西ピークから登山道を見下ろす
 伊吹山の花と地図を見る
伊吹山 (1377m 滋賀県) 2005.7.16 曇り 3人

3合目駐車場(8:29)→伊吹高原ホテル(8:33-8:38)→4合目・リフト終点(8:51)→5合目(9:01)→6合目(9:26)→7合目(9:41)→8合目(10:07)→9合目(10:30)→伊吹山山頂(10:41-13:23)→南ピーク(13:30-13:36)→8合目(13:52)→7合目(14:04)→6合目(14:11)→5合目(14:21-14:30)→4合目・リフト終点(14:38)→3合目駐車場(14:46)

 2人で山歩きを初めて1年ほどは、近場の低山を歩き回った。その後、1000mを越える山に足を踏み込んだ。その1つが伊吹山。ちょうど5年前の7月のことである。8合目辺りがかなりきつかったことと、シモツケソウが美しかったことを覚えている。3年前には雪の山頂を目指して冬に登った。どのシーズンに登っても魅力のある山である。

 梅雨末期の今、展望は期待できない。展望がダメなら花のある山にしようと、久しぶりの伊吹山を選んだ。連休初日、滋賀県方面の降水確率は低い。今回はBOGGYさんとご一緒することになった。

 BOGGYさんは今年から山歩きを始められ、私のHPをきっかけに、何度かメールのやりとりをした。BOGGYさんの趣味はイタリア料理。その腕は一流レストランのシェフ以上。BOGGYさんが管理してみえるHPを見れば一目瞭然。(リンクのページ参照) 食材や調理方法などへのこだわりはすごい。山へ一緒に登ろうと話しをしていたが、山に同行する前に、イタリア料理の夕食に誘われたのは先日のこと。すばらしい手作りのフルコースをご馳走になった。テーブルを囲んで料理談義や山談義など、いつもの山頂でのランチとは違う楽しい一時であった。

 「次回は一緒に山へ」という話しになり、前日に「伊吹山へ一緒にどうですか」とメール。都合よく3人で登ることになった。BOGGYさんは週に2・3回、金華山のいろいろなコースを歩いておられ、最近、蕪山や瓢ヶ岳などへ範囲を広げてみえる。伊吹山は今年の締めくくりの山と決められておられたようで、前倒しとなるこの山行計画に喜んでいただけた。

 関ヶ原を抜けて伊吹スキー場に向かう。3合目まで車を上げる。すでに多くの車が停車していた。北には伊吹山が大きい。山頂を時折雲が流れるが、何とか展望は期待できそうだ。高原ホテルのトイレに寄る。ホテル前は団体さんで賑わっていた。ここからは伊吹山山頂へ続く登山道が緑の山腹にジグザグと続く。登山者の姿が小く見える。山頂は何と遠く、何と高いことか。

 まずはキャンプ場横の草原をゆるやかに下り、ゲレンデを登り返す。左後方から時々雷のような大きな音が聞こえてきた。採石場の音であろうか。高原を埋めるユウスゲの群落がみごとである。ユウスゲの花はどれも閉じているが、夕方には開くのであろうか。クサフジやハクサンフウロ、キバナカワラマツバ、カワラナデシコ、ウツボグサなどの写真を撮りながら、なだらかなゲレンデを登る。BOGGYさんのカメラはマクロズーム付きデジタル一眼。地面に座り込まなくても撮影できるのがいい。写真もきれいに違いない。

 ゲレンデ終点から右へ。潅木の中の広い道を折り返しながら登っていく。潅木には白い角張った実が付いている。マユミの実のようだ。リフト終点から10分ほど歩いて、小屋の前に出る。5合目である。小屋は営業中でトイレや自動販売機もある。自動販売機の前の地面にたくさんのスジグロチョウが群がっていた。ジュースでもこぼれているのであろう。この辺りにはスジグロチョウが多い。

 一息つく間もなく歩き始める。見上げて、6合目手前のコンクリート小屋で休むことにする。堀割の草付きの道を登る。傾斜も徐々に本格的になってきた。薄曇りではあるが、とにかく暑い。汗が落ちる。コウゾリナの黄色い花が登山道を飾る。白いヤマホタルブクロも満開である。シシウドやオオバギボウシが草原の中にアクセントを付ける。後方にはホテルの建つ緑地がどんどん下がっていく。霞んで遠方の山は見えない。

 6合目手前のコンクリートの建物の前で休憩。BOGGYさんからキャラメルをいただく。休むたびに何でも良いので甘い物などを食べると体内脂肪が燃えるそうだ。5分ほど休憩して出発。団体さんを追い抜く。聞けば、横浜からの皆さん。学生の頃、山岳部に所属していた方ばかりで、こちらに住んでいる仲間の案内で伊吹山に来たとのこと。「ベテランばかりですね」との問いに、「登ってない人もいますから」との答え。

 メタカラコウの花が咲き始めていた。キリンソウの群落にはスジグロチョウが舞う。先頭のらくえぬはマイペースで登っていく。その後をゆっくりと2人で登る。花を見落とさないように、周囲を見回しながら登った。今回は風景写真よりも花の写真のほうが多いくらいだ。横浜の団体さんとは抜かれたり抜いたり。

 7合目を通過。急斜面のジグザグ道が続く。ここから9合目までが頑張りどころである。ピンク色のイブキジャコウソウと久しぶりに対面。美しいピンクの花に疲れも忘れる。ジャコウソウの葉をさわった手の香りはハーブの香り。いい香りだ。カスミソウのように咲く白い小さな花はキヌタソウである。シモツケソウやクガイソウはまだ咲き始めであるが、イブキトラノオやウマノアシガタは満開。小さなピンク色のフウロはヒメフウロ。黄色い豆科の花はキバナノレンリソウ。覚えにくい名前だ。パンフレットによると織田信長が作った薬草園の名残で、ヨーロッパから導入した植物が今ではすっかり定着しているそうだ。また同じ豆科の赤い花はカラスノエンドウだと思って写真を撮らなかったが、後にイブキノエンドウだと分かる。タンポポもこの山の固有種のようだ。写真を撮っておけばよかった。

 大勢の登山者が休憩する8合目のお社の前で休憩。BOGGYさんからいただいたプラムが冷たくて美味しかった。今、歩いてきた道がはるか下まで続く。大勢の登山者がアリの行列を作っている。ここまで来れば後一息。団体さんよりも先に山頂を目指す。9合目の稜線が近づき、登山者が立つ左上のピークが近づいてくる。パラパラと雨が降り出した。午後にわか雨の予報はちょっと早い。雨具を着て下りてくる人もいる。この先、本格的な雨になったらいやだなと思いながら空を見上げる。

 さわやかな風が吹き、9合目のなだらかな道に出た。運良く雨も止んだ。山頂の建物を目指して広い土の道を歩く。冬には一面、雪原だった場所である。咲き遅れたグンナイフウロが見られてラッキー。ポストカードを売る郵便局員と売店の間を埋める大勢の観光客の声。山頂はいきなりの観光地に変わった。冬に登ったときには売店の青い屋根だけが雪の上に出た静粛の世界であったが、今、そんな状態は想像できない。

 とりあえず、ヤマトタケル像の前で記念写真を撮る。タケル像の石垣には花の終わりかけたヒメレンゲが張り付いていた。山頂散策は後にして、少し早いがランチとする。珍しく東から風が吹いているので、タケル像から西へ少し下った風のないところの、石灰岩を敷き詰めたテラスの一角に移動して、昼食場所とした。前方には揖斐の山々が望めるはずであったが、すっかり雲に包まれている。

 まずは無事に山頂到着を祝って缶ビールで乾杯。山のランチはそうめんと焼き肉、卵豆腐などを用意してきたが、・・・なんと、BOGGYさんのザックからはイタリア弁当が3人分出てきた。「以前、ハイキングで好評だったので・・・。」タッパーの中には、シーフードいっぱいのタコメシ。ピラフ感覚のパラパラのライスと味のしみ込んだミズダコやアサリ、エビ、マッシュルーム・・・。美味しかった。ここでも熟練のシェフの腕前に感動。そうめんは我が家の夕食に回り、焼き肉をおかずにタコメシをいただいた。

 今回も山談義に料理談義。ロールケーキとコーヒーを楽しむ頃、北側の雲が切れ始めた。白い雲の固まりが湧き上がって伊吹北尾根を越えていく。国見岳へと続く北尾根が丸い波線を作る。その左は虎子山、その奥がブンゲン、国見岳の向こうは貝月山。その左は鍋倉山。手前の尖りは鎗ヶ先山。左後方には金糞岳が霞んで見える。この曇りの日ににこれだけ見えれば良しとしよう。

 目の前の駐車場から続く登山道には、次から次へとマイカー組が息を切らして登ってくる。売店で販売しているトマトやジュースなどを載せたモノレールも頻繁に登ってくる。見下ろせば、駐車場はいっぱいのようだ。

 ランチの後、山頂を散策。ドライブコースの見える東のピークまで歩くこととした。アザミやイブキトラノオが風に揺れる。スジボソヤマキチョウが舞っている。この蝶を見るのは何年ぶりであろうか。ちょっと感動。アザミに留まってポーズをとってくれた。

 東斜面には一面にオオバギボウシが咲き乱れている。お花畑はまだ寂しい状態である。サラシナショウマは花茎を伸ばし始めていた。コオニユリはまだ固い蕾だ。カノコソウも見られた。シュロソウやバイケイソウが目立たない花を咲かせている。もうじき、この辺りはシモツケソウに埋まるだろう。今、なんといってもキンバイソウが美しい。このツヤツヤした黄色い花はすばらしくきれいだ。

 ピークまで歩いて、北尾根やドライブコースを眺めた。ピークで展望を楽しんだ後、歩いてきた道を三角点に向けて引き返した。途中で、さえずる2匹の鳥に出会った。BOGGYさんの同定によると望遠で撮った写真からアカモズではないかとのこと。さすが、デジタル一眼の威力はすばらしい。

 三角点を踏んで、売店で伊吹山の花のパンフレットを購入。シーズン別に3冊あり、1冊が100円。花を調べるのにこれが結構役に立った。帰路は、西のピークに寄り道。ここからは3合目〜9合目までのコースの全貌が望める。モヤが次第に晴れ、南には薄っらと霊仙山が見え始めた。ピークには白いオドリコソウが最後の花を咲かせていた。

 眼下に見える高原ホテルを目指して下る。ガレた斜面が多く、また登ってくる登山者も後を絶たない。連なる下山者の列に混じって滑らないように慎重に下った。一気に5合目まで下った。さすが、足が笑った。BOGGYさんはどこまで一気に下りられるか試してみたそうで、5合目が限界とのこと。ここで一息入れた。4合目手前でこれも久しぶりに見るサカハチチョウに出会った。

 ゲレンデに出ると、朝には閉じていたユウスゲが、一部ではあるが花を咲かせていた。ニッコウキスゲとはひと味違う、淡い黄色が美しかった。無事、駐車場に到着。今、下りてきた伊吹山を見上げた。BOGGYさんには今年の目標であった伊吹山に登れたことを喜んでいただけた。

 それにしても、さすが花の山。四季を通じて毎月登ればいろいろな花や蝶に出会えること間違いなし。人気の名山。今度は秋に登ってみたいと思った。BOGGYさんとは、また一緒に登ることを約束して帰路についた。
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