清滝山からの展望
清滝山の花
トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)
清滝山 (439m 滋賀県) 2008.4.19 曇り・晴れ 2人
徳源院駐車場(12:45)→稜線(13:06)→清滝山山頂(13:20-14:28)→しめの尾(14:32)→山の神(14:41)→林道(14:51)→駐車場(14:59)
再びJR醒ヶ井駅に着いた時にはすでに正午を過ぎていた。増水した谷とヤマビルに阻まれ、霊仙漆ヶ滝コースを撤退した午前中の出来事が、まだ脳裏を駆け巡っていた。とりあえず、短時間で登れるスペアーを探す。菩提山、南宮山などが思い浮かんだが、未踏の低山「清滝山」がすぐ近くにあることに気が付いた。
ガイドブックを持ってきていなかったことから、登山口の情報は何も無い。道路地図とGPSの地図で、登山口は清滝集落にあると推定して、醒ヶ井駅から国道21号線を東進し、清滝山が近づいた辺りから国道を離れて中仙道に入った。柏原宿の古い町並みが現れた辺りから北へ向きを変えて走ると清滝の集落到着。徳源院の案内板を左に見ながら、山沿いを走ってみるが登山口らしきものは見つからなかったので、山の麓に位置する徳源院辺りが登山口ではないかと予想して、徳源院へ続く桜並木の道に入る。参道の左手に寺の未舗装の駐車場があったのでここに車を停めた。
西にはアンテナのある低山が望めた。清滝山である。靴を履き替え、駐車場入り口にあるお社に手を合わせて歩き始める。アンテナのある位置が山頂なら1時間もかからないと思った。遅くなるが、山頂で昼食をとることに。ソメイヨシノは葉桜で、散ったばかりの花びらが参道に残っている。桜祭りの提灯が春風に揺れていた。タチツボスミレの花を見ながら桜並木をつめると、突き当たりに清滝山登山口の標示を発見。ラッキー。標示に従って右に歩くと、立派な清滝神社の手前にある林道に再び清滝山の表示。8km、2時間と書いてあるが、どこまでの距離であろうか?
神社を右に見ながら林道を歩くと、大きなネットを持った単独男性に追いついた。聞けば、蝶を採集に来たとのこと。西国三十三所の標示を右に、オオタチツボスミレやフユイチゴ、カキドオシなどを足元に見ながら登っていくと、林道は次第に傾斜を増してきた。山肌を等高線と直角に一直線に登っていく林道はいつしか山道となり、急斜面にアキレス腱が悲鳴を上げる。電柱が続き、頭上には電線。登山道周辺はきれいに刈り取られ、いろいろなシダが葉を広げにかかっている。ゼンマイとワラビだけは同定できたが、他のシダの名前は分からない。
一気に高度を稼ぎ、後方には下界の集落が望める。息が切れる。神社から20分ほど急登をこなすと、ようやくジグザグ道となり、左へトラバースして稜線に出た。左にも小高いピークがあったが、道は稜線を右に続いている。イワカガミのつぼみが見られた。白い花はニガイチゴやキレバモミジイチゴ。稜線を歩くとすぐに芝生に覆われた展望地に出た。電線があるために切り開かれているようだ。眼下に清滝集落、その向こうに柏原の町並みが見える。養老山地の山並みも望む事ができ、一番高い山は最高峰の笙ヶ岳のようだ。
稜線歩きが続く。両脇はササの垣根。天然林の芽吹きが美しく、時折ヤマザクラやミツバツツジがアクセントをつける。長葉のスミレはコスミレであろうか。稜線の傾斜は結構急で、ここでも息が切れる。登山道を占拠するアブやクマバチを追い払いながら登る。この稜線にも電線が通っており、また、NHKの電送線埋設経路の標示もある。稜線を10分ほど歩くとなだらかになった。前方にアンテナが現れ、NHKと書かれた白い建物が見えてきた。ササの道は終わり、いくつかのアンテナや建物の立つ広場に出た。三角点を発見。清滝山山頂である。
広い山頂からは東西が大展望。東には小さな円錐形の山に挟まれた柏原の町が美しい。中央に見える白い建物は柏原中学校。田には水が張られ、田植の準備が進んでいる。その奥にはいくつもの山が重なり、笙ヶ岳がピラミダルな山容を見せる。まるで箱庭のようだ。南北から山が迫る地形は、まさに関が原の戦いをイメージできる。柏原から霊仙山頂に続く長い尾根が視界を横切る。遥か昔に歩いた尾根であるが、記憶はほとんど無い。もう一度歩いてみたい尾根である。今日の当初の目的である霊仙は山頂に厚い雲がかかり、神秘的な姿を見せる。撤退しなければ、今頃、雲の中の山頂にいるのだが・・・。
北には丸い頭の伊吹山が堂々と鎮座している。ちぎれ雲が伊吹山の山頂をかすめる。風が強いことに気付いた。伊吹下ろしをまともに受けているようだ。伊吹山最高の展望地と言っても過言ではないこの山である。記念写真を撮っていると先ほど出会った男性が登ってきたが、他には誰も登ってこない。山頂には大きな穴があり、枯れ木が置いてあった。のろし跡らしい。
早速、遅いランチにする。伊吹下ろしを避けて、柏原を見下ろす東側でシートを広げた。メニューは定番の味噌煮込みうどんに缶詰。東海道線を走る列車の音が聞こえてきた。東海道線はこの山に突き当たって、北へ大きく回りこむ。貨物列車や快速電車が山間を通過するのを見て、まるでミニチュアのように思えた。ウグイスの鳴き声がすぐ近くで絶え間なく聞こえたが、姿が見えない。目の前の潅木に奇妙な形をした花が咲いている。アキグミのようだ。
遅い昼食の後、下山開始。周遊できると聞いていたので、登ってきた方向と反対側に行ってみると、明瞭な道があった。登りとは正反対のなだらかな道である。天然林の芽吹きの稜線をゆっくりと下っていく。5分ほど歩くと「しめの尾 約400m」とかかれた標示があった。ミツバツツジが多い。今まで蕾ばかりだったイワカガミが、この稜線では美しい花を咲かせている。かなり濃い色で美しい。「しめの尾」から10分ほどで「山の神 325m」の標示を通過。この辺りからヒノキ林が現れる。
右へ折り返すように斜面を下る。落ち葉の積もった急斜面を一気に下っていく。赤テープや杭を見ながら掘り割りの道を下っていくと赤いツバキが地面にたくさん落ちたツバキの群落を通過。そして、すぐに林道に出た。清滝松明保存会の「お願い」の標示があった。毎年8月14日、15日に松明行事が行われるので女性の清滝山への入山はできないとのこと。また、ここで水場経由と墓地経由の分岐になっていた。水場経由へ。林道から右へ下って細い川の水場を渡って、人工林を抜けると清滝集落の民家の玄関の前に出た。民家の間を抜け、徳源院の参道を歩けば駐車場はすぐだった。
駐車場手前から右へ橋を渡たるころに「清滝のイブキ」の標示があったので行ってみる。菜の花畑を過ぎた民家の前に巨大なビャクシンがあり、木いっぱいに花をつけて金色に輝いていた。樹高10m、樹齢700年の滋賀県内最大級のビャクシン。幹の根本から見上げると、巨大な枝が曲がりくねって、長寿の風格を感じさせる。
清滝集落からは、下ってきた稜線を望むことができた。花あり、展望ありと、いい低山である。そして、何といってもこの山は伊吹山の一級の展望地である。
さて、ここで霊仙山漆ヶ滝コース撤退の概要を。
漆ヶ滝コースの登山口は上丹生の集落を川沿いに直進した行き止まりの広場にある。駐車場の桜は満開。霊仙山頂方向は厚い雲に覆われ、小雨が降っていた。雨はすぐに止んだので、靴を履き替えて登山届けをポストに入れて、林道を歩く。左に大きな谷を見ながら、桜の道を歩く。左には巨大な屏風岩。ネコノメソウやヤマブキの花を見ながら林道をつめると石灰岩の白い川原に出た。ここから渡河が始まる。
昨日の大雨で川は増水して、渡る石が水の中に沈んでいる。渡河できる地点を探しながら川上・川下をうろうろ。靴を水に付けながら石を跳ぶ。登山靴はかなり水に浸かったが、水が浸み込んでこない。荒れた谷を右左に見ながら登っていくと、右側からの谷の合流点に出会う。一ノ谷である。一ノ谷を渡ってまたまた渡河。今度は川幅が広く、どう渡っても石を跳ぶことはできない。やむを得ず、最後の手段。靴を脱いで川を渡ることにした。
靴を脱ぐと、靴下にヤマビルが一匹へばりついていた。らくえぬのズボンにも一匹。塩で撃退。このヒル騒動で、あっさりと撤退を決め、足元をよく見ながら来た道を下った。帰路も、それぞれ一匹づつヒルに取り付かれたが、早期発見早期防除。霊仙漆ヶ滝コースはヒルのいない時期にリベンジすることにして、駐車場を後にした。
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