トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平21業使、第478号) 一部誤動作あり 点線は推定トレース (地図が古いため国道が記載されていません)

藤原岳 [木和田尾から聖宝寺道](天狗岩 1171m 三重県) 2010.3.22 2人 晴れ

山口配水池(8:05)→204鉄塔分岐点(8:39)→R202鉄塔(9:14)→R201鉄塔(9:28-9:33) →坂本谷上部(9:42-9:50)→R200鉄塔(9:58)→白船峠分岐点(10:07)→L203鉄塔(10:21-10:30)→L202鉄塔(10:44)→北西峰・三角点(11:00)→天狗岩分岐点(11:30)→天狗岩(11:34-11:41)→藤原山荘(12:12-13:18)→九合目(13:42)→八合目(13:55)→七号目(14:07)→六合目(14:14)→五合目(14:22)→四合目(14:25)→三合目(14:31)→二合目(14:42)→聖宝寺(14:55-15:07)→山口配水池(15:43)

 早春の花の代表「フクジュソウ」を見に行きたくなって、今年も藤原岳に登ることにした。昨年の3月に藤原岳に登り、たくさんのフクジュソウに感動したことがつい最近のように思える。昨年は裏道の聖宝寺道を登り、表道の大貝戸道を下ったが、今回は裏銀座と言ってもいい木和田尾を登ることにした。木和田尾は藤原岳の北にある坂本谷北側の尾根である。

 登山口となる山口配水池を目指す。国道21号線を西進。養老山を見て驚いた。山の上の半分が白い。昨日の雨が、山では雪のようだ。軽アイゼンを持ってきたので予定どおり藤原岳を目指す。国道365号線を南下。上石津町を抜けて三重県いなべ市に入る。鞍掛峠への黄金大橋南交差点を通過して500mほど走ると人工林の中の小さなピークを越えるところで、右へ狭い舗装道路が続いており右折する。なお、この分岐を行き過ぎても、すぐ先の分岐で鋭角に戻るよう右折すればいい。

 人工林の一本道を登っていくと、水道施設に着く。この施設は山口配水池で、周辺に数台の駐車が可能。1台の車が停まっていた。Uターンの邪魔にならないように駐車して、靴を履き替え出発。登山口はさらに続く林道の車止めの左にある。入口には「白船峠登山口」の標示や「生野菜等のゴミを捨てないでください」と書かれた大きな看板があり、鉄塔巡視路の黄色いプレートもある。
 
 右下に林道を見ながら人工林の中を歩く。涸れた谷川に沿う道となり、すぐに谷を対岸に渡る。大岩の下を歩き、谷を左に見ながら人工林を登っていく。やがて、谷を右に見て登るようになり、谷が狭くなるころ、昨夜降った雪が現れた。後方から2名の男性が登ってくるのが見えた。出発して30分ほどで谷はくぼみ状となり、右方向へトラバースして谷を抜ける。

 天然林となり、薄っすらと降った雪の上を歩くとすぐに鉄塔標示があり、登山道と鉄塔巡視路が合流する場所を通過。幹に塗られた赤ペンキを追ってなだらかな道を歩き、人工林に突き当たってジグザグ登り、再びなだらかな気持のいい道を歩く。右手には樹間から烏帽子岳と三国山、その間に霊仙山と思われる白い峰が頭を出す。
 
 左山でトラバースしていくと平地に出た。木に赤ペンキで文字が書かれていたが、雪が張り付いて読み取れなかった。一息ついでいると、後方から登ってきた2名の男性に追いつかれた。1人の方は年に10回以上も藤原岳に登っているとのことで、どの辺りに、いつ、どんな花が咲くのかをよく知っておられ、花のある場所を記入した地図をいただいた。2人と一緒に歩きながら、山談義。藤原岳のいろいろな話を聞きながら、2〜3cm積もった雪の平地を歩く。正面にはこれから歩く鉄塔の立つ尾根が見える。この辺りも雰囲気のいいところだ。雪の上の足跡から、先行者は3人と思われた。
 
 小さな溝を渡って斜面に取り付き、5分ほど登って鉄塔の下に出た。R202鉄塔である。鉄塔を後に、美しい二次林を登る。次のR201鉄塔が近づくと、左に下界が望めた。鉄塔手前には、L203-2鉄塔への巡視路が分岐している。R201鉄塔に着くと、視界が広がった。文句なしの大展望地である。東には伊勢湾が輝き、多度山から養老山、そして一番北の高い山は笙ヶ岳。手前には水嶺湖が青い。上石津町の田園を挟んで烏帽子岳と三国岳が美しい山容を競う。その奥には伊吹山と霊仙山が白く輝く。L203−2鉄塔が邪魔しているのが惜しい。南へはLとRの鉄塔が続き、正規の登山道はこの先でL鉄塔方向に続いている。前方左方向へ下っている谷は坂本谷である。
 
 雪の尾根を2・3分歩いたところで、「坂本谷上部のフクジュソウを見に行ってみますか。」と聞かれた。10分ほどで行けるということで、我々もついていくことにした。尾根を外れて、雪の斜面を滑らないように下っていく。数分下ったところで、斜面が急になり、たくさんの岩が雪の上に出ているところにきた。雪の上に僅かにフクジュソウの葉が見られる。南斜面であり、すでにフクジュソウの花期は終わっていた。ネットでもこの付近にフクジュソウが多いことが紹介されており、ここに立ち寄る登山者も多いと聞く。

 雪に覆われた斜面をこれ以上下るのは危険であり、引き返すことに。坂本谷上部にあるR200鉄塔から鉄塔巡視路を西に歩くとすぐに登山道に合流した。ここから足跡を追ってL203鉄塔方向へ歩く。潅木がひしめき合う美しい尾根を歩く。こういう雰囲気の道は癒しの世界。白い地面と青い空に挟まれて銀色の潅木帯が続く。雪で道が不明瞭だが、適当に木の隙間を拾って登っていく。
 
 白い標識が現れ、右は「白船峠」、左は「坂本谷×」と書いてある。ここは坂本谷最上部でもあり、坂本谷のルートは廃道になっている。後方から単独男性がやって来た。途中で足跡を追って大きく道を外れたとのこと。男性は坂本谷に踏み込んで行かれた。我々は先を目指す。急になった斜面を登っていく。シャリバテ気味になり、チョコレートを食べながら登る。

 開けた場所に出ると登山道の左にL203鉄塔が聳える。鉄塔下に出ると、ここもすばらしい展望地である。三国岳と霊仙山、烏帽子岳と伊吹山がそれぞれ重なって見えるのが面白い。パンを食べてシャリバテ解消。よく聞けば、男性2人は駐車場で一緒になり、神戸から来た男性はベテランの名古屋の方に案内してもらっていたとのこと。神戸の男性がここで別れて一足先に出発。名古屋の男性はこの付近を散策して下山するとのこと。我々もここで男性と別れて鉄塔を後にした。
 
 なだらかな尾根を歩き、R199鉄塔の分岐を通過して右方向に歩いて、茶色の小屋の脇を通過。小屋から5分ほど登るとL202鉄塔が近づいてきた。この先には稜線に立つL201鉄塔も見える。先ほど別れた男性に再び追いつかれた。男性は稜線まで登るとのこと。周囲の木々がうなっている。上層はかなり風が強いようだ。その時、高圧線に張り付いた氷が落ち始めた。西風に乗ってこちらに向って落ちてくる。空の青を背景に、白い矢がスローモーションのように落ちてくる。映画「レッドクリフ」のワンシーンだ。危ない。風に流されてすぐ近くまで落ちてきた。新雪に幾何学模様が刻まれていく。落ちてきた氷を見ると指の太さくらいある。次々と落ちてくる矢を避けて、東の斜面を登る。
 
 男性がショートカットして稜線に出るというので、ここでも男性の後についた。数センチの草付きの雪の斜面は滑りやすい。滑落すると坂本谷まで落ちる。滑りにくそうな場所を選びながらトラバースして直登。登りつめると三角点のある展望地に出た。北西峰と呼ばれる場所であり、別名、頭陀ヶ平とも言う。すぐ西にはR198鉄塔が立つ。360度のすばらしい展望である。北は先ほどから見てきた光景であるが、標高を稼いだことから、三国岳や烏帽子岳が低く見える。反対側には天狗堂の単独峰が男性的な山容を見せる。南東にはこれから目指す天狗岩へのなだらかな稜線が続く。稜線の木々は樹氷で真っ白。この付近の木々も樹氷が美しい。
 
 神戸の男性がやって来た。ショートカットした我々のほうが早く到着したようだ。案内していただいた御礼を言って男性と別れ、三角点を後に、樹氷の道を下る。藤原岳方面からやってくる何人かの登山者と挨拶しながら、左回り気味に気持のいい雪の潅木帯を歩く。稜線まで上ってきている人工林を左に赤テープを追う。雪で登山道は不明瞭だか、トレースがあり問題はない。
 
 カレンフェルトの丘陵にさしかかると雪の上に頭を出すフクジュソウを見つけた。花はしっかりと閉じて蕾状態。しかし、雪の上で見るフクジュソウは初めてでちょっと感動。フクジュソウを見つけるたびに写真を撮った。潅木帯を登って、草原を横断。この辺りの樹氷も美しい。

 ゆるやかに登っていくと稜線上に大勢の登山者が見えた。藤原山荘から天狗岩にやって来た登山者であり、昨年歩いた道に合流した。天狗岩は右へひと登りしたところにある。1年ぶりに藤原岳の三角形を眺め、記念写真を撮った。昨年と違うのは周囲全て雪山である。天狗岩の標示板には標高1165mと書いてあるが、地図では1171mとなっている。どちらが正しいのであろうか?

 藤原山荘に向う。足跡が交錯する丘陵地を歩いて、ぬかるんだ鞍部から次のピークを通過。ここで初めて雪の上で開いたフクジュソウの花をいくつか見ることができた。多くの登山者に交じってフクジュソウを撮影。思いっきり写真を撮ったら、藤原岳を見ながら丘陵地形を歩いて藤原山荘へ。山荘前の広場は登山者でごった返している。

 山荘東の斜面でランチにする。メニューはおでんと焼きうどん。次々と山荘へ到着する人の誰もが靴やスパッツが泥だらけ。スパッツをつけていない人は悲惨な状態である。表道・裏道はかなり悪路のようだ。帰路、この道を下りたいとは思わなかったが、引き返して同じコースを歩くのも変化に欠けるため、聖宝寺道を下ることにした。昨年、登りで歩いたコースである。
 
 今回は藤原岳山頂へは寄らず、小屋を後にした。いきなりドロドロの悪路。田の代掻き状態の道である。靴が汚れることは気にせず、滑らないように注意して下る。多くの登山者で渋滞することもしばしば。斜面の九十九折れを下って九合目を通過。ここでセツブンソウを見つけた。フクジュソウもたくさん咲いている。

 ドロドロの道はさらに続く。崩壊地を通過。この辺りにも雪の上にフクジュソウが頭を出している。すぐに八合目へ。大勢の登山者が休息中。大部分が大貝戸道を下るが、我々は駐車地点に近い聖宝寺道を下る。八合目から左に進み、人工林に入る。日陰で道はアイスバーン状態。昨年はこの辺りでセリバオウレンが見られたが、雪が積もって見つけられなかった。
 
 ロープ付きの急斜面を下って七合目を通過。さらに谷を眼下にロープ場を下って、谷沿いに歩く。石灰岩地帯に自生するオモトが赤い実をつけている。なだらかになると六合目。尾根を外れてミヤマカタバミを見ながら人工林に入り、五合目、四合目、三合目を通過。ロープを伝って石灰岩の谷に下りて谷底を歩き、狭いトラバース道を歩いて二合目を通過。長命水と言われる滝を見ながら川原に下りて聖宝寺に着いた。昨年は聖宝寺道を登ったが、今回、下ってみると、この道は下りよりも登りに適していると思った。

 聖宝寺から北の林道を下る。この道は東海自然歩道になっている。道の脇にはミヤマカタバミがたくさん見られた。坂本集落を抜け、左に雪の残る坂本谷を見ながら田園を歩き、「屋根のない学校」という体験施設の園内を通過。園内を出るところで鳥獣害防除柵により外へ出られず、川沿いの草むらを歩いて柵の切れたところから脱出。農道から人工林に入り駐車地点まで戻った。

 花見の山行の予定が、思わぬ雪山歩きとなった。雪の上で咲くフクジュソウにも出会えた。表道・裏道に比べて木和田尾コースは静かな山歩きが楽しめる。美しい二次林や鉄塔からの大展望などもこのコースの強み。周回できるのもいい。もう少し早い雪のない時期にセツブンソウ目当てに登りたいコースでもある。
★藤原岳からの展望

★藤原岳の花
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