小津権現山の地図と展望を見る
小津権現山 【藤波谷コース】 (1158m 揖斐川町) 2006.11.18 晴れ後曇り 2人

登山口(8:13)→尾根取り付き(8:22)→林道(9:26-9:35)→広場(9:55)→池(10:03)→尾根を右へ(10:06)→シャクナゲ群落・大岩ピーク手前(10:17)→大岩ピークを巻いて尾根へ(10:30)→ロープ付き急斜面終了・ササの道(10:51)→小津権現山山頂(10:53-12:32)→広場(13:24-13:27)→林道(13:39)→駐車場(14:37)

 小津権現山に整備されつつある新道が「クーの山小屋」掲示板で話題になった。掲示板の常連さんのミツルさんがこの整備に参加されており、何度も作業に出かけられ、その苦労の様子が掲示板に紹介された。本整備は県とタイアップして日本山岳会岐阜支部が中心で行われており、当支部のホームページにも、この整備の状況が詳細に記載されている。自然を最優先に、コースの選定や整備手法など、何度も作業に出かけられた経緯を拝見すると、頭が下がる思いである。

 新道登山ツアーはミツルさんにこの秋に2回計画をしていただいたが、どちらの日も都合がつかなかったため、最初のツアーに参加されたキーノさんより地図をいただき、2人だけで登ることにした。新道はまだ整備中であり、今回はモニター登山。小津権現山は、現在、旧久瀬村の小津集落から、高屋山を経て、前衛峰から一旦下って山頂へ登り返す。この山は5年前の秋にブラックポットさんと登っている。ガスに覆われ、一時小雨が降る天気で、展望はほとんど得られなかった。今回はそのリベンジでもある。

 新道の登山口は横山ダム湖畔にある。国道303号線で揖斐川町に入り、藤橋の道の駅のトイレに寄って、横山ダムへ。ダムを渡らず、ダム湖の左岸を徳山ダム方向へ走る。横山ダムから2km地点の標識が現れる辺りで、前方に赤い新川尻橋が見える。この橋の手前で道は東へ大きく曲がり、藤波谷にかかる橋でヘアピンカーブとなっている。この橋の南側に数台の車が駐車できる空き地が谷沿いにある。「南矢中谷県有林」の木製の看板と、水源と見られる鉄柵のある洞窟、そして谷には砂防堰堤がある。

 この新道はまだ公開されていないことから、車は1台も停まっていない。身支度して出発。駐車場から谷の南側にある道に入り、カツラの落ち葉で埋もれた鉄製の橋を渡ると、岩だらけで道がない。事前情報では、川を渡って対岸の斜面に取り付くことになっているのだが・・・。対岸をよく見ると、赤テープとゼブラロープを発見。渡河する場所は堰堤のすぐ後ろだった。この先、橋を渡る道が整備されることだろう。

 滑りやすい川の中の石を慎重に渡って対岸へ。スギ林の斜面をホウ葉を踏みながらジグザグと登る。あまり歩かれていないようで、道幅は狭い。この新道の途中までは古くからある森林作業用の道を利用していると聞いた。10分ほどで紅葉のきれいな尾根に出た。シャツ1枚になる。すぐ下から、車の音が聞こえてくる。樹間からウグイス色のダム湖が見えた。

 ここから林道までの尾根歩きが始まる。針葉樹と広葉樹が混じる適度な傾斜の尾根を歩く。足下で葉を広げるコアジサイが美しく紅葉している。やがて、斜面は急になり、高度を稼ぐ。道にはシハイスミレの葉がいくつか見られ、まだ花を咲かせているものもある。登り切って前方にまたピークが見える。頭上をガスが流れ、日差しもなく、周囲の状況もよく分からない。なお、帰路にはガスが消えており、右手前方に小津権現の山頂方向の稜線が望めた。

 右手には深い藤波谷を見ながら、ヒノキとミズナラの林を歩く。ヒノキに混じって、カラマツも見られる。急斜面にはゼブラロープが付けられていた。急な斜面を登ると、左の谷を隔てて尾根が現れた。シロモジを中心とする黄葉が美しい。急登をこなして、なだらかな道へ。ガスの切れ間から日が差し始めた。散在する白い岩の間を縫って斜面を登り、さらに急緩繰り返す。単調な尾根の登りではあるが、周囲の紅葉や足下の枯葉など、秋の山の雰囲気を楽しみながら歩くため、退屈はしない。イワウチワの群落やキノコもある。

 浅い谷を左へ横切って尾根を乗り換えるように歩き、左に人工林を見る。すぐにロープのある急斜面に取り付く。昨日降った雨で滑りやすい。ロープが2箇所で切れていた。切り口からみて、どうやら動物が噛んだようだ。頭上に真っ黄のシロモジの天井を見ながら、斜面を登りきると、ススキのヤブに出た。露で濃いガスがかかり、朝露でスパッツを濡らしながら霧を分けると、目の前に白いガードレールが現れた。林道に出た。

 林道とは言っても、草やブッシュが生えて、廃道になっている。落ちかけたガードレールもある。ガスで周囲は真っ白。20mほど右へ歩いた、林道がカーブしたところに登山口があった。ススキが刈り取られて、ガードレールに「山の日」ののぼりが立ててあった。ガスのかかる木立を通して差し込む光が美しいストライプを作っていた。パンを食べて10分ほど休憩。この辺りの紅葉が最も美しい。

 再び山道に入る。急緩繰り返しながら道は尾根を登っていく。霧のベールが山を覆う。ソフトのフィルターを通して紅葉の林を見ているようで、実に幻想的な雰囲気。シロモジの黄葉の中に、ときおり現れる赤いウリハダカエデがアクセントをつける。ロープの続く道を、足下の落ち葉を踏みながら歩く。いろいろな種類の落ち葉が敷き詰められている。

 後方を振り向いて驚いた。いつのまにかガスは消え、後方の山々が雲海の上に紅葉の山肌を見せている。大きな山は天狗山である。今度は、葉を落とした木立の向こうの景色に息を呑んだ。冠雪した大きな山が目の前に見える。能郷白山である。その右に真っ白な双コブの山は、名前の通りの名峰「白山」。そして、左手前方には、巨大なセピア色の山。花房山である。なんと美しい山容であろうか。花房山がもっとも美しく見える場所ではないかと思った。

 樹間の山々を楽しみながら歩くと、広い丘陵状の場所に出た。広場の木々は伐採され、伐採された丸太が登山道の両脇に並び、丸木を置いただけのベンチもあった。ここがミツルさんたちが整備の拠点となる広場のようだ。木々が伐採されていることから、北側のパノラマが望めた。ブルーシートで休息所や道具小屋があった。この辺りのシロモジはすっかり枯れて茶色の葉が枝に付いている。紅葉する前に枯れたのであろうか。イワウチワの群落もたくさんある。春には、一面がピンクの花畑になるに違いない。

 丘陵を東に向かって歩く。正面にピークが見え、ちょうどその上に太陽が輝いている。その左には山頂と思われる山が見えた。気持ちのいい場所である。左に小さな池を見ながら、ササの道を歩く。平坦な場所であり、踏み跡が分かりにくく、イワウチワを踏まないようにテープを探しながら、ブナやミズナラの間を歩いた。

 やがて、谷に突き当たり、道は右へ向きを変える。花房山から小津権現山に続く稜線が、谷を隔てて美しい曲線を描く。その向こうには林道のある山が見えた。針葉樹の林を抜けて急な登りとなる。落ち葉の斜面にはイワウチワやシダが葉を広げ、左前方から差し込む日の光が眩しい。

 急斜面を登ると、シャクナゲの群落が尾根を埋めている。その下をトラバースしていくと正面に岩のあるピークが立ち塞がっている。道はこのピークの右を巻いている。ロープにつかまって足場の悪い細い道をトラバースしていく。木々の葉はすっかり落ち、右側の樹間に西の山々が望めた。天狗山、蕎麦粒山、五蛇池山などが連なる。

 回り込んで、尾根を目指すが、この辺りの道も薄く、おまけに急斜面。ロープがなければ道は分からないくらい。息を切らして尾根にでると、再び目の前に花房山が迎えてくれた。すぐに、尾根を右に外れて左山でトラバース。ヒノキを除けながら、急斜面につけられた細い道を歩く。

 稜線に出るところで、キーノさんからの注意事項を思い出した。帰路、稜線から外れる位置が分かりにくいので、赤テープを付けておくと良いとのアドバイスをいただいていた。赤テープをシロモジの枝に結んで目印にした。左、遠くに真っ白な山を2つ発見。御嶽山と乗鞍岳である。これらの山を見つけるとうれしいのは山屋に共通しているに違いない。最近の山歩きは展望に恵まれていなかっただけに、感動は大きかった。

 前方に巨大な山が迫ってくる。オオウラジロノキの実が落ちていた。川上岳、鍋倉山に続いて、この実を見たのは3度目である。山頂への最後は、急な登りが待ち受ける。すっかり葉を落とした木々の中につけられた滑りやすい道を登る。ザイルが設置されており、これにつかまって、正面の太陽を見ながら登る。落ち葉の下は赤土で滑りやすく、滑った跡がいくつか見られた。この辺りからも後方の白山や能郷白山、乗鞍、御嶽がよく見える。

 10分ほどで急斜面を登り切り、稜線に出て、折り返すようにササの道に入る。深いササは広く刈り取られている。古いテープがあることから、以前から登山道として使われた道のようだ。すぐに、小さな神社の裏側に出た。山頂である。

 予想に反して、山頂には誰もいなかった。ザックを下ろそうとしたところへ、久瀬村側から登山者が登ってきた。福井県からみえた十数人のパーティーで「先行者がいるとは思わなかった」と言われた。まさか、反対側に道があるとは思ってもみえなかったようだ。ザックを下ろしたら、神社の前で写真を撮って、まずは大展望を楽しむ。

 今まで見てきた能郷白山、白山、そして巨大な花房山は山頂からは遮るものがなく、絶景である。花房山のすぐ右に、雷倉が頭を出している。穂高、乗鞍、御嶽、中央アルプス、南アルプス、恵那山が東の水平線に並ぶ。濃尾平野は霞んでいるが、金華山や百々ヶ峰もはっきり確認できた。目の前にはタンポから西台山、妙法ヶ岳が連なる。蛇行する揖斐川が輝く。間戸山、大立、飯盛山、西津汲、ムネ山、小島山、池田山と揖斐の秀峰が見下ろせる。そして遠くには鈴鹿の山々。鍋倉山辺りから西は、木立に遮られるが、南の登山道辺りからは、木々の間を通して、伊吹山、国見岳、貝月山、ブンゲン、金糞山などが確認できた。

 山頂を動き回って写真を撮った。御嶽山のアップを撮ると、手前に船伏山が重なっていた。南から次々と登山者が登ってきて、山頂は賑やかになった。みんなで山の同定が始まった。

 山頂の一角でランチにする。メニューはドライカレーと味噌煮込みうどんという変な組み合わせ。手早くできるドライカレーを食べながら煮込みうどんを作った。ジャケットを羽織ったが、風もなく山日和。「クーの山小屋」ミニオフ会のメンバーは目の前のムネ山に登っている。向こうも宴会の最中であろうか?

 青く染まる濃尾平野を見下ろしながら、熱いコーヒーを楽しんだ。帰り支度をしていると、滋賀県からの女性4人パーティーが登ってみえた。毎週山に登って見えるそうで、リーダーの女性から目の前の花房山の登り方を尋ねられた。この山の新道もPR。

 帰りは、同じ道を下る。山頂直下の急斜面をザイルにつかまって下る。下りは、全く景色が違い、同じ道とは思えない。急斜面を下って、尾根を歩いていると、どうも登りとは様子が違うことに気が付いた。と、すぐに道が消えた。GPSで確認すると、同じ道を戻っている。周囲を良く見ると、数m下に赤いテープがあった。キーノさんから要注意とアドバイスを受けた、尾根を離れる地点を見落としていた。テープを付けておいたのだが・・・。

 軌道修正して、ピークを巻き、広場を通過して、林道へ出た。林道手前で、正面に天狗山が大きく見えた。登りはガスで分からなかったが、林道を少し先まで歩くと、すばらしい紅葉の山々の向こうに能郷白山が見えた。

 林道からは一直線に尾根を下って、駐車場まで戻った。車が落ち葉で埋まっていた。このルートは、まだ整備中で、正式な開通は来年の8月の「山の日」を目途にしているとのこと。したがって、このレポートは開通時期に合わせて公開したい。その頃には、標識などが整備され、快適で安全な登山道になっていることであろう。久瀬側からのコースとはまた違ったすばらしさがある。木々が葉を落とした時期には今回のように花房山や能郷白山を見ながら、すばらしい山歩きが体験できる。自然に配慮した整備に努めてみえる日本山岳会の方々やボランティアの皆さんにに感謝。

 下山後、ムネ山登山隊のメンバーの集合場所である、「モリモリ村」に寄った。駐車場で少し待って、久しぶりのカッペさん、キーノさん、ジオンさん、ayameさんたちと出会った。駐車場での立ち話が尽きない。次回は忘年登山が楽しみ。薬草風呂につかって汗を流し、紅葉の山を後にした。モリモリ村の駐車場で拾ったホウの葉で作ったホウ葉味噌が美味しかった。
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