トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)(一部誤動作あり)

★展望と植物の写真はこのページの下段にあります

丸黒山 (1956m 高山市) 2007.10.13 晴れ 2人

国立乗鞍青年の家駐車場(8:39)→日影平山南分岐点・牧場ゲート(8:57)→ブナの木平(9:09)→岩井谷乗越(9:13)→旧道・新道分岐点(9:25)→<新道>→枯松平山(9:46)→白樺広場(9:52)→枯松平避難小屋(9:56-10:04)→ガンバル坂(10:13)→白山見晴台(10:21-10:26)→池見台(11:00)→丸黒山山頂(11:06-12:31)→池見台(12:46)→白山見晴台(13:13)→枯松平避難小屋(13:33-13:37)→岩井谷乗越(14:06)→ブナの木平(14:10)→日影平山東分岐点(14:16)→日影平山山頂(14:23-14:26)→日影平山南分岐点・牧場ゲート(14:30)→国立乗鞍青年の家駐車場(14:50)

 秋本番。週末は晴天の予報。紅葉を目的に週末の山歩きを検討し、飛騨方面や福井県の山の中から、まだ登っていない丸黒山を選んだ。当初から山歩きの参考書としていた「岐阜の山歩き・ベスト55コース」に掲載されている県内の山で、取り残しているのは丸黒山と鷲ヶ岳のみ。丸黒山は飛騨高山スキー場の東側に位置し、乗鞍岳への登山道の途中にある山でもある。乗鞍やアルプスにも近く、山頂からの展望はすばらしいと聞いている。

 登山口となる国立乗鞍青年の家をめざし、自宅を6時に出て、東海北陸道を北上し、飛騨清見ICから無料の中部縦貫自動車道を最近開通した高山ICまで走る。空には雲が広がっているが高層の雲で展望はいい。高山西ICを過ぎて3つのトンネルを抜けると、高山市街の向こうに、笠ヶ岳や槍穂、乗鞍岳の大パノラマがフロントグラスいっぱいに広がった。これには感動! 丸黒山からの展望が期待できそうだ。
 
 高山市街北部を東進して飛騨高山スキー場への道に少し迷いながら合流して、生井川沿いに山の中に入っていく。スキー場への道であり、2車線の舗装道路を、朝日を浴びて快適に走行。後半はカーブの連続する道で標高を稼ぐ。カモシカに道を譲ってもらい、飛騨高山スキー場の歓迎看板を通過してすぐに国立乗鞍青年の家に着いた。大きな駐車場に車を停めて、青年の家でトイレを借りた。
 
 駐車場に設置してある案内看板を見て、登山口を確認し、隣の箱に登山届けを入れた。今年の春に行方不明になった方のチラシが掲示されていた。青年の家は標高1500mほどにあることから、標高1956mの丸黒山山頂までの標高差は450m程度であるが、片道5kmでいくつかのピークを越えるロングコース。ガイドブックのコースタイムは3時間である。
 
 登山口となる林道は青年の家の裏の北側にある。青年の家の左手から裏に抜けて、大きな閉鎖されたトイレを左に見ながら、時計ポールのあるところから林道を下る。丸黒山の標示があり、草原のススキが高原の秋を告げる。カラマツ林の中、蛇行する林道を登る。立木に巻き付いたツタウルシが真っ赤に紅葉してよく目立つ。クサイチゴを見ながら15分ほど歩くと、ゲートに突き当たった。左右・直進と3つの道があり、右はカブト山ハイキングコースと書かれているが、もう1つの標識は壊れていた。地図とGPSでコースを確認。左は日影平山への階段らしい。ここはゲート左を直進である。
 
 赤と緑がまだらになって紅葉し始めたハウチワカエデの向こうには牧場が広がり、御嶽山がシルエットで見えた。牧場の鉄柵に沿って紅葉の天然林の道を下る。林床のササが朝日に反射して白く輝く。鞍部まで下ると、標高1535m、丸黒山4.7kmの標示があった。このコースにはスタート地点の青年の家が1番、ゴールの丸黒山が60番となっており、コースに番号が表示されている。この鞍部は13番である。番号で自分のおおよその位置を確認できる。ここは日影平山への分岐点でもあり、帰路はここから日影平山へ向かった。
 
 丸木階段を登って小ピークを越え、登り返すとブナの大木がある広場に出た。ここがブナの木平。コハウチワカエデ、アオモリトドマツ、サワラ、イチイなど木の名前が書かれたプレートが付けられており、自然観察をしながら登山ができる。ブナの木平から急な丸木階段を下る。帰路の登り返しがきつそうだ。下り切ると、岩井谷乗越の標示。ササの緑の中にカラマツやシラカバが美しい林を作っている。
 
 緩やかに登って、左に深い谷を見る。樹間には北の山並みも見ることができる。道はカラマツの落ち葉が積もっており、フカフカで気持ちがいい。ミズナラ平を通過して、緩やかな登り下りを繰り返す。ツタウルシの紅葉やナナカマドの赤い実が林を彩る。足下にはマイズルソウの赤く透き通るような実が、まるでルビーのように散らばっている。春には可憐な白い花の道にちがいない。
 
 ブナの木平から15分ほどで新道と旧道の分岐点に着いた。新道は尾根コースで枯松平山を経由して枯松平避難小屋で旧道と合流する。新道に入る。次々に現れる丸木階段を登って展望のない尾根を歩く。道にはシラカバの落ち葉が散乱し、ササがはみ出しているようなところもあった。コシアブラの高木が多く、白くなった落ち葉が散っている。キノコが多く、アミタケの仲間がいくつか見られた。アキノキリンソウを見ながら30番を通過。半分を歩いたことになるが、標高を稼いでいない。まだ1時間歩いただけ。これからが本番のようだ。
 
 新道に入って20分ほど歩くと平坦な場所に休憩ポイントの標示。ここが枯松平山のようだ。避難小屋で休憩することとして、休まずに下りにかかる。ササの道を左に向きを変えながら下っていくと、シラカバの美しい林を通過する。ここに白樺広場の表示があった。白い波をたてるササの海に、白いシラカバの幹が幾何学模様を描き、黄色い葉が太陽の光に透けて金色にきらめく。飛騨の山は美しい。樹間からアルプスの山々が顔を見せた。笠、槍、穂高である。笠ヶ岳のすらりと尖った山容はすばらしい。
 
 シラカバ林を抜けると、木造のきれいなログハウスが現れた。枯松平避難小屋に到着。歩きはじめて1時間15分。初めての休息。パンを食べて、喉を潤す。小屋は広く、泊まれるような部屋もあった。表示板によるとここの標高は1635m、丸黒山山頂までは2.3km。
 
 10分ほど休んで、南へ歩く。平坦な地形であり、水はけが悪く、ササとカラマツの林の中に木道が設置されている。平金乗越を通過して数分で、目の前に急斜面に作られた木の階段が表れた。ここがガンバル坂であり、いよいよ山頂に向けて、急登が始まる。左にシラカバ林、右にカラマツ林を見ながら、一歩一歩登っていく。
 
 10分弱で登り切ると丸木ベンチのある広場に着いた。白山見晴台で、西側が開けて白山がきれいに見えた。南へ道があり、朝日村青谷と書いてある。広場の中央にブナの大木の周りにナナカマドが巻き付いたようなおもしろい木があった。苔むした倒木にはクロサカズキシメジが生えており、倒木の周囲にはユキザサやツルリンドウの赤い実が見られた。
 
 5分ほど休憩して、再び丸木階段を登る。こんどは根性坂。登る気にさせてくれる名前がいい。鉄網と石で整備された階段を登る。この辺りもコシアブラが多い。紅葉の天然林の中を、ひたすら登る。赤土の少し堀割れた道が現れ、52番を通過。あと少し。振り向くとここでも白山が見える。高山市の町も見下ろせた。湿った平坦な場所を歩いて54番通過。ナナカマドの紅葉が青い空に映える。乗鞍まで10kmの標示。ここに日影平まで4kmと5kmの2つの表示板があった。緩やかに上下を繰り返す。足下にはゴゼンタチバナやシラタマノキが現れ、標高が高いことが分かる。
 
 尾根を水平に歩くと、左側が開け「池見台」の表示。目の前に乗鞍岳の峰がすばらしい。最も標高の高い剣ヶ峰は左の山群の中央の尖った山である。正面は恵比寿岳、左にはスカイラインの奥に猫岳が見えた。山腹が紅葉の黄色い点でモザイク状になっており美しい。見下ろして見たが、下界がよく見えず、池は見つからなかった。後で地図を見ると、この真下が五色ヶ原であり、池めぐりコースになっている。おそらくこの池が見えるのだろう。前方から大きな三脚を持った単独男性が下ってきた。山頂はすぐそこと聞いて、先へ進む。
 
 樹林帯の尾根を数分歩くと山頂に着いた。3時間かかると思っていたが2時間半で到着。広い山頂には誰もおらず、小さなお社があり、賽銭が置いてあった。振り向くと、すばらしい大パノラマが広がっている。ザックを下ろすのも忘れて、大パノラマの写真を撮った。左から、北ノ俣岳、薬師岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳、抜戸岳、西鎌尾根に繋がって槍ヶ岳、南岳、西穂高岳、奥穂高岳、吊尾根をはさんで前穂高岳、明神岳、その手前に焼岳。この角度から見るアルプスは最もすばらしいのではないかと思った。どこにも負けない一級の展望地である。冠雪する頃には、さらに美しいに違いない。
 
 乗鞍方面もやや木が邪魔しているが、文句なしの眺望である。白山方面は木にさえぎられて見えなかった。山頂を動き回ってたくさんの写真を撮った。山頂から乗鞍岳への道が東へ下っており、少し踏み込んでみた。どこまでも下っていくようで、すぐに引き返した。乗鞍山頂までは10kmもあるが、いつか歩いてみたいと思った。
 
 槍穂が見える場所で、丸太のベンチにすわってランチにする。メニューはカレーうどんと缶詰、フルーツのデザートとコーヒー。最高の展望地で食べるランチはこれまた最高である。風もなく、暖かい日差しを背中に受けて、誰も登ってこない山頂でのんびりとランチを楽しんだ。北ノ俣岳方面から雲が出始め、ちぎれ雲が流れた。お社の前で手を合わせて下山開始。キノコや花などの写真を撮りながら、登ってきた道を下った。
 
 避難小屋から旧道に入る。湿地を渡って、ササの天然林を緩やかに下り、カラマツ林を抜けて新道との分岐点に着いた。新道のようにピークを越えないので楽なコースであるが、シラカバ広場があり新道のほうが面白い。根性坂、白山見晴台、ガンバル坂を経由してブナの木平へ。ブナの木平手前の岩井谷乗越から北に道がありブナの木平のピークを回りこむ道と思われた。ブナの木平の次のピーク手前にも北へ道が派生していたので歩いてみるとピークを迂回する楽なコースとなっていた。
 
 次の鞍部に日影平山の表示があったので、日影平山に登ってみることにして、右の道に入る。急斜面をトラバースしていくと数分で山頂に着いた。樹林帯の中で展望は無い。倒木に黄色いキノコが生えていた。後で調べてみるとヌメリスギタケというおいしいナメタケの仲間のキノコだった。また、チョコレート色をしたハナイグチもいくつか見られた。
 
 日影平山から南への階段を下ってゲート前に出て、林道を歩いて乗鞍青年の家まで戻った。駐車場の車も増えており、シラカバ林を散策する人も見られたが、丸黒山への今日の登山者は我々と単独男性の3人だけであった。

 この山は、アプローチもよく、登山道もよく整備されており、距離はあるものの標高差は500mほどと比較的小さく、ファミリー登山にも適した山ではないだろうか。ただし、乗鞍に近い深い樹海の中にあり、万全の装備で歩かれたい。美しい天然林やたくさんの花、山頂からの大パノラマなど、乗鞍やアルプスに近い飛騨の山の魅力が満載されている。天気のいい日に、この一級の展望を楽しんでいただきたい山である。
 
 帰路、高山市の道の駅に寄った。チョコレート色のハナイグチが1パック400円で販売されていた。丸黒山への登山道にたくさんあったキノコだったのでびっくり。食べられるとは思わなかった。

★丸黒山からの展望






★丸黒山の植物

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