トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作あり 点線は推定トレース
鈴北岳・御池岳 (1182m 1247m 三重県) 2009.10.10 曇り一時雨のち晴れ 2人
鞍掛トンネル東駐車場(8:39)→鞍掛峠(8:59)→鉄塔(9:04)→タテ谷分岐点(9:55)→鈴北岳山頂(9:59-10:06)→日本庭園(10:11-10:26)→御池岳分岐点(10:40-10:49)→御池岳山頂(11:09-12:25)→奥の平(12:37-12:39)→ボタンブチ(12:49-12:58)→天狗の鼻(13:01)→御池岳山頂(13:25)→九合目(13:37)→鈴北岳分岐点(13:46)→八合目(13:50)→七合目(13:56)→六合目・カタクリ峠(14:04)→四合目(14:13)→長命水(14:25)→タテ谷分岐点(14:40)→国道(14:51)→鞍掛トンネル東駐車場(15:11)
三連休初日に長野県方面の山に出かける予定で早朝に自宅を出発。ところが、前日の天気予報では好天のはずが、雨の確率が高くなっていた。急遽、行き先を変更するため自宅に戻って、最も天気のいい三重県方面の山に行くことに。鈴鹿の最高峰である御池岳に決めて、地図を印刷した。下調べ無しの状態で登山口の鞍掛峠に向う。天気予報を信じて方向転換したが、思わぬ結果になるとは・・・。
国道365号線で上石津町を南下し、三重県に入って数キロ走ったところで、国道306号線へ右折して鞍掛トンネルへの坂を登る。コグルミ谷の登山口付近には何台かの車が停まっていた。また、前方から国道を下ってくる登山者を何人か見かけた。コグルミ谷登山口から1.3kmほど走って鞍掛トンネルへ。右に広い駐車スペースがあり、既に9割ほどが埋まっていた。ここに車を停めて、コグルミ谷へ向う登山者が多いようだ。トイレは無いので、三重県に入った辺りの国道沿いのポケットパークなどを利用するといい。鞍掛峠の解説が記された標識があり、この峠道は京都や伊勢を結ぶ歴史の道であり、難所でもあったようだ。
登山口は駐車場の東端にあり、「御池岳・三国岳登山口」の標示がある。鉄編の橋を渡ってヒノキ林の中に入り、カワチブシやミカエリソウを見ながら登る。ヨウシュヤマゴボウやハダカホウズキが実をつけていた。人工林を抜けると右山のトラバースとなる。鉄塔巡視路の分岐を通過。頭上の電線はこれから歩く尾根に立つ鉄塔に向っている。台風18号の直後であり、地面には木の葉や実がたくさん落ちている。サルナシもいくつか見られた。
歩き始めて20分ほどで鞍掛峠に到着。ここから右に登れば三国岳。今回は左折して鈴北岳を目指す。峠にある地蔵尊に手を合わせて、今日の登山の安全祈願。明るい尾根から左山で二次林の潅木地帯を歩く。右手の切り開きから琵琶湖が望めた。再び尾根に出て鉄塔下を通過。思ったよりも雲が多く、周囲の山々は雲に包まれている。それでも、鍋尻山の特徴ある山容が望めた。
鉄塔下から、再び二次林の道を急緩繰り返しながら登っていく。この辺りは典型的な二次林で、1つの株から多数の潅木がうねるように立ち上がっているのが面白い。シカによる皮剥ぎも見られる。地面は一面台風で散った緑色の葉で覆われており、エゴノキやカマツカ、ガマズミなどの木の実もたくさん落ちていて、足元を見ながら歩いても退屈しない。
冷たい風が吹く尾根に出ると展望が開けた。東に藤原岳の姿が見える。その左には多度山。木曽三川が白く輝いている。潅木帯を抜けて草原に出る。ササの葉が無く、枯れた白い茎が草原を覆っている。シカが葉を食い尽くしたようだ。後方には烏帽子岳や三国岳が美しい姿を見せているが、西から流れてきた低い雲で伊吹山方面は見えない。右手には鈴ヶ岳が半分ほど見える。草原はやがてシダの大群落に変わる。かつてはササが占有していたと思われるが、シカの増加によりシカが食べないシダだけが残されこのような植生になったようだ。地面にはシカの足跡が見られる。シダの道をジグザグと登っていく。カワチブシの紫色の花が見られる。これもシカが食べない植物だ。
シダの道を登りつめてピーク状の展望地に出た。正面には鈴北岳から鈴ヶ岳に続くなだらかな稜線が見渡せる。鈴北岳山頂直下を登る人が見えた。灰色の雲が頭上を高速で流れる。風があり、寒い。ここから一旦下って、ヤマシロギクを見ながら登り返す。雨で掘れた道はやがて真っ直ぐに鈴北岳山頂に向かっている。息を切らしながら急斜面を登り切ると、「タテ谷→ 初心者要注意」の標示があった。タテ谷コースを下ればコグルミ谷登山口近くへ下りることができる。後方には鞍掛トンネルを抜けた国道が蛇行しながら下っており、ガスが谷間を埋めるように流れ込む。好天の予報なのだが、次第に雲が増えて、烏帽子岳方面は全く見えなくなっていた。ズボンに一匹のマダニがついていたので払い落とす。シダの道で取り付いたようだ。シカが多いだけにヤマビルも多いが、ダニにも要注意の場所である。
タテ谷分岐点からすぐに鈴北岳山頂に立った。草地の山頂からは遮るものが無く、大展望地であるが、この天気では展望が得られない。ガスの切れ間から藤原岳や御池岳の丸い山頂が望めた。地図を確認して、東方向の道を下る。時折、濃いガスに覆われて視界がきかない。東から南に向きを変えて気持ちいい平原を下っていく。一面に苔むした地面には石灰岩が散在し、こうした景観はカレンフェルトと呼ばれる。ここが日本庭園。この山の名所である。自然が作り出す造形はすばらしく美しい。
景色に感動して歩くと四差路の標示に突き当たった。標示によると、今、下ってきた方向は鈴北岳、右は元池、左は真の谷とある。直進する薄い道の方向に標示がない。御池岳という文字がないので、戸惑った。何しろ、全く下調べをしていないので、地図とGPSが頼り。方向と濃い踏み跡から真の谷への道が正しいと思ったが、地図によると真の谷は御池岳よりも東にある。半信半疑で真の谷方向に向かうが、薄い道が東の樹林帯にも分岐している。立ち止まって地図とGPSを見比べ、再確認。ちょうど鈴北岳方面から単独男性がやってきたので間違いないと確信して浅い谷へ下っていく。小さな遭難碑を過ぎると、古い標識が現れ、ここには白瀬峠と書いてある。白瀬峠は藤原岳へのルート上にある。どこかで標識を見落としたかもしれないと考え、ふたたび日本庭園に引き返すことにした。ちょうど男性がこちらに歩いてきたので、道を尋ねると、彼も初めてのようで、こちらで良いのではないかとの回答。男性の後をついて歩くことに。
右手に真の池が現れ、雰囲気のいい草地を歩くと前方から2名の女性が下ってきた。御池岳への道であることを教えてもらい、ガスの中を歩く。サワフタギの青い実が美しい。頭上は黒い雲に覆われ、「雨が降りそうだ」と話をしていたところへ、ポツポツと水滴が落ちてきた。一気に雨脚が強くなった。御池岳とコグルミ谷の分岐点近くの木の下で雨具を着て、ザックカバーを付けた。山の天気は分からないものだと実感。久しぶりの雨の山歩きとなった。
ヤマシロギクの咲く道を歩き、天然林に入る。本格的に降り出した雨で、天然林の森は一層と潤い、石灰岩を覆う黄緑色の苔が美しい。見事な枝ぶり木々を見ながら、谷から抜け出て斜面を登っていく、雨具を着て下ってくる何人かの登山者と出合った。再び谷を渡って尾根に出て、岩の多い道を歩いていくと、木柱の立つ山頂に着いた。いつの間にか雨は止み、陽が差していた。
山頂は樹木に囲まれているが北〜東方向は開けており、2名の登山者が展望を楽しんでみえた。写真を撮って、風のない位置で昼食にする。メニューはカレーうどんとおでん。足元に、季節はずれのヤマネコノメやタチツボスミレが咲いていた。コグルミ谷から次々と登山者が登ってくる。先ほどの雨がウソのような青い空に白い雲が流れる。昼食の間に、乾いた雨具を脱いだ。
昼食の後、ボタンブチに向かう。標識に従って少し下り、登り返す。この辺りの、苔むした岩の樹林帯はすばらしい。御池岳の最も魅力的な光景ではないだろうか。すぐに林を抜けてシダの草原に飛び出した。前方に見える丸い山が奥の平。ボタンブチは右手に下ったところにある。右手には鈴鹿の名峰が肩を並べる。前を行く登山者を追ってシダ原を横切り、ボタンブチの分岐点へ。この分岐点には今下りてきた方向に丸山と書いてある。後で調べてみると、御池岳山頂付近はテーブルランドと言われる広い台地状をなし、この台地全体が御池岳であり、先ほどの最も標高の高い山が丸山と呼ばれている。標示に御池岳という文字がない理由が理解できる。
直進して目の前の奥の平に行ってみる。丘陵地形の奥の平からは、藤原岳の山頂付近が望めた。写真を撮って引き返し、分岐から下ってボタンブチに向かう。雨水に浸食された登山道はまるで人が掘ったような側溝ができておりかなり深いところもある。草に覆われて見にくい場所もあり、はまり込まないように歩いた。前方の小さな出っ張りに人が立っているのが見える。あそこがボタンブチのようだ。道が交錯しており、適当な道を下って、鞍部から緩やかに登る。アケボノソウがいくつか見られたが、上部はシカに食べられており、茎の途中に花が咲いていた。
ボタンブチは断崖絶壁の上に飛び出した岩場であり、ここからの眺めは天下一と言ってもいい。手前から竜ヶ岳、釈迦岳、御在所岳、雨乞岳、綿向山と鈴鹿の山々が連なる。天狗堂がミニ富士山を作っているのが印象的だ。眼下の山々が紅葉する時期には、さらにすばらしい光景となるであろう。展望を楽しんだら、すぐ西にある天狗の鼻に行く。崖っぷちを歩いていくと、本当に天狗の鼻そっくりに見える。天狗の鼻からの展望もすばらしく、琵琶湖が白い雲塊の下で水色の湖面を見せてくれた。更に先に道があったので歩いていくと樹林帯に入り踏み跡が薄くなったので引き返して奥の平への分岐点まで戻り、御池岳へ引き返す。
帰路は、コグルミ谷を下るため、山頂直下から標示に従って北東に下る。草付きの道を下り、谷に下りていく。谷の法面の岩には苔がびっしりと生えて美しい。右から左へ谷を渡り、急斜面を下っていくと九合目の標示を通過。先ほどの雨で滑りやすいトラバース道を谷に沿って下る。再び右へ渡って、イノシシのヌタ場を見ながらどんどん下ると谷が合流する鈴北岳への分岐点に出た。この付近に咲く花の写真が掲示されており、春先に登りたいと思った。登ってくる2人と挨拶。ここから、右折して苔の生えた岩の間を抜け、倒木を跨いで谷を下る。
八合目を通過してすぐに左の尾根を越え、草の道を左山でトラバース。地面のドングリを見ながらトラバース道から尾根歩きになると、七合目の標示。クリの実が散乱する気持ちのいい尾根を下る。紅葉の時期に歩きたい尾根である。尾根は広い谷となり、ベンチのある広場に着く。たくさんの表示板があり、ここが六合目のカタクリ峠である。藤原岳への分岐点でもある。
カタクリ峠から広い谷を真っ逆さまに下る。下草のない天然林が美しい。道は左へと向きを変え、ロープのある急な小谷を渡る。尾根を1つ跨いで左山で下って四合目。樹木にオオイタヤメイゲツのプレートがあった。コハウチワカエデだと思っていたが・・・。四合目からもう1つ尾根を越えると、急峻な斜面に付けられた細いトラバース道にさしかかった。今回のルートで最も難所である。周辺の樹木は少なく、滑落すれば谷底まで落ちる。慎重にゆっくりと通過する。眼下の白い谷はコグルミ谷であり、下っていく1人の女性が見えた。この先難所が続きそうだ。トラバースをこなして岩場を下り、無事谷底へ下りた。谷の左斜面に取り付きミカエリソウの群落を横切って、右側に渡りベンチのある広場に下りた。長命水の標示があり、水が引かれている。御池岳は石灰岩の山であり、伏流水のため谷には水がなく、ここは貴重な水場である。一口飲むと一年若返るというこの水でのどを潤し、ペットボトルに汲んだ。
マムシグサの赤い実を見て、コグルミ谷を下る。長命水の下で谷を左に渡り、石灰岩の散在する道をトラバース。再びミカエリソウの群落を突っ切ってぐんぐん下っていく。登ってくる軽装の若者のグループとすれ違った。2時半を過ぎていることから、長命水まで行くグループのようだ。タテ谷の分岐を通過して10分ほど下ると、車の音が聞こえ、国道に出た。国道の橋を渡ったところに「心の山」と書かれた大きな石碑があり、山の絵が描かれていた。ここからは、国道歩き。多くの登山者が鞍掛トンネルからここまで歩いてくる理由が今分かった。最後に国道を登らなければならないことと、コグルミ谷は下るよりも登ったほうが危険度は低いことがその理由のようだ。国道脇のアキチョウジやアケボノソウの花を見ながら、車に気をつけて歩き、20分ほどで駐車地点まで戻った。まだ数台の車が停まっていた。
このコースは、尾根歩き、谷歩き、天然林、草原、日本庭園、大展望と、実に変化に富んだ山歩きが楽しめる。特に、日本庭園や苔むした石灰岩の樹林帯、天然林の谷などはこの山の魅力である。夏にはヤマビルが多いが、春の花の時期や紅葉の季節はすばらしいに違いない。コグルミ谷では慎重な行動が必要。特に下りは要注意。また、日本庭園付近は平坦で道が交錯しており、ガスの時には道に迷わないように常に自分の位置を把握しておきたい。鈴鹿の山を久しぶりに歩きすばらしい山旅が楽しめた。次回の鈴鹿の山はどこにしようかと考えながら鞍掛トンネルを後にした。
★御池岳からの展望
★御池岳・鈴北岳の植物
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