずこの山に登らなければならない。この春にでも登ろうと決めていた。
昨年、釈迦ヶ岳でご一緒した近所のTOSIさんからこの休みに山行に誘われた。天候が悪そうな予想でもあり、最初は山はお休みと決めていたが、天気予報は曇りに変わり降水確率も低くなった。急遽、山に行くこととし、前日に行き先を打ち合わせた。TOSIさんはスノーシューを購入したところであり、スノーシューハイクの希望であったがいい山が見当たらず、「鈴鹿は?」との問いに「御在所岳に登ろうか」という話しになった。スノーシューハイクからアイゼンの山歩きに変更だ。
TOSIさんは残雪期などの御在所岳へは何度も登っているが、厳冬期は初めて。我々もいきなりこの時期に登るとは思いもしなかったが、なにしろ鈴鹿の名峰。登山者は多いだろう。今月初めに裏道を登られたせきすいさんのレポートを参考に、今回はTOSIさんの車に乗せていただき、鈴鹿に向かった。
あいにくの曇り空ではあるが、白銀の鈴鹿の峰々が美しい。中でも今日の目的地である御在所岳と鎌ヶ岳の男性的な姿が群を抜く。釈迦ヶ岳登山口への交差点を通過し、次の信号交差点から鈴鹿スカイラインの表示に従って右折。突き当たったら右折してスカイラインを登っていく。スカイラインの途中左側に公園のトイレがあるので利用するといい。
御在所岳の登山者の車が路肩に停まっている。とりあえず一番奥の冬期通行止めのゲートまで上がる。スカイラインの両脇は車の列。運良く、ゲート近くに1台駐車できるスペースがあり、路肩の雪に乗り上げて停める。身支度をしていると前の車の登山者の方から「いい映画ですから観てください」と、映画のチラシをいただいた。「運命を分けたザイル」という洋画で名古屋で上映されるとのこと。おもしろそうな物語であり、山ファンとしては観てみたい作品である。岐阜では上映しないのかな。
ゲート脇を通ってスカイラインを歩く。積雪は10cm程であるが、トレースがしっかりできている。アイスバーンのところもあるがアイゼン無しで歩く。左には鈴鹿方面の市街地が望めた。さらに湯の山温泉のホテル群が立ち並ぶ。15分ほど歩くとトンネルが現れる。裏道ルートはこのトンネルから右への林道を上がる。
林道を上がりきると、雪も30cmほどとなった。山道に入る前に、廃車のある広場でアイゼンを付ける。4本と12本を持ってきた。この辺りは4本で十分と思われたが、練習も兼ねて12本を付けた。昨年の涸沢岳以来の久しぶりのアイゼンである。TOSIさんは6本爪。
歩き始めていきなり鉄網の橋が現れた。網のため橋の上には雪が無くアイゼンが引っかからないようにゆっくり渡る。この橋がいくつも現れ、橋を渡りきったもう少し先でアイゼンを付ければよかった。1、2度、アイゼンが金網に挟まり抜けなくなったこともあったが、無事クリアー。
日向小屋を通過。小屋の窓際には缶ビールが並べられており、簡易トイレもある。雪をかぶった大岩を周囲に見ながら緩やかに登っていく。鈴鹿の山特有のツバキやサカキなどの常緑樹の林の中の登山道は、すでに多くの人が歩きすっかり圧雪されている。ザックザックとアイゼンがよく効く。休息中のパーティーを追い抜き、中道へ分岐を通過。ゆるやかな登りを10分ほど歩くと、前方に小屋が見えてきた。藤内小屋である。
何人かが休息中。庭のベンチで一息。標高665mの小屋からは市街地の工場の煙が見られた。TOSIさんからいただいた特大の干し柿が美味しい。小屋の中のトイレをお借りした。アイゼン、スパッツ、靴を脱ぐのに時間がかかる。小屋を後に、岩の散在する道を登っていく。岩の間でテント泊している人がいるのには驚いた、天狗の踊場・兎の耳の表示。雪で分らないが近くの岩がそのような形をしているのであろう。左側には藤内壁に続く岩尾根が荒々しい。前方が開け、藤内壁の岩が見える。兎の耳のような岩も見え、表示がそれを意味しているのかとも思ったが兎の耳まで3分と書かれているので、そうではないようだ。
広々としたところで橋を渡り、谷の右を歩く。この辺りにもテン泊が見られた。左の谷を隔てて藤内壁がぐんぐん迫ってくる。5合目を通過し、藤内壁への分岐点へ。ここには遭難の記録とロッククライマー以外立ち入り禁止の表示板があった。しだいに落葉樹が増え、急な斜面の登りも出てきた。アイゼンで快調に登っていく。谷は行き詰まり、その向こうには雪を従えた藤内壁が聳え立つ。幾段もの滝が凍りついてエメラルド色の氷が張り付いている。岩壁の上に薄雲を通して真っ白な太陽が幻想的な光景を創る出している。振り返れば今歩いて来た谷の向こうには鈴鹿の市街地が広がり伊勢湾が緑紫色をして水彩画のように霞んでいる。
かなり登ってきた。雪は深くなり、木々の背丈も低くなってきた。綿帽子をかぶった潅木の下にできた雪の掘割の道をゆっくり登っていく。いつの間にか藤内壁は後方に下がり、左にはセピア色の山が見える。「これからあの尾根を登る。」と、TOSIさん。音楽が聞こえ始め、スキーのリフトや柵が見えると国見峠は近い。吹き始めた風の中、峠に飛び出た。峠から右へのトレースは国見岳に続く。御在所岳は左。西の山々も見える。
ここから先程見えた潅木の尾根を登っていく。先頭から「見て!」との声。潅木の切れ間から北東の方向に真っ白な山が浮かんでいる。まぎれもなく御嶽山だ。曇りの天気にもかかわらず御岳が見えるとは思わなかっただけに感動である。
ひと登りして、遊歩道に合流。大勢の人が行き来している。ロープウェイを利用して登って来たスキーヤーや観光客の人ごみに混ざる。振り向いて、皆、大歓声! 北に連なる鈴鹿の雪山がすばらしい。なだらかな国見岳の向こうには昨年登った釈迦ヶ岳が美しい姿を見せる。さらに竜ヶ岳、御池岳へと続く。その向こう、遥か遠くに真っ白な山が浮かんでいるではないか。白山である。名前の如く真っ白。遠いこの鈴鹿の地からでさえも白山を遮る山はない。しばし見とれる。
時間も正午。まだここは9合目。山上公園山頂はこのすぐ上であるが、三角点山頂はスキー場ゲレンデの上。かなり距離があるので先を急ぐ。リフトの下を潜ってゲレンデへ。大勢のソリで楽しむ子ども達で賑わっている.。山頂にこんなスキー場があるとは思わなかった。伊吹山や金華山に登ったときの雰囲気で、山頂に着いたという達成感が半減するが、たまにはこんな山があってもいい。
ゲレンデの隅に人工的に散水して氷の造形物を作ったところを見学。大勢のカメラマンが三脚を並べている。なんと、この氷の芸術の向こうには鈴鹿の槍「鎌ヶ岳」が雲母峰を従えてすばらしい山容で目の前に聳えている。これを見たくてここまで登ってきた。カメラマンに混じって中判カメラのシャッターを切った。
三角点を目指すが途中で道を誤り、ゲレンデに入り込みうろうろ。大勢の人で看板を見落としたが、三角点への道はレストランの右から遊歩道を歩く。大きな望遠レンズを付けたカメラマンの団体の後を歩く。写真サークルの撮影会のようだ。今日は霧氷がなくてちょっと残念だが、この展望でいい写真が撮れるに違いない。遊歩道途中の潅木が邪魔しない地点で撮影が始まった。追い越そうとトレースを外すと、深い雪に足をとられた。観光客の中にはスニーカーで歩いている人もいてびっくり。
遊歩道からの大展望を楽しみながら階段を登って山頂へ。アイゼンを付けた登山者とすれ違ったので、どのコースを下りられるか尋ねたところ、中道を登ってきて中道を降りるとのこと。この雪でも中道は通れそうなので我々も帰路は中道を下ることとした。大きな三角点の看板の前で記念写真を撮った。先程迷い込んだゲレンデからも三角点に登れることが分った。
すでに1時前。山頂の小屋でランチにした。2台のコンロでTOSIさんのおでん、ウチのフカヒレ雑炊を作った。風もなく、指先は冷たかったがジャケット1枚でも寒くなかった。あたたかい食事で生き返った。時間もないので同時に3台目のコンロでコーヒーを沸かした。TOSIさんのヨモギだんごをデザートに手短にフルコースを楽しんだ。小屋の窓からは鎌ヶ岳が、まるで額縁にはめ込んだ絵のように望めた。珍しくらくえぬの足にマメができてバンドエイドで手当て。
山頂からの展望を脳裏に焼き付けて、今来た道を戻った。9合目の裏道分岐点を直進して山上公園への道を登った。ここも南北の大展望地。大勢の観光客で賑わっている。鎌ヶ岳をバックに写真を撮ってもらい周辺を散策。雪のあるこの時期、鈴鹿の山は言葉では言い尽くせない美しさがある。この魅力に引かれて、多くの登山者が山に入る。ロープウェイを利用すれば誰もがこの景色を楽しむことができるのもこの山の魅力である。
ここでの展望も見納めとし、中道へ続く遊歩道を下る。遊歩道には展望台もあり、鎌ヶ岳、入道ヶ岳、雲母峰のパノラマはすばらしい。遊歩道から一気に急降下。クサリやロープが設置された場所もあり、とにかく急斜面。アイゼンがしっかり効いており滑ることはないが、慎重に下る。釈迦ヶ岳方面の大展望を見ながらの下りはすばらしい。右手から鋭い岩尾根が近づいてくる。眼下には四日市や鈴鹿の市街地と伊勢湾が青く広がる。急降下の途中には岩のテラスもあり、北側の好展望台。
クサリのある岩場を乗り越える。この場所ではストックは邪魔。ダブルストックの1本をザックに付けるらくえぬ。雪の吹き飛ばされた岩にガリガリとアイゼンのピンが音を立てる。昨年の5月、涸沢岳山頂で北穂からやってきたパーティーが雪のない石稜を12本アイゼンで歩いて来たときの音を思い出した。ちょっとのスリルを楽しみながら岩場を抜ける。
鎌ヶ岳をバックに赤いロープゥエイが頻繁に行き来している。ロープウェイの中から手を振る人の姿が見えた。「オーィ」との声をかけて手を振って答えた。ロープウェイから見る岩壁の上の3人の姿が想像できた。雲母峰、釈迦ヶ岳などめまぐるしく移り変わる眼下の世界を背景に何度も写真をとりながら下った。岩場あり雪の急斜面あり、梯子あり、キレットあり、・・・とにかく変化に富んだ下りを楽しむ。
山頂から40分ほど下って雪のない岩のピークを越える。ペンキ印に従ってガリガリと岩を登った。岩の上で一休み。三角形の鎌ヶ岳を斜めにロープウェイが横切る。見上げれば今下りてきた山頂が聳えている。赤茶けたガレ場を過ぎると、すぐ下にさいころのような立方体の石を乗せた奇岩がある。地蔵岩である。この下を通過し10分ほどで、「御在所岳80分」の表示を通過。すぐ下には2つの大岩が重なり合った負ばれ石がある。この辺りから木々の背丈は高くなり、展望も無くなる。
ロープウェイの下を潜った頃、急な下りで足の小指にマメができてバンドエイドを張る。昨年新調したアイゼン用の靴で今回が2回目。まだ足になじんでいないようだ。掘れたザレ場を下り、裏道への分岐点を通過。ここから裏道に入ればスカイラインを歩く距離は少ないが、今回は直進してスカイラインを歩くことにした。御在所岳山頂とロープウェイの巨大な鉄塔を望める場所を通過し、しばらくしてスカイラインに出た。御在所中登山口と書かれており、川の向こうには「御在所山の家」があった。
30cmほど積もった雪のスカイラインを下る。スカイラインが閉鎖されていない時には車に注意して歩かないといけないそうだ。裏道登山口からは朝歩いた道。4時半近くにゲートに着いたが、まだ何台もの車が停まっていた。
冬の御在所岳はすばらしい。多くの人が歩いており、裏道は危険な場所も少なく登りやすい。遅くなればロープウェイで下りることもできるし、雪が降っても暖かい山頂のレストランで食事をすることができる。中道は岩場やクサリ場があり、雪のある時期には慎重な行動が必要。装備も万全で望みたい。この時期、天気がよければ展望は5つ星である。
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