トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作・トレース未記録あり
藤原岳 (1120m 三重県) 2009.3.21 晴れ 2人

観光駐車場(7:47)→聖宝寺(8:05)→丸木橋(8:10)→三合目(8:37)→六合目(9:00-9:04)→表登山道合流点(9:31)→九合目(9:45-9:48)→藤原山荘(10:15-10:26)→藤原岳山頂(10:45-11:07)→藤原山荘(11:27)→天狗岩(11:51-13:13)→藤原山荘(13:36-13:39)→裏登山道分岐点(14:07)→六合目(14:23)→四合目(14:35)→神武神社(15:00)→観光駐車場(15:10)

 花の100名山である藤原岳は、フクジュソウの咲くこの時期、大勢の登山者で賑わう。花の時期に登りたいと思いながら、毎年、この時期は残雪の山を追いかけた。今年は、どの山も雪が少ないことから、花を追いかけることに。ならばと、真っ先に藤原岳を選んだ。藤原岳は学生時代に登ったことがあるが、記憶はほとんど無い。

 ネットで藤原岳の情報を収集。国道365号線を南下し旧上石津町を抜けていなべ市に入る。簡易パーキングのある信号交差点を右折して集落を抜けていくと、駐車場が現れ登山者の車が何台も見られる。藤原小学校を右に見て左折し、観光駐車場に車を停めた。時間は7時半。広い駐車場は2割ほど埋まっており、次から次へと車がやってくる。県外の車が多く、大阪や奈良のナンバーも見られた。靴を履き替えていると、管理人のおばさんが到着。駐車料金は300円。トイレも併設されている。駐車場の周囲の土手にはミヤマカタバミやセントウソウなどが咲いていた。
 
 次々と出発する登山者に混ざって歩き始める。登りは花の多い裏登山道、下りは表登山道とした。駐車場を出て小学校に突き当たったら右へ。車道を少し歩いて有料駐車場のある角を左折し、鳴谷神社の鳥居から右の階段を登る。登山者の列が続く。人気の山だ。長い階段で早くも汗をかき、登りきったところで長袖Tシャツ1枚になる。

 養魚池を右に見ながら未舗装道路を歩くと、桃の木であろうか、白い花が咲く木の下を折り返すように階段を登り、聖宝寺の正面に出る。左の道に入り、ミツマタやジンチョウゲが咲く庭を見ながら人工林の林道を歩くと、登山道崩壊のための通行止めのロープ。迂回路は左の谷へ。川沿いに歩いて丸木橋を渡る。濡れて滑るので恐る恐る渡った。谷を右に急斜面へ。ミヤマカタバミはまだ眠りについている。野鳥の鳴き声が谷を渡る。白い石灰岩から流れ落ちる細い滝があり、長命水の標示。長命水を後に、急斜面をジグザクと登っていく。露出した石灰岩は多くの登山者に踏まれて丸くなっており、濡れて滑りやすい。何度も足を取られた。

 ハナネコノメを見ながら左山で急な斜面をトラバースし、鉄パイプの柵を通過すると、石灰岩の涸れ谷に出会う。雨水で浸食された谷は純白で眩しい。滑らないように谷底をグイグイと登っていく。ひと登りしたら、右側のロープにつかまって谷を脱出。人工林を歩いて休息する登山者が多い三合目へ。ここは谷の合流点であり、左の谷に沿って登り、右へ谷を渡る。石灰岩がごろごろした急斜面であり、「きついですね」と挨拶を交わしながら、人工林の我慢の登りが続く。
 
 五合目を通過すると、前方が明るくなり青空の天然林に出る。斜面の緑の群落はニリンソウであるが、花はまだまだ。陽だまりでミヤマカタバミが目を覚ましている。国体競技コースの標示を見ながら稜線に出て、なだらかな道を歩くと六合目に着いた。気持のいい天然林の中で、喉を潤し一息つくが、旅立つ登山者に追われるようにすぐに出発。右に谷を見ながら歩くと、小さなセツブンソウがいくつか見られた。その先で石灰岩が積み重なったような斜面にフクジュソウ発見。かなり葉が広がって花の最盛期はやや過ぎている。ハナネコノメやオモトの葉なども見られた。若い二人連れの女性がミズバショウと指差していたのは、バイケイソウの芽であることを他の登山者から教えてもらった。
 
 「注意 この先ガレ場」の表示を見ながら谷を離れて、人工林を抜け、さらに登っていくと樹林帯の林床に小さな花を見つけた。地面をよく見れば、ここにも、あそこにも。セリバオウレンがあちこちで白い可憐な花を咲かせている。木漏れ日に輝く花は、地上に落ちた星か、森の妖精の化身か・・・。自然は美しいものを創り出す。

 すぐに表登山道との合流点に出た。この辺りにもセリバオウレンが見られる。左山でロープの張られた広い登山道を歩くと、誰もが道脇にかがみこんで写真を撮っている。後ろから覗き込むと、たくさんのフクジュソウが咲いていた。我々も混ぜてもらって写真撮影。この辺りのフクジュソウは、まだ葉が出たばかりでちょうど見ごろ。朝日に輝く黄色い花は、まるでプラスチックの造りもののようにも見えるが、これも自然が創り出すきれいな芸術。たくさん写真を撮った。
 
 やがて雨水でけずり取られた斜面にさしかかる。崩壊が進む斜面を「く」の字に折り返す。展望がよく、多度山やいなべ市の田園が見える。水嶺湖も青く見える。正面に太陽を見ながら登って見晴らしのいい尾根に出た。ここが9合目。石灰岩の間にたくさんのフクジュソウが見られる。残るは一合だけとがんばるが、ここから藤原山荘まではまだひと登りある。慰霊碑を見ながら、右に折れて斜面に取り付く。ジグザグと天然林の斜面を登る。山荘までの最後の頑張りどころである。
 
 緩やかになると同時にすばらしい展望が広がる。長く横たわる多度山とその南には木曽三川が光る。足元にフクジュソウを見ながら、右山で回り込んでいくと、左前方に藤原岳の穏やかな山容が目に飛び込んできた。北斜面には残雪が白く輝き、ササの中を一本の登山道がうねる。すぐに左手の樹間に山荘が見えてきた。石灰岩を踏んで大勢の登山者で賑わう山荘に着いた。

 山荘左の岩場にはたくさんのフクジュソウが咲いていた。ベンチでおにぎりを食べてシャリバテを回復。トイレに寄って、まずは藤原岳を踏むことに。山荘から南のよく踏まれた道を下る。しばらく下って残雪のある鞍部からササの中の登りが始まる。道には溝ができてぬかるみ、靴もスパッツもべとべと。溝の周囲の高い位置に道がつけられているところもあり、溝に入ったり出たりして登っていく。登る人、下る人、ササの中に人の列ができている。丸い山頂の上の青いキャンバスに飛行機が白線を描いていく。
 
 ササの草丈が低くなり、岩が現れると山頂に到着。岩の多い山頂は登山者でいっぱい。山頂を動き回って周囲を眺める。南には竜ヶ岳や釈迦ヶ岳、御在所岳など鈴鹿の名峰が連なる。見下ろす山の峰の重なりが美しい。南の尾根に道が続いている。どこまでも歩いて行けそうだ。北西には御池岳、そして丸いコブの天狗岩が望めた。山名標示板の前が空くのを待ってセルフタイマーを切る。まだ11時前。十分に展望を楽しんだら、ランチは天狗岩でとることにして、登ってきた道を引き返した。
 
 山荘のある褐色のなだらかな台地を目の前に、登ってくる登山者に道を譲りながら代掻き状態の泥の道を下った。山荘まで戻って、建物の裏に回り台地を登る。ゆるやかに登っていくと、石灰岩が散らばるカレンフェルトを通過。たくさんの登山者が休息する広いピークを横切って、潅木帯へ下っていく。この辺りにもちらほらとセツブンソウが見られた。気持のいい木立の中を登り返して展望のいいピークへ。フクジュソウが咲き乱れる。さらに下って残雪の残る鞍部から最後の登りにかかる。この辺りは道が交錯して、フクジュソウの芽が踏まれているところもあった。白瀬峠の分岐点を通過してすぐに天狗岩に着いた。
 
 ここも大勢の登山者で賑わっている。ゴツゴツした岩場を歩いて、天狗岩の先端まで行ってみた。空中に浮かんでいるような気分。左前方の藤原岳の山容に驚いた。何と山頂が尖っている。山荘前から見た丸い形からは想像できない男性的な形である。その右には、鈴鹿の山が大展望。目の前には、今、歩いてきた山があり、よく見ると樹林帯の地面が白く輝いている。雪かと思ったが、石灰岩のようだ。
 
 ちょうど正午。天狗岩の北に大きな広場があり、ここでも大勢の登山者が昼食中。広場の一角でランチにする。正面には御池岳が大きい。伊吹山はもちろん、能郷白山、白山、乗鞍、御嶽、中央アルプス、恵那山などの大パノラマが広がる。この時期にこれだけ遠くの山々が見えるのは珍しい。今日のメニューは味噌煮込みうどんと缶詰。隣の3人の女性のパーティーのおしゃべりが楽しい。聞けば三重県の方たちだった。それにしても、今日の登山者の数は半端ではない。100人、いや200人以上が登っているのではないかと思った。近くの石灰岩の上で縄張りを守る蝶は、羽がぼろぼろになったヒオドシチョウ。ライバルを追い回す光景が何度も見られた。
 
 1時間ほどランチを楽しんで、天狗岩を後にした。登ってきた道を引き返し、山荘のトイレに寄って、表・裏登山道の分岐点まで下った。ここからは表登山道を下る。分岐のすぐ下に八合目の標示。杉林に入り、崩壊した谷を横切って折り返し、七合目を通過して人工林を下っていく。標識の無い分岐が現れるが、ここはどちらへ下っても六合目付近で合流する。我々は直進のコースを下った。六合目を過ぎた付近から天然林となる。アセビなどの広葉常緑樹の道を真っ直ぐに下って五合目を通過。カンアオイの花を見つけた。
 
 左山で広い道を下り、四合目を過ぎて人工林へ。杉林の中の三合目を経て、鉄パイプの柵の道を下っていく。多度山を見ながら、掘り割れの道を下り、堰堤の金網を見てすぐに神武神社の鳥居を潜った。無事下山できたことに手を合わせる。鳥居から車道を歩いて観光駐車場まで戻った。
 
 お目当てのフクジュソウを十分に見ることができ、またすばらしい眺望も楽しめた。山頂付近の二次林やカレンフェルトの台地も美しい。花の100名山の名に恥じない山だ。次回は別のコースで時期を変えて登ってみたいと思った。
★藤原岳の植物と蝶


★藤原岳からの展望


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