花房山1
花房山2
花房山 (1190m 藤橋村) 2004.5.23 晴れ後曇り 2人→3人

慰霊碑・駐車地点(7:37)→根曲がりヒノキのあるピーク(8:46-8:53)→ワイヤーロープのあるピーク(9:18)→大岩(9:41)→(休憩10:05-10:12)→山頂手前ピーク(10:17)→花房山山頂(10:29-12:16)→大岩(12:41)→ワイヤーロープのあるピーク(13:00)→根曲がりヒノキのあるピーク(13:16-13:23)→駐車地点(14:03)

 国道21号線から揖斐川右岸を北上すると、真っ先に小津権現山の特徴ある山容が目に入る。その尾根の北に美しい稜線を描く大きな山は花房山。花房山は長い歩行とヤブをこぐ山として、普通の山に飽きた人が登る山だと聞いていた。すばらしい山容と美しい名前に引かれて、今年こそ登ろうと思っていた山でもある。4月にタンポ山頂から、目の前にこの山を見たとき、その思いはますます大きくなった。1週間前に、「クーの山小屋」ミニオフ会が花房山で行われたが、残念ながら参加できなかった。この日曜日は天気もよさそう。どの山に登ろうか迷ったが、前日に花房山を選んだ。

 揖斐川右岸を北上する。春霞がかかって、小島山がかろうじて見える程度。おまけに、昨日までは晴れの天気予報が、今日の朝は午後から一時雨に変わった。展望は期待できないが、久しぶりにロングコースを歩くことができるので気分がいい。藤橋村の横山ダムを直進し、約8kmの湖岸ドライブ。ウツギの白い花を見ながら、藤橋城の案内に従って国道から右に入る。

 藤橋城の前には駐車場や売店、芝生広場などがあり公園となっている。駐車場の奥に24時間使用可能なトイレがあるので利用するといい。キャンプ場の標識に従い、道なりに進み、大きなアーチのある橋を渡る。すぐに未舗装となる。左の東杉原林道に入らず直進し、左に徳山ダム工事事務所、右にお寺の廃屋を見ながら進むと、右手に慰霊碑が現れ、路肩に数台駐車可能な広場がある。ここに車を停める。駐車場前の道路にいた1匹のサルが驚いて山に逃げ込んだ。山奥であることを実感。

 早朝でもあり、車は我々の1台のみ。サルしかいないかと思うとちょっと寂しい。登山口は駐車地点の反対側にある。草が茂っており、テープが無ければとても登山口には見えない。山頂までのコースタイム3時間半。11時山頂到着を目標に、シャガの花の出迎えを受けて山道に入る。

 道はまず林道に沿って登っていく。下草が生い茂り昨夜の雨でズボンが濡れる。スパッツが必要かと思ったが、すぐに下草のない明瞭な道になった。林道から車の音が聞こえてきた。登山者は我々だけではないようだ。美しい天然林の斜面を登る。いきなりの急斜面にピッチを掴むまでが苦しい。

 落ち葉の中に白いものがある。見れば顔を出したばかりのギンリョウソウが水滴を身にまとっておじぎをしている。春から初夏へ、季節は止まることなく動いている。昨年、この幽霊に出会った山はどこだっただろうかと思い出しながら歩いていると、何と、あちらこちらにギンリョウソウが光っている。群がっているもの、1本だけのもの、中にはまさに地面から頭を出そうとしているものもある。この広い斜面にはどれだけのギンリョウソウがあるのだろうか。まさにギンリョウソウの森である。

 道は明瞭。かなり人が入っている。急斜面は濡れた泥で滑りやすく、昨日の登山者の滑った足跡がたくさんある。滑りやすい斜面にはゼブラロープが張られており、つかまる潅木が無いところは、このロープに頼った。苦しい登りもギンリョウソウの美しい姿に癒され、いつの間にかピッチを掴んでいた。ゆっくりしたペースで登る。

 丈5mほどのスギの幼木の人工林が現れ、道は登ったりなだらかになったり。大きなイチイがいくつか見られた。あいかわらずギンリョウソウが続く。タニギキョウの白い可憐な花がかわいい。歩き始めて1時間。スギ林を抜け、痩せ尾根となる。花は終わっているが、イワウチワの群落が現れる。左側が垂直に切れ落ちた崩壊しそうな尾根を過ぎ、ヒノキの根の尾根を歩く。ゼブラロープが張ってある。

 やがて、根が曲がって門のようになったヒノキに付き当たる。道は左に迂回して下っている。1時間10分ほど歩いたが、まだ先は長いので、このピークで小休止。右に踏み込むと、東に花房山の稜線が見え、丸くふくらんだ山頂のようなピークがある。地図で確認すると山頂手前のピークのようであり、山頂はその左辺りと思われた。これから歩くピークへの尾根がよく見える。

 ここからスギ・ヒノキの幼木の中を大きく下り、再び登り返す。左手に北側の近くの山々が望めた。冠峠に向かう車道も見える。再び痩せ尾根を歩く。2箇所ほど、滑りやすいツルツル岩を越える。尾根はかなり痩せており、木の根がブリッジになったような所もありちょっとしたスリルを味わう。右側が開けたところからは、西方向の山が見渡せた。天狗山、蕎麦粒山、五蛇池山と美しい山並みが連なる。

 ここからひと登りで林業用のワイヤーロープが埋め込まれたピークに出る。ピークから再び痩せ尾根を急降下。更にまた登ってまた下る。まさにジェットコースター。蟻のと渡り。こんな道はなかなか経験できない。切り立った尾根ではあるが、両側には木があり、三方崩山のような恐怖感はない。イワウチワの実がたくさん並んでいる。まさに山の名前のごとく4月には花の道になっているに違いない。

 痩せ尾根の登りは続く。標高が高くなるに連れて、ユキザサの花も現れた。蔓植物が釣り鐘状の白い花を咲かせていた。シロバナハンショウズルに似ているが・・・。ヒノキが乗っている大きな岩の横を通る。足下に紫色の花。見上げれば、フジの花がエメラルドグリーンの空間に垂れ下がっている。花房だ。

 急な尾根を登っていくと、ブナが目立ち始めた。灰色の木肌が柔らかい黄緑色の背景にとけ込んで何と美しいことか。登山道には質素なツクバネソウが木漏れ日に揺れる。新緑の山の美しさに、疲れも忘れて歩く。再びヒノキの根が張る尾根を登り、大きな岩に突き当たる。左から回り込んでよじ登る。足下に白い花がいくつか散らばっていた。足を止めて見上げれば、頭上にはシロヤシオの花が終わりを迎えている。目の前では2羽のシジュウカラがささやく。

 先ほどの休憩から1時間以上歩いた。コースタイムからするとまだ1時間はかかる。雪で大きく曲がった潅木をベンチ代わりに一休み。目の前にはツクバネソウに混じって、先週、カッペさんが掲示板に掲載したランのような植物があった。まだ蕾は固く、同定はできなかった。チョコレートでエネルギーを補給してスタート。

 5分も登ると、いきなり明るいピークに出た。周りは背丈より低い木が茂り、周囲はすばらしい展望である。小津権現山が南に大きい。西方向には蕎麦粒山などが見えるが、モヤって伊吹山や金糞岳は見えない。ピークで道は左に向きを変える。正面の小高い山が花房山山頂のようだ。コースタイムよりもだいぶ早く到着できそうだ。

 ここから山頂まではヤブコギとの情報を得ていたが、イメージのササ原とは異なり、ササよりも潅木が多い。潅木の背は比較的低く、茂みの中にははっきりと道がついている。また、新旧いろいろなテープも付けられている。道とテープを追った。東側はササに覆われた深い谷。道は西側に回り込む。派生している道があり、帰路、枝道に踏み込まないように振り向きながら歩いた。「帰りはテープを追えば問題はない」と、この時はそう思ったのだが・・・。

 満開のユキザサを見ながら、ヤブをこいで山頂へ。ピークから10分ほどのヤブコギで山頂に着いた。2時間52分で山頂到着。本日1着。予定より30分ほど早く着いた。山頂の三角点の周りとその南には僅かに空き地になっている。北西は背の高い木々で視界が遮られているが、その他は周囲の展望が得られる。

 霞んで遠くは見えないが、北に雷倉が大きい。山腹の林道が見える。その左には、能郷白山。一部雪も見える。東には、4月に登ったタンポや西台山、南には小津権現山。霞がなければ、濃尾平野まで見えるだろう。山頂から南の谷に向かって、ヤブの中に明瞭な道が1本あった。小津方面に下る道だろうか? 

 数分後に男性2名が到着。食事の準備をしながら、雷倉の話しなどを聞かせてもらった。ランチメニューは味噌煮込みうどん。やたらとハエが多くて、落ち着いて食事ができず、卵を入れるのを忘れてしまったほど。その後、単独男性が2名が到着。1名の方はすぐに下山された。もう1名の方は、ブルーシートを敷いて、ガスストーブとフライパンでのランチ。格好からしてかなりのベテランとお見受けした。

 「RAKUさんですね。」と話しかけられて、びっくり。なんと、「クーの山小屋」住人のGさんでした。昨夜、花房山に登ることを掲示板に書き込んだのを見て、追いかけていただいた。若い頃はワンゲル部に所属していたという山男。その後、山から離れ、5・6年前から登り始めたとのこと。最近では、毎週登って見えるようで、時には仲間と一緒に山頂で宴会を楽しんでおられる。しばし、山談義。ほんとうに山が好きな方だと感じた。

 雲が低くなり、周囲の山も見えなくなった。手前のピークをガスが流れる。パラパラと雨も落ちてきたので、後かたづけをして3人で下山開始。先頭のらくえぬ、ヤブの中で2度枝道に入り込んで引き返す。行きにあれだけ確認したのに・・・。テープを追って歩かないと枝道に入り込んでしまうので要注意。

 雨も止み、かなりの早足で痩せ尾根を下った。途中で、らくえぬのコンタクトが目のなかで行方不明になって立ち往生するといったハプニングも。根曲がりヒノキのピークで小休止して、滑りやすい急斜面をゼブラロープに頼って駆け下りた。ロープとの摩擦で手が熱くなるほど。汗びっしょりで林道に出た。

 急登、痩せ尾根、ヤブコギと、実に変化に富んだ山だと思う。特に、長い痩せ尾根の登りは、他の山ではなかなか見られない。今の時期にはギンリョウソウが見頃であるが、4月にはこの痩せ尾根がイワウチワの花で埋め尽くされるに違いない。印象に残る1山である。Gさん、ありがとうございました。次回は、宴会登山を楽しみにしてます。
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