★水後山からの展望と地図を見る
水後山 (1556m 郡上市) 2007.3.17 晴れ 2人

ウイングヒルズスキー場第二駐車場・満天の湯(8:04)→ゲレンデトップ・ゴンドラ降り場(9:13)→ゴンドラ降り場上部の展望地(9:17-9:24)→モミの低木(10:04)→水後山山頂約100m手前(10:19-10:29)→モミの低木・ランチ(10:38-12:21)→ゲレンデトップ・ゴンドラ降り場(12:57)→駐車場(13:43)

 この休みは好天の予報。寒波の戻りで、濃尾平野から見る美濃の山々も白くなり、まだまだ雪の山は楽しめそう。金曜日の深夜に、行き先に迷いながら、前回の福地山の装備で雪の山が歩けるように準備。パッキングをしながら、迷いに迷って、行き先を水後山に決めた。

 水後山は郡上市白鳥町の桧峠から大日ヶ岳への登山コースの途中にある。3年前の6月にこのコースで大日ヶ岳まで歩いたが、終始ガスの中で、全く展望がなかった。晴れていれば水後山辺りから鎌ヶ峰がどのように見えるのであろうか、いつかリベンジしたいと思っていた。また、この山は雪の時期の登頂記録もあったことから、この時期に登ってみることにした。

 登山口となる桧峠に向かう。白鳥ICを下りて156号線を北上。「石徹白」の案内に従って左折し、桧峠を目指す。路面に雪はなく、スキーヤーの車に混じって難なく桧峠へ。3年前に駐車した峠の空き地は除雪用の重機置き場になっており、ウイングヒルズ・スキー場の第2駐車場に停めることにした。

 第2駐車場は天然温泉「満天の湯」の駐車場と同じで、峠の交差点から「満天の湯」の看板に従って、西の道に入るとすぐに駐車場ゲート。駐車料金は1000円。温泉の一段下にはレンタルやトイレのあるサービスハウスがあり、その前に駐車する。駐車台数は30台程度と少ない。

 駐車場の西端から、これから登る尾根とゲレンデトップ、そして遠くに僅かに頭を出す水後山が見えた。身支度して、サービスハウスの前でスノーシューを履く。ウイングヒルズの最も東のゲレンデは中級者用のクルージングコースで滑走距離2000mの幅の狭いゲレンデとなっている。このゲレンデのトップが水後山、そして大日ヶ岳への登山口となる。

 人工林が切れるまで、200mほどゲレンデの縁を歩いて、右の天然林に踏み込む。凍り付いた雪面がバリバリと割れる。飛び出したササが揺れる中、木々の間を縫って軽快に登っていく。傾斜はさほど急でもなく、スノーシュートレッキングにはピッタリ。15分ほど歩いて人工林を迂回するため、一旦ゲレンデに出て再び天然林へ。

 林間にはボードやスキーのトレースが交差しており、その上を歩くと沈み込みも少なく歩きやすい。後方には樹間越しに毘沙門岳が立ち上がってくる。左のゲレンデ向こうには小白山が真っ白な峰を見せる。急緩繰り返しながら、黙々と斜面を登っていく。3年前の6月にはケレンデの道を歩いて、アゴが出るほどゲレンデトップまでが長かったことを覚えているが、この時期、そのイメージは全くない。

 朝日を受けて木々の影が雪面に縞模様を作っている落葉樹林帯の登りはすばらしく、疲れを感じさせない。40分ほど歩いて、ようやくゲレンデトップのゴンドラ終点の建物と鉄塔が見えてきた。左のゲレンデ向こうの尾根には第2クワッドの建物が見え、小白山と野伏ヶ岳が並んでいる。ゴンドラ終点の建物が近くなり、美しいダケカンバの林の中を歩く。後方には白鳥高原スキー場や毘沙門岳が樹間を埋める。

 増えてきたスキーヤーを左に、ゲレンデを後にして、雪の急斜面に取り付き、青空に向かって登る。登り切って、小さな雪庇が横切る真っ白な雪原に歓声。東の鷲ヶ岳から、西の木々の向こうの小白山や野伏ヶ岳まで、大パノラマが目の前に広がる。毘沙門岳は南に広がる美濃の山に沈み込んでいる。歩いてきた尾根やクルージングコースが眼下に見える。ザックを下ろして、パンをほおばり喉を潤す。山頂に着いたような気分で、写真を撮る。

 さて、ここからは尾根歩き。まずは広い雪原をブナの林へと歩く。すぐに前方の稜線の向こうに尖った山が見え始める。右が鎌ヶ峰、左がこれから目指す水後山である。夏には、この辺りはうっそうと繁るブナの天然林であったが、今、その面影は全くない。葉を落としたブナがコツゴツとした枝を青空に広げて春を待つ。厳しい環境の中で生きるからこそ、この美しい姿があるのだろう。

 大きな枯れ木の横を通過。見覚えのある大木があり、3年前に登山道の近くで見た記憶がる。なだらかな尾根を歩くと、正面の鎌ヶ峰や水後山が次第にその姿を現しはじめる。1391mの小ピークを通過して、少し下り次の小ピークへ登り返す。尾根の右には雪庇が張り出しいる。

 木々の切れ間から美しい白い稜線が全貌を現す。これが見たかった。左の水後山から右へ続く稜線は鎌ヶ峰を経てなだらかな大日ヶ岳へ、そして前大日へと流れる。青空をバックに描かれた白い稜線は、下界から見る大日ヶ岳とは違い、全く標高の高さを感じさせない山並みとなって見えるのがおもしろい。

 赤布が続く。ブナの大木を見ながら、再び少し下って、正面に水後山を見ながら、ゆるやかな登りにかかる。雪庇がロール状に巻き込んでおり、前方に続く尾根は右に曲がっている。その先に水後山がある。雪はしまっており、スノーシューが沈み込むこともなく、トレースの全くない白い稜線歩きは爽快。

 銀色に輝くブナの樹間からは、鎌ヶ峰や大日ヶ岳が徐々に方向を変え、そして形を変えながら次第に手前の山に姿を隠していく。尾根の左にあるブナの大木が雪よけとなって、尾根に深い溝が刻まれている。この溝をいくつも越える。吹きだまりはパウダースノー状態。日が差すものの気温は氷点下。写真を撮るために手袋を脱ぐ右手が冷たい。冬型の気圧配置が強まるとの予報通り、時折、強い西風が吹き抜ける。樹間からは西に小白山が望めた。

 急斜面を一登りして、水後山が近づいた。水後山の手前には小ピークがあり、三角形が2つ重なったように見える。鎌ヶ峰は頭しか見えない。雪庇が崩れかけてクレパスが続いている。尾根には美しい風紋が波を描く。モミの低木のある雪のテラスを通過して次第に傾斜が増し、尾根も痩せてきた。西側の斜面も急で、滑落すれば深い谷に吸い込まれそうである。

 1mほどの段差が尾根を塞ぐ。右は雪庇、左は急斜面。この段差を乗り越えようと、膝をつくが、雪が崩れて、足をかけることができない。雪を掘りながら、数分間格闘して、雪まみれで乗り越えた。中判カメラを首に掛けていたことを忘れていて、カメラが雪まみれに。

 さて、山頂手前のピークはすぐ前。かまぼこ型の急な斜面に取り付く。雪は固く、スノーシューの爪が効いているが、滑れば危険な状況。一歩一歩、確実に雪面を捉えて慎重に登り切った。

 登り切ると、前方が開けた。目の前に鎌ヶ峰が雄壮な姿を現す。水後山は手の届くところにある。そこから鎌ヶ峰への稜線には雪庇の美しい尾根が続き、雪庇が崩壊して雪崩となっている場所が随所に見られた。鎌ヶ峰の先には水平に近い大日ヶ岳の山頂、そにて三角の前大日へと続く。美しい。夏にはホワイトアウトの場所であったが、今日はこの稜線を見ることができた。おそらく夏に見る稜線とは全く違うであろう。今回の目的達成。

 周囲を見て、景色に感動してばかりはいられない。立っている所はかまぼこ型のヤセ尾根で、右には雪庇が発達しており、左は急斜面。10m先で水後山山頂への最後の斜面に取り付くことになる。左に寄って、そろそろ歩いて斜面の下から山頂を見上げる。さらに急なかまぼこ尾根が隆起している。右には雪庇。北斎の赤富士の波のようだ。左はさらに急斜面。スノーシューで登る斜面ではない。

 視認できるピークの縁までは50mないように思われた。GPSで確認すると、山頂まで標高差30m、距離で100mほど。持ってきた12本アイゼンとピッケルで登れば、登頂は難しくないと判断したが、安全策をとって今日はここまで。山頂直下まですばらしいスノーシュートレッキングをさせてくれた水後山のイメージを残しておきたいという思いが、登頂を断念した理由でもある。登ってこいと言わんばかりに頭を持ち上げ、手招きする水後山を後ろに、記念写真を撮った。

 ピークを後に、斜面を慎重に下る。眼下には毘沙門岳や歩いてきた蛇行する尾根が広がる。大パノラマに吸い込まれるように下って、モミの低木のある雪のテラスでランチにする。雪をかぶったモミの木が風よけになってちょうどいい。モミの木を背中に、ガスとガソリンのストーブを2つ並べて、味噌煮込みうどんとおでんを作った。

 目の前にクレパスができていている。正面に鷲ヶ岳、白尾山、母袋烏帽子山が並び、遙か遠くにピラミッド型の恵那山が望めた。左には、御嶽山が山頂を雲に隠している。この眺望を前に食べる熱い味噌煮込みが美味しかった。日が当たり、それほど寒くもなく、誰も登ってこない尾根で2時間近くものんびりとランチを楽しんだ。ここでも記念写真。西側には野伏ヶ岳がきれいだ。

 我々のトレースを踏んで、尾根を下った。やや東へ向きを変える辺りで、もう1つの尾根が右に派生している。視界の効かない時には要注意の場所である。美しいブナ林を抜けて、ゲレンデ上部の雪原に出た。朝見えなかった荒島岳もきれいに見える。能郷白山や滝波山、高賀山群など美濃の名山もすばらしい。

 クルージングコースの上部までは急な斜面を下ることになるが、これを避けて西側の尾根を歩いてゲレンデに出ることにした。正面の小白山や野伏ヶ岳がすばらしい。シリセードでゲレンデに降りて、ゴンドラの建物の裏を歩いてクルージングコースの上部へ。林間を下り始めようとしたところへ、スノーボードの男性から水後山の状況を聞かれた。登山もやってみえるようで、野伏ヶ岳に行くことが多いと言われた。正面に見える毘沙門岳に比べれば、雪の時期に水後山に登る登山者は少ない。今日も登山者は我々の2人だけであった。

 林間をジグザグに、気の向くままに歩いて、40分ほどでサービスハウスに到着。温泉に入っても渋滞前に帰れそうなので、満天の湯で汗を流した。露天風呂から歩いてきた尾根と水後山の頭が見えた。すばらしい山歩きの後の最高の湯であった。

 今年は雪が少なく、通常の雪の状態が分からないが、今回はスノーシューに最適のコンディション。ゲレンデトップまでの明るい林間の登りも適度な傾斜で展望もよく、夏のゲレンデ歩きよりもかなり快適である。ゲレンデ上部の雪原は大展望地。ここまでのスノーシューハイクでも十分に楽しめる。この先、雪庇の尾根が続くが急傾斜は少なく、天気が良ければすばらしい歩きができる。

 ただし、山頂手前は斜度も大きく谷も深い。無理は禁物。アイスバーンの時にはアイゼンとピッケルが必要。この時期、登る人は少なく、意外な穴場であると思った。次回は、山頂までの残り100mを歩くことを目的に、もう一度、雪の時期にチャレンジしたい山である。
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