トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作あり

ナガザコ・水晶山 (569m 546m 関市) 2009.5.24 曇り・一時雨

林道通行止め地点(9:22)→登山口(10:02)→炭窯跡(10:07)→氷柱石(10:19)→人口重心モニュメント(10:23)→稜線合流(10:37)→鉄塔(10:39)→ナガザコ山頂(10:52-11:03)→鉄塔(11:11)→人口重心分岐点(11:14)→展望地・水晶山標示板(11:26-11:31)→西のピーク(11:36)→水晶山(11:42-11:51)→展望地・水晶山標示板(12:03-12:45)→稜線離脱(12:54)→人口重心モニュメント(12:59)→登山口(13:14)→駐車地点(13:57)

 天気予報は曇り一時雨。午後からさらに不安定な大気になるという。遠出をあきらめ、近場の山を探して、未登頂の旧武儀町にある水晶山に登ることにした。水晶山はかつて人口重心があった山であり、そのモニュメントが設置されている。また、山頂には水晶のある大岩があるという。急遽行き先を変更したことから、ネットの情報をほとんど見ることなく、家を出た。この情報不足が珍道中を招くことになる。

 関・金山線を北上。武儀事務所の前の信号交差点を左折し、県道63号線に入る。津保川沿いに走り、最初の信号交差点を左折。すぐに広い道を横断して、後は道なりに集落を抜け、林道に入る。林道に入ってすぐに通行止めの標識。標識手前に川にせり出した駐車スペースがあり工事関係の男性が1人みえた。聞けば、災害工事中とのことで、重機が道を塞ぎ、通行できない。

 水晶山に登ることを告げると、「この先にある軽自動車を使ってください。」と言われた。そんな訳にもいかないので、ここから歩くことにした。林道入口に林道の距離が標示されており、その距離は約2.6km。準備運動には適度な距離である。「今日は工事が無く誰も来ないのでここに駐車していいよ。」と、駐車の了解を得た。「歩くと結構遠いですよ。」との声に送られて、ストックの代わりに傘を持って林道を歩きはじめる。工事中で不運と思ったが、この林道歩きが、最後に思わぬ出会いを生むことになる。
 
 重機の先の軽自動車を見ながら、川に沿って未舗装の林道を歩く。林道終点まで2.2kmの標示を通過。すぐに後方からやって来た先ほどの軽自動車に追い抜かれた。使う人がいたようで、借りなくてよかったと思った。少しして軽自動車が戻ってきて停車。「重装備ですね。」と声をかけられた。地元の方で、しいたけを見てきたとのこと。林道周辺にはしいたけの原木が見られる。

 林道はいつしか舗装道路に変わり、脇には水色のミズタビラコのかわいい花や雨に濡れたフタリシズカが咲いている。また、純白のガクウツギが目を引く。林道は花の宝庫だ。写真を撮りながら歩いた。20分ほど歩き、お地蔵様を通過。林道の傾斜が大きくなり、ウツギやエゴノキの白い花を見ながら登る。S字にカーブを歩くと、地面に紫色の大きな花が落ちている。見上げれば、キリの木が頭上で枝を広げ、空を覆う。キリの花がこんなに大きな花であることを改めて知る。小雨が降りだしたので傘を差して歩く。
 
 すぐに小さな広場に出た。看板があり、人口重心遊歩道案内図のタイトルと案内地図、人口重心の解説などが書いてある。この案内図をよく見ておけば崩壊箇所を回避するルートが示されていたのだが、遊歩道であれば問題なく歩けると判断し、ほとんど地図を見ることなく山道に入った。
 
 とたんに、道は草むら。雨に濡れたイタドリやアカソが道を塞ぐ。ズボンを濡らしながら人工林を歩く。谷を2つ3つと渡っていく。どうみても遊歩道ではなく山道である。炭窯跡の石積みを見ながら歩き、丸木橋を滑らないように登る。雨に濡れた人工林の下草は一段と艶のある緑となって生き生きしている。
 
 崩壊しかけた丸木階段を登り、荒れた谷を渡る。ここで谷は二手に別れ、その間を登っていく。ホトトギスの葉が足元にたくさんあり、秋には美しい花が見られるに違いない。ロープのある急斜面を登ると、炭窯跡休息所を通過。すぐ上に氷柱石の標示があり、草木を乗せた大岩から水が滴り落ちていた。冬には凍って氷柱になることからこの名前が付いたようだ。

 右山で左へトラバースしていくと、下草の無い人工林が現れた。ジグザグと登っていくと、丸いボール状のモニュメントがあり、人口重心地点の標示。丸木のベンチもある。こんなところが人口重心だったとは。水晶山への「→」は右へ。先にナガザコ山頂を踏むことにして右へ歩く。暗い人工林の中をトラバースしていくと、次第に林床には潅木が現れる。モニュメントから5分ほど歩くと、モチツツジがたくさん咲く場所に水晶山の標示柱が現れた。ちょうど尾根を横切る場所である。ここの標示の矢印は斜面を登るように付けられており、ネット情報ではここから斜面上方に道が続いているらしいが、全く気が付かず、トラバース道を直進した。
 
 その先で垂直に近い斜面のトラバース道は岩がむき出しになった状態となり、斜面にはホールドできる木や岩がない。それでも、昨年の屏風山の道に比べれば通過は可能。まさか、ここが崩壊地で、手前に新たな道ができているとは思いもしなかった。ためらうことなく、通過を試みる。「三点支持!」と声をかけるが、全く三点支持ができていない・・・。無事、通過して思った。これが遊歩道? 
 
 緩やかにトラバースすると、稜線に出た。「火の用心」の黄色いプレートと、鉄塔の標示がある。右は6番、左は5番。ナガザコは右方向。痩せ尾根から左山でトラバース。再び稜線に出て、今度は右山で歩くと、前方が開けて6番鉄塔の下に出た。鉄塔周辺は切り開かれて、北西の眺望が得られた。山間に旧美並村の集落が見え、その左の大きな山は瓢ヶ岳のようだ。雨が上がり、白いちぎれ雲が青い山肌を這う。
 
 鉄塔から潅木の中へ下り、人工林のピークの左を巻く。天然林のトラバース道で、倒木が多い。ピークを巻いて、次のピークを真っ直ぐに登る。急斜面を一気に登りつめ、岩の間を抜けるとピーク頂上に付いた。右に向きを変えて歩くと、人工林の中に三角点があった。二等三角点の角柱が置いてあり、ナガザコ569mの標示板が木にかけてある。白いテープに「奥深いよい山です」と書いてある。背の高い人工林と天然林が入り混じる山頂で展望は無いが、静かで落ち着く。ホウチャクソウの花がまだ残っていた。
 
 10分ほど滞在して、次の目的である水晶山を目指す。登ってきた道を引き返し、鉄塔を通過して、モニュメントへの分岐点まで戻った。ここは稜線を直進して落ち葉の斜面を登り、岩のあるピークを越える。ギンリョウソウを見ながら歩くと大岩が稜線に立ちはだかり、道はその左を巻く。途中から岩の稜線に出る。1つの岩の上に登ってみると北の展望が得られ、ここでも瓢ヶ岳を望むことができた。

 さらに、岩を乗り越えて歩くと展望地に出た。実はここが水晶山山頂だったが、この時は単なる通過点の展望地だと思った。というのは、水晶山山頂には水晶のある大岩があり、その岩が見当たらなかったためである。後で気が付くことになるが、広場に出る手前にこの大岩があった。展望地に気をとられて気が付かなかったようだ。
 
 モチツツジの咲く展望地で写真を撮った。美しい山並みが広がる。高曝山方面が見えているはずだが、同定できなかった。モチツツジに混じってツクバネウツギに似た花が見られたが、花はオレンジ色でガクも2枚しかない。帰って調べてみると、ベニバナコツクバネウツギのようだ。展望地の岩場の割れ目から一本のササユリの茎が伸びていた。地図をよく見ると、西のピークから北西に延びる尾根に水晶山546mと記されている。水晶のある大岩はその付近にあるかもしれないと思い、地図にある水晶山を目指すことにした。展望地から下ろうとしたとき、展望地の北にある木に「水晶山546m」のプレートを発見。ますます分からなくなったが、とりあえず西のピークを目指す。
 
 展望地から下って登り返し、ピークに立った。人口重心地の標示柱があり、この後ろに古いテープが下がっている。GPSで地図にある水晶山の方向を確認し、テープのあるところから下る。かすかな道が続いているような気がした。木々の隙間を抜けて鞍部に下り、吊尾根から登りにかかる。道は無いが、どういうふうにでも歩ける。帰りに迷わないように振り向きながら歩いてきた道を記憶して斜面を登り切ると、ピークに立った。

 樹木に巻かれたピンク色のテープに水晶山と書いてある。ここが地図にある水晶山のようだ。木立の山頂であるが、北東方面の展望が得られ、美しい山並みが望めた。ここにも水晶のある大岩がない。写真を撮って引き返し、稜線のピークまで戻る。このピークから南へ道を下ってみたが、どんどん下っていくので、やはり水晶の岩は展望地付近にあると思い、展望地まで戻った。ランチはここでとることにして、岩場にザックを下ろし、さらに東へ戻ってみると、ここに目的の大岩を発見。この大岩は展望地からは木の枝が邪魔して見えなかったことが分かった。ここの展望地が水晶山と呼ばれる場所であり、プレートも正しく設置されていることが分かった。ようやく謎が解けた。

 早速、大岩に登って水晶を探すと、岩の窪みにキラキラ輝くたくさんの水晶を見つけた。曇ることなくきらめき続けているのが不思議に感じた。展望地に戻ってランチにする。黒い雲が近づき、昼からは大気が不安定になるという天気予報を気にしながら、冷やし中華を食べた。コーヒータイムはパスして、40分ほどで展望地を後に。西に向かい先ほどのピークを越えて下り、人口重心地の標示から折り返すように左折して斜面をトラバース。倒木を越えて、モニュメントまで戻った。
 
 ここからは登ってきた道を下る。一気に下って、人口重心地から15分ほどで登山口に出た。頭上には青空が広がり始めていた。天気予報は外れたようだ。花の写真を撮りながら、林道を歩いて駐車地点手前の工事現場まで来ると、差し始めた陽の下を飛ぶ蝶を見つけた。水溜りに吸水にやってくるミヤマカラスアゲハ、それを追う黒い蝶はオナガアゲハ。久しぶりに出会う蝶だ。写真を撮ろうと追いかけまわしていると、溶けたセメントの水溜りで吸水する蝶を見つけた。地味な蝶で、水を吸う赤い口に驚いた。初めて見るタテハチョウで、スミナガシだった。林道を歩いたおかげで、初めての蝶に出会った。帰路、ほほえみの湯に浸かり、山頂でパスしたコーヒーを津保川沿いの東屋で沸かした。大きなサワグルミが初夏を思わせる風に葉を揺らしていた。
 
 水晶山は遊歩道の完備された山だと思っていたが、万人向けの山ではない。道は明瞭ではあるが、トラバースの細い道や崩壊が進んでいる場所もあり、特に人口重心モニュメントから右へトラバースしたところの崩壊地は危険。手前の新道を通過したほうがいい。危険箇所は通行を規制する標示などが必要と感じた。林道終点の登山口まで車を入れれば、短時間でナガザコと水晶山を踏むことができるが、林道を歩くといろいろな発見があるに違いない。
★水晶山からの展望


★ナガザコ・水晶山の花と蝶


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