西ウレ
西ウレ (1313m 清見村) 2002.9.29 曇り 2名

西ウレ峠駐車場(14:00)→Aコース入り口(14:04)→山頂(14:24-14:30)→Bコース分岐点(14:40)→舗装道路(14:58)→西ウレ峠駐車場(15:05)

 清見村で開催されている全国和牛能力共進会を見た帰り、前から1度歩きたいと思っていた西ウレ峠から1313mの山頂を登ることにした。

 西ウレ峠は八幡町から明宝村を経由して清見村まで続く県道472号線、通称「せせらぎ街道」の途中にある。東海北陸自動車道が荘川村まで開通したことから、この道を通って高山へ向かう人は少なくなったようだ。西ウレ峠は分水嶺となっており、街道の名が示すように、峠を境に太平洋と日本海に流れ出るせせらぎがあり、せせらぎと白樺やカラマツの美しい天然林を見ながら車を走らせるのは実に気持ちがいい。このため、高山へは東海北陸自動車道を使わず、いつもこの道を利用している。

 南飛騨森林浴街道21のチラシによると、西ウレの意味が次のように記されている。「俗に位山分水嶺と呼ばれる山脈、位山・川上岳・竜ヶ峰・西ウレ・火山と続く連峰を越える峠として西ウレ峠がある。西ウレというのは古語で抹消とか一番先という意味を持っていて、西の谷川の一番先にある峠なので西ウレ峠と呼ぶ。」 この辺りの山々は昔から昼なお暗い大森林であったので、地元の人はこの峠を「木がくれ道」と呼び、現在もそのままとなっている。

 西ウレ峠北に管理棟と大きな駐車場があるので、そこに車を止める。トイレはないので、坂本峠のトンネルを北に下りたところにある道の駅「パスカル清見」ですませておく。管理棟の北側には池があり、この付近を散策する人や休憩をする車が3台ほど止まっていた。

 管理棟前には木製のきれいな地図がある。ここは生活環境保全林であり、1313mの山頂に向かう道が、北からA・B・C・Dの4本ある。最も南にあるDコースは「こもれび広場」から山頂まで続いており、管理棟を起点にA・Dコースを歩くと2.5時間かかるらしい。今回は、時間もないので、A・Bの1時間コースを一周することにした。

 案内地図には1313mの山の名前が記されていない。西ウレ峠の標高は1131m。山頂まではわずか200mである。まずは、管理棟と池を左に見ながら立派な管理用舗装道路を歩く。馬瀬川源流を渡り、左にカーブした右手にAコースの登山口がある。Bコースは更に管理路を100mほど進んだ右にある。

 生活環境保全林だけあって、登山道は天然石の石畳になっており、分岐点などポイントごとに時間が書かれた道案内標識があるので、道を誤るようなことはない。Aコースに入ると大きなカラマツの林の中で、クサソテツのような大きなシダがいくつも葉を広げている。いきなり深い森に入ったようで、手つかずの原生林が残っている。まさに「木がくれの森」である。

 2・3度谷川を渡り、両脇にせせらぎを見ながら、しっとりとした石畳を登る。石畳の上には、落ち葉が積もり、石は苔むし、人工の道とは思えない。昨日の雨で石が滑りやすくなっているので、慎重に登った。2種類のイチゴが見られた。1つはフユイチゴと思われるが、もう赤い実を付けていた。もう1種類は、バライチゴで2センチもあるような大きな実を重そうにつけていた。

 やがて、道は折り返し気味に曲がり、すぐに主尾根に出た。明るくなった道を西に歩く。ここにもバライチゴがたくさん見られた。途中、左側が開けており、清見村の山が望める。飛騨牧場と思われる草地が美しい。最後のひと登りで山頂に着く。

 山頂の表示はあるが、やはり山名はない。大きなカエデやブナの木があり、展望はきかない。美しい緑が頭上を覆い、落ち着く山頂である。ここで飲むコーヒーは最高においしいと思われたが、時間がないので先を急ぐ。

 帰路は山頂から南に続く道を進む。Bコース分岐点までの数分間の尾根歩きがすばらしい。左手に樹間から雲の上に頭を出した乗鞍岳や穂高が望めた。天気が良ければ、槍や笠がみごとであろう。現在、木々の葉で見にくいが、冬にはかなり見通しが良くなるであろう。

 10分ほどでBコース分岐点。管理棟まで20分の表示がある。ここから、ササの中につけられた道を下る。ここからも、右手に美しい清見村の山並みが見える。やがて、道は深い樹林帯の中に入る。この辺りには、大きなブナやホウが、日光を求めて真っ直ぐに伸び、はるか上で枝を広げている。幹の灰色のモザイク模様が美しい。道の途中には広場のようになった所もあり、一本一本、大きな木を見上げながら歩いた。濡れた岩で2・3度滑りながら、管理路に出た。帰路、管理路から馬瀬川源流沿いに下り、池の西側を通り駐車場に上がった。

 いつもは車で走り抜ける峠であるが、1歩、森の中に足を踏み入れると、そこには車道からは想像できないすばらしい自然が残っている。飛騨方面からの帰りに、1時間程度の余裕があれば、ドライブの休憩を兼ねて歩いてみるといい。なお、Dコースを下った場合、こもれび広場から管理棟に戻るコースは県道を縫うように設けられているので、車に要注意。
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