能郷白山 (1617m 根尾村) 2002.5.3 曇り後晴れ 2名
登山口駐車場(8:23)→林道横断(9:02)→2合目(9:24)→3合目(9:55)→5合目(11:02)→能郷白山山頂(11:25-12:42)→5合目(13:05)→4合目(13:36)→3合目(13:45)→2合目(14:12)→林道横断(14:27)→駐車場(15:00)
冬、岐阜市内から北を眺めると、真っ白に輝く山が真っ先に目に入る。美濃の数ある名山を南に従えて、最奥に堂々と居座っている山、これが能郷白山である。古来より白山信仰の山として登り継がれた名山である。美濃の山の最高峰であるこの山にいつかは登ろうと思いながら、登ってしまえば楽しみが無くなってしまうような気がして、後回しにしてきたが、先週、左門岳からその堂々たる山容を見た時、登ることを決意。
根尾村の中心部から国道157号線を北上。代掻き最盛期の田園の畦道にカモシカが歩いている。さすがに山奥である。能郷集落から左の能郷谷林道に入る。白山神社前の公衆電話ボックスで登山届けを出す。提出してある登山届けを見ると、今日の日付けのものがすでに数枚あるのに驚いた。さすが、人気の山。能郷白山のコースを案内したリーフレットが置いてあったので1枚いただく。神社にはトイレもある。
田園を抜け、右に能郷谷を見ながら、山側から流れ出るいくつもの川を水しぶきを上げて渡り、しだいに深い谷に入っていく。未舗装になり、雨でかなりえぐり取られた悪路となる。駐車場を見落として行き過ぎてしまったのではないかと不安になるが、再び舗装道路になり、大きくカーブしたところに駐車場が現れる。上段に10台、下段に20台ほど駐車できる。8時過ぎにすでに上段は満車。3台ほど駐車してある下段に止める。先着のパーティーが歩き始めている。
山頂までの片道の距離は4775m。標高差907m。コースタイム3時間半。久しぶりの本格的な山歩きである。登山口は上段駐車場のカーブ左。大きな案内看板があるのでよく分かる。いきなり水量の多い谷川を渡る。石の間隔が広く濡れて滑りやすいので、慎重に渡る。
すぐに急斜面が待ち受ける。かなりの急登である。準備運動なしの急登に、ペースをつかむ前に息が切れる。見上げれば、はるか上まで一直線に坂が続いている。石ころが多く、落石しやすいので要注意。チゴユリの可憐な花に元気づけられ、1合目を過ぎ、約40分ほどで林道へ。ペースをつかんだところなので、休まずに進む。
この先、さらに傾斜が増し、急坂は容赦なく続く。イワウチワが足下を飾る。花期が過ぎ、ほとんどの花びらが落ちてめしべに引っかかって風鈴のように揺れているのがおもしろい。右の谷には多くの雪渓が残っており、中腹以上は雲の中で前山は見えない。この状況では、山頂はガスの中か・・・。
2合目近くで緩やかな登りになり一息つくが、前山への登りに取り付くと、再び急な尾根登りになる。イワウチワが満開。南風が吹き始め、前山の雲が流れる。青空が見え始め、展望は期待できそうだ。
右に切り立った深い谷を見下ろし、左遠方には谷筋に雪渓がある美しい山を垣間見ながら、ようやく前山東肩にたどり着く。突然、前方に縦縞の雪渓を抱いたなだらかな美しい山が目に入る。立ち止まり、息を呑む。左に特徴あるコブ、馬の背のような形、能郷白山である。なんと美しい山であろうか。そして思った。これから、あそこまで歩くのか。恐ろしく遠い。
道は尾根伝いに、下りとなる。ブナの大木ごしに見る能郷白山がすばらしい。先ほどまでの疲れも忘れて、中判カメラで撮影しながら歩く。能郷白山がぐんぐん迫ってくる。雪渓を登る人や山頂近くの奥社も見える。残雪の上を歩き、融雪でできたぬかるみを渡り、鞍部からいよいよ最後の登りとなる。樹木はなく、草付き斜面の登りになる。融雪により登山道が川状態。靴をドロドロにして登る。ザゼンソウがひっそりと咲いている。名前も形も信仰の山にふさわしい。
強烈な南風を背に受け、急な雪渓を足跡をたどりながら一歩一歩登ると山頂に着いた。山頂から奥社方面に広大な雪原が広がっている。とにかく広い。山頂には一等三角点と木柱があり、西を除いてササが取り囲んでいる。温見峠への登山道がすぐ北にあり、その入り口から加賀白山がすばらしくきれいに見える。雪原からは、南側に今歩いてきた前山からの縦走路がよく見える。よく歩いてきたものだ。霞で、展望は今1つであるが、日永岳や小津権現山がうっすらと確認できた。
山頂は大勢の登山者で賑わっている。温見峠からは2時間で登れるということもあって、このルートの登山者が多い。ほとんどの人が風をよけるために三角点の周りのササを背に円陣を組んで食事中。その中に混じって、ラーメンと雑炊の温かい昼食を楽しむ。ササを背にすると風が遮られ、思ったより寒くない。隣で昼食中の滋賀県からみえたご夫婦は、明日は冠山に登るとのこと。泊まりがけでいくつかの山を歩く連休の過ごし方はいいものだ。
昼食後、西にある熊野白山権現社まで歩く。強風で吹き飛ばされそうである。カメラの三脚も倒れるほどの強風。奥社で手を合わせるどころではない。この強風の中、雪渓の急斜面を滑らないように下りるため、軽アイゼンを付けた。風は山頂近くだけであり、後はTシャツ1枚で下山した。屏風山が美しい。前山からの尾根下りや、2合目からの急斜面にはあらためて驚いた。こんな急なところを登ってきたのである。
帰路、淡墨温泉に寄ったが、すごい人。温泉はあきらめ、直売所で根尾村名物の淡墨豆腐を購入した。値段は高めだが、堅くて味の濃い豆腐で、お気に入りの一品である。
奥美濃の母なる山、能郷白山は簡単に人を近づかせない。その姿を見るまでには、2時間の急登をしいられる。しかし、この急登があるからこそ、能郷白山の山容が目に入ったときの感動は大きい。文句のつけようがない名山である。最高の山歩きである。
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