トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平21業使、第478号)
白山釈迦岳 (2053m 石川県) 2010.8.21 晴れ・曇り 2人
市ノ瀬駐車場(5:45)→車道登山口(5:58)→林道合流(6:20)→林道登山口(7:00)→水飲場(8:13)→釈迦岳前衛峰(10:15-10:24)→白山釈迦岳(10:48-10:56)→釈迦岳前衛峰(11:07-12:01)→水飲場(12:58-13:10)→林道登山口(13:45)→林道分岐(14:23)→車道登山口(14:40)→市ノ瀬駐車場(14:55)
久しぶりに白山山系の山に登ることにし、前から登りたいと思っていた白山釈迦岳を選んだ。白山釈迦岳は白山の西に位置する標高2000mほどの山であり、取りこぼしていた山の1つである。かつて、別当出合から白山、白山釈迦岳を経由して市ノ瀬までのロングコースを計画したが実現していない。最近は本格的な山に登っていないことから、この周回コースは断念。市ノ瀬からの白山釈迦岳往復を計画。それでも往復16km、標高差は1000m以上ある。
金曜日の夜、夕食の後、市ノ瀬に向って車を走らせる。霧の流れる九頭竜湖畔を西進し、勝山市から国道157線を北上。石川県に入って、白峰から市ノ瀬に向う。前にも後ろにも市ノ瀬に向う車はない。市ノ瀬の駐車場に着くと警備員から、今なら別当出合まで車で入れると言われたが、目的は市ノ瀬を起点とする白山釈迦岳であり、ほとんど車のない広い駐車場の隅に停めた。自宅から3時間弱で到着。フルフラットで車内泊。
4時過ぎ、車の音と話し声で目が覚めた。まだ暗い駐車場をカーテンの隙間から覗いて驚いた。広い駐車場は満車状態。さすが白山の人気はすごい。車内で早い朝食をとって、登山届けを提出し出発。別当出合行きのバスに乗るためバス停に向う登山者とは反対方向に歩く。舗装された駐車場はもちろん、その先の道路の路肩にも隙間なく車が停まっている。
バスが走る道と合流して橋を渡り、左方向に坂を登る。トチがたくさんの実を付けている。上ってくるバス、下ってくるバスを見ながら右回りでカーブを曲がると、単独男性の登山者を追い抜いた。聞けば白山禅定道を登り、小屋で泊まるという。突き当りのヘアピンカーブまで歩くと白山釈迦新道・白山禅定道登山口の大きな標示板とその横に山道が針葉樹林の中に続いている。入口には通過する人数をカウントする計測器が取り付けてある。
スギの巨木の林を歩く。道は平坦で、スギ林を抜けるとブナなどの広葉樹となり、斜面に取り付く。車道の登山口から20分ほど登ると未舗装の林道に出た。林道を横断して山道が続いており、これが白山禅定道である。白山釈迦岳はここから左へ長い林道を歩く。
ハンゴンソウやオトコエシなどの花を見ながら、ひたすら林道を歩く。工事車両の轍の上に今朝歩いたと思われる登山靴の跡が見られ、ちょっと嬉しい。雲のない空に白山方向の稜線が見えるところもある。途中、右へ道が分岐しているところもあるが広い道を歩く。下りの道となり、林道を歩き始めて30分ほどでトンネルを潜る。天井が崩壊しており、今にも崩れそうで恐ろしい。トンネルを抜けると堰堤から落ちる滝を見て湯ノ谷川を渡る。慰霊碑に手を合わせてカーブを右に曲がるとすぐに標示板が現れた。左の山側に登山口があり、ここにも太陽電池で動く人数計測計があった。標示には白山釈迦岳まで3.9km、市ノ瀬まで4kmとあり、市ノ瀬から白山釈迦岳までは7.9kmあることになる。
アカソなどの夏草が茂る山道に取り付く。草に覆われた道が続くといやだなと思いながら登ると、すぐに道は明瞭になり、折り返しながらブナ林の登りとなる。見事なブナの大木が見られる。別山へのチブリ尾根や三方崩山、三方岩岳への登山道などで見られるように、白山周辺のブナ林はすばらしい。久しぶりのブナ林に癒される。足元にはチゴユリやマイヅルソウなどが続く。この時期、ブナ林で花を咲かせている植物は少なくツルリンドウやソバナくらい。夏から秋に見られるキノコも多く、チチタケやツチカブリモドキ、ムラサキヤマドリタケなどが傘を広げている。ベニナギナタタケは初めて見るキノコ。
美しい天然林をぐんぐん登っていく。東の峰から顔を出した太陽の光がブナ林に差し込んで眩しい。急登ではなく適度な登りが続く。1時間ほど歩いたのでブナ林の中で休憩。前にも後にも登山者はいないので、道の真ん中で休憩。休憩後、歩き始めてすぐに水飲場の標示があった。ここで休めばよかった。道の左に小さな谷川があり、地中から湧き出た水がパイプからこぼれ落ちていた。冷たくておいしい水で生き返る。空になったペットボトルに冷たい水を詰め込んで、釈迦岳まで2.1kmの標示を確認して、水飲場を後にした。
樹林の密度が次第に低くなり、明るい登山道となる。右手の木々の隙間から別山や三ノ峰が望めた。湿地状の斜面を登るとササ付きの道となり、展望のいいところを通過。別山へ続くチブリ尾根が望める。雨の中、チブリ尾根を登った6年前が思い出された。明るい道となり、オヤマリンドウの花やゴゼンタチバナの実が登山道を飾る。正面には白山の稜線。さらに登れば、きっとすばらしい展望が待っているに違いない。この時はそう思った。
釈迦岳まで1.7kmの木柱を通過。ムシカリの赤い実を見ながら草付きの道を行く。キンレイカやシナノオトギリの黄色い花が朝日に映え、朝露に濡れたアカモノの真っ赤な実がきらきらと輝く。ブナの林はいつしかダケカンバに代わり、ミヤマコウゾリナの花が多くなった。
水飲場から1時間程度歩いたのでササの斜面で休憩。別山方向を見ると、湧き上がった雲が稜線を隠し始めている。その雲塊は黒く、雨の予感。この朝の空模様からは想像できない。山頂まではまだ1時間以上かかる。雲に追われるように腰を上げた。
足元にころがる丸い石を見てチブリ尾根を歩いたときのことを思い出した。この辺りも南側に位置するチブリ尾根と同じように礫岩が多く、礫岩が風化したことによってできた丸い石がたくさん見られる。丸い石を触ってみるとザラザラしており礫岩から剥がれ落ちた石であることが分かる。そう、ここも太古は海であり、海の底の砂や石が堆積岩となり、隆起してこの山がつくられている。その長い時間を遡り、想像しながら歩くと不思議な気持になる。
ミヤマホツツジやヤマハハコを見ながらササの道を歩く。雪に倒されたダケカンバの幹の下を潜り、ササの斜面に出る。イワショウブの白い花がちょうど見ごろ。この花の咲く時期にようやく出会えた。カライトソウも久しぶりに出会う花。どちらも美しい花である。折り返しながら登ると、前方に稜線が見える。稜線がどの辺りであるかよく分からないが、まだかなりの標高差を登らなければならない。ガスが流れる。回り込むと、今度は丸い山が目の前に見える。この山に向かうのだと思ったが、この先で、白山釈迦岳の西にあるピークであることが分かる。
下山してくる単独男性に出会った。小屋泊まりの登山者で、朝は雲がなかったとのこと。シモツケソウのピンク色の花を見ながら、小さな崩壊地を通過して右に曲がり込むと、ササに覆われたもう1つの丸いピークが見えてきた。これが白山釈迦岳山頂である。まだ距離がある。稜線はまだかと、何度も折り返しながらササの道を歩く。道の傾斜は緩やかだが、さすがにバテてきた。前の休憩から1時間たったが、前衛峰は近いことから、休まずに歩く。展望がよければ疲れも取れるが、ガスは切れない。
オヤマリンドウに癒されながら、ようやく稜線に出た。GPSを見ると、前衛峰まではまだ少しある。稜線の右側は切れ落ちたところがあり、真下には湯の谷川の砂防工事現場が見下ろせる。正面にはこれから向かう釈迦岳前衛峰とその向こうには四塚山・七倉山が見える。前衛峰は目の前だ。ホツツジやミヤマコゴメグサの写真を撮りながら歩いて釈迦岳前衛峰に着いた。
ササに囲まれた前衛峰山頂は細長く、山名標示柱が倒れかかっていた。板がベンチ代わりに置いてある。湧き上がるガスを透して、目の前の白山が薄っすらと見える。一瞬、ガスが切れ四塚山や七倉山が目の前に見えた。白山まではここからかなりの距離がある。北側に白山釈迦岳がササに覆われている。ちょうど1人の登山者が山頂から降りてくるのが見えた。後方からやって来た男女2名に前衛峰山頂を譲って、白山釈迦岳山頂に向う。
ササの道を下って5分ほどで鞍部に下りた。道が左右に分かれており、左には室堂の標示がある。標示板が倒れておりここは左に行ってみる。右山で白山釈迦を回り込むと、左下に池が現れた。池の周辺にはオレンジ色のユリの花がいくつか見える。山頂への道を探しながら歩くが、道はなく、山を巻いてしまった。先ほどの見えた登山者は南側の道を下っていたことから、引き返して分岐点まで戻り、標示板が倒れたところから東へ行ってみる。先ほどの男女と一緒になったので、一緒に道を探す。
分岐から僅かに進んだところにササの斜面を登る細い道があった。ハクサンフウロの花を見ながら踏み込んでみると、すぐに背丈もあるササに行く手を阻まれた。その状況を伝えると、2名の登山者はさらに東へ続く道で山頂へのルートを探索。こちらも行き止まりのようだ。ササに阻まれたこの道が山頂へのルートと確信してササを潜り抜けるとササの背丈が少し低くなり、明瞭な踏み跡が続いている。クガイソウの紫色の花を見ながら、ササの海から顔だけ出して歩く。
ひと登りでなだらかになり、三角点のある山頂に到着。三角点の周りが僅かに空き地になった狭い山頂で、周囲はササに囲まれている。ガスで白山は見えない。後方から登ってみえた男女の登山者は地元石川県の親子だった。お父さんと娘さんの2人で山を歩いてみえるそうで、うらやましい。しばし、山談義。山名の書かれた角材を持って記念撮影。前衛峰で昼食をとることにして、親子の後を追って足元に注意しながら、ササの急斜面を下って前衛峰まで戻った。親子は前衛峰を後に下山。
ランチの用意をしていると、単独男性が白山釈迦岳方向からやって来た。福井県の方で、白山釈迦から1時間ほど先の花畑まで歩き、戻ってきたとのこと。オオサクラソウは既に終わっていたそうだ。さらに、北からご夫妻が登ってみえた。白山釈迦岳への道が分からなかったので、池まで行って戻ったとのこと。
ランチメニューはチャーハンと缶詰。次第に黒い雲が頭上に迫り、雨になるのではと思った。ハエのような虫がまとわりつき、追い払いながらチャーハンを作った。すっかりガスに包まれた頂であわただしく昼食をとり、コーヒーで締めくくった。
帰路は、同じ道を下る。白山などの山々は雲の中だが、下界はよく見える。登りで撮れなかった花の写真を撮りながら一気に下って、1時間で水飲場に到着して休憩。デザートに持って来たブドウが美味しい。再び冷たい水を空いたペットボトルに詰め、ブナ林を下った。水飲場から30分ほどで林道に出た。林道でジャコウソウの花を見つけた。林道はいろいろな植物があり、植物観察を楽しみながら歩く。ヤマブドウの葉にできる爪のような形をした虫こぶのブドウハトックリフシにも出会えた。長い林道も退屈しない。
林道から車道に向ってショートカットし、バスの走る道を下り、橋の手前から折り返すように未舗装の坂を下って、広場を横切り、吊橋を渡って駐車場に戻った。白山方面には大きな入道雲ができていた。駐車場に座り込んで靴を脱ぐ。久しぶりによく歩いた。側溝を流れる水で冷やした缶ジュースが美味しい。下山届けを提出し、市ノ瀬を後にした。
白峰温泉総湯に寄って汗を流した。この日帰り温泉は新しく整備されており、大きな温泉になっていた。入浴すると土産物店のソフトクリームが100円引きになる。売店のベンチで入道雲を見上げながらソフトクリームを食べた。
白山釈迦岳は最初に長い林道歩きがあるが、白山特有の美しいブナ林やたくさんの花に出会える。天気がよければ白山の展望地でもある。また、登る人は少なく静かな山歩きが楽しめる。今度は季節を変えて、天気のいいときに登りたい山である。
★白山釈迦岳からの展望
★白山釈迦岳の生き物
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