仏ヶ尾山

仏ヶ尾山 (1139m 萩原町) 2002.12.15 晴れ 2名

墓地駐車場(8:50)→鉄塔切り開き(8:57)→山頂まで1.8km表示地点(9:30)→1.6km地点(9:43)→1.4km地点(10:11)→展望どころ(10:22)→1.2km地点(10:35)→1km地点(10:52)→穴岩(11:12)→0.8km地点(11:19)→0.7km地点(11:27)→0.5km地点(11:38)→1120mピーク(11:41)→仏ヶ尾山山頂(12:01-13:45)→1120mピーク(13:59)→穴岩(14:12)→墓地駐車場(3:06)

 山麓の野上の漁師彦七が、ある時獲物を追って黒谷から山の尾に出た。ふと前方を見ると、明るい山の頂の岩上に山鳥が止まっている。狙いを定めて放った弾は、確かに手応えがあった。近寄ってみると、山鳥だと思った獲物は阿弥陀如来像であった。彦七は、この如来像を大切におしいだいて帰り、以来、ぷっつりと猟をやめたという。その後、誰言うとなく仏山の名が伝わっている。仏ヶ尾山(ほとけがおやま)は伝説の宝庫である。(南飛騨森林浴回廊21パンフレットより)

 2週間前に御前山に登ったが、御前山は隠山であり、下界からは見ることができなっかた。この山を見るなら、飛騨川を挟んで北東にある仏ヶ尾山がベスト。2・3日前に雪が降ったため、雪対策を万全にして、萩原町を目指す。

 登山口にトイレはないので、国道沿いの公衆トイレか上呂手前にあるドライブインを利用するといい。上呂駅前西の交差点を左折し、飛騨川に架かる浅水大橋を渡る。1本目を右折すれば川上岳登山口に行くが、仏ヶ尾山へは、2本目のJA裏を左折(交差点に地図と登山口を示す小さな標識がある)、南進し、2つ目の三叉路の右の狭い坂を登る。交差点に表示はないが、坂を上がった数メートル先の電柱に案内坂がかけてある。後は、表示板にしたがって時計回りに山麓の道を進めば、小さなログハウスの北側の登山口に着く。

 車は登山口のすぐ北の橋を渡った小さな墓地の周辺に3台ほど止められる。満車ならさらに北進し、大きくカーブした所の路肩に数台駐車できる。橋の上や日陰には雪が残っている。

 ログハウスまで戻り、「さあ、はりきって行きましょう」の表示に元気いっぱい、人工林の僅かに雪の積もる登山道に踏み込む。暗い樹林帯を数分歩いて、明るい切り開きに出る。左に鉄塔、右に堰堤がある。右後方に上呂の集落や国道が望める。ここから急登が始まる。雪は浅いが急傾斜でスローペース。なだらかな尾根になり、再び急登。この繰り返しが続く。赤松の多い人工林に、低い太陽の光が差し込み、美しい。

 鉄塔下から30分ほどで「山頂まで1.8km」の表示。陽に照らされ、木の上の雪が落下してくる。「すすめ! あと1.6km」を過ぎた辺りで、左手がやや開け、後方に御前山が見え始める。急斜面で、雪も数センチとなり、滑る、滑る。1.4km地点で軽アイゼンを装着。4本爪ではあまり効果がない。

 傾斜はさらに増し、ヒノキに白いロープを張った最大の傾斜地を通過する。木につかまり、一歩一歩、確実に足場を固めて登る。息が切れる。登り詰めると南側が開け、「展望どころ」に出る。御前山や萩原の町が見下ろせる。その向こうには三角形の山が見える。恵那山のようだ。「いのししに注意」の1.2km 地点辺りから、右手にいくつかの山が見える。右手の三角形は川上岳であろうか。めざす山頂は一番左の丸い山である。振り向けば、樹間越しに大きな御嶽山が望める。

 「ちょっとひといき あと1km」。雪の落下が切れ間無く続く。ざらめ状に凍った大きな雪の固まりが、雪煙とともに大きな音をたてて落下する。雪の落ちる影が、白銀の上を横切る。雪玉の直撃を何度か受けた。強烈な衝撃で、首筋や背中に雪が入り冷たい。これで、さらにペースが落ちる。

 大きな石が並ぶ尾根に出て、石の間を雪に足を埋めながら歩く。「おとなじゃん あと0.9km」の表示。頭上に木が少なく、雪の落下も減り、気持ちのいい場所である。歩き始めて2時間以上経過し、ようやく穴岩到着。大きな岩が尾根に鎮座し、巨大な無数のツララがきらめいている。ここからの展望がすばらしい。蛇行した飛騨川と御前山、その向こうに白い巨大な御嶽山が美しい。ゆっくり休息したいところだが、時間の遅れを取り戻すために、先を急ぐ。

 「えらくないぞ あと0.8km」「なんのこれしき あと0.7km」と、なだらかなヒノキ林の中を赤いテープたよりに歩く。人の足跡は全くない。あるのは、動物の足跡のみ。思わず、動物の足跡をたどり道をはずしたところもあった。「ファイト あと0.6km」を過ぎると、ダメ押しのヒノキ林の急登が待ち受けている。急坂は100mちょっとであるが、雪も深くなり、苦戦。「ここまで来たら あと0.5km」に励まされ、1120mピークへ。

 ピークには白山大神・御嶽大神と書かれた石柱があり、仏ヶ尾山は右への表示。赤いテープが多数あり、ここから北方向に一旦下る。下りきったら、最後の登りは痩せ尾根。穂高・槍・笠など北アルプスの白い峰が見える。「あと0.3km 根性」「がんばれ あと0.2km」。ヒノキの幼木を抜けると、白銀の山頂。今日、一番乗り。

 下界から正午を告げるチャイムが鳴り響く。コースタイム2時間のところを3時間10分かかった。いつもの山頂到着よりも数倍うれしい。そして、目の前には御前山の左に巨大な御嶽山が我々を迎えてくれた。去年の白草山の感動を、一年ぶりに味わった。

 山頂は南から東が切り開かれ、南の恵那山から乗鞍、北アルプスまで眺められる。笠ヶ岳は少し南に踏み込めばなんとか見える。そして北の僅かな切り開きからは白山や川上岳が望めた。今、登ってきた尾根がよく見える。「ようこそ仏ヶ尾山山頂」などと書かれたいくつかの山名の表示板がある。記帳ノートを収納した木箱も設置してある。積雪は40cmほど。三角点は雪の中。

 雪を踏み固めて食事の準備。ホッケの薫製と御嶽山を肴に冷えたビールがうまい。昼食の準備をしていると、単独の女性が到着。早々と食事を済ませて、下って行かれた。聞けば、列車の時間に間に合わないからだそうだ。この山は、JR高山線上呂駅から車なしで登れる山でも有名である。雑炊、茶碗蒸し、あんまん、コーヒーと雪の中で前回と同じようなメニューで最高の食事を楽しんだ。

 帰路、すっかりゆるんだ雪を踏んで、軽快に下った。「展望どころ」から下の急坂は落ち葉の上の雪が滑りやすく、尻餅をつく回数を競い合いながら登山口まで戻った。

 この山は、人工林を歩くところが多いためか人気は今一つ。しかし、穴岩近くの岩の多い尾根や1120mピークから山頂までの痩せ尾根は気持ちがいい。そして、なんといっても山頂からの大展望は言うこと無し。天気のいい日にお出かけください。御嶽山が待ってます。
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