トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平25情使、第146号) 

墓谷山 (738m 滋賀県) 2014.4.27 晴れ 2人

登山者用駐車場(9:32)→登山口(9:43)→観音堂(10:04-!0:07)→墓谷山山頂(11:19-12:30))→コエチ谷分岐点(13:04)→林道(13:30)→駐車場(14:16)

★4月27日に滋賀県の墓谷山に登ってきました。
★木之本町杉野の墓谷山登山者用駐車場をスタート。
★登山口から生活環境保全林の遊歩道を歩いて観音堂へ。
★観音堂から人工林を抜けて、墓谷山名物の急斜面に取り付きました。
★急斜面のロープ場をこなし、新緑の尾根へ。
★足元には、チゴユリやイカリソウが切れまなく続き、ユキグニミツバツツジが満開。さらに、フデリンドウの可憐な花も見られ、急登を癒してくれました。
★墓谷山山頂で、目の前に堂々と横たわる横山岳を見ながらランチ。
★昼食後、横山岳方向に下り、コエチ谷ルートへ。
★ザレた急斜面を、たくさんのイチリンソウを見ながら下りました。
★花と緑の素晴らしい春の山旅を楽しんできました。



 連休前半は渋滞無しでアプローチでき、まだ登っていない山として、滋賀県の墓谷山を選んだ。横山岳の西側にある山で、国道303号線で木之本へ向かうときに、杉野集落の中で墓谷山登山者用駐車場の前を通ることから、気になっていた山である。圧倒的に大きな横山岳の西側にある、格好のいい三角形の山が墓谷山である。その形から杉野富士と呼ばれているのも納得できる。

 国道303号線で八草トンネルを抜けて滋賀県に入り、杉野集落を抜けた辺りで、集落道と国道が合流する。この左側に杉野農協前のバス停があり、その西側に「墓谷山駐車場」の標示と未舗装の空き地がある。この駐車場に入ると、空き地に停まっていた軽トラックあったので、運転席の男性に声をかけた。この空き地のオーナーの方で、墓谷山に登ることを告げると、登山口を教えてもらった。車を隅に寄せて停め、靴を履き替えた。

 登山口は国道を西に少し歩いて、最初の角を北に曲がり、後は道なりに行く。田園の中、オドリコソウやキツネノボタンを見ながらのどかな田園の中を山に向かう。水田が切れる辺りで、前方に墓谷山が美しい山容を見せる。墓地を右に見て橋を渡ると、道が分岐しており、南卦寺の解説板と石碑がある。その左に「観音堂・墓谷山→」「観音堂まで30分」などの標示があり、ここが登山口である。
 
 登山道の脇に、いくつかのイカリソウの花が咲いている。丸木階段を登って左に向きを変えたところに、杉の大木があり、注連縄が巻いてある。御神木であろうか。地面に落ちたばかりのオトシブミを見ながら、新緑のトンネルに入る。イワウチワの葉が見られるが、花は既に終わっている。
 
 大木の多い林の中、丸木階段を登っていく。この辺りは生活環境保全林であり、よく整備されている。ピンク色のツツジがたくさん見られ、トウゴクミツバツツジかユキグニミツバツツジのどちらかであると思われたが、葉柄の毛の有無を確認しなかった。その後に登った墓谷山の北にある七々頭ヶ岳で確認したところユキグニミツバツツジであったことから、墓谷山もユキグニミツバツツジと思われる。

 登山口から10分ほど登ると未舗装の林道に出た。「→」に従って右に歩き、すぐに左の山道に入る。杉の大木の中、杉の落ち葉を踏んで遊歩道を登っていくと再び林道を通過。チゴユリの花を見ながら山道を登り切ると大きな観音堂の建物が現れた。扉が閉められた観音堂で今日の安全を祈願。鐘突き堂や池、東屋などがある。

 墓谷山へは観音堂の右から奥に向かう。人工林の中、チゴユリを見ながらなだらかな道を歩く。イワウチワの最後の花が見られた。なだらかな道は左に谷を見ての登りとなり、皮剥ぎ防止のテープが巻かれた杉林を抜けると、目の前に急斜面が現れた。左側が人工林となっている境を一直線に登る。単なる斜面で道とは言えないが、ロープが設置してあることから、登山道であることが分かる。両手をつかないと登れないような急斜面。アキレス腱が伸びっぱなしの状態でひたすら登る。
 
 次々と現れるロープを持ち替えながら、大木の間を上る。見上げれば、斜面はまだまだ続いている。急斜面と格闘すること10分ほどで、ようやく緩やかになり明るい場所に出た。右手には木々の間から谷を挟んで向かいの山が見える。
 
 ちょうど1時間歩いたので、明るい尾根で休息。いつものようにパンを食べてエネルギーを補給。前方右手に墓谷山山頂が望める。数分休息して、スタート。再び急斜面に取り付く。ここにもロープが設置してある。葉を広げたばかりのヤブレガサを見ながら、ロープを掴んで登っていく。イカリソウの花が続く。登り切ると「←観音堂・杉野」の標示を通過。気持ちのいい明るい尾根であり、ここからも前方に墓谷山山頂が望めた。

 なだらかな尾根を、満開のユキグニミツバツツジを見ながら歩く。一旦下って登り返す。この登り返しがまたまた急登のロープ場である。頭上の新緑に向かってロープを掴んで登る。数分で登り切ると、左側の展望が得られ、下界の集落が見える。痩せた尾根を通過し、右山でトラバースして再び尾根を歩く。ヤブレガサやミスミソウ、チゴユリなどを見ながら落ち葉を踏んでいくと、道の上に空色をした小さな花を見つけた。久しぶりに出会ったフデリンドウに感動。まさに地上に落ちてきた星のようだ。

 やや掘れた道を歩き、倒木を跨いでいくと、地面にたくさんのホオノキの枯葉が落ちている。どれがホオノキだろうかと見回すと、目の前に根元から4つの大木が空に枝を広げているホオノキがあった。これだけ見事なホオノキの大木はなかなか見られない。新緑の天然林の尾根歩きは最高に気持ちがいい。急登の疲れも忘れて、春山の素晴らしさを全身で感じながら歩くと、杉の木が現れ、山頂に着いた。
 
 山頂は南東側が切り開かれており、真っ先に大きな横山岳が目に飛び込んできた。山頂は樹林帯の中で展望は無いと思っていただけに、この絶景には驚いた。右手のなだらかな山は金糞岳のようだ。三角点は切り開きとは反対側にあり、杉林の中で真っ白なタムシバが咲いている。また、三角点の横にある木の幹にシカの角が縛り付けてあった。杉の木の木陰で、横山岳と羊雲を見ながら昼食をとった。誰も登ってこない静かな山頂で、ツナ炒飯と缶詰を食べた。目の前の横山岳山頂は多くの登山者で賑わっているに違いない。

 帰路は、横山岳方面に下る。杉林の中を5分ほど歩くと、ロープ付きの急斜面となった。下り切ると、天然林の尾根歩きとなり、右側の展望が得られた。登り返すところもあり、この辺りにもフデリンドウが咲いている。前方に巨大な横山岳を見ながら、実に気持ちのいいなだらかな天然林を歩く。足元にはチゴユリやイカリソウの花が続く。左側に杉林が現れると、急斜面の下りとなる。横山岳の山裾には、タムシバの白いドットがモザイクとなって見えた。

 下り切って、片側が杉並木の尾根を歩く。足元に純白のイチリンソウを見つけて声が出る。久々に出会う花であり、何枚も写真を撮った。しかし、この後、無数のイチリンソウに出会うことになる。

 山頂から30分ほど下ったところで、「←コエチ谷下山」の標示が現れ、この分岐点で直角に右へ向きを変える。ここからは、以前、横山岳の下山時に下った道であり、かなりの急斜面だったことを記憶している。記憶どおり、道はすぐにロープ付きの急斜面となった。地面は乾いてザレており、滑りやすい。ロープが途切れたところは慎重に下った。登山道の周囲にはイチリンソウがたくさん咲いている。

 右山でトラバースして、再びロープを掴んで下る。以前はロープがあったかどうか記憶が無い。やがて左の谷を見下ろすように道が下っており、谷を挟んで新しい林道が作られていた。谷に咲くヤマザクラが美しい。この辺りもかなりの急斜面であり、ロープは無い。谷に落ちそうなところであり、つかまる木も無く、一段と気を引き締めて下る。次第に谷底が近づき、折り返すようにして谷に降り立った。
 
 谷には丸木を束ねた橋が架けられていたが不安定だったので、ほとんど水のない谷に下りて林道に出た。ミヤマハコベやミヤマキケマンを見ながら林道を下る。法面にはイチリンソウも咲いている。雨水で深い溝ができているところもあったが、轍があり、林道を上ってくる車もあるようだ。

 10分ちょっと歩いて舗装された車道に出た。横山岳の登山口に向かう道である。ここを右折して、川沿いに歩き、杉野集落に入る。1軒の旅館があり、玄関にヤマシャクヤクが咲いていた。横山岳でも咲いているだろうか。そこへ、前方から軽トラックがやって来て、我々の前で停まった。駐車場で出会った方で、再び声をかけられた。素晴らしい山歩きができたことを告げ、礼を言って分かれ、国道に合流して駐車場に戻った。
 
 全く期待しないで登った墓谷山であったが、山頂からは横山岳の素晴らしい展望が得られ、美しい新緑と切れ間なく数多くの花が続く山だった。横山岳と同様に、まさに花の山だ。思わぬ拾い物をしたような気がした。急斜面のロープ場が多く、特にコエチ谷への下りはスリップに注意。紅葉の時期にも登ってみたい山である。
★墓谷山からの展望と植物等


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