トレースマップ(カシミール3Dで作成)
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)
大平山 (291m 愛知県犬山市)
 2006.7.1 曇り一時雨 2人

大平林道入口手前駐車場(14:10)→大平林道ゲート(14:12)→登山口(14:16)→展望地(14:29)→第2ピーク・アンテナ(14:44)→大平山山頂(14:50-14:57)→せせらぎコース近道分岐(15:13)→せせらぎコース合流(15:23)→沢出合(15:43)→せせらぎコース入口(15:46)→桃太郎神社(15:49-15:55)→駐車場(16:08)

 梅雨真っ盛り。雨間にジャガイモを掘る。5kgの種芋は10倍ほどになっているであろうか。芋を拾い上げていると腰が痛い。両手を上げて背伸びをする。曇り空を背景に、周囲の低山が目に入る。午後から近くの山に登ろう。小雨が降り出したが、降水確率は30%。大雨になることはなさそうだ。

 2年前に、鳩吹山から継鹿尾山まで縦走したが、コースから外れていた大平山にはまだ登っていない。大平山に決める。天気と時間を見ながらコースは自由に変更できそうな山だ。各務原市鵜沼から木曽川を渡って犬山市に入り、橋を渡りきったところの信号交差点を左折。ライン下りの終点駅を左に見ながら、木曽川左岸を東進。継鹿尾山への登山口となる寂光院入口を通過し少し走ると、左手に駐車場、その先、左にゲートで閉められた大平林道が分岐している。今回は、この大平林道入口から大平山に登り、帰路はせせらぎコースを下って桃太郎神社に下りることとした。きさくさんの詳細に書かれたHPを参考にさせていただいた。

 先に下山場所となる桃太郎神社を下見しておく。大平林道入口から900mほど東進したところに桃太郎神社があった。帰路の車道歩きは15分程度であることを確認して、大平林道入口の駐車場に戻った。

 数台停められる駐車場には大きなトイレがある。小雨が降り出したので、傘を差して車道を歩き始める。山手に不老滝を見ながら、大平林道に入り、ゲートの脇を抜けてS字に登っていくと、右側の苔むした岩の上に礼拝堂らしき場所があった。登山口はその先左側にある。入口には「大平山登山口−30分−山頂−30分−尾根−70分−鳩吹山」とある。

 明るい斜面をジグザグに高度を稼ぐ。潅木の尾根であり、後方の展望はよく、2・3分も登れば、後方に大きな木曽川とモンキーパークの観覧車、左後ろには山水画に描かれているような岩山が聳える。岩の所々が白く見えるものは満開のクチナシの花のようだ。登山口から5分ほどで小さなアンテナの横を通過。小雨が降っているが、空は明るく展望はそこそこ。後方の美しい富士山のミニチュアは伊木山である。駐車場のトイレや自分の車も見下ろせた。

 気持ちのいい尾根歩きは続く。急傾斜ではないが、湿度が高く額から汗が落ちる。境界見出票を見ながら直線の明るい尾根を登る。所々にヤマザクラの植樹が見られた。ネズミサシの緑色の実が美しい。岩場の展望地が現れた。道を左に外れて登ってみると、雨で濁った眼下の木曽川と国道、北東に猿啄城から明王山、金比羅山に続く稜線と、その手前に陰平山が望めた。北には八木三山、愛宕山の隣に金華山が小さく見える。晴れていれば、さらにすばらしい見晴らしであろう。

 とにかく蒸し暑い。汗だくである。過去、この時期に登った低山が思い出された。岩場で冷たいジュースを補給し、一登りでピークへ。大平山のプレートがある。ここから5分ほどで、アンテナの立つ第2ピークへ。ワラビを足下に見ながら、緩やかに下って鞍部へ。右から薄い道が上がってきている。

 いつの間にか雨は止み、薄日が差し始めた。鞍部から登りにかかる。濡れた地面から熱気が立ち上る。暑い。汗が目に入る。リョウブの花が唯一の癒し。なだらかになったところで、山頂の表示。樹林帯の中で展望はない。通過地点のようなところで山頂らしくない。モンキアゲハが頭上を舞っていた。ザックを下ろして汗を拭く。冷えたお茶がうまい。ヤブの中にカメラをおいて、セルフタイマーをかけた。

 落ち着いたところで、時間もないので先を急ぐ。ここからなだらかに下って行く。常緑広葉樹の潅木が多い道を、落ち葉を踏んでジグザグと下っていく。白い花を咲かせたクチナシが続く。クチナシの花をよく観察すると、花の大きさや花弁の幅にかなりの違いがあることが分かる。実生で増えたため変異が大きいのであろう。花弁の幅が広いものは、オオヤマレンゲに似ている。それにしても、純白とはこの花びらの色のことを言うのではないだろうかとさえ思うほど真っ白。香りもすばらしい。

 滑りやすい赤土の道はしだいに傾斜を増してくる。前方が開け、下界が望めた。右手には大平林道から継鹿尾山へ続く稜線が見える。大平林道の峠よりも東の鳩吹山尾根に近づいたことが分かる。緑の美しいコシダの道を下り、すぐに左へ直角に曲がる。鳩吹山尾根ルートへの看板がある。下草の露でズボンがかなり濡れてきたが、雨具を着て蒸し風呂状態になるよりはいい。

 斜面をトラバースして、ヒノキや広葉樹の道を歩く。ササユリの花はすでに散っている。ヒノキ林の中で再び左に曲がる。ここにも鳩吹山尾根ルートへの看板があった。ウスノキの赤い実を見ながら、急な下りになってすぐにプレートが現れる。左へ下りればせせらぎコースへの近道であり、地図も書かれている。せせらぎルートの中央部辺りへ出るようだ。桃太郎神社まで40分と読めるかすかなマジックペンの文字も見られた。

 時計を見ると、既に3時を回っている。時間もないので、近道を選んだ。急斜面を雨傘をストック代わりに下る。雨水で洗われた滑りやすい赤土の道を、新葉を広げた美しいウラジロを見ながら下る。花はないがイワカガミやショウジョウバカマが見られた。谷を目指して急降下していく。ヒノキ林に突入に、左方向へ。谷川の音が聞こえてきた。ウラジロやシシガシラを下草に、真っ直ぐに伸びるヒノキ林は美しい。深山を歩いているような気になる。

 分岐から10分でせせらぎコースに合流。ハエドクソウやドクダミが薄暗い谷でひっそりと花を咲かせている。この合流点にも地図のプレートがあった。よく整備されている。谷に沿って下る。登りの尾根歩きとは全く異なり、実に涼しく快適である。何度も縫うように谷川を渡った。それほど深くない淵に、魚影が見られたのには驚いた。道は谷沿いの岩を歩くような所もある。潤いのある濡れた空間は美しく、生命の鼓動を感じる。山は生きていると思った。

 右からの谷川と合流する地点に出て、川を渡る。谷が交わり水量が増えた。この山の懐の深さが分かる。鳩吹山は低山ではあるが、その山塊は巨大だ。それだけ水も豊富である。薄っらと川霧が出ている。水に手を入れてみると実に冷たい。

 大きな堰堤とコンクリートの橋を左に見て、その先で川は広く緩やかになった。電柱を束ねた橋が架かっているが、すべりそうなのですぐ先の堰堤を渡る。堰堤の右には用水路があり、谷川の水を集めて勢いよく流れていた。堰堤から下を覗き込んで驚いた。豊富な谷水が岩の間へ轟音をたてて吸い込まれている。豪快な光景である。堰堤を渡って、沢出合の表示。2つの滝がすさまじい勢いで岩の隙間に落ち込んでいる。このコースのクライマックスにふさわしい光景である。しばし見とれる。

 ここから人家の横を抜けて、すぐにせせらぎコース入口に出た。車道から広場を隔てたところにある。ここから、西へ歩くと桃太郎神社がある。子どもの頃に来たことがあるかもしれないが、記憶にはない。桃太郎に登場する猿や犬などの像を見ながら参拝。訪れる人も少なく、売店もひっそりとしていた。公園で冷たいジュースを飲んで、短時間の山旅にピリオド。青い実をたくさん付けたサワグルミを見ながら車道を歩いて駐車場まで戻った。

 思ったよりも変化に富んだ山歩きであった。鳩吹山とは違った面白味のあるコース。見所も多い。場所は特定しないが、途中でオオバノトンボソウを2株ほど見かけた。谷歩きは夏向き。登山口が近い継鹿尾山と周遊を組むのも面白そうだ。
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