御前山の花
御前山へのGPSトレース
カシミール3Dで作成
御前山 (1646m 下呂市) 2005.9.17 晴れ 3人

登山口駐車場(9:30)→六合目(10:07)→七合目(10:24)→屏風岩(10:46-10:52)→八合目(11:07)→九合目(11:27)→御前山山頂(11:59-13:35)→九合目(14:03)→八合目(14:17)→屏風岩(14:27)→七合目(14:45)→六合目(14:55)→駐車場(15:29)

 コースの大半を谷歩きして山頂に至る山は、今までに我々が登った岐阜県の山においては御前山以外に思い当たらない。3年前の12月にkuさんと雪の谷を遡り、雪の降る山頂で初冬の御嶽山を眺めた記憶が鮮明に残っている思い出の山でもある。この個性ある御前山に雪のない時期に歩いてみたいと以前から思っていた。谷を歩くので暑い時期にも適している。

 7月に伊吹山にご一緒したBOGGYさんの同行を得て、初秋の御前山を目指す。7時にBOGGYさんを乗せて岐阜市を出発。BOGGYさんといろいろな話しをしながら関・金山線から41号線へ。JR萩原駅すぐ北側の踏切を渡る。ここからは案内標識に従って進む。3年前に比べて標識は新しくなり見やすくなっていた。(詳細な車でのアプローチは2002年12月の記録を参照されたい)

 林道から登山口への道に入る。以前、林道から登山口までは未舗装であったが、現在は舗装されており道幅は狭いが普通車でも通行可能。10台程度駐車可能な登山口の駐車スペースも舗装されている。駐車場に着くと、3台の車が駐車してあった。また、アンケート用のボックスが新たに設置されていた。アンケート箱と併せて登山届け箱の設置も必要と思われた。

 橋を渡って山道に入る。登山口近くはスギ・ヒノキの人工林である。5分ほど歩いて再び橋を渡り、谷を左に見る。カメバヒキオコシやシロヨメナ、ノブキなどの花が秋を告げる。大岩の下から流れ出た水が路面を濡らす。大岩には「岩水」と赤ペンキで書かれている。桜谷は両脇の山から水を集め、轟々と音をたてて流れる。

 再び橋を渡る。渓流をしぶきを上げて落ちる小さな滝を背景にトリカブトの淡い紫色の花が頭を並べる。もう一度橋を右に渡って、濡れて潤いのある登山道を歩く。岩には緑の苔が張り付き、大きなシダが周囲を埋める。いつしか、人工林を抜け出て、トチやカエデの落葉を踏み、人の気配に驚いて逃げまどうザトウムシを足下に見ながら、気持ちのいい癒しの空間を歩く。冬もいいが、この時期、緑の葉に覆われた桜谷はすばらしい。御嶽信仰として多くの人々が通った谷は、今でも昔と変わらない風景を創り出しているのであろう。タイムスリップした気分で、この時空間を楽しみながら歩く。山菜である美味しそうなウワバミソウも多い。

 歩き始めて30分ほどで朽ちて倒れかけた簡単な木製の鳥居を潜る。3年前もかなり傷んでいたが、湿度の高い谷にあっては朽ち落ちるのも速いであろう。谷から右斜面を登り、鳥居から数分で六合目に着く。マイペースのらくえぬにBOGGYさんから休憩のコール。BOGGYさんにとっては今回の山がいままでで一番のロングコース。先は長いのでここで小休止。ヒノキの葉が供えられた小さな石仏と六合目の表示板。表示板には標高1140m、山頂まで90分1.3kmの表示。今回は山頂近くまで水場があるため、あまり水を持ってこなかった。六合目のすぐ先に右の斜面から流れ落ちる小さな谷があったので、ここで水を補給。

 六合目から10分ほどで七合目に。谷がかなり下に見える。六合目と七合目の距離が短いような気がした。ここにも小さな石仏があり、この先、8・9合目にも同じ石仏が祀られていた。7合目から10分ほどの間の雰囲気はこの谷ベスト1。岩や倒木は苔に覆われ大きなシダが葉を広げる。キオンやシロヨメナがひっそりと咲き、谷川が流れる。まるで日本庭園の中を歩いているようだ。

 苔むした岩は濡れて滑りやすい。さらに所々に現れる木道はつるつるでとにかく滑る。帰りはどうしようかと考えながら滑らないように歩く。苔むした岩を慎重に選んで飛び石のように川を渡り左へ。サラシナショウマやトリカブトがきれいだ。谷を再び右に渡って見上げれば、巨大な屏風岩が樹間に見える。5分ほどで屏風岩の展望地に出た。ここで一息。アザミの上を大きなエダシャクがまるで蝶のようにひらひらと飛んでいた。

 数分間の休憩の後、右斜面に取り付きジグザグと登っていく。後方には屏風岩が大きい。ササが現れ、結構きつい登りである。BOGGYさんのペースにあわせて、立ち止まる程度の休息をとりながら、再び小さくなった谷を渡り返して8合目を通過。足下にツクバネソウやホウチャクソウ、ユキザサの赤い実が美しい。春から夏にかけて美しい花を咲かせていた植物は、やがて来る冬を前に実を結び1年の役割を終えようとしている。次第に緑を失い葉を落としていく森に寂しさを感じる秋の山ではあるが、その姿はすでに厳しい冬に耐えるための準備でもあることを思いながら、山頂まで0.8kmの表示を通過。この辺りにもサラシナショウマやトリカブトが美しい花を咲かせている。

 谷は細くなり、梯子のような橋を滑らないように渡って、ササの斜面へ。ヒノキの高木の間からの太陽がまぶしい。いつの間にか、谷の水の流れは消え、岩の間から水の音が聞こえる。まさに桜谷の源流である。

 9合目、標高1500m、山頂まで700mの表示と最後の石仏を足下に、アザミの花を見ながらヤブつぽいササの中を抜ける。滑りやすい苔むした岩がごろごろした直登の道を進む。苦しい最後の難関である。青い空が大きくなり、尾根状の場所に出て大岩のところから折り返すように歩き、ツルリンドウの実を踏まないように左山でトラバースしていくとすぐに岩の上の小さな赤い社が目に入った。

 山頂到着。BOGGYさんはこんなロングコースは初めてで登れないのではと心配されていたが、この滑りやすい石の道を2時間半で登ることができた。日頃、金華山で訓練されている成果である。狭い山頂には2名の単独登山者がみえた。天気はいいが霞んで展望は今一つ。御嶽山は山頂に雲がかかり、今回も全容を確認することができなかったのが残念。

 山頂の一角でランチに。まずは登頂を祝ってビールで乾杯。「つまみを出しましょう」とBOGGYさん。伊吹山に引き続きBOGGYさんのイタリア弁当が登場。「ニョッキを知っていますか?」「野菜の仲間ですか?」 BOGGYさんがザックから取り出した容器には何やら黄色い物が。「パスタの一種です。今回はカボチャのニョッキ。」食べてみるとこれが美味しかった。思わず4つ5つとパクパク。これは写真に撮っておかなければと思い、半分くらい食べたところで撮影。聞けば、BOGGYさん手作りでエダマメやホウレンソウなどいろいろな食材でできるそうだ。

 ウチは久しぶりに鍋。イタリア料理とは比較にならないレベルの低いメニュー。鍋の後に雑炊にするつもりだったがお腹いっぱい。BOGGYさんは更にシーフードチャーハンを持ってみえたが食べきれずお土産にいただいてしまった。山で食べるイタリア料理を研究中とのことで、これからが楽しみ。

 すっかり秋めいた山頂で山談義、食談義をしながら一時間半があっという間に過ぎた。山頂に不思議な形をした赤い実のなっている木があった。後にBOGGYさんの一眼デジタルで採った写真を送ってもらったが名前が分からなかった。山名表示柱の前で写真を撮って下山開始。

 社のある岩の裏に道があったので行ってみると小さな小屋がある。針金で戸締まりしてあったが、避難小屋らしい。こんなところに小屋があったとは知らなかった。さらに道は奥に続いているので進んでみる。GPSで確認するとコース方向へ進んでいるのでどこかで合流するのではないかと思ったが、少し下ってすぐに岩や崖が現れ道は消えていた。

 やむを得ずもう一度山頂まで戻って大岩の裏からもう1つのショートカットの道を歩いてコースに合流。来た道を下った。登りに予想したとおり下りは滑る滑る。それぞれ2・3度は危うい場面に遭遇しながら、二時間近くかけて無事下山。

 いい山だった。夏にはマイナスイオンを浴びながら涼しい登山ができるであろう。また、これから紅葉の時期には、美しい天然林の中をすばらしい山歩きができるに違いない。ご一緒いただいたBOGGYさんに感謝。

 帰ってBOGGYさんから頂いたチャーハンを食べた。「適当に作ったチャーハンですから」とのことだったが、またこれがイタリアンの風味で美味しかった。ウチで作るチャーハンとは雲泥の差。山の食事にこだわる山仲間が多いが、そこにBOGGYさんを交えてのオフ会が楽しみ。
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