川上岳
川上岳 (1626m 萩原町) 2003.6.22 曇り 2人

登山口(8:50)→山頂まで4km標識(9:38)→尾根の展望空地(10:14)→大足谷源流渡河(10:39)→馬瀬村登山口分岐(10:56)→宮村登山口分岐(11:10)→川上岳山頂(11:20-12:27)→宮村登山口分岐(12:36)→馬瀬村登山口分岐(12:43)→大足谷源流渡河(12:51)→尾根の展望空地(13:15)→山頂まで4km標識(13:40)→登山口(14:20)

 まだ登っていない山で、今年のうちに必ず登ろうと決めていた山が今回の「川上岳」。ドウダンの紅葉が美しい秋に登る予定のところを、待ちきれずに、新緑が美しいこの季節に登ることにした。梅雨の合間、曇りでなんとか雨が降ることもなさそうな天気予報。展望は期待できないが、新緑の山歩きは楽しめるだろうと出かけた。この期待は裏切られることなく、お気に入りの山がまた1つリストに加わることとなった。

 遠いこともあり、6時過ぎに岐阜市を出発。国道41号線の上呂駅前の信号交差点から左折して飛騨川を渡る。ここまでは仏ヶ尾山へのコースと同じである。橋を渡った交差点に、川上岳右へ15kmの小さな標識がある。これに従って右折し、立派な道路を北上。

 十分に下調べをしていなかったため、山之口集落を抜けるところまで進み、間違いに気が付いた。草刈り作業の方に道を確認して方向転換。正しい道は、山之口集落の農協と公民館の前を左折して橋を渡る。橋には川上岳の登山口を示す小さな標識が取り付けられていた。

 この先、2ヶ所ほどの分岐点には川上岳の標識がつけられており、それに従えば、登山口に通じる林道に入ることができる。林道入り口には、登山口まで5kmの表示。林道にはたくさんのヤマオダマキが咲いており、美しい。

 ヤマオダマキだ、ササユリだ、と騒いでいるのもつかの間、未舗装の狭い林道は石ころの散らばる悪路。一部が登り道でカーブ、おまけに路面の雨水を脇に流すため土がかまぼこ状に盛られている。車体が擦らないようにゆっくり乗り越える。1台の対向車。少しバックしていただき、なんとかすれ違ったが、場所によってはかなりバックしなければいけないところもあることから、待避所を確認しながらのろのろと車を進めた。

 ダートの5kmは長い。やっとのことでゲートのある登山口に到着。すでに7台の車が止まっていた。登山口でUターンして、少し戻った路肩に駐車。10台程度は駐車可能。たくさんのウツギがあり、真っ白な花が満開。

 山頂まで5kmの表示がある登山口から広い道を西に向かう。右手にすばらしい杉の林を見上げながら平坦な道を歩く。サワギクや蕾のホトトギスが見られた。イカリモンガが道案内してくれる。すぐに、大足谷を渡る。鉄パイプと鉄板の橋がかかっている。谷川の水量は多く、深山の渓谷である。

 谷を渡り、いよいよここから本格的な登りが始まる。急な斜面につけられたジグザグの登山道をひたすら登ることになる。道は明瞭で、つづら折れであることから、急登は少ない。一部ヒノキやスギも植えられているが、広葉樹が多く、足下にはいろいろな植物が次々と姿を見せてくれる。

 この時期、花は少ないが、緑の世界を背景に、コアジサイやヤグルマソウの花が美しい。バイカオウレンやショウジョウバカマ、エンレイソウは実をつけている。樹間から北側の尾根が立ち上がってくるのが分かる。大足谷の川の音が聞こえてくる。小鳥やセミの声が疲れを忘れさせてくれる。

 山頂まで4kmと書かれた木柱を通過。50分歩いてまだ1/5地点である。あいかわらずジグザグ道は続き、かなり標高を稼いだ。風もなく汗が落ちる。北側の尾根が近づき、右手前方にピークが見えるが川上岳ではない。道は、垂直に近い斜面につけられ、崩壊しかけているところもあるので要注意。

 ヒノキが幼木になり、左にトラバースしていくと、風が出てきた。ようやく待望の尾根に出る。すぐに、南側が開けた展望のよい空地に出る。晴れていれば御嶽山がすばらしいだろうが、今日は何も見えない。御前山辺りが望めたが特定はできなかった。

 ここからは快適な天然林の尾根歩き。所々にぬかるみもあり位山の道を思い出した。質素な花をつけたツクバネソウがどこまでも続く。樹間からは、右手前方になだらかな山が見える。川上岳だ。かなりの距離とかなりの高さが見てとれる。

 道はやがて尾根はずれ、左山で大足谷を右に見ながらのトラバースになる。ここで先発のご夫婦に先を譲ってもらった。急斜面につけられた道のトラバースは最も印象に残った場所である。道の脇から立ち上がった大きなブナが緑のトンネルを作っている。樹間からは右にササに覆われた川上岳や手前の1617mピークが美しい。まるで車窓から遠くの山を眺めているように、手前の木々が後ろに動く。空を背景に風に揺れる新葉は、透けてエメラルドグリーンに輝く。ピンクのタニウツギが彩りを添える。何度も立ち止まって山頂を眺めた。山頂はゆっくり後退していく。大足谷源流を回り込んで戻るため、山頂をやり過ごすことになる。

 頭上のナナカマドの花が美しい。大足谷の沢音が大きくなり、道は少し下って小さな流れを渡る。大足谷はいくつかの支流を集めており、この流れはまさに源流。4つほどの流れを渡る。2つ目の沢でご夫婦が休息中。我々も、谷の冷たい水で喉を潤した。生き返る思いである。

 ここから背丈以上あるササの道をくぐり、アカミイヌツゲが壁になった道を登ると馬瀬村からの道と合流する。標識が割れて落ちていた。この辺りには、ノギランがたくさんある。蕾の花茎を伸ばし始めたところで、花期はもう少し先のようだ。

 1617mピークへの登りは最後の頑張りどころ。すっかり背が低くなった灌木の間をピークからの光景を期待して一歩一歩の前進。そして、宮村からの道に合流してピーク。前方には期待通り、ササ原の川上岳がそのやさしい姿を見せてくれた。長い道のりだっただけに、この感動は大きい。咲き遅れたサラサドウダンやウラジロヨウラクが見られた。足元にはアカモノがかわいい白花を咲かせている。花はないが、マイズルソウもたくさんある。前方を行くパーティーが見える。東から、心地よい風がササ原を抜け、汗が引く。

 丸いピークを登り詰めると、そこは広い山頂。ジャスト2時間半。ザックを下ろすのも忘れて、360度、回りをぐるりと見回した。稜線の延長上に縦走路のある位山、時計回りにその右に舟山、大足谷と今歩いてきた尾根、そして1617mピーク、その向こうには仏ヶ尾山らしき三角形が望める。御嶽山や白山は見えなかったのが残念。

 中央に一等三角点と倒れた金属製の大きな看板。みんなこれを起こして抱かえて記念写真を撮るのがおもしろい。昔は地面に埋めてあったようだ。数パーティーが昼食中。中には、位山からのクロス登山のパーティーもあるようで、無線交信をしてみえた。この山は4つの登山口があるので、こうした企画もおもしろいと思った。

 フルコースの昼食を1時間ほど楽しんだ。シャツを羽織らないと少し寒いが、心地よい風が吹くササ原の山は実に気持ちがいい。今度は違うコースでまたここに来ようと決め、同じ道を下った。

 1617mピーク辺りで登ってくる2,3パーティーと出会った。よく知られた、人気の山だ。大足谷の源流の水を汲んで、2時間弱で登山口に着いた。

 登り終えて、脳裏に残ったものは、「緑色」。今も、眼を閉じると美しくやさいい緑色の世界がよみがえってくる。こんな美しい世界がこの山にある。文句無しの大好きな山だ。 
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