伊吹山 (1377m 関ヶ原町) 2003.3.2 晴れ 3人
3合目林道終点駐車地点(9:12)→5合目(9:33)→6合目下建物(9:53)→7合目(10:22)→8合目(10:46-10:55)→9合目(11:19)→伊吹山山頂(11:30-13:05)→6合目下建物(13:44)→駐車地点(14:06)
ふるさとの田園から、いつでも伊吹山が見える。木枯らしの訪れを教えてくれる勇壮な峰の白い輝き。菜の花畑の向こうに霞んだピラミッド。宵の明星を頭上に従え、秋の夕焼け空に浮かぶ男性的なシルエット。濃尾平野の片隅にそびえるこの山は、子供の頃から四季の田園風景と一緒に脳裏に焼き付いている。山といえば伊吹山を真っ先に思い浮かべるほどの象徴的存在。この山を眺めるたびに、なつかしい想い出がよみがえるのは私だけであろうか。
3年前の7月に登って以来、一度は冬に登ってみたいとの思いが今回実現。HP「親子で行くアウトドアライフ」の管理人で先輩・後輩の関係にあるブラックポットさんと3人で出かける。ブラックポットさんとは小津権現山を一緒に歩いて以来、2回目の同行。冬の伊吹山を4回体験しているベテラン。今回は背負子にスノーボードを背負っての参加。山頂からスノーボードで滑り降りようという恐るべき計画である。
関ヶ原市街から国道365号線に入り、途中から右折して広域農道を西進し、セメント工場のコンベアー手前にある上野の交差点を右折して伊吹山スキー場麓の三之宮神社へ。神社右側からゴンドラ駅まで車を進めるが、ゴンドラは動いていない。巨大に立ちはだかる伊吹山の上半分は白っぽいが、スキー場辺りには雪がない。ゴンドラが動いていないのでやむを得ず林道を進み車を3合目まで上げることとした。
林道入り口には「関係者以外はご遠慮ください」とあったが、スキー場もホテルもキャンプ場も閉鎖なので、関係者に迷惑はかからないだろうと都合のいい解釈(関係者の方すみません)。細いが舗装された林道を上がりゴンドラの下をくぐり1合目の売店の間を抜けて東から大きく回り込んで3合目のゲレンデの手前の林道脇の広場に駐車する。すでに3台ほど駐車中。その後、次々と車が到着し、駐車地点はすぐに満車になった。中にはタクシーで上がってくる登山者も見受けられた。3合目は標高720mで、車でちょうど500mを稼いだことになる。ちょっと手抜きの登山である。
ブラックポットさんは、山を見上げて雪が少ないことから、ボードを断念。休業中のホテルのトイレをお借りした後、まずはゲレンデ歩き。クワッドリフトに沿って歩き始める。山肌には何人かの登山者が見える。ものすごい西風がジェット機のような轟音を立て、帽子が吹き飛ばされそうである。山の上をちぎれ雲が速く流れる。
リフト終点から、右への登山道に入り、すぐに左に向けて灌木の中を歩く。この灌木を抜ければ、山頂まで視界を遮る木は無く、大展望を楽しみながらの山歩き。まさに、3000mの高山地帯を歩く気分。これがこの山の最高の魅力であろう。
なだらかなジグザグを登れば、すぐに小屋とトイレ、ベンチのある5合目に着く。ややモヤがかかっているが、南には霊仙が大きく見える。6合目は少し先に見えるコンクリート作りの小さな建物の少し上。登山道周囲にはうっすらと雪が積もっている。昨日、平地では雨であったが、この辺りから上は昨夜の雨が雪に変わったようだ。見上げれば、頂上に近いほど、木々の枝が真っ白に見える。樹氷であろうか。
本来の登山道は斜面にジグザグにできているが、近道の直登コースがいくつかできており、溝になった道には雪がある。雪の上を歩くと、下部が空洞になっており、足をとられる。ゲレンデがずいぶん下に見え、だいぶ登ってきた。駐車した車も見える。何人かの登山者が次々と登ってくる。中には20名ほどの団体も見える。
7合目を過ぎ、一段と風が強くなった。背中に陽を受け、また気温もそれほど低くないことから、風さえなければ寒くはないのだが。傾斜も増し、周りの美しい樹氷に感動しながら歩く。
8合目で多くの登山者がアイゼンを装着していた。この先、まだ急登が続き、凍りついた雪も多くなってきたことから我々もアイゼンを付け歩き始めたが、思ったより雪は少なく、岩や赤土の上を歩くことになり、歩きにくいだけ。雪の上を選んで歩き9合目へ。ここはすでに山頂の一角。急登はここまでで、この先はなだらかな遊歩道である。
さすが、9合目までくると白銀の世界。凍った路面でアイゼンの効果あり。北西から吹き付ける風で、木々には雪が付着して小さなエビのしっぽを作っている。地面の草の葉にも雪や氷が付着してきれいな花を咲かせている。溶けないので、気温は氷点下であろう。
風が強い。風の無い場所を探して昼食にする。雪に埋もれて屋根だけを出している売店の東に雪のベンチを作って、昼食の準備。寒いことが予想されたので、できるだけ短時間で作れる雑炊にした。ブラックポットさんは、いつものように保温容器にレトルトカレーとご飯を持ってきて、素早い昼食である。冬の山頂では、コンロを使用するよりもこうした昼食を考えるべきであろう。野菜と卵と唐辛子たっぷりの熱々の雑炊や食後のコーヒーが美味しかった。
北からカンジキで到着するパーティーも多く、笹又起点の登山者のようだ。山頂が広いため、正確な登山者数はわからないが、100人以上は登っている。関西弁の方も多い。さすが、名峰である。
昼食後、北側に行ってみる。白くなった伊吹北尾根やその先の鍋倉山、貝月山、ブンゲン、そして先月登った虎子山、その西に金糞岳がまだまだ冬の装いで佇んでいる。眼下にはドライブウエーのバス乗り場が見える。北側はものすごい強風が吹き、路面の雪はすっかり飛ばされている。まさに、伊吹おろしの源流である。セルフタイマーでの記念撮影を試みるが、あまりの寒さにデジタルカメラは電池切れ状態。予備の電池も同じ状態。カメラを暖めながら撮影する。ヤマトタケルの立像がある山頂表示板前で団体さんに続いて写真を撮ってもらった。
1時間半の山頂を楽しんだあと、同じ道を下る。9合目からの下りは、溶けた雪がシャーベット状態で、滑らないように下った。登りの時にはよく見えなかった琵琶湖がはっきり見えるようになった。樹氷もすっかり消え、道には雪解けにより泥の川ができていた。
風もかなり弱くなり、6合目に下りる頃は、すっかり春の陽気。ふりむけば、山肌の雪はすっかり消えていた。1時間ほどで駐車地点まで戻った。ホテル東のゲレンデに雪の残ったところがあったので、ブラックポットさんはスノボーを、我々はソリ遊びを楽しんだ。
ドライブウエーが開通すれば、山頂は観光客で埋まる。雪に閉ざされたこの時期の山頂は夏の喧噪がウソのうように静かで美しい。冬の伊吹山ファンの多い理由が分かる。木のない雪の急斜面を登ることから、雪、風、寒さ対策を完璧にして、訪れていただきたい名山である。今回は、雪が少なかったことから、次はもう少し雪が豊富な時期に再挑戦したいものだ。
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