トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平25情使、第146号) 

鉄嶺山 (最高点:685m 揖斐川町) 2017.12.24 曇り 2人

ポケットパーク・駐車地点(9:02)→<ルート変更有り>→588mピーク(11:28)→鉄嶺山最高点(12:00-13:18)→588mピーク(13:37)→駐車地点(14:37)

★12月24日に揖斐川町の鉄嶺山手前の最高点に登ってきました。
★坂内坂本集落入り口の国道303号線のポケットパークに駐車して、鉄嶺峠への古道跡に取り付きました。
★雪の中、倒木を避けながらルートファインディング。
★588mピーク手前から、ピークを巻く危険なトラバース道となり、尾根直登のルートに変更。
★急斜面と雪に苦戦しながら、588mピークに登頂。
★少し下って、鞍部から最高点のピークに向かって深い雪の急斜面をワカンで登りました。
★正午のチャイムと同時に、鉄嶺山手前の最高点に到着。
★最高点で目の前に天狗山や小津権現山を見ながら、雪の上で温かい昼食とコーヒーを楽しみました。
★下山は坂内の集落を見下ろしながら、登ってきた道を引き返しました。
★目的の鉄嶺山までは行けませんでしたが、美しい雪山登山に大満足の山旅となりました。


 2年前の9月、揖斐川町西横山にある親類宅を訪れたとき、西へ向かう林道を詰めたところに太郎兵衛の滝があることを知り、滝の散策に向かったが、滝の手前でヤマビルとマダニの攻撃を受けて滝を見ることなく撤退した。

 この付近を調べてみると、昔、旧藤橋村西横山と旧坂内村坂本を結ぶ峠道があり、村境は鉄嶺峠(くろがねとうげ)と呼ばれている。峠の標高は約620m。現在は西横山と坂本は、横山ダム坂内川右岸に付けられた国道303号で結ばれているが、かつては藤橋村西横山と坂内村坂本を結ぶ最短距離が鉄嶺峠を経由する道であった。
 
 今でも峠には1体のお地蔵様があるという。国土地理院の地図には鉄嶺峠の名が記されており、古道も標示されている。この峠のすぐ北側にピークがあり、地図には標高が記されてないが約685mと思われ、峠より北側の最高点となる。最高点から稜線伝いに北東に進んだところに標高672.9mの三角点があり、これが鉄嶺山である。
 
 ネットに掲載された山行レポートは少ないが、坂内側からは古道の跡が残っており、また寒谷や西横山からも鉄塔巡視路をたどれば峠に行けることが分かった。雪が積もる前の、11月下旬から12月上旬がベストシーズンであり、計画を立てたが天気などの都合で12月下旬の決行に至った。コースは坂内村坂本集落の入り口から峠への古道をたどることにした。雪があるのは間違いないので、ワカンをザックに縛り付けた。
 
 国道303号線で横山ダムの堰堤を渡って坂内坂本集落に入る直前に、左側の広い路肩に雪を踏んで駐車。靴を履き替えて、坂本集落方向に歩くとすぐに石碑の立つ尾根の先端に出合う。

 石碑を右に見ながら、山道に取り付きスギ林の中を登り始めるといきなり倒木で道が塞がれている。迂回するように水田の畔を歩いて倒木を巻き、一直線に登っていく。シカの糞がたくさん落ちている。
 
 道は窪んだ溝状態となり、雪が深いことから溝の外を歩く。倒木を潜ったり避けたりしながら、適度な傾斜の斜面を歩く。右側の寒谷は霧が立ち込める。湿った重い雪の上に無数のスギの種が散乱してその模様がおもしろい。積雪は数センチくらいでツボ足でも問題は無い。
 
 30分ほど登ったところで、暑いのでジャケットを脱ぐ。雪で道が不明瞭なところもあるが尾根を外さなければ道を誤ることは無い。尾根の左は人工林、右は天然林。ガスが流れ始め、幻想的な光景が広がる中、シカの足跡を追っていくと、尾根の左側をトラバースするようになる。北斜面であり雪が深くなった。

 雪の上に散った落ち葉を踏みながら尾根に合流し、鞍部のような平らなところに出た。ガスが消え始め、雲の隙間からこぼれる太陽の光が眩しい。右前方に見える三角形をしたピークは、鉄嶺峠から南に続く稜線の先にある826.6mピークのようだ。
 
 ここから588mピークに向かって本格的な登りになる。斜面取り付きには我々の訪問を歓迎するように、1本の大木が枝を広げている。この大木の脇から斜面の登りにかかる。

 道はジグザグにつけられており、イノシシが落ち葉の吹き溜まりを掘り返した穴を見ながら登る。シカの糞や足跡もたくさん見られる。左には朝日に輝く天狗山が、後方には坂内の集落が樹間に見える。右には寒谷の向こうの山の中腹にガスが流れて美しい。
 
 ジグザグ道は尾根を南に外してトラバース道となる。ピーク越えを避け、鉄嶺峠に向かって付けられたようだ。ネット情報では、このトラバース道は崩壊等により途中で歩けなくなるとあったが、行けるところまで行ってから尾根に登ればいいと考え、トラバース道を進んだ。
 
 古道は広く、倒木を潜ったり乗り越えたりしながら進む。赤テープも見られる。トラバース道を10分ほど歩いたところで、事前情報のとおり山側からの土砂崩れで路面が谷川に傾斜し始めた。雪があり、滑ると谷に滑落する。
 
 ここで直進を断念し、尾根ルートに変更。登りやすそうなところから木につかまって山側に登り始めたが、急斜面で難航。10mほど登ったところで木が無くなり、捕まるものが無い。登りを断念し、古道に戻ろうとしたが、雪の急斜面で滑落の危険大。持って来たロープを利用して何とか古道に下りた。ここでかなりの時間ロス。
 
 古道を尾根の近くまで引き返して、幾分緩やかになった斜面で、再度、尾根に向かう。今度は、ロープを使いながら慎重に尾根の芯に到達。次に待ち受けるのは深い雪の急斜面の登り。
 
 疎林でどのようにでも歩けるが、捕まる木がないので引き続きロープを使用。後方には坂内の集落の向こうに丁子山が立ち上がってきたが、振り向く余裕は無い。湿った雪に足を取られるようになったので、木の根元でザックを下ろしてワカンを装着。見上げれば、急斜面は後わずか。
 
 ロープをザックに付けて、ワカンの威力を発揮しながら緩やかになった斜面を左に人工林を見ながら登って588mピーク頂上に立った。目の前に富士山のような山容の最高点685mピークが姿を現す。いい形をした山だ。
 
 わずかに下って、鞍部から標高差100mの登りにかかる。正面に白い太陽が眩しい。左には雪をかぶった天狗山が大きい。ユズリハの実が雪面に青いシミを作っている。潅木を避けながらルートファインディング。
 
 傾斜が次第に急になっていくが、先ほどのような急傾斜ではない。雪はさらに深くなり、乾いた雪質に変わった。シカの足跡は少なくなったが、シカに皮を剥がされた木が見られる。
 
 斜面を登り詰めると丸く広い尾根となり、振り向くと丁子山・湧谷山が樹間に見える。ピーク頂上は広く、一番高いところに立つと、ちょうど正午のチャイムが下界から聞こえてきた。時間切れで、今日はここまで。ルートを変更したこともあり、3時間かかった。
 
 鉄嶺山はこの最高点から北東に続く尾根の2つ目のピークのようだが、尾根のアップダウンが浅く、通過点のように見えた。この最高点のほうが山らしい。最高点は林の中であるが、木々の葉がないことから、北には天狗山、東には小津権現山が望めた。
 
 写真を撮ったら昼食にする。天狗山を目の前にして、おでんと卵雑炊を作った。冬山必需品のガソリンストーブは、従来使ってきたMSRが壊れたことから、今回、SOTOのMUKAを新調し、今回が初デビュー。プレヒートの必要が無く、自動車のガソリンが使える優れもので、沸騰するまでの時間は短い。

 日が時折差す程度ではあるが、風が無く比較的暖かい。正面の天狗山は灰色の空に溶け込んで絵画を思わせる。静粛の中、バーナーとパーコレーターの沸騰する音だけが響く。
 
 ここに人が訪れたのはいつのことだろうか、ここでコーヒーを沸かした人はいるだろうか、そんなことを思いながらシェラカップに熱いコーヒーを注ぐ。ゆっくりと至福の時を過ごした。
 
 下山は登ってきたルートを引き返す。眼下に坂内の集落を見下ろしながら、軽快に下っていく。重い雪にワカンがよく効く。588mピークからの急斜面は雪が緩んでおり、雪の下の落ち葉と共に滑るようになったため、再びロープを使った。

 同じ場所で尾根から古道に下りた。雪の上の動物の足跡や木の実などを観察しながら古道を下り、国道手前でワカンを外した。
 
 今回は鉄嶺山山頂を踏むことと、鉄嶺峠のお地蔵様に出会うことはできなかったが、最高点を踏むことができた。峠より南には鉄塔や反射板があり、鉄塔巡視路を利用すれば周回も可能である。木が葉を落とした雪の無い時期に再挑戦したい。
★鉄嶺山からの展望

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