トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平25情使、第146号) 

国見岳・大禿山 (1126m 1083m 揖斐川町) 2015.11.3 晴れ 2人

鉈ヶ岩屋登山口(9:09)→鉈ヶ岩屋(9:40-9:43)→国見峠分岐点(9:55)→アンテナ施設跡地(10:22)→国見岳山頂(10:28-10:35)→大禿山(11:07-11:15)→国見岳山頂(11:46-12:55)→アンテナ施設跡地(13:00)→国見峠分岐点(13:24)→鉈ヶ岩屋(13:31)→登山口(13:51)

★11月3日に揖斐川町の国見岳と大禿山に登ってきました。
★国見岳スキー場の登山口をスタート。
★登山口付近はシロモジの紅葉の始まりで、まだ緑の残る天然林を歩いて、直線急登へ。・
★散ったばかりの落ち葉を踏んで、一歩一歩登りました。
★鉈ヶ岩屋付近は黄一色の素晴らしい紅葉のトンネル。
★岩屋で展望を楽しんで、すぐ上で国見峠からの道と合流。
★アンテナ跡を通過して、すっかり葉の落ちた稜線を歩いて国見岳山頂へ。
★山頂から揖斐の名山や雲のかかる伊吹山などの大パノラマに感動。
★実を付けた美しいマユミの木を見ながら、さらに南に向かって歩き、大禿山山頂へ。
★伊吹山に続く美しい伊吹北尾根にまたまた感動。
★風が強い稜線を国見岳まで戻って、温かい昼食をとりました。
★深まる秋の中、久しぶりの伊吹北尾根を楽しんできました。


 久しぶりに伊吹北尾根を歩いてみたくなった。国見岳のアンテナが撤去された後に登っていなかったことから、国見岳とその南にある大禿山を目指す。紅葉も期待できそうだ。

 春日のモリモリ村のトイレに寄って、国見岳スキー場に向かう。春日美束から国見岳スキー場方向に左折して集落の中の狭い道を上がっていく。かつて、家族でよくスキーに通った道であり、懐かしい。集落を抜けて山道をカーブしながら登っていくと、スキー場に到着。シーズンオフで、駐車場に車は無い。以前はこの駐車場に車を停めて、国見峠への道を登山口に向かって10分ほど歩いたが、今回は登山口近くまで車で上がる。

 登山口には鉈ヶ岩屋の大きな案内図やKDD管理地と書かれた看板、石柱などがあり、車を運転していても登山口と分かる。登山口を行き過ぎたところに、2・3台の駐車スペースがあり、Uターンして車を停めた。黄色く色づき始めた木々に朝日が当たって美しい。靴を履き替えてスタート。

 登山口で案内図を確認して山道に入る。いきなりの急斜面。濡れた泥と落ち葉で滑りやすい谷状の斜面を一直線に登っていく。斜面上部で左に向きを変えて少し登ると尾根に出た。折り返すように向きを変えて、散ったばかりの落ち葉を踏んで歩く。頭上のシロモジは色づき始めたところで、まだ緑の葉が多い。

 なだらかな道は次第に傾斜を増し、いよいよ国見岳名物の直線急登にかかる。一歩一歩、ゆっくりと登る。標高を上げるにつれて、頭上のシロモジや足下のコアジサイの葉が黄色に変わっていく。きつい登りではあるが、紅葉のトンネルに癒やされ、気持ちがいい。雨水で道が窪んだところや緑色のネットが埋め込まれたところを通過。一旦なだらかになるが、再び急斜面となる。

 ササが現れると、岩屋は近い。左に略図の書かれた白い標識があり、ササを分けると展望地に出た。斜面に大きな岩が積み重なって空洞ができており、その中に小さな社が置いてある。鉈ヶ岩屋は、関ヶ原合戦の直前、本願寺の教如上人が、西軍の石田三成の配下に襲撃され、春日谷の信徒に守られてこの岩屋にたどり着き、東軍が勝利するまで岩屋で生活をしたとの記述が大きな看板に書いてある。

 当時、岩屋までの道は無く、ヤブを掻き分けて登ってきたそうだ。岩屋の前からは、目の前に鎗ヶ先山や鍋倉山、そして山に囲まれた春日の集落が見える。教如上人も、美しい紅葉の中で、この景色を見ていたことだろう。岩屋の前で手を合わせ、登山道に戻った。

 再び急斜面の道を登り、大岩の脇を通過。ようやく道は緩やかになり、地面の落ち葉も多くなった。左前方に、かなり葉を落とした木々の間から、国見岳が姿を現す。小さなピークを超えて、下りにかかると正面に国見岳の丸い頭が早く登ってこいと言わんばかりに立ちはだかった。かつて大雪をラッセルしたときもこの姿を見たことが思い出された。この辺りの紅葉も素晴らしい。

 ピークを下ってササの道を登り返すと、国見峠からの道と合流した。峠の方向から話し声が聞こえた。峠から登ってくる登山者があるようだ。合流地点を左折してヒノキ林のなだらかな道を歩くと、左側に天然林が現れ、人工林との境を登っていく。地面はウリハダカエデなど散ったばかりの黄色い葉が積もっている。次第に傾斜が増し、左に「迂回路」の標示が現れる。これはアンテナ施設があった当時、アンテナまでの階段が設置してあった頃のもので、現在、階段は撤去されており、マジックで「道はありません」と書いてあった。

 周囲は天然林となり、道は尾根を右に外して北斜面の急な登りとなる。この辺りの木々は8割ほど葉を落としており、振り向くと木立の向こうに貝月山が望めた。岩が多くなり、急斜面にはロープが設置してある。岩は石灰岩で緑色の苔が付着しており、しっとりとした山肌は伊吹北尾根独特の雰囲気がある。岩の間に咲く、濃いピンク色をした小さな花はヒメフウロ。この時期に見られるとは思わなかっただけに感動。

 登山道には石があり、歩きにくい道を登っていく。時折、北西の冷たい風が吹き付け寒い。足下にピンク色の割れた実が落ちている。マユミの実であり、見上げると実を一杯につけたマユミの木があった。

 急斜面を登り切って、緩やかな傾斜となり、左方向に向きを変えると、正面の太陽が眩しい。広い尾根に出ると、ここが以前アンテナがあった。撤去された今では、ススキの草原となっており、一面ススキの穂が風に揺れていた。

 国見岳までは後わずか。男女2名とすれ違い、すっかり葉を落とした明るい林の中を南に歩くとすぐに国見岳山頂に到着。山頂は狭く、三角点からは東180度の大展望が得られる。目の前には小島山と池田山に挟まれた春日の谷と、その向こうには濃尾平野。左には鎗ヶ先山や鍋倉山、右には伊吹山に続く北尾根。伊吹山は雲に隠れている。

 記念写真を撮って30分先の大禿山まで歩くことにする。案内板には「禿山」とある。山頂を後に、尾根の右側を下る。尾根の木々はすっかり葉を落としており、ピンク色のマユミの木があちらこちらにたくさん見られた。この尾根にたくさんのマユミの木があることに驚いた。霊仙山にたくさんあったことを思い出した。石灰岩地帯を好む植物のようだ。それにしてもマユミの実のピンク色は独特の色をしており、実に美しい。

 尾根に戻って、ゲンノショウコやヒメフウロ、リュウノウギクなど今シーズン最後の花を見ながら下る。正面には目的の大禿山が、ぐんぐん近づいてくる。伊吹山は西から流れてくる黒い雲に隠されたまま。小ピークを越える辺りで、切れ落ちた東側の谷を見下ろすと、モザイク状になった中腹の紅葉がすばらしくきれいだ。 ピークの急斜面を下る。右手前方には垂れこめた雲の下に琵琶湖が望めた。

 鞍部に下りて、大禿山に登り返す。ひと登りで大禿山山頂に到着。ここからの展望も素晴らしい。今、歩いてきた国見岳が三角形の美しい山容を見せる。南には御座峰に続く伊吹北尾根。猛スピードで西から雲が押し寄せて尾根を越えていく。伊吹山は全く見えない。風が強く、今にも雨が降りうそうな空模様。北ほど青空が広がっていることから、国見岳まで戻って昼食にする。

 国見岳を正面に見ながら、歩いてきた道を引き返す。途中で単独男性とすれ違った。大禿山から30分で国見岳に戻った。山頂に女性1人が休息中。山頂狭いことから、登山道脇の岩の上で昼食をとることにした。メニューは缶詰とワンタンうどん。岩陰で風もなく、ジャケットを羽織れば寒くはなかった。

 先ほど出会った単独男性が戻ってきて、山頂の女性と一緒に下って行かれた。男性だけが大禿山までピストンされたようだ。いつもと同じように1時間ほどゆっくりと昼食を楽しんだ。昼食の後、パッキングして国見岳からの展望を見納める。いつの間にか伊吹山の雲が消えて、丸い山容の伊吹山に見送られて、登ってきた道を戻る。北斜面は滑らないように慎重に下った。国見峠への分岐点から紅葉の直線コースを一気に下り、登山口まで戻った。

 紅葉前線を横断する晩秋の静かな山旅を楽しむことができた。伊吹北尾根はいつ登っても素晴らしい。特に石灰岩の稜線の様々な花やブナ・マユミなどの天然林はこの山の魅力である。今回、紅葉の美しい時期であったが、出会ったパーティは2組のみ。スキー場から登ったのは我々だけだった。間もなく、伊吹北尾根は深い雪に埋もれる。雪が解けたころ、また歩きたい山である。
★国見岳からの展望と花

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