トレースマップ (カシミール3Dで作成)

*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)

大川入山 (1908m 長野県) 2006.10.21 晴れ 3人

治部坂峠登山口(7:43)→横岳(8:35)→ベンチのある展望地(8:48-8:56)→カラマツ林を下った鞍部(9:44)→小ピーク(9:54-10:04)→大川入山山頂(10:28-12:30)→ピーク(12:42)→登り返して稜線へ(13:06)→ヒノキの幼木林(14:09)→あららぎ高原スキー場ゲレンデ(14:23)→スキー場駐車場(14:40)

 恵那山の南に続く、中央アルプス最南端の山と言われる大川入山。山頂付近の美しいササ原とすばらしい展望が得られるこの山はネット検索のヒット件数の多さからも、その人気ぶりが分かる秀峰である。岐阜からは中央自動車道を使えば、比較的短時間で到着でき、国道沿いに登山口があることから、アプローチも容易。以前から登りたい山の1つであった。

 この休みは、揖斐の五蛇池山を予定していたが、まだヤマビルがいるという情報を入手し、前々日に行き先を変更。紅葉も期待できる念願の大川入山に登ることとし、「クーの山小屋」掲示板に「行き先変更」を書き込んだ。

 前日、我々と同じく、この山に憧れていたmakotoさんから、「追いかけます」との携帯メール。待ち合わせ場所などのメールのやり取りをしているうちに気がついた。大川入山は登山口が2つある。南は治部坂峠、北はあららぎ高原スキー場。makotoさんの参加で、車2台になったことから、それなら南から登って北に下りよう。こうして、大川入山縦断の計画が固まった。

 makotoさんは、前夜発・車内泊。7時半に下山口となるあららぎ高原スキー場に集合することとなった。通勤割引を利用するため、関ICから東海北陸自動車道、東海環状自動車道、中央自動車道経由で園原ICを出るという、ぎりぎり100km未満のルート。園原ICから東進し、国道256号線と合流。昼神温泉街を抜けたら、豊田・名古屋方面への表示に従って右折し、阿智大橋を渡って国道153号線を南進し、峠を登っていく。いくつかのトンネルを抜けて寒原峠から右折。あららぎ高原スキー場の案内に従って広い道を進むと、すぐにスキー場の大きな駐車場が現れた。

 一番上の駐車場にmakotoさんの車が1台。今年1月の吹雪の貝月山以来の出会い。今日は、相方のすみれさんは都合で参加できず、makotoさん1人。makotoさんの車をデポして、登り口となる治部坂峠に向かった。makotoさんと積もる話しをしながら10分足らずで観光施設などが並ぶ峠に到着。峠を通り過ぎてUターンして、蛇峠山側にある広い駐車場に停めた。

さて、登山口はどこか。地図を引っ張り出している間に、makotoさんに、最近、大川入山に登られたネット仲間に電話で登山口を確認していただいていた。さすが、顔の広いmakotoさんである。makotoさんのHPの涸沢のレポートからもそれがよく分かる。

 登山口は、国道の大川入山側にある「こまくさ」と書かれたピンク色の看板があるところから北側の道に入る。舗装道路を僅かに登れば、林の中でT字路に突き当たって、右折すればゲート。このゲートの山側が登山口である。すでに何台もの車が路肩に駐車してある。舗装された道は広く、路肩の駐車は可能であり、ゲート近くに駐車できた。

 身支度をしてスタート。コンクリートブロックが並べられた広い山道を登る。すぐにコンクリートの小さな建物とフェンスの脇を抜けて、鉄の橋を渡ってヒノキ林に入る。デジタルカメラを買い換えて、初めての山歩きであり、写真撮影に戸惑う。おしゃべりしながら歩くうちに、木の根が張り巡らされた尾根はしだいに急坂になってきた。モミやヒメコマツもあり、地面には発芽したばかりのヒノキやモミがたくさん生えていた。

 道はなだらかになり天然林となる。カエデの紅葉が美しい。急斜面を登り、左側に崩壊地のある展望のいい場所を通過。左に紅葉の始まりかけたカラマツを見ながら、痩せ尾根を歩くと壊れた2つのベンチと三角点があった。ここが横岳だと思ったが、GPSを見ると、更に先にピークがあるようだ。あまり展望が良くなかったので、もう少し先まで歩くことに。

 秋色に染まった気持ちのいい尾根のアップダウンが続く。正面に大川入山らしき山頂が見え始めた。道の両脇にはクマザサが茂り、真っ赤なドウダンツツジやカエデが燃える。先ほどのベンチから15分足らず歩いて展望のいいピークに出た。左右の展望がすばらしい。左側の山の紅葉が見事。右側には遠く淡い稜線が見えた。南アルプスの稜線である。天気はいいが、もやがかかって展望は今1つ。ここにもベンチが1つ置かれていた。先ほどのベンチが横岳だった。

 ここで小休止。makotoさんから頂いたチーズが美味しい。水分を補給して出発。左手前方の山の紅葉がすばらしい。そして、大川入山が全容を見せ始める。ピラミダルな山容が美しい。それにしても遠くに見える。かすかにチェーンソーの音が聞こえる。紅葉の尾根のアップダウンを繰り返して、カラマツ林に入ると、伐採の作業中。作業員の方に挨拶した直後に、カラマツの巨木が轟音と共に倒れてきたのには驚いた。森林作業のため、この辺りのササはきれいに刈り取られている。

 カラマツ林を登り詰めて展望の良いピークを通過し、アップダウン。カラマツ林が続く。もう少し紅葉すると、黄色いトンネルになるに違いない。いくつかの小ピークを越えて歩くうちに、カラマツの樹間から右手に大川入山が見えるようになった。かなり近づいてきた。

 右に方向を変えて、カラマツ林を下って鞍部へ。左手の紅葉が最盛期を迎えている。夏の太陽の光を浴びた落葉樹の葉は今、役割を終え、一斉に赤や黄に変わり、フィナーレを迎えようとしている。まさに燃え尽きる前の木々の美しさは、芽吹きの幼い色合いからは想像できない、成熟しきった妖艶の輝き。この錦の衣を身にまとった山は、厳しい冬を前に、ハレのステージのクライマックスを迎える。四季がある日本はすばらしい。燃え尽きる前の秋の山はいい。

 美しい紅葉の写真をとって、いよいよ山頂目指しての登りが始まる。下山してくる単独男性に出会った。ここまで、今日は登山者に出会っていないことに気がついた。なだらかな道が続いただけに、急登に息が切れる。登り初めて、先ほどの休憩から1時間ほど歩いたので休息をと思ったが、なかなかいい場所が無く、急斜面を休むことなく登り切ると、展望のいい場所に出た。

 東側が開け、蛇峠山が望めた。正面には紅葉の木々が散りばめられたササの山。登るパーティーが小さく見える。マシュマロを食べて一息。ササの山がきれいだったので、中判カメラで写真を撮った。

 再び斜面に取り付く。カラマツ林からササ原へ、ジグザグと登っていく。展望も良くなった。急緩繰り返してぐんぐん登っていく。左手のササ原に紅葉の木々が美しい。この辺りの紅葉はやや遅いくらいである。後方の展望もすばらしくいい。まさに雲上遊歩道。いい山だと言われる理由がよく分かる。足下にヤマハハコの花を見ながら前方の木立を目指す。

 大川入山は風衝木が多いことでも有名な山である。風衝木とは、強い風により風上方向には枝が伸びず、片側だけに枝がある木。この辺りのコメツガなどほとんどの木々は風衝木であり、風の強い山であることが分かる。

 先頭から「着いたよ〜」の声。もうひと登りあるかと思ったのだが・・・。山頂はそれほど広くもないが、ベンチや板が置かれ、北側はササが刈り取られていた。恵那山方面の展望は樹木で遮られているが、大展望の山頂である。すぐ先まで歩けば、恵那山らしくない三角形の恵那山が望める。

 数人の登山者が昼食をとったり山を指さしたりと、青空に綿雲が浮かぶ山頂を楽しんでみえた。北側に見える山塊は中央アルプスだと教えていただいた。南から見る中央アルプスはコンパクトに凝縮されて間近に見える。空木岳が目立つ。

 下山するパーティーにベンチを譲っていただき、ランチにする。念願の登頂を祝してビールで乾杯。メニューはキムチ鍋。鍋が出来上がるまで、makotoさんからお寿司やチーズをいただいた。お弁当の登山者が多く、キムチ鍋は注目の的。それでも隣ではスパゲティーを茹でるパーティーもあり、仲間が増えた。

 次々に登ってくる登山者で山頂は実に賑やか。山頂を吹き抜ける穏やかな風はやや冷たく、ジャケットを着た。辛い鍋をつつきながら、makotoさんと山談義。今年登った山での出来事などで盛り上がった。驚くような話も聞かせていただいた。コーヒーとmakotoさんのおいしいブドウを最後に、山頂での2時間のランチ終了。

 下山は登ってきた方向と反対側にあるあららぎ高原スキー場へのコースに入る。正面に恵那山、左にはなめらかなササの山に散らばる紅葉の木々、手前に黄金色に変わり始めた風衝木を見ながら、鞍部目指して急降下していく。この辺りの風景が最もすばらしい。中判カメラで何枚もシャッターを切った。

 鞍部からピークへ登り返す。先を歩くmakotoさんがこちらにカメラを向けている。振り向けば、風衝木をまとった大川入山が昼の光に輝いて実に美しい。ピークを登り切ってジグザグと急斜面を下っていく。正面に紅葉の山が見える。かなり下っていく。正面の峰に登り返すのではないかといやな予感がしたが、予想通り鞍部から登り返しが始まった。

 途中、スケッチをする女性に挨拶をしながら、急緩繰り返しながら、息を切らして稜線に着いた。面白いことに、ここからの大川入山は、先ほど歩いてきた北側のピークと並んで美しい双耳峰を見せる。逆光で黒い山肌には、紅葉の木々が光る。

 この先、長いなだらかな稜線下りが始まる。青空に映えるダケカンバの黄色や逆光で真っ赤に染まるカエデを楽しみながら、散り始めた落ち葉を踏んで、おしゃべりしながら下る。右手が開けたところでは、大川入山が大きく見えた。カラマツ林も現れ、急斜面や小さな登りもあるが、快適な下り。

 大川入山は後方に下がり、蛇峠山が右手に見えるようになった。山頂から1時間半弱歩いたので、紅葉の美しい尾根道で休憩。お昼の残りのブドウをご馳走になった。山で食べる果物は最高に美味しい。西に傾いた日に、尾根の林はオレンジ色に染まり、時折吹き抜ける風で、枯葉がひらひらと舞い落ちた。

 ササのジグザグから前方に下界の集落を見ながら、天然林の急斜面を下りカラマツ林を通過して明るいヒノキの幼木の植林地帯に出た。下界が見下ろせる急斜面の植林地帯をジグザグと下っていく。足下にはきれいなリンドウがいくつか見られた。10分弱、植林地帯を下って、再び左の天然林へ。美しいシラカバの林の道はたくさんの落ち葉で埋め尽くされて気持ちがいい。

 シラカバの林の中で道が2手に分かれていた。どちらの道も明瞭。GPSを見るとすぐ左側にゲレンデがあることが分かった。下ってきた単独男性に、「こちらから登ってきました」と、左の道を教えていただいた。よく見ると、登る方向から見えるように、シラカバの幹にマジックインキで大川入山の文字が書かれてあった。

 左に下ってすぐにゲレンデに出た。ゲレンデから山への入口には登山口を示す表示があった。ゲレンデ南側の溝に沿ってセンターハウスを目指す。紅葉の始まりかけた北側の山が美しい。ふかふかの木材チップのゲレンデを歩いてシーズンオフの誰もいないセンターハウスに到着。大川入山の概念図が書かれた案内板があった。治部坂峠コースは8km、あららぎ高原スキー場コースは5kmの表示。トイレを借りて、makotoさんの車を停めた駐車場へ。makotoさんに治部坂峠の車まで送ってもらった。

 念願の大川入山縦走完了。makotoさんと歩けたことでさらに充実した楽しい山歩きとなった。makotoさんとは、また一緒に登ることを約束して別れた。峠の反対側にある蛇峠山のスノートレッキングも登りたい山のリストに加えておこう。

 この山が大人気の山であることがよく分かった。道はよく踏まれており、両コースともそれぞれの良さがある。最初は治部坂峠から攻めるのが一般的であろう。このコースは下呂市の山之口から登る川上岳のイメージによく似ていると思った。樹林帯の登りから水平な尾根歩き、そしてササ原から山頂へというイメージである。初心者向きと言われる山ではあるが、3時間コースで2000mクラスの山。風と雨対策などは万全に。

 秋もいいが、花の楽しめる芽吹き時や新緑時期もすばらしいに違いない。早出して山頂でのんびりしたい名山である。
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