金糞岳〜白倉岳 ( 1317m、1271m) 2003.11.15 快晴 5人
鳥越林道岐阜県側登山口(9:40)→尾根・滋賀県側登山道合流(9:46)→金糞岳山頂(10:33)→白倉岳山頂(11:06-13:16)→金糞岳山頂(13:41-13:56)→岐阜県側登山口(14:25)
金糞岳は岐阜県と滋賀県の県境に位置している。滋賀県で2番目に標高の高い山だそうだ。山の名前は鉱山から由来するらしいが、ちょっとかわいそうな山名である。金糞岳へは最近岐阜県側から登れるようになり、滋賀県側よりも短時間で登頂できると聞いていた。以前は、岐阜県側の登山口が分かりにくかったが、HP「アウトドア通信」さんのレポートから、岐阜県側にも登山口の表示が設置されたことを知り、次はこの山に登ろうと決めていた。
先週、誕生山に登ったとき、ご一緒したヤブさんと金糞山に行く約束をし、Sさんご夫妻の参加を得て5人で8時に岐阜市を出発。伊吹山や貝月山の上部が白くなっており、夏タイヤであることから心配になったが、とにかく行くことにした。国道303号線を北上し、横山ダムから坂内村方面に入る。トイレは藤橋村の道の駅を利用したが、坂内村役場近くに道の駅が建設中であり完成すればここのトイレが利用できる。
坂内村役場前を通過し夜叉ヶ池へ行く道を走る。この先、滋賀県に通じる八草トンネルができて、道路整備も進んでいる。鳥越峠への道は、303号線に標識があるだろうと注意しながら走ったが、川上集落に入り夜叉ヶ池への交差点まで行ってしまった。行き過ぎと気づき、地図を確認し、方向転換。
ヤブさんにナビゲーターをお願いして少し戻ったところで、鳥越峠方面への道らしき分岐点を発見。南への道の角には夜叉ヶ池伝説の看板と白い木柱に鳥越林道の表示がある。難なく見つかりよかったと思ったが甘かった。国道からは2本の道が派生しており、下側の広い道には通行止め標識と工事看板があった。木柱の位置からして、上に登っていく細い舗装道路が正解であろうと意見一致で登り始めたが、道は狭い。民家の前の作業中の方にお聞きしたら、正解は下の道。再びUターンして、正しい道に入った。なお、国道303号線を北上する場合の目印は、川上集落が近づくと道が北向きに変わる地点があり、右手に赤い橋があるので、ここで夜叉ヶ池伝説の看板を確認して左折し東側の道に入る。
林道は舗装されており、思ったよりも広く急な登りもない。美しい紅葉を見ながら谷沿いに登っていく。林道から頭を白くした美しい金糞岳が望めた。日陰の路面には霜が降りているが、滑るようなことはなかった。峠に近づき、周りに雪が現れる。登山口を探しながら登ると、左側に4台の車が停めてあり、右側には登山口標識がある。まだ、2・3台駐車できるスペースがあった。駐車場所は雪で真っ白。
身支度をして階段状に整備された雪の登山道を登る。雪の中にあったフキからいくつかの食べ頃のフキノトウが出ていたのには驚いた。数分で尾根に出る。左へも道があり、滋賀県側の登山口に通じる道のようだ。山頂へは右。葉を落とした美しいブナ林の緩やかな道を雪を踏んで歩く。左手に金属パイプで組まれた大きな櫓のソーラー施設があった。何かの調査用施設だと思ったが、後日、ネット情報で滋賀大学の植物観察施設とわかった。
前方の樹間から白くなった金糞岳を見ながら進むと、道はやがて堀割になり、狭い溝状や深く堀取られた所を登る。イワウチワの葉がたくさんあり、春には美しい花をたくさん見ることができるに違いない。堀割を抜け、山頂まで20分の標識を通過。周囲の木々の背丈も低くなり、潅木の曲がった幹からは冬の雪の多さが分かる。背の高い木々の上部は昨日の雪が凍りつき、美しい霧氷を作っている。真っ青な空に広がるガラス細工。空の青さが一段と濃く見える。朝日に輝くその光景は、大自然が創り出す芸術。ただただ感動である。陽に照らされて霧氷が溶け、雨のように水滴が落ちてくる。この辺りの雪の深さは数センチ。雪で喉を潤しながら歩く。
やがて、展望がよくなってきた。下からピークに見えたところに着くと、すばらしい眺めに一堂大歓声。南には伊吹山が雲の合間から見え、ブンゲンや貝月山が大きい。東には小津権現山から花房山に続く峰とその向こうに高賀山群。東の岐阜県境にある恵那山、御嶽山、乗鞍岳、穂高、笠ヶ岳などが雲の中から頭を出している。北には蕎麦粒山、五蛇池山、その向こうに能郷白山、さらに向こうの白い山は白山。快晴の空の下、折り重なった山並みの大パノラマに釘付け。
ここから山頂までは後わずか。どんどんきれいになっていく霧氷の写真を撮りながら、歩き始めて50分ほどで山頂到着。低木はあるものの広く刈り払われた山頂からは大展望。山頂は雪に覆われ、霧氷が美しい。木製の表示板や石柱が設置されていた。数名の登山者で賑わっており、なんとテントが2張りあった。聞けば昨晩ここで泊まったそうだ。
短時間で山頂に着いたので、休息なしで更に西にある白倉岳を目指す。山頂にいた人に「白倉岳まで行くのですか? 岩場がありますよ」と言われたが、とにかく行ってみることにした。白倉岳へは山頂から西に向かい一旦下って登り返す。コースタイムは30分であるが、かなり遠くに見える。金糞岳山頂からの下りは背丈もあるササを分けながら進むが、道は明瞭。周りの潅木の背は低く、稜線沿いに歩けば道を誤ることはない。しかし、今日は雪道。ササに積もった雪であっという間にズボンがずぶ濡れ。山頂で雨具を着れば良かったと後悔。こんな道が白倉岳まで続くといやだと思いながらササ道を下る。
ササの向こうには登り返す峰が見え白倉岳山頂は左端辺りである。左右は大展望。左前方の琵琶湖がすばらしい。近江の地は目の前である。稜線で線を引いたように北側は霧氷で真っ白。南側は陽が当たるため霧氷が溶けていると思ったが、そうではなく強い風が当たる北斜面に霧氷ができているようだ。霧氷をよく見るとエビのシッポが風の当たる方向へ成長している。
アイゼンが欲しいくらいの斜面を下っていくと、鞍部近くでササを分けるような所はなくなり、一安心。展望を楽しみながら稜線を歩く。鞍部で東俣本流への分岐があるが遭難の危険があるため入らないようにと注意標識が設置してある。鞍部から正面の大きな三角形のピークを目指して登りにかかる。途中、2・3の岩場があり、ゼブラロープが設置してあるが問題はない。相変わらず霧氷がきれいだ。
途中、一息ついて後方を振り返ると、北半分が真っ白の巨大な金糞岳と北へ続く緑と白の尾根がすばらしい。砂糖をまぶしたケーキのようにも見える。風と雪の微妙なとりあわせで美しい景色をわずかな間だけ創り出す。午後にはこの砂糖も溶けてしまうだろう。今しか見ることのできないオブジェに自然の偉大さを感じた。
急坂を登り詰め、ピークに到着。ここも北半分は見事な霧氷。南側には背の低い潅木で敷き詰められ、名前は分からないが真っ赤に色づいた細い枝が美しい。こんなにきれいな尾根を今までに歩いたことがない。写真を撮りながら10分ほど歩いて白倉岳山頂に到着。通過点のような山頂は狭く、中央に金属の表示板が倒れかけていた。ササに囲まれ展望は今1つだが、立ち上がれば白山や金糞岳が望める。
ご夫婦の登山者に出会った。更に西へ道があり、1分たらずで琵琶湖の展望地に出ると教えていただいた。さらに下る道もあるそうだ。まずはその展望地まで行ってみた。まさに琵琶湖が大展望。湖に浮かぶ島々や琵琶湖の向こうの山々も望める。しばらく展望を楽しんだ後、白倉岳山頂まで戻る。予定では、金糞岳まで戻って昼食にすることとしていたが、再び濡れたササこぎを強いられることから、白倉岳で昼食にして、ササが少しでも乾いてから戻ることにした。
山頂の通行の邪魔にならない場所の雪の上にシートを敷いてまずはビールで乾杯。メニューはキムチ鍋。肝心のキムチを忘れたこと気がついたとたん、ヤブさんのザックから韓国土産のキムチが出てきた。ラッキー。韓国海苔に韓国焼酎など韓国シリーズ。Sさんからは恒例の家庭菜園野菜や餅、鮭、イカなどが登場。キノコやギョウザを加えてストーブ2台で川上岳以来の豪華鍋ランチとなった。昨日、初めて自家製の魚の薫製を作ったので試食会。結構、好評であったため、趣味の1つとして本格的に始めてみようという気になった。
2時間の宴会の間、この山頂にやって来た登山者は単独男性1人と女性3人パーティーのみ。ここまで足を伸ばす人は少ないようだ。倒れた標識を起こして記念撮影後、金糞岳へ引き返した。ササはすっかり乾いて濡れることはなかった。枝から垂れ下がっている氷も見られたが、思ったより霧氷は溶けていなかった。金糞岳山頂で記念写真を撮って山の同定会。蕎麦粒山や五蛇池山などまだまだ登りたい山がたくさんある。
雪が溶けて川になった道を靴やスパッツを泥だらけにして滑らないように下った。正面にはすっかり雲の取れた伊吹山が堂々たる山容を見せてくれた。金糞岳から30分ほどで駐車地点に到着。
今回の山歩きは、快晴に恵まれ、大展望と美しい霧氷を見ることができ、思い出に残る大満足の山歩きとなった。5人全てが共通の満足感に酔いしれた。下山後、クーさんの掲示板を見てびっくり。sizukaさん、ブルさん、katakuriさんが我々を追いかけて金糞岳に登ったとのこと。皆さんは滋賀県側から登られたが、僅かな時間差や登山口の違い、我々の予定外の行動でお会いすることができなかった。我々が白倉岳山頂で宴会をしている時間に、sizukaさん達は金糞岳山頂で同じメニューのキムチ鍋で宴会をしていたとは・・・。まさにニアミス。
簡単に登れてこれだけの展望が得られる山はそうあるものではない。ネットには積雪期に登ったレポートがたくさん掲載されている。残雪期に登るのもすばらしいだろうし、イワウチワの花も見たい。また、ここを訪れることを約束して紅葉の美しい林道を下った。
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