トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平21業使、第478号) *一部誤動作あり 

尾高山 (2212m 長野県) 2010.9.18 曇り 2人

しらびそ峠(9:35)→山頂まで1.9km標示(10:01)→前尾高山山頂(10:15)→山頂まで1km標示(10:33)→山頂まで0.5km標示(10:46)→尾高山山頂(11:09-12:25)→前尾高山(13:12-13:17)→しらびそ峠(13:49)

 9月のシルバーウィークは、ドライブを兼ねて長野県の尾高山に行くことに。尾高山は南アルプス展望地とシラビソの美しい原生林で知られており、人気の山でもある。コースタイムは登りで1時間半ほどで、比較的短時間で登れる山であるが、岐阜市から登山口となるしらびそ峠まではかなりの距離がある。朝6時過ぎに自宅を出発。中央自動車道で東に向かい、飯田ICを下りてカーナビでしらびそ峠を目的地にセット。ところが、ナビのルートは地蔵峠経由の大回りを案内してくれる。やむを得ず矢筈トンネルを目的地にセット。

 飯田市街地の東を流れる天竜川に架かる弁天橋を渡って、県道83号線で喬木村に入り、富田郵便局から左折して県道251号線をしばらく走り、高速道路のような矢筈トンネルを抜ける。トンネルを抜け、しらびそ峠の案内に従って山岳道路に入る。しらびそ峠までの道は狭いところもあるが、舗装道路で気持のいいドライブが楽しめる。峠まではかなり距離があるが、道端にはフシグロセンノウやアケボノソウ、フジアザミなどが咲いており退屈しない。さらにしらびそ峠が近づくと雲を従えた山々の展望がすばらしい。峠の手前でフサフジウツギの大きなピンク色の花を見つけた。ヤマトリカブトやミゾホオズキもある。
 
 道草をしながらしらびそ峠に到着。峠には数台駐車できる駐車場があり、南アルプスの展望地にもなっているが、白い雲が流れて展望はない。峠を後に、ハイランドしらびそまで車を進め、駐車場にある大きな有料トイレに寄る。再び峠まで戻る。峠には2台ほど空きスペースがあった。峠のすぐ上の道の両側にも駐車スペースがあり、マイクロバスが停まっている。団体のパーティが登っているようだ。

 駐車場で身支度をするご夫妻に挨拶して出発。登山口は駐車場入口から車道を少し戻ったところの法面の木の階段。登り口に「尾高山・奥茶臼山へ行こう」と書かれた案内図を確認。尾高山までは2.9km、1.5時間、奥茶臼山までは8km、4.5時間の標示があり、今日は尾高山まで。
 
 アキノキリンソウやホタルブクロを見ながら階段を登り切るとカラマツ林の尾根道となり、林床は背丈の低いササが覆っている。右手下は切り立った斜面、左は先ほど車で上がってきた舗装道路が見下ろせる。急斜面を登ってなだらかな尾根道に出る。ヤマシロギクが僅かに見られる。カラマツ林はよく間伐されており美しい。冷たい風が吹き抜け、半袖では寒い。

 歩き始めて20分ほどで尾高山山頂まで2kmの標示を通過。ウラジロモミノキやシラビソも見られるようになる。ヤマトリカブトを見て尾高山山頂まで1.9km地点に着くと右側にビューポイントがある。しかし雲の中であり、展望はないので山頂を目指す。ササの絨毯が敷かれた斜面を登る。ミヤマタニソバやズダヤクシュの小さな白い花が登山道に咲いている。浅い谷状の道を登り切って1.7km地点を通過。ここにも右手にビューポイントがあるが、寄らずに直進。

 ササが消え、苔むしたシラビソやトウヒの原生林となる。木々の幹には地衣類が張り付いてモザイク模様が美しい。コケの上でマイヅルソウが赤い実をつけている。なだらかに歩くとさらに美しいコケの世界に踏み込む。昨年歩いた北八ヶ岳を思い起こさせる景色だ。倒れた幹は地面の上でコケに覆われ棒状の膨らみとなって美しい模様を描く。木々の根元もコケに覆われている。人の手が入らない原生林で太古から繰り返された生と死がこの美しい森を作っている。

 癒しの世界に浸りながら歩くと前方に休息する単独男性が見えた。ここが前尾高山山頂・標高2082m。下山の単独男性を後に、ノンストップで先に進む。水平に歩くと山頂まで1.5kmの標示。ここから急斜面を急降下。どこまで下るのだろうかと思いながら滑らないように慎重に下りる。すぐに鞍部が見えてきた。大木が倒れている。帰りはここを登らなければならないが、標高差は大したことはない。
 
 鞍部から尾根状態の道を歩く。ここも右側は切れ落ちており、展望地となっているが相変わらず雲の中。いろいろなキノコがたくさん見られる。枯れ木にびっしりと生えた褐色のキノコはニガクリタケであろうか。また、ゼリー状の灰色のキノコは食べられるニカワハリタケ。キノコの写真を撮りながら歩く。切れ落ちた斜面の底からガスが湧き上がり幻想的な光景がすばらしい。斜面にはハリブキが見られた。コケの地面にシダが現れ、道が分岐しているところもあるが、すぐ先で合流している。

 山頂まで1km地点を通過。ちょっとした木の根の急傾斜を登って山頂まで0.5kmの標示を見る。シラビソの銀色のモザイクの幹がスリット状の幾何学模様を作る美しい森。ここもまさに北八ヶ岳の風景である。銀色の空間を左方向にアップダウンしながら歩く。シダの群落を抜け、左から回り込むように、山頂への最後の登りが始まる。登山口からノンストップで歩いているので、さすがに足取りも重い。それでもこの美しい原生林に癒され、疲れよりも感動のほうが大きい。なだらかになるとさらにすばらしい光景が広がる。マイズルソウやゴゼンタチバナ、ミヤマカタバミなどに交じってオサバグサの葉も見られた。これも北八ヶ岳と同じ植生である。
 
 前方から話し声が聞こえてきた。コケむした木の根と岩の尾根になるとすぐに尾高山2212mの標示板。山頂到着。ほぼコースタイムどおりの時間で到着。この先の林の中で大勢の登山者が昼食中だった。岩が重なり合った山頂の標示板の前で写真を撮った。大勢の登山者はマイクロバスの団体さんで、愛知県豊田市からみえたとのこと。

 ビューポイントの矢印が左右にあったので、まず左側の展望地に行ってみる。道を直進して下り始めた辺りで岩場に出るところがあり、ここがビューポイントのようだ。雲で展望はない。引き返してもう1つのビューポイントに行くと、何人かが昼食中。我々もビューポイント付近で昼食にする。
 
 昼食のメニューは冷奴とおでんと冷やしそば。Tシャツ1枚では寒いので山シャツを羽織った。食事の途中で、団体の皆さんは下山。我々2人だけが山頂に残った。時折日が差すもののビューポイントから見る正面の山の2000m以上は線を引いたように雲の中。静かな山頂で飲む熱いコーヒーが美味しい。食事の後、この夏に購入したデジタル一眼の試し撮りも兼ねて、山頂付近で美しい原生林を撮影。三脚を使って露出優先でじっくりと撮りたい景色だ。1日かけて撮影したいところである。
 
 山頂に1時間15分ほど滞在した後、下山。木の根に乗ると滑りやすいので慎重に下った。山頂から少し下ったところで、駐車場で出会った夫妻とすれ違う。その後、何人かの登山者と出会う。人気の山だ。時折、谷から湧き上がったガスが林を流れる。ホシガラスが飛ぶ美しい原生林を下り、前尾高山へ登り返し、カラマツ林へ。標高を下げると雲が切れ、明るい尾根から、雲間にハイランドしらびそを望む事ができた。一気に下って、峠に着いた。峠にはツーリングの若者たちで賑わっている。朝よりも雲は切れてきたが、南アルプスは見えなかった。

 2時前であり、南ある御池山に登る時間は十分あったが、展望もないので、温泉に寄ってゆっくりすることにした。上がってきた道を車で下る。途中で何度も停まっていろいろな花の写真を撮った。喬木村の無人直売所で1袋100円のナシを購入。傷物のB品ではあるが、最高に美味しいナシだった。飯田市街に出る辺りで、市街地の向こうに風越山が美しい山容を見せる。次はこの山に登りたい。

 飯田ICの東にあるJA農産物直売所に寄る。リンゴやナシ、プルーン、ブドウ、クリなど秋の味覚が安価で販売されている。また、長野県の伝統野菜やキノコなど珍しい農産物がたくさん置いてあり、見ているだけでも楽しい。お土産をどっさり調達し、昼神温泉まで下道を走って、日帰り温泉で汗を流した。今年の7月以降、この温泉に立ち寄るのは3回目。長野方面の山に3度も来たことになる。そして、いずれもが展望に恵まれなかったことに気が付いた。

 尾高山は美しい原生林の中を歩けるすばらしい山。今回は、残念ながら展望はなかったが、この見事な原生林を歩けただけで十分に満足。次は季節を変えて、もう一度リベンジしたい山である。できれば奥茶臼山まで歩きたい。
★尾高山の植物


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