三棟山 (630m 下呂市) 2004.9.11 曇り 2人
中津原公民館(9:45)→登山口(9:52)→山頂1200m表示板(10:06)→山頂900m表示板(10:14)→佐見分岐点(10:20)→山頂600m表示板(10:22)→山頂300m表示板(10:30)→三棟山山頂(10:40-12:20)→佐見分岐点(12:34)→登山口(13:01)→中津原公民館(13:10)
先週、山に出かけたことから、今週は山行の予定なし。温泉にでも出かけようかと考えたが、温泉に行くなら1山登りたい。近くに温泉があって、近距離で簡単に登れて、まだ登ったことのない山。思いついたのが三棟山。金山町を通過するたびにこの山を見上げ、いつかは登りたいと考えていた山である。
金山市街地から眺めると、低い山で山頂半分の木が伐採されており、よく見れば小さな東屋も確認できる。せきすいさんのレポートによると登山者用の駐車場が無いことが分かった。久しぶりに自転車アプローチ。小型自転車を2台積んで、関−金山線を北上する。今年は猛暑のせいか、すでに畦道にはヒガンバナが咲き始めている。
金山の41号線沿いに車を置いて自転車で出発。飛騨川を渡りJR金山駅に突き当たったら左へ。JR高山線を縫うように、左に飛騨川を見ながら10分ほどで中津原の集落に着いた。登山口までは登りのため、自転車は踏切を渡り少し登ったところにある中津原公民館に置いた。ここから、集落の中の登り道を直進し、道がゆるやかに左に向きを変え始めたカーブの三叉路を右に入る。色とりどりの草花が植えられたお庭や、秋野菜の芽が出始めた畑を見ながら、公民館から10分ほどで登山口に着いた。
入り口のフェンスには大きな案内板があり、クズの蔓に覆われて文字が見えない。蔓を除けると、三棟山の概要が書かれている。標高629.6m、距離1650m、所要時間50分〜1時間30分、山頂には三山大権現、230度の展望。概念図もある。
ヒノキの人工林に踏み込む。すぐに新しい「癒しの道」の表示板。足下にはキンミズヒキが咲き乱れ、キツネササゲの黄色い花が身を潜める。ササの実が揺れ、チジミザサの黄緑色の葉が美しい。左にはしっかりした石垣が続く。案内板によると、水田の跡らしい。かつて、先人は山を開墾し稲を作った。現在、中山間地域の農業後継者は少なく、水田にはヒノキが植えられ再び山に戻っている。何か寂しさを感じざる得ない。
林の中には苔むした石が多く見られた。昼間でも暗そうな人工林ではあるが、山道にはいろいろな花が咲き乱れる。赤いミズヒキが一般ではあるが、ここは白いミズヒキも多い。紅白並んで咲いている。ノブキが質素な花を付けている。白い花はカラマツソウ、紫色のシソ科の花は何だろう。
鉄塔巡視路の黄色い標識を見ながら、人工林の中をジグザグに登っていく。白い花が目に止まった。ヤマジノホトトギスだ。地表近くに広げた小さな株に美しい花を咲かせている。鳥のホトトギスに似た模様から名付けられた花は、見れば見るほどにおもしろい形をしている。この先、何度もこの花に出会った。
山頂まで1200mと表示されたプレートを通過。右に谷が現れ、鉄板に細い鉄棒が付けられた狭い橋を滑らないように渡る。アキチョウジの花が秋を告げる。マムシグサの仲間が大きな実を付けている。ウバユリの実も大きい。900mの表示を過ぎ、右手の谷には小さな滝などがあり、気持ちのいいせせらぎの音を聞きながら登る。先日の台風の影響であろうか、倒木が目立つ。
谷沿いの斜面にはたくさんのヤマジノホトトギスが、まるで地上に落ちた星のように散らばっていた。真っ直ぐ伸びた茎の丸い蕾はオオバショウマ。下のほうから花を咲かせ始めていた。
Y字の分岐を通過。表示に従って山頂へは右。左は「佐見」の表示。鉄塔巡視路でもあり、白川町に続いているようだ。踏み跡はしっかりしており、歩いてみたいと思った。なだらかな草付きの道で小川を渡り、山頂まで600mの標識。倒木の下を潜って右の斜面に取り付く。ここで谷から離れる。先ほどまでのせせらぎの音は消え、静かな登りとなる。
急斜面に付けられたジグザグの道を行く。今まで足下をにぎわせた植物はすっかり無くなり、この辺りから人工林の下草は姿を消す。代わりに様々なキノコが道沿いに顔を出す。大きなもの、小さなもの、白、青、赤・・・見たことのないようなキノコがたくさんある。上薬をたっぷり塗って作った陶磁器のブローチのような青いキノコが苔の緑の中に並んでいる。これにはちょっと感動。自然はすばらしく美しい物を創り出す。
ジグザグの道には所々にショートカットの道が付けられている。300mの表示を過ぎて、道はなだらかになる。山頂間近の気配。キジバトが目の前を横切った。小さなクリのイガが所々に落ちている。昨夜、イノシシがミミズを探した跡がたくさんある。前方にお社が見えた。山頂である。
山頂には三山大権現が祀られており、その脇に三等三角点があった。山頂はあいかわらず背の高い人工林の中。左にトイレの表示。ゆるやかに下ればすぐにトイレに着く。簡易なトイレではあるが女性にはうれしい施設である。トイレの前にはハギの花が満開。
山頂から右の尾根を直進すると尾根の先端に出る。小さな東屋が1つ。今まで全く展望がなかっただけに、いきなりのここからの光景に声が出る。金山の町並み。緑色の飛騨川。入り組む山。41号線を走る車。まるで箱庭を眺めているようだ。下から見上げると低く見えるが、上から見下ろすと実に高度感がある。
東屋周辺は大きく伐採されており、ここが入り口の案内板にあった230度の大展望地。東屋には大きな双眼鏡が設置してあり、雨に濡れないようにしっかりとシートで覆われていた。東屋の北にはきれいな方位版があり、周囲の山が同定できるようになっている。今日は雲が多く御嶽など遠方の山は見られなかったが、梁谷山や瓢ヶ岳辺りの山までは確認できた。
東屋の天井には、下原小学校のPTAの活動により登山道が整備されたことが記されており、小学生の登頂記念プレートや記帳ノートがいくつか置かれていた。記念プレートには子供達の好きな言葉が書かれており、「努力」や「一期一会」などに混じって「一石二鳥」「一挙両得」などほほえましいものもある。子供達にはこの絶景と集団登山の思い出がいつまでも残っているに違いない。
少し早いが東屋横で昼食にした。1本丸ごと火であぶったトウモロコシが最高に美味しかった。山頂のススキが初秋の風に揺れる中で、下界を見下ろしながら熱いコーヒーを飲んだ。誰も登ってこない山頂は実に静かだ。もう秋だとしみじみ思った。
下山は登ってきた道を引き返した。キノコや花の写真を撮りながらゆっくり下った。登山口手前で北への道が派生していた。どこかで合流するだろうと、この道に入ったが北へ北へと下ってしまうので、もとの道に戻った。おそらくもう1つの登山口が北にあるようだ。
この山は全コース人工林の中を歩くが、前半は草花が多く、谷川もあり、とくにこの時期のヤマジノホトトギスはたくさん見ることができる。道はよく整備されており、迷い込むような所はない。登山口に駐車場がないため、今回は自転車で登山口近くまでアプローチしたが、中津原集落下の飛騨川沿いの道の路肩に置けないことはない。通行の邪魔にならないような場所を選びたい。川沿いから登山口までは徒歩で15分程度。
帰路、金山の道の駅の温泉で汗を流した。この辺りからも三棟山がよく見える。飛騨からの帰りに寄り道して登れる山だ。
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