飯盛山〜西津汲
飯盛山〜西津汲 (740m・793m 久瀬村)2003.2.23 晴れ 2人

鉱山入り口分岐点(9:44)→天狗の森公園看板(10:01)→飯盛山山頂(10:52-11:03)→西津汲反射板(12:05)→西津汲山頂(12:12-13:18)→飯盛山山頂(14:03)→鉱山入り口分岐点(14:54)

 せきすいさんのHPの飯盛山レポートに登場するIさんから、雪の飯盛山はお勧めの山であると以前より聞いていたこともあり、この冬になんとか登りたいと思っていた。久しぶりに晴れた日曜日に、せきすいさんのHPを参考に飯盛山に行くこととした。

 飯盛山は、まさに飯を山盛りにしたような特徴ある形をしており、岐阜市街からも三角形の西津汲と並んで容易に確認できる。特に国道303号線を揖斐方面に上がると、しだいに近づいてくるこの山は実に印象的である。揖斐川町を抜け最初の新北山トンネルを出た辺りから見る飯盛山と西津汲が2つ並んだ姿は性格の違った兄弟を思わせるようで面白い。

 2つ目の久瀬トンネルを抜け、久瀬村役場の信号交差点南にあるトイレに寄る。ここの橋を南に渡っても登山口に続く林道に入れるが、西津汲の集落の狭い複雑な迷路を抜けることになるため、国道を更に西に進み、3つ目の短いトンネルを抜けてすぐの交差点を左折する。この交差点の北側にある「北陽」という喫茶店が目印になる。左折してすぐに短いトンネルを抜けると、右手に広い待避所がある。せきすいさんが車を止めた場所のようだ。

 ここに車を止めて身支度をしようとしたところ、登山口へ続く林道から1台の車が下りてきた。行けるところまで車で行ってみようと林道に入る。すぐに未舗装となるが、雪は無く、道はそれほど荒れてもいない。いくつかのカーブをゆっくり登ったが、道は先へ先へと続く。揖斐川や集落がかなり下に見えるようになり、途中で登山口を見逃したのではと思いながらも、先ほどの車のタイヤの後を追うと、前方に鉱山の看板がある分岐点。その先はトラ柵で通行止めになっている。

 車をトラ柵前の林道脇に止めて、身支度の後、トラ柵の隙間を抜けて林道を西へ歩く。しばらく登ったところで左手山側に心細い木の階段がある。正規のルートか分からなかったが、この階段を上った。薄い踏み跡は、やがて雪に倒されたススキで消されているが、見上げれば手すりが見える。登ってみると、手すりは遊歩道のもので、この辺りは天狗の森公園が造成中であった。(階段を上がらず、林道をそのまま進めば遊歩道につながっている。) 遊歩道からは揖斐川とその向こうの小津権現山が美しく、完成すればすばらしいロケーションの公園になるであろう。

 前方の飯盛山に向けて疑木でできた階段の遊歩道を歩く。今朝まで降った雨と雪解けの水を含んだ赤土で靴もスパッツも泥だらけで歩く。幅広い遊歩道は公園の周囲だけかと思ったが、どこまでも続いている。ドウダンツツジやシャクナゲが道に沿って植えられている。後方には小津権現山から続く花房山、雷倉。手前には西台山。さらに手前には塔之倉、東に大立が見える。小津権現山の西の白い山は蕎麦山であろうか。

 南側が大きく崩壊した崖っぷちを通る。見下ろせば、石灰岩の絶壁がはるか下まで続いている。真っ白な石灰岩がたくさん埋まった道を歩く。高さも増し、雪道になった。雪の上には雨で無数の丸い穴があり、美しい模様を作っている。尾根に出て平坦な道を少し歩くと、そこは山頂。遊歩道が山頂までつけられていたのには驚いた。

 山頂は平坦で広く、遊歩道整備と合わせて最近適度に木が間引きされたようではある。木々の間から周囲の山々が見えるが、展望がいいとは言えない。南側に雪の西津汲が大きい。木に掛けられた山名プレートの前で記念撮影。昼までにはまだ時間があるので、思い切って西津汲まで足を伸ばすことにした。

 西津汲へのルートは南側に一旦大きく下って登り返すことになる。遠くに見えるが片道1時間の距離である。プレートの掛かった木のすぐ東側から南に道があるが、青いタフロープが引かれている。入るなという印であろう。プレ−トの木から少し西にも南側への道があり、白や赤のテープが付けられている。ここが西津汲への正しいルート。ルートに踏み込んで下を見下ろせば、岩だらけの垂直に近い斜面。浮き石も多く、慎重に下った。

 踏み跡は薄く、先ほどまでの遊歩道歩きとは正反対。数メートル間隔で最近付けられたと思われる白テープが揺れており、これをたどった。南斜面で雪はなく、名前は分からないがスイセンのような葉を伸ばし始めた植物の群落がたくさん見られた。この斜面は風もなくすでに春到来。

 いくらか下ったが、鞍部はかなり下に見える。岩の多い痩せ尾根を木々に捕まりながら歩く。飯盛山の南斜面の切り立った岩の絶壁が右手後方に望める。岩石地帯を抜け、尾根から西に回り、雑木林の緩やかな道になると鞍部は近い。濡れた落ち葉で滑りやすい獣道のような所を歩く。

 白テープを追って少しのササをこぎ、雪原へ。広い鞍部のざらめ状態の雪の上を歩くがつぼ足で膝まで沈み込むこともしばしば。前方に雪の西津汲は立ちはだかる。後方には丸いセピア色の飯盛山が大きい。西津汲への登りは北斜面で雪があり、トレースの無い雪の急斜面を、白テープを確認しながら登る。南から差し込む日の光に雑木の長い影が雪の斜面に縞模様を描き美しい。風が吹き始め、白いテープが音を立てる。後方の飯盛山が立ち上がり、左側に小津権現が頭を出し始めた。

 やがて、なだらかな雪原に出る。雪で押し倒された木々を避け、雪に足をとられながらテープを追う。ウサギやキツネの足跡が縦横に走っており、人の入らないこの場所は動物の運動場になっている。中には、かなり大きな足跡がありクマではないかと思うほど。木の皮が剥ぎ取られたり、爪で引っ掻いたような木もある。

 前方に大きな反射板が2つ見えると山頂は間近。反射板の横を抜けて山頂へ。山頂には三角点ともう1つ三角点のようなコンクリート柱があった。山名プレートはない。東側に踏み込むと北から小津権現山、花房山、雷倉、手前に西台山、塔之倉。今下ってきた飯盛山がまるで花札の月のようにまん丸の頭を出している。東には高賀山群と頭を雲に隠した御嶽山。南東の切り開きからは、揖斐川の流れる濃尾平野と金華山や百々ヶ峰が望める。金華山からもこの山が望める訳である。南の樹間には、小島山とその右に鑓ヶ先が大きい。西の木々の間から見えるすぐ近くの山は鍋倉山であろうか。

 木々に葉がない今の時期には西美濃の山々の絶好の展望地。誰も登ってこない。奥深い山に来てしまったという満足感がここにはある。山頂の雪は少なく、風もやんだ。春が間近なことを実感しながら、暖かい日溜まりの中で1時間ほどの昼食を楽しんだ。

 帰路、自分たちのトレースを踏んで、同じ道を引き返した。西津汲の下りからは、前方に見える丸い飯盛山が印象的な光景を作り出している。お気に入りのルートにしておきたいコースである。

 飯盛山からは、往路に気がつかなかったケヤキの大木「月の株」を見落とさないように下った。少し下ったところで、眼下に大きな大木があり、これが「月の株」であった。往路はこの手前の遊歩道分岐を右に上がったために見落としたようだ。「月の株」は山に月が沈むのを惜しんで付けられた名前らしい。(駐車地点からもよく見える) 風格のある枝振りのこの大木には、木の精が住んでいるかもしれない。

 「月の株」の前で写真を撮っている1人の登山者に出会った。今日、初めての出会いである。山頂まで続く広い遊歩道や街路樹の植栽はやりすぎではないかという話しになった。確かに、ここまで整備しなくても安全で環境を変えない登山道整備の方法があるような気がした。

 今回は、状況が分からず林道終点まで車を乗り入れ、道の脇に止めたが、鉱山があることや遊歩道などが工事中であり作業車の通行も考えられるので、公園が完成し駐車場が整備された後に乗り入れるべきであったと反省。

 帰路、林道途中からコンクリート舗装の道へ右折し、集落の中を通って久瀬村役場前に出た。後方から大きな飯盛山が見送ってくれた。

 飯盛山までの遊歩道歩きだけでは物足りないなら、西津汲まで足を伸ばすといい。ただし、踏み跡は薄く時期によってはヤブを分ける所もある。また、急斜面や浮き石など危険な所もあるため、装備は万全にし時間に余裕を持った行動が必要。
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