上高地 (長野県安曇村) 2003.3.22〜23 晴れ 9名
釜トンネル南口(6:24)→釜トンネル北口(6:53)→大正池ホテル(7:25)→田代池(7:54)→田代橋(穂高橋)(8:50)→河童橋(9:26-11:38)→穂高橋・田代橋(12:05)→大正池ホテル(12:54)→釜トンネル北口(13:35)→釜トンネル南口(13:55)
参加者:いかわさん、Mさん、sizukaさん、ブルさん、katakuriさん、ayameさんご夫妻、RAKU(2人) 合計9名
●プロローグ
北アルプスへの登山基地として多くの登山者が集まり、また避暑地として大勢の観光客で埋め尽くされる上高地。雪に覆われた時期に、この地を訪れる者は限られ、夏の喧噪を想像できない大自然の美の世界があると言われている。「あこがれの白銀の上高地を歩いてみたい」との思いが、思わぬ形で実現した。
掲示板「クーの山小屋」に集まる常連さんの中で、毎年、早春の上高地に出かけるといういかわさんの呼びかけに雪の上高地未体験者8名が手を上げた。山小屋の管理人kuさんは、3月2日にいかわさん、相棒Mさん達と最高の天気の中、上高地の下見(?)を決行。HP「クーの山歩記」に絵はがきのような写真が掲載された。
残り7名は3月22日又は23日の天気が良い日に上高地入りする計画をいかわさんに立てていただいた。Mさんを加えて9人のパーティーで雪の上高地を目指す。メンバーは一昨年の秋に母袋烏帽子岳で出会ったいかわさん、Mさん。山歩きのベテランのブルさん。鳩吹山でご一緒したsizukaさんとブルさんの奥様のkatakuriさん。相戸岳を一緒に歩いたayameさんご夫妻。そして我々2人。ネットがつないだ不思議な関係のすばらしきメンバーが集まった。
●前夜祭
天気予報によると23日は晴れ。22日の8時に岐阜市内に集合し、2台の車に分乗して出発。古川の古い町並みを散策し、雪の宇津絵四十八滝で、滝を見ながら少しだけ雪上ウォーキング。その後、前方に穂高岳や笠ヶ岳を見ながら宿泊場所の中ノ湯温泉を目指す。
安房トンネルを抜けたらすぐ左折して旧道に入る。焼岳登山口への道である。入り口の監視員の方に許可をもらい、ゲートを抜けて峠道を登る。除雪されているが、道はアイスバーン。雪で道幅も狭く、対向車があればかなりバックしなければならない。入り口から2kmほどで温泉旅館に到着。旅館は上高地に入った人、入る人で満室状態。ロビーからは巨大な霞沢岳や六百山が見える。また、その左に真っ白な前穂から奥穂への吊り尾根がすばらしい。
かなり早く着いたこともあり、風呂と夕食前に2時間ほどの山談義。毎晩、掲示板で話しをしていることから、初対面でも古くからの仲間のように大いに盛り上がった。この山談義は、夕食後も続き、早朝出発であることから、10時終了。外に出てみると、北斗七星も埋もれるほどの星が頭上に輝いていた。明日は晴れるぞ。
●上高地トレッキング
5時起床。天気はいい。旅館で準備してもらったおにぎりの朝食を済ませて身支度。朝6時発の旅館のワゴンで釜トンネルに向かう。釜トンネル周辺の路肩には多くのマイカーが駐車してあるが、違法駐車であることから最近取り締まりが厳しく、帰りにはこれらの車に警告の紙が貼られていた。
釜トンネルの中は凍りついていると思われたので、入り口で軽アイゼンを付け、またヘッドランプも準備した。氷点下6度の中、アイゼンを付ける指先は凍るほどの冷たさ。ゲートの脇を抜け、左手の谷側に大きなつららを見ながら少し歩き、シートをくぐってトンネル内部に入る。
ヘッドランプをつけるが、蛍光灯の明かりで十分に歩ける。(2ヶ所ほど真っ暗な所がある) 路面の凍結はない。トンネルの北半分は2車線の工事が完成しており、全線開通に向けて工事中である。旧トンネル部分は昨日の工事の影響か、かなりのチリが漂っており、ほこりっぽい。トンネル内部は思った以上に急傾斜で、すぐに汗が出てきた。中程で左へ続く旧トンネルとの分岐を過ぎ、新トンネルに入る。たくさんの工事車両の横をアイゼンの金属音をトンネル内に響かせながらの行進が続く。やがて、前方に出口の明かりが見える。
トンネルを抜けると左に谷を見下ろしながらアイスバーン状態のバス道を歩く。谷の向こうに朝日を浴びた真っ白な焼岳が頭を出し始める。2つ目のカーブを曲がったところで前方に明神、前穂、奥穂、西穂と続く穂高連峰が見える。穂高を見るたびに感動するのはなぜであろうか。永遠のあこがれである穂高が今、目の前にある。夏にはバスで通り過ぎてしまう道であるが、一歩踏み出すたびに変化する上高地の風景は、歩かなければ分からない新たな発見の連続。
トンネルを抜けてから30分程で大正池ホテルに着く。ホテルの右側から大正池の岸辺まで下りる。池は周辺が凍っており、中央部を薄い氷がゆっくりと流れている。右手前方には穂高連峰が半分朝日を浴びて真っ白に輝き美しい。池から立ち上った霧により、実に幻想的な光景を創り出している。左手には朝日を浴びた大きな焼岳が、湖面に美しい山容を映し出している。日常生活の中では想像もできないような神秘的な世界がここにはある。回りの木々には小さなエビのシッポが無数に付着して美しい樹氷を作っている。帽子や髪の毛にも氷が付き始め、白髪の老人になった人もいる。
一息ついて、先に進む。大正池から湿原地帯につけられた散策道を歩く。雪が1m以上積もった木道の上を、美しい樹氷を見ながら歩く。道はしっかり踏み固められ、沈み込むことはない。すぐに田代池に出る。小さな田代池にある島には美しい樹氷ができあがっている。ここで、スノーシューやカンジキをはいて歩くことにする。これなら、トレースをはずしても沈み込むことはない。
田代池の南側の美しい樹氷の林を歩いてみた。「写りますよ」との大声で、気がつけば田代池北側に三脚を並べたカメラマンの列。ちょうど六百山から陽が差そうとする瞬間をねらっているようだ。我々も西から回り込んで田代池の北側に行く。ちょうど六百山の上から陽が差し始めた。樹氷の枝がまるでダイヤでできているように輝きを放つ。さらに、空気中の霧氷が太陽の光に輝きながらキラキラと舞っている。ダイヤモンドダストである。大自然が創り出す美しい演出に感動。田代池の岸辺から見る光景はこれまた美しい。暗い六百山を背景に陽に輝く真っ白な樹氷が池の向こうに並ぶ光景は言葉では表現できない美しさである。中判カメラで長時間かけてじっくりと撮影したい絶好のポイントである。
田代池から北へ樹林帯を抜け、梓川の左岸に出る。せせらぎを聞きながら快適なウオーキング。やがて田代橋に到着。この橋から穂高橋を渡って北に登れば西穂山荘に着く。田代橋の東側にあるトイレは冬季でも使用可能であり、ここでトイレ休憩。上高地には冬季使用可能なトイレがいくつかあり、その位置は釜トンネル入り口に表示してある。今回のコースではこのトイレが唯一の場所であった。
田代橋からは、梓川沿いに北の対岸にホテル群を見ながら歩く。少し先で南に回り込んでいく。ここから眺める穂高は梓川対岸の赤いケショウヤナギを前にすばらしい光景を見せてくれる。かなり歩いて来た。穂高が大きく見える。再び東に向きを変えれば河童橋までは後わずか。夏には大混雑する河童橋も今の時期には閑散としている。河童橋の上からは明神が大きく、吊り尾根が白い。その上の紺色の空に一本の飛行機雲が伸びていく。タバコのCMを思い出させる。
河童橋の北詰でザックを下ろす。雪の上に出た手すりをベンチ代わりに、雪のテーブルを作って、ちょっと早いが昼食の準備。まずは、よく冷えたビールで乾杯。いかわさんの宴会メニューである、キノコのバター焼きや干物、ハムステーキをはじめ皆さんが持ち寄った豪華メニューでランチタイムは大いに盛り上がった。新メニュー登場。朝食のおにぎり3個でつくった雑炊は梅の味がして美味しかった。カモや美しい野鳥もやって来た。
昼食の後、河原に下りて全員で穂高をバックに記念撮影。2時間以上の宴会の後、帰路は前方に焼岳を見ながら梓川の右岸を下った。道が西に向きを変える辺りにウエストン碑がある。ここから南の六百山、霞沢岳が大きく望める。中ノ湯旅館から見た形とは異なり、荒々しい山容が望める。清水屋ホテルの前に一匹のサルが観光客を眺めていた。
穂高橋、田代橋を渡って、先ほどの地点に合流。トイレ休憩のあと、帰りはバス道を歩いた。道は除雪されており、道の両側には背丈ほどの雪の壁ができている。日陰の路面はアイスバーンであるが、陽の当たるところはシャーベット状態。ayameさんご夫妻以外はアイゼンなし。最初に尻餅をつくのは誰になるかと言いながら歩いた。(最初で最後の尻餅はいかわさんでした(^^))
大正池ホテル前で小休止。池まで下りてみると、早朝の神秘さはなく、樹氷も消え、湖面も波立ち池に映る山を見ることはできなかった。大正池と別れ焼岳を見ながら歩く。焼岳方面から気持ちよく滑ってくる2人のスキーヤーが川向こうに見えた。後で聞けば、焼岳から下りて来たそうだ。ブルさんの双眼鏡で西穂手前の丸山にシュプールが確認できたことから、多くの人が山頂からのスキーを楽しんでいるようだ。
穂高や焼に別れを告げ、トンネルに入った。この夏は、また、ここを訪れ、穂高の山頂に立ちたいものだと思った。トンネルを抜けたところにある喫茶店(売店)でおいしいコーヒーを楽しんだ。この店も中ノ湯温泉旅館の経営であり、車で旅館まで送ってもらった。旅館で温泉につかり、もう一度穂高連峰を眺めた。これだけの好天に恵まれることも珍しいそうだ。日本にもまだこんなに美しいところが残っている。夏の上高地からはとうてい想像できない世界を体験できた。そして、ネットで出会ったすばらしきメンバーと一緒に語り、歩くことができたことが、冬の上高地の想い出をより一層深いものにしてくれた。案内役のいかわさん、Mさんをはじめ、ご一緒いただいた皆さん、ありがとうございました。
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