御嶽山
御嶽山の花
 新館の裏に聳える鋭角のビークに向かって歩き始める。後方から短パンの男性が走ってきた。ピーク目指して急坂を走っていく。二人で「ノンキ君だ」と叫んだ。すごい鉄人もいるものだ。このピークの登りが結構きつい。左の青い二の池や東西からぶつかり合うガスの湧き上がり、見え隠れする摩利支天山などに癒されながらピークへ。息を切らして登り詰めると眼前に大きなクレーター。一の池である。水はなく、植物も見えない。登り詰めた稜線にはロッケト型のオリベスクや石碑、仏像がある。前方に剣ヶ峰が見え隠れする。縦走路となるお鉢の稜線は荒々しく、大きく右に回り込んでいる。地図を確認してここで初めてコースタイムを勘違いしていたことに気が付いた。計画した時間よりもかなり早いので、時間的には問題ない。

 お鉢回りが始まる。岩のころがる赤茶けた稜線を歩く。尖った岩などがあり噴火があったことを思わせる。植物はほとんど無い。岩場で大勢の団体さんとすれ違ったが、このコースを歩く登山者は比較的少ない。浮き石に注意しながら岩をよじ登って西側の稜線に出ると、西から強烈にガスが吹き付ける。地獄谷から上ってくる硫黄の臭いが鼻を突く。異様な溶岩の造形物が立ち並ぶ。右手の地獄谷下方はガスで見えないが、噴煙を吹き上げているらしい。

 赤い稜線のガレ場を一旦下り、鞍部から小屋の建つ剣ヶ峰への登りにかかる。剣ヶ峰の正面からの登りは立派な階段を上るが、裏は岩場を登る。建物の横を抜けて山頂。山頂には様々な仏像などが並び、賽銭箱が置かれている。大勢の登山者で賑わっている。6年ぶりに立った懐かしい山頂だ。

 「アレ! 何でここにいるの?」 何と1800年隊のブルさんがまさに到着してザックを下ろしたところだ。sizukaさんは山頂表示柱の方から、katakuriさんは階段を上がってきたところだった。西と東から山頂に同時到着。互いに知らせてもおらず、全くの偶然である。登山口が濁河温泉と田ノ原。「打ち合わせても同時には着かないだろう」とブルさん。以前、金華山東坂で偶然に出会ったことがあるが、まさか御嶽山山頂で出会うとは。行動パターンが一緒であることが恐ろしい。聞けば、互いのコースの接点は剣ヶ峰山頂だけ。5分ずれれば出会えなかった。感激の中、5人で記念撮影。

 小屋の左下の風のない岩場に下りて昼食にする。偶然の出合いを祝ってビールで乾杯。sizukaさんの最高級飛騨牛の焼き肉やkatakuriさんの冷やしソバなどをいただいた。宴会するならもっと食材を持ってくればよかった。ウチは石焼きビビンバとクリームリゾット。思いもよらぬ楽しい昼食となった。ガスは切れることなく、ジャケットを着ていても次第に寒くなった。気温は10度C。

 1時間半の昼食の後、帰路も長いので下山開始。1800年隊3人の皆さんとは二の池まで一緒に行くことにした。山頂から正面の階段を下り小屋の間から左のコースを下る。先ほど登ってきた新館上部のピークやスカイブルーの二の池が望める。二の池の畔で記念写真を撮り、賽の河原が見えるところで三人と別れた。「次回は近場の低山で宴会やりましょう」と手を振った。

 偶然の出合いで元気が出た。賽の河原を歩きながらガスで見え隠れする摩利支天山に登ろうか迷った。計画より30分遅れているが、摩利支天山に登っても5時までには下山できそうと判断。白竜避難小屋からロープに沿って摩利支天山を目指す。摩利支天山は長い岩尾根の先にある。お社のある分岐点まで登り詰めれば、後は尾根沿いに20分の距離。尾根の上を歩かず、尾根左下の細い道を岩壁に張り付きながら歩く。タカネヨモギがお辞儀をしている。

 前方には2つのピーク。奥のピークが山頂のようだ。1パーティーとすれ違った他には誰にも出会わない。足場の悪い急斜面を尾根側に登ると大きな岩。この岩の上に山名表示板。狭い岩の上が山頂である。滑り落ちないように岩を登り、風で飛ばされないように岩にしがみついて記念写真を撮った。ガスが無ければすばらしい展望に違いない。

 折り返し、来た道を戻る。帰路も約20分で分岐へ。ここから五の池目指して広い急斜面の道を下る。草木谷から上ってくる雲の固まりの隙間から五の池や小屋が見える。その後方には緑色の継子岳が美しい。スローモーションのように流れる雲が飛騨頂上を越えていく光景はいつまで見ていても飽きない。

 かなり下って右側に三の池が見えた。この位置から見る光景も美しい。火山で真っ黒になった尾根を通り五の池小屋へ。トイレの裏から四の池を見下ろせる場所まで登ってみた。広大なクレーターの底に川の流れが見下ろせた。その向こうに堂々と横たわる継子岳。継子岳へはまた来ることを約束して、飛騨頂上を後にした。

 木道では滑らないように横向きになって下り、ほぼ2時間で下山。登山口の神社で無事に下山できたことに手を合わせ、家族連れの泊まり客で賑わう温泉街に着いた。町営露天風呂の閉店5時直前に滑り込んで誰もいない温泉で汗を流した。流し場の横で、アカバナとネジバナがひっそりと咲いていた。

 カーブミラーに注意しながら長い御嶽パノラマラインを走った。昨夜には分からなかったが深い谷を見ながら走るすばらしいドライブコースである。途中、御嶽展望地の大平展望台で停車。御嶽山は入道雲の中に隠れ、最後まで姿を現さなかった。次回は、花の時期に取り残したコースを回るためにまた来よう。すばらしき名山、御嶽山へ。
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