今渕ヶ岳
今渕ヶ岳 (1048m 美濃市) 2002.3.17 晴れ 2名

瀧神社手前駐車地点(9:28)→登山口(9:46)→鉄塔(10:11)→モミの木上部展望尾根(10:45)→今渕ヶ岳山頂(11:20-12:40)→モミの木上部展望尾根(13:04)→鉄塔(13:26)→登山口(13:47)→駐車地点(14:05)

 今年に入って、高賀山、瓢ヶ岳を登ったところで、高賀三山の残る一山「今渕ヶ岳」を登らないわけにはいかない。すっかり春めいた日曜日、登り口である瀧神社を目指す。瀧神社は板取川にかかる青い上牧橋すぐ北にある交差点を乙狩川に沿って北上し、板山集落を抜けた終点にある。上牧橋からは、今渕ヶ岳の三角形がきれいに見える。

 瀧神社手前で道路工事中の通行止めトラ柵に突き当った。登山口まで少し歩くことになるが、やむを得ない。登山者の車と思われる1台のワゴン車が路肩に駐車してあり、その後ろに車をつける。工事がなければ、瀧神社の上部、さらに登山口まで車の進入は可能である。(現在は倒木のため瀧神社社務所より上への進入は不可)

 瀧神社の鳥居をくぐり、一直線の長い階段を登る。高賀三山に住む魔物を沈めるために建てられた6つの神社の1つと言われている瀧神社境内は杉林の中で静まりかえっている。息を切らして階段を登り詰め、右のトイレ方向に向かえば、林道に出る。ここから、さらに上へ続く未舗装の林道を上がる。数ヶ所でスギの倒木が道をふさいでいる。

 朝陽を背に、渓谷の音を聞きながら林道を歩く。テングチョウが道案内をしてくれる。神社から2、3度カーブして10分ほどで、右手に「火の用心」と書かれた黄色い小さなプレートのある登山口に着く。入り口の木に「イマフチガタケトザングチ」と赤ペンキで書かれているので、よく分かる。

 登山口からは大きな杉の人工林の中を歩く。大雪による倒木や枝折れが多く、登山道を見失いそうにもなるが、テープや毛糸が付けられており、それを拾って歩く。途中、2箇所ほど谷川を渡り、やがてジグザグの登りになる。前方が明るくなり、右にトラバースして切り開きの鉄塔下に出る。

 鉄塔周辺はかなり大きく切り開かれており、南の下界が望める。今、車で上がってきた乙狩川を囲む峰が連なり、その向こうに権現山と汾陽寺山が並んで見える。鉄塔から南西の尾根に下る道があり、板山集落に続く道と思われる。

 鉄塔からは、再び人工林に入るが、すぐに天然林に変わり、急登と平坦を繰り返し、痩せた尾根を真っ直ぐに登る。登山道は明瞭ではあるが、周辺の小枝が道にたくさん突き出ており、歩きづらい。夏になれば、かなりヤブに近い状態になるのではないだろうか。

 道は尾根を少し北に回り込む所がある。樹木が繁茂していて気づきにくいが、かなり切りたった崖の上を歩いている。ショウジョウバカマのロゼットの中心からピンク色の花が顔を出している。この暖かさでは一週間もすればきれいな花を咲かせるであろう。

 やがて大きなモミの木の下を通り、再び尾根の上に出る。ここからは、南方向の絶好の展望台である。かなり西まで展望ができ、相戸岳の特徴ある山容と、その向こうには揖斐方面の白い峰が連なっている。深い谷のせせらぎの音が聞こえる。ここでは、ヒオドシチョウの歓迎を受けた。

 真っ直ぐの尾根歩きは続く。痩せ尾根から前方に今渕ヶ岳の山容は見えないが、それにつながる南北の峰が屏風のように左右に広がっている。北の993mピークや南の980mピークがぐんぐん迫ってくる迫力はこの山歩きの魅力の1つであろう。

 やがて尾根は消え明るい天然林の急坂にさしかかる。たくさんのカタクリの一枚葉が数センチに伸びている。この様子だと、まもなくこの林の地面はカタクリの花で埋め尽くされるにちがいない。登った時期を後悔しながら先を目指す。いつしか南に見える980mピークと同じほどの高さになり、ピークの左からはこの峰の南端にある矢坪ヶ岳らしき山が見える。

 すぐにササが現れ、ササに隠された道を登り詰めると山頂である。山頂は木々に囲まれ、東が低木ごしに見える程度の展望である。2週間前に歩いた骨ガ平、見晴台、南岳の稜線がよく見える。残雪の東斜面に踏み込めば、片知山や瓢ヶ岳も見える。

 先着の1パーティー3名の男性の方々が昼食中。3名の方は、金華山に毎日登っている仲間だそうで、1年に700回も登られと聞き、びっくり。今日は、早朝に金華山に登り、下山後、喫茶店に行くかわりにこの山に来たとのこと。話をしているうちに、私たちの近くの町内の方々であるというのにまたびっくり。1名の方は、岐阜県の山などをかなり登られており、食事をしながらしばし山談義。「金華山に朝6時に来れば会えるよ」と3名の方は一足先に下山。山頂は私たちと1匹のヒオドシチョウだけとなった。

 春めいた陽気のせいでもあろうか、山頂は気持ちが良く落ち着くことができる。残雪を前に美しい南岳の稜線を眺めながらのコーヒータイム。ゆで卵と熱いコーヒーがうまい。南に続くササの尾根には薄い踏み跡があり、矢坪ヶ岳まで縦走できるらしい。車を2台用意して縦走してみたいものだ。

 写真を撮って、今来た道を下山。カタクリの群落あたりで、登ってくる2名の登山者と出会った。今日の、この山へ入ったのは3パーティー。高賀三山の中では、最も人気のない山であるが、そのかわりに静かな山歩きが楽しめる。高賀三山に住む魔物は、今では、この山にしかいないのではないだろうか。人の入れない深い谷のどこかに。そんなことを思いながら、一時間ちょっとで登山口に出た。今度は、林道でルリタテハが私たちを見送ってくれた。
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