城ヶ峰 (352m 揖斐川町) 2003.6.1 晴れ 2人
三輪神社(10:05)→一心寺(10:19)→城台山本丸跡(10:32)→城裏分岐(10:46)→反射板(10:54)→城ヶ峰山頂(11:17-11:33)→反射板(12:00-13:14)→三輪神社(13:54)
この休みは山へ行く予定をしていなかったが、昼間に空き時間ができたことと、台風が通過し天気も回復する予想であったことから、低山に登ることとし、揖斐川町の城ヶ峰を選んだ。城ヶ峰は岐阜市北部にも同じ名前の山がある。どちらも山城があったことから、この名前が付けられたようだ。
揖斐川町の城ヶ峰は、町の市街地のすぐ北にある。東西に伸びる平たい尾根と東端に丸い形の山。中央に反射板が見える。城ヶ峰山頂は東端の丸い山。西から反射板経由で山頂までが登山コースとなる。
国道303号線を揖斐川町へ。市街地手前の名鉄揖斐線の本揖斐駅北の三叉路を谷汲の標識に従って右へ。市街地を少し走り、谷汲への交差点を谷汲には行かず直進。北側にある十六銀行の前を通過した直後の横断歩道の交差点を右に入る。交差点には城台山公園の表示がある。曲がると右手に揖斐小学校。左手に大きな鳥居の三輪神社がある。
三輪神社の前の駐車場には10台ほど駐車可能。ここに車を止める。地元の参拝者や乳母車の親子が遊ぶのどかな休日の風景である。小学校の体育館南にきれいな公衆トイレがあるので利用するといい。三輪神社の北にある臨済宗松林寺前の道が登山口となる。「城台公園入り口」「歴史の里」の表示あり。松林寺前の池には、手のひらの跡の「弁慶の腕試し」という石がある。
疑木の階段の遊歩道は朝まで降っていた雨で濡れ、道の脇の色づき始めたアジサイが濡れた頭を下げている。折り返してすぐに一心寺に着く。駐車場もあり、車でも上ってこれるようだ。赤い本堂が美しい。猫がいる。「絶対に猫を捨てないでください」との看板がある。お賽銭を投げて、本堂左手から城台山を目指す。
一心寺の回りにはたくさんの草花が自然風に植えられており、ムラサキツユクサやデルフィニュム、ホタルブクロなどが一面に咲いてきれいだ。花畑ではテングチョウやルリシジミが舞っている。
疑木の階段は、右に大きな水タンクの頭や揖斐川町の田園風景を見ながら登っていく。東屋もある。左手に白山神社への道がある。白山神社は遊歩道からはずれた左側にあり、神社へは帰りに寄ることにする。ジャノメチョウやヒカゲチョウが道案内役。
すぐに大きなヒノキ林の平らな場所に出る。ここからが揖斐城址の始まり。南の丸、枡形虎口、二の丸、曲輪、大手門、三の丸、出丸、北の丸と城台山山頂には戦国時代の山城の跡が残る。当時のイメージ図も表示してあり、またそれぞれの場所には分かりやすい説明が記されている。本丸にはベンチがあり、一部展望も得られる。建物こそないが、地形から当時の様子が伺える。揖斐川町の市街地のすぐ裏手にこれだけの史跡があるとは思いもしなかった。強い北西の風が木々を揺らす。「国破れて山河あり」。訪れる人も少ない城跡は緑に包まれ、ゆっくりと時間だけ過ぎていく。妙に心がやすらぐ場所である。
城址を後に先を急ぐ。雨上がり、蜘蛛がはき出す無数の糸が風に乗って登山道を横切る。「あっ、猫」 一心寺の捨て猫か? 登山道前方を一匹の褐色の動物が走っていく。胴体くらいある太く尖ったシッポ。キツネだ。城跡を守っているキツネだろうか。黒澤明の映画「夢」の中に出てくるキツネの嫁入りはこの城址のような大木の林の中だったのを思い出した。だまされるなよと言い聞かせた。そういえば、このコース、三輪神社からの歩き始めは西に向かう感覚であるが、道はいつからか東に向きを変えている。西へ西へ歩いている感覚が頭から離れなかったのはキツネのせいか? 何度も磁石を見て頭を方向転換させた。
城址から少し下って四つ角の分岐点に出る。直進すれば城ヶ峰まで1.3km。左は城裏0.5km、右は大光寺へ0.6km。地面は常緑樹の落ち葉で敷き詰められている。この辺りで見られる鳥の絵図の大きな看板もある。
暗い樹林帯を登り二本の小さなアンテナポールを通過しかなりの急坂を登り切ると大きな反射板の空き地に出る。この明るい尾根からは南側が大展望。田植えの終わった水田の緑と刈り取り前の麦の茶色がモザイクとなって美しい。揖斐川が蛇行し、右には池田山の新緑がきれいだ。絹層雲の下を綿雲が速く流れる。風で木がざわめく。汗が引くのが分かる。なんとも気持ちのいい瞬間。
ここからは一部尾根の右を巻く部分もあるが、主に天然林の尾根歩き。倒木もあるが、道ははっきりしており歩きやすい。白いラッパ状の花をつけたツルアリドウシの群落が見られた。また、つぼみの状態ではあったが、イチヤクソウも見ることができた。クスノキの仲間だろか、細かい十字の白い花が風でぱらぱらと雪のように降ってくる。地面に散りばめられた花が美しい。ネジキの白い花も最盛期。新緑の葉をバックにソフトレンズで撮るとすばらしい写真に仕上がるのではないだろうか。花の終わった花茎から推定してイワカガミと思われる群落もいくつか見られた。樹間からは南側の下界がちらちら見える。
反射板からなだらかな尾根を20分弱歩いて最後の山頂への急登にかかる。さわやかな風が唯一の救い。汗だくで山頂へ。2匹のアオスジアゲハが迎えてくれた。中央に二等三角点。広葉樹の樹林帯の中ではあるが、山頂は思ったより広く、東側に踏み込めば舟伏山の特徴ある山容が確認できた。北側に踏み込めば、今年の冬に登った飯盛山や西津汲が望めた。その先は厚い雲に覆われて見えない。足下にはイワカガミの群落。頭上には大きなネジキの木が白い鈴をたくさんつけて風に揺れていた。
山頂の展望は今1つなので、先ほどの反射板まで戻って昼食をとることにした。反射板に戻るとちょうど正午のサイレンが聞こえてきた。濃尾平野を見下ろしながら誰も登ってこない稜線でゆっくりとランチを楽しんだ。開けた尾根にはたくさんの蝶が飛び回っている。山頂を陣取っているのはツマグロヒョウモン。進入してくるモンキアゲハやアオスジアゲハ、アゲハチョウ、クロアゲハ、ヒオドシチョウを追い払うのに忙しい。
真っ黒の大きなクマバチが目の前でホバリングをしている。よく見ていると、縄張りがあるようで、寄ってくる他のクマバチを追い払っている。蝶を追いかけるものもいる。実に面白い。きっと我々も彼にとってみれば邪魔な存在にちがいない。強い風は北の木々に遮られ、さわやかな風となって吹き抜ける。炎天下ではあるが、気持ちがいい。
フルコースの食事を終えて、帰路、白山神社に寄って柏手を打った。一心寺前の階段に10匹ほどの猫が寝そべっているのにびっくり。猫を捨てないように注意書きがある訳である。頭を持ち上げたアジサイの遊歩道を下って駐車地点まで戻った。
市街地の裏山でありながら、美しい自然と史跡が残された里山。2時間あれば往復できる低山。揖斐の山の帰りにでも立ち寄ってみてはいかがですか。
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