トレースマップ (カシミール3Dで作成)
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)
京塚山 (854m 郡上市) 2007.5.5 晴れ 3人

八幡町サイクルターミナル(口明方小学校)(9:12)→登山口(9:19)→高雄山(高雄薬師堂跡)(9:59-10:07)→直登コース・東尾根コース分岐点(10:10)→京塚山863mピーク・石碑(10:47-10:53)→京塚山854mピーク(10:59)→約870mピーク(11:11-11:20)→京塚山854mピーク・ランチ(11:30-12:43)→京塚山863mピーク・石碑(12:50-12:55)→稜線から谷への分岐点(13:03)→東尾根(13:14)→直登コース・東尾根コース分岐点(13:33)→高雄山(高雄薬師堂跡)(13:36)→登山口(14:00)→八幡町サイクルターミナル(口明方小学校)(14:13)

 連休後半、5月5日は山に行ける余裕があったが、天気が思わしくない。午後遅くから雨模様との予報に、近辺の低山でまだ登っていない山を探した。連休に連続して山歩きをされているBOGGYさんをお誘いしたのはいいが、山が決まらない。この時期、春霞で展望は期待できないなら、展望の無い山へ行こう。

 5日の朝、迷いに迷って郡上市の京塚山に決めた。出掛けにGPSにデータを取り込み、プリントした地図を持った。ガイドブックにも掲載されており、僅かではあるがネットでのレポートも見られる。この山は、郡上市から飛騨清見に抜けるせせらぎ街道の入り口付近にある標高854mの低山。小学生の集団登山もあるようで、ハイキング程度の山と想像して出かけたのだが・・・。

 いつもより遅めにBOGGYさんを迎えに行き、東海北陸自動車道郡上八幡ICを下りて、国道256号線、通称「せせらぎ街道」に入る。八幡城東側の郡上高校前の信号交差点から約6km走ると「初納」の信号機がある。八幡町市島という地域で、この信号交差点を右折して橋を渡り、次の交差点を右折すると、すぐに口明方小学校が右手に現れる。この小学校の左手に隣接して八幡町サイクルターミナルの広い駐車場に停めてた。なお、トイレはこの小学校前の道を北へ500mほど行った高雄神社にある。この地域では地歌舞伎が行われており、高雄神社の回り舞台のある拝殿や彫刻がほどこされたお社は必見。

 ターミナルの管理人さんに京塚山に登ることを告げ、駐車の許可を得た。小学校前からは、これから歩く長い尾根といくつかのピークが望める。大きな丸いピークが京塚山のようだ。あっけなく登れそうに見える。南北に走る長い尾根の先端が登山口となる。小学校の前を歩き、小学校を通り過ぎる辺りから南の道に入る。高雄山遊歩道の立派な標識があった。

 カキドオシやムラサキサキゴケなど春の田園の草花を見ながら、民家の間を歩く。民家には大きなこいのぼりが春風になびき、庭にはシバザクラをはじめ色とりどりの花が咲き乱れている。のどかな田園風景に懐かしさを感じながら、尾根の取り付きに到着。右側には小さな社、登山口には水道施設と思われるコンクリート水槽。その前に高雄山登山口と書かれた大きな木柱があった。

 水槽横の斜面を両手両足でよじ登ったら、北側から安全に回り込む道があった。この下は民家で、斜面には無数のカタクリの葉があり、多くの実を結んでいる。4月には一面カタクリの花で埋まるのではなかろうか。また、足元にはチゴユリやタチツボスミレ、イカリソウなどが見られた。

 獣害防止フェンス(帰路、地域の方にお聞きしたところ、シカではなくイノシシ防止用らしい)に沿って歩き、施錠されていないフェンスの扉を抜けて、ヒノキ林の中のなだらかな道を登っていく。すぐに、膝の丈ほどのササが現れ、道は掘割状態。整然と並ぶヒノキの林の中、ササに覆われた一直線の道が延びる。単調な構図が美しい。

 「500m 口小」の表示。口明方小学校が設置した表示と思われたが、500mは、登山口からの距離か、高雄山までの距離か? そんな話をしているうちに、「600m」の表示。登山口からの距離であることが分かった。「京塚山を歩こう会」の文字も見られ、地域の住民に親しまれている山のようだ。人工林を抜け、アカマツの多い林の中、赤い松葉と松ぼっくりの落ちている道を歩く。右側には道に沿って続くくぼみがある。どのようにできたものであろうか?

 800m、900mとなだらかな尾根で距離を稼ぐ。道端には真っ白なギンリョウソウが落ち葉の下からちょうど頭を出したところ。松葉の絨毯に、ところどころホオ葉がアクセントをつける。周囲を探せば、背の高いホオノキが見られた。アカマツの大木を見ながら歩くと左手に人工的に作られたと思われる広場があった。かつて高雄神社があったと聞いていたのでその広場であろうか。そう思っていたところ、すぐ上にも広場があり、高雄山山頂とかかれており、高雄薬師堂跡の表示。

 広場にはホオノキやスギの落ち葉が積もり、見上げると石段が上方に続いている。その先には赤い屋根のお社が見えた。カエデの仲間と思われる発芽したばかりのたくさんの双葉を見ながら、石段を登ると、賽銭箱がおかれ、鍵がかけられたお社と、その隣に一体の石仏。「高雄山を次世代に伝えよう」と書かれた案内板には、高雄山の謂れが書かれてあった。

 ここで小休止。歴史を感じさせる場所である。古くから多くの参拝者がここまでの山道を行き来したに違いない。そのため、ここまでは参道であり、しっかりしている。スギの落ち葉の道を左山で登ると、すぐに広い場所に出た。小さなプレートには、左が直登コース、右が東尾根コースとあり、東尾根コースには「危険・×」と後から書き加えられていた。「東尾根」という表現がピンといこなかったが、この後明らかになる。

 十分な下調べをしておらず、尾根を直進するのが通常コースと思い込んで、迷わず直登コースを選んだ。この場所には高雄山展望台の表示があるが、樹木で遮られて展望はない。尾根を歩くと、ベンチのある北側の展望が得られる場所に出た。第2展望地である。ここからは、せせらぎ街道が走る谷とその向こうに「絶高」と呼ばれる形のいい山が望めた。

 この山の第2ステージはここからスタート。下界から見えた盛り上がりのピークへの登りが始まる。プラスチックで固定された丸木階段を登り、岩も見られるようになる。周囲の木々の背丈が低く、明るい新緑のトンネルを歩く。斜度が高まり、トラロープが現れる。ロープにつかまるほどの急登ではないが、息が切れる。1500m地点を通過し、右手の伐採地を見ながら、まっすぐに急登が続く。ロープは消えたが、傾斜は高まる。アキレス腱が伸びきってしまうほどの登り。

 大岩を登りきって休憩。急登はここまでかと思ったが、まだまだ続く。参道のような道はいつの間にか山道となっているが、明瞭で一本道。間違えることはない。岩の上にマツとモミが並んで乗っているおもしろい光景を左に見ながら登ると、今度は右手後方に郡上の町が見下ろせた。さらに新緑の直線急登が続く。こんなハードな登りがあるとは思わなかった。甘く見ていただけに、心の準備ができず、この登りがきつい。

 展望台から30分、ようやくピークにたどり着いた。山頂は一部切り開きがあり、山間の集落を見下ろすことができた。古い石碑があり、資料によると鎌倉時代のもののようだ。石碑の前に、「京塚山 854m」と書かれた小さなプレートが置かれていた。GPSで確認するとここの標高は863mで、本来の854mはさらに北にあることを地図で確認。地元ではここを京塚山としているらしい。

 地図に落としてきたガイドブックのルートをよく見ると、このピークへの直登コースではなく、南の尾根を経由して山頂に至るコースが掲載されている。途中の分岐点に書かれていた東尾根コースが本来のコースのようだ。山頂から南へ稜線上に道があり、帰路はこれを下ることにする。

 11時前であり、時間もあるので854mピークまで歩くことにした。ヤブ状態の薄い踏み跡を北へ、稜線の右側を歩き、痩せ尾根を通過。鞍部に下り始める辺りで前方の小ピークの向こうに丸いピークが見えた。先ほど地図で次のピークが854m地点であることを確認したが、この光景から山頂らしい丸いピークを854m地点と思い込んだ。

 テープが続く。コウヤマキが多く見られる。なだらかな小ピークは明るい稜線で、落ち葉が積もり気持ちのいい場所である。(実はこの辺りが854mの京塚山山頂であったことが後日判明することになる) 樹間からは右手に大洞山が望めた。再び下って鞍部へ。この鞍部は広く、疎林で落ち葉の地面がなめらかな曲線を描き、癒しの空間を作り上げている。

 鞍部から倒木を除けながら、30mほど登り返す。山の主と思われるような1本のモミの大木が無数の枝を空に広げている。目標の山頂と決めたピークには、石碑のある863mピークから20分足らずで到着。ここが山頂と思い込み、3人で記念写真を撮った。表示は何も無い。あるはずがない。ここは約870mほどの単なるピークで、山頂は通り越している。コウヤマキなどの木々に覆われたピークで、展望はない。稜線はさらに北へとつながり、踏み跡やテープも見られた。さらに先まで歩いてみたいところであるが、今日はここまで。

 ランチは途中の明るい稜線でとることにして、歩いてきた道を戻った。鞍部から登り返し、平らな稜線上で広い場所を見つけてランチの場所にした。実は全く偶然にも、このランチの場所が854mの京塚山山頂であることは、帰って気づくことになる。

 BOGGYさんからは、山菜のわさび和えや山菜おこわ。我々は串焼きと焼肉。デザートはコーヒーとフルーツ。新緑の陽だまりの中、稜線を流れるさわやかな春風が心地よい。生命力に満ち溢れた春の山はすばらしい。木漏れ日の下で、ひと眠りしたいところである。

 ランチの後、863mピークまで戻り、東尾根コースと思われる南の道を下ってみることにした。すぐに巨大な岩が現れ、岩の上に立ってみた。岩の縁に近寄れないほどの高度感。岩の東側にある道を下って、鞍部に下りると、テープは右の谷に下っている。ガイドブックのコースどおり。テープを追って谷の斜面に入る。

 道の痕跡はあるが、落ち葉に覆われた急斜面で、石も多く滑らないように下る。谷を埋め尽くす新緑の木々が美しく、雰囲気のいい場所である。振り返ると道が不明瞭で、ここを登るとなるとテープが無ければ迷いそうな場所である。葉を広げたばかりのヤブレガサや小さなフデリンドウが見られた。谷を左に見ながら。右山のトラバース。足場の悪い道を倒木を越えて下る。右の斜面からの落石も心配だ。時折、道幅がほとんど無くなるような場所もある。左側は深い谷で、滑落の危険もある。慎重に歩く。

 右の尾根が近づき、分岐から10分ほどで尾根に出た。登ってきた尾根かと思ったが様子が違う。GPSを見ると、さらに100mほど北に見える尾根が登ってきたところのようだ。東尾根とはこの尾根のことらしい。尾根を下り、松林の中、左山から右山となり、再び急斜面のトラバース。小さな谷を渡るところは、道が洗い流されてり、谷の上部を迂回した。登りとは全く様相が異なり、このコースはいずれ廃道になるであろう。分岐点に「危険・×」と書かれていたことがうなづける。

 道が緩やかになり、人工林へ入って分岐点の展望台に出て、登りのコースと合流。この付近で枯れた松にヒトクチタケをいくつか見つけた。まるで栗饅頭のようにツヤツヤに輝いて美味しそうであるが、不食のキノコらしい。この先、登ってきた長い尾根を一直線に下って車道に出た。

 想像した以上に変化のあるおもしろい山歩きとなった。この山は夏にはヤマビルが出ると「○○」さんのHPに書かれてあったので、登山口近くで庭の草取りをしていた地元の方に聞いてみると、ヤマビルが生息しているとのこと。秋〜春に登るのが適期。東尾根ルートは標識どおり危険な状態となっているので、直登コースの往復がいい。歴史ある里山探訪が楽しめる山である。

 さて、後日談。GPSのトレースを見て、京塚山を通過していたことに初めて気がついた。「山歩記」さんやよっせーさんのHPの京塚山のレポートの山頂の写真を拝見し、我々がランチをしているところの写真を見比べて驚いた。なんとランチの場所が山頂だった。下調べは十分にしておくべきと、今回も反省。
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