トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)

尾崎三峰山 (240m 各務原市) 2009.3.1 曇り・晴れ 2人

陸軍墓地(9:04)→北回りルート尾根北端(9:15)→陸軍墓地分岐ピーク(9:29)→北尾根北端(9:39)→谷・登り返し(9:51)→団地への分岐点(9:54)→稜線合流(10:09)→尾崎三峰山山頂(10:12-10:35)→竹林(10:51)→北町登山口分岐点(11:03)→東屋(11:20-11:23)→西尾根の岩のテラス(11:27-11:46)→陸軍墓地分岐ピーク(11:54)→陸軍墓地(12:11)

 尾崎三峰山は、山歩きを始めた頃に登った各務原の超低山である。8年前、尾崎団地のど真ん中の中央登山口から登ったが、当時、標高232mのピークに東屋はなく、北のピークの樹林帯の中にひっそりと山名の標示板がかかっていたことが思い出される。その後、自宅から近いこともあって、僅かな空き時間を見つけて、何度か東屋まで登った。先月も2人でこの山へお茶を飲みに出かけた。その時、最も標高の高い240mの山頂は360度の大展望地となっており、さらに常連の登山者から西尾根ルートがあることを教えてもらった。このルートを含めて、未だ歩いていないコースを確認することを目的に、午前中の空き時間を利用して山旅に出かけた。

 西の登山口は、東海学院大学の北にある陸軍墓地の東側にある。ちょうど156号線バイパスの分岐点南の旧156号線に架かる緑色の歩道橋から東へ進み、山に突き当たったところが陸軍墓地となっている。墓地は、戦時中にこの地域にあった六八連隊のもので、広場と慰霊碑がある。広場の北側に桜並木があり、木の間に3台ほど駐車可能。並木の北側には倉庫があり、その東まで尾崎三峰山の裾野が迫っている。「陸軍墓地入口」と書かれた大きな石柱を左に見ながら舗装道路を登るとすぐに左に山道があり、白いポールにマジックで「登山口」と小さく書いてある。

 コナラの落ち葉を踏みながら山道に入る。電化製品などの不法投棄に心が痛む。谷を右に歩くとすぐに分岐点に突き当たり、手作りの白いプラスチック板に描かれた地図がある。北回りコースを歩くこととし左へ。枯れたアカマツのヒトクチタケを見ながら歩くと、明るい道となる。既に咲き始めたオレンジ色のヤマツツジを足元に、丸木の階段が整備された道を登る。右山でトラバースしていくと、左手の樹間からは金華山が姿を見せる。

 太いワイヤーを越えて岩を登ると、目の前が開け、その眺望に息が止まる。尾根の北端からは、マッチ箱が並ぶような住宅街を眼下に、国道156号線バイパスが一直線に西へ延びる。白く輝く岐阜城を乗せた金華山を中央に、左へ232mピーク、洞山、権現山が、右には西山が、まるで金華山を守るように取り囲む。金華山東坂コース途中の岩場から見る尾崎三峰山方面の景色も美しいが、ここから見る金華山はさらに美しい。北には鉄塔の並ぶ舟伏山が大きい。国道156号線バイパスの工事が岩田山に向って進んでいる。岩田山にトンネルができるのだろうか。

 展望を楽しんだら、アンテナを後に、折り返すようにチャート岩盤の尾根を登る。展望のいい明るい尾根歩きは気持がいい。ネズミサシが多く、たくさんの実をつけている木も見られる。枯れた松の多い尾根には丸木の階段が作られており歩きやすい。登りつめるとケルンが積まれたピークに立った。東にはこれから歩く尾根が望めた。ピークから南東の次のピークを目指す。明るい道が続き、西の展望もよく、洞山の左にシティータワーが見える。5分ほどで同じようなケルンのあるピークに出た。ピークから右にも道が下っており、軍人墓地に至る。ここは東へ。よく踏まれた道を下る。右前方には東屋のある232mピークが望める。
 
 登り返してピークへ。ここにもケルンがある。まず山頂を踏む予定にしていたが、北の尾根に道が続いている。地図を見るとなだらかな尾根であり、先端まで歩いてみることにした。少し下ると、眼下に団地と正面に岩田山が見える。次第に岩の尾根となり、小ピークを越える。左には先ほど登ってきた尾根がよく見える。尾根北端の岩場まで歩き、展望を楽しむ。道はさらに右方向へ下っている。その先は団地のようだ。道の先を確認するために、先へ先へと下りていく。何しろ250mに満たない低山である。下り切っても登り返せばいいと思った。また、団地から登り返す他の道があるかもしれない。
 
 急斜面をぐんぐん下っていく。松枯れで展望がよく、団地の屋根が近づいてくる。国道の脇にはため池も見える。団地に迫る山裾を見ると、団地から南に上がる尾根に電線や山道が確認できた。短いロープ場を2箇所ほど通過し、コナラの落ち葉の道を右山でトラバース。団地に飛び出すのかと予想したが、道は等高線に沿って団地を巻くように山裾を回っている。赤テープも見られる。涸れ谷を登り返して左に下ると様子が一変する。ヒサカキなどの常緑広葉樹の潅木帯の下りとなる。落ち葉が敷き詰められた美しい林を下り切り、ホースのある涸れ谷を渡って、急な岩場を登る。後方には先ほど下りてきた北尾根が巨大な壁となって視界を遮る。アカマツ、ネズミサシ、ソヨゴなどを見ながら、岩の多い道を登っていくと尾根の分岐点に出た。下れば団地へ出られるようだ。
 
 分岐から南へ、急斜面を登る。正面の太陽が眩しい。岩の多い明るい尾根で、後方の展望もいい。滑り岩の横を通過して、松葉を踏みながら一気に急斜面を登り切ると、稜線に出て東西の道に出会った。ここにもケルンがある。ここを左折して、正面の小高いピークを目指す。稜線途中に北が切り開かれた場所があり、白山眺望の標示板があるが、今日は雲が多く白山は見えない。ここを過ぎるとすぐに広場に飛び出した。尾崎三峰山山頂であり、360度の大展望がそこにあった。北には山名標示板があり、大きなケルンがある。手作りの表示板や椅子がいくつか置いてある。ここから見る金華山もすばらしい。歩いてきた北尾根もよく見える。舟伏山と岩田山の間には百々ヶ峰が望めた。東には2つの権現山や金比羅山の山並みが望めるが、霞んで遠くの眺望は得られなかった。
 
 写真を撮っていると、上下ジャージーの単独男性が登ってみえた。本格的な登山靴を履いておられ、かなりの山の達人とお見受けしたが、この後、この推測が正しかったことが判明する。男性としばらく山談義。山頂から東へ道が続いているので、この道の行き先を尋ねると、下り切った辺りの竹やぶから折り返せば、北町登山口のルートと合流して周遊できることを教えていただいた。尾崎団地に住んでいる方で、尾崎三峰山が各務原アルプスに繋がるよう登山道整備について行政と調整していることや岐阜市との行政境、私有地の問題などいろいろと話を聞かせてもらった。続いて登って見えた男性もこの山の登山道を整備してみえる方だった。今日、歩いてきた道も丸木の階段が設置されるなどよく整備されていたが、どれもこの山の愛好家によるもののようだ。皆さんに頭が下がる思いである。次々と登山者が山頂にやって来た。まさに手軽に登れる市民の山。教えていただいた東の周回ルートをたどることにして、山頂を後にした。

 ゆるやかに下って水平に歩くと分岐点が現れた。ここは右へ。コシダの道を下り、急斜面を降下すると明るい松林となり、展望のいい場所を通過。エメラルドグリーンの池が見える。前方には尾崎三峰山の東尾根から続く稜線が見え、道は南方向に向きを変えながら谷に向って急降下していく。急斜面を下っていくと、広い谷に出た。ショウジョウバカマの花が春の日差しを浴びて輝いている。気持のいい林を下ると竹林が現れた。道が交錯しているが、教えてもらったとおり折り返すように右折して竹やぶに向う。道は明瞭で、竹やぶもきれいに整備されている。逆光の緑のトンネルは美しい空間。落ち葉をカサカサと踏んで竹林を抜けると、明るい林に出た。大木が多く、尾崎三峰山にこんな林があるとは思いもしなかった。周囲を囲む尾根の水がここに集められることから、豊富な水と肥沃な土地が木々を育てるのであろう。

 涸れた谷を歩き、緩やかに登っていく。谷は左に移り、山側にはショウジョウバカマの花がいくつか見られた。谷に水の流れも見られるようになり、尾崎三峰山が以外に大きな山であることを知る。谷沿いの道もこの山の南側からは想像できない雰囲気のいい道である。谷が狭まり、水が涸れる辺りで谷を渡る。丸木階段を登って行くと標示板のある分岐点へ。直進は山頂へのショートカットコースであり、ここは左の「尾崎北町」と書かれた方向へ。1分で尾根に出た。大きな手作り看板がある。南への道を下れば北町登山口に出る。東へ尾根を下れば、8年前に歩いた東登山口に下りる。

 明るい尾根を西へ登っていくと、先ほど山頂で道を教えていただいた男性に再び出会った。教えてもらった道が明瞭だったことを伝え、立ち話をした。男性は山岳警備隊員を引退された方で、昨年、地元の新聞に山の話が連載されたとのこと。その記事を読んだことがあり、各務原アルプスのことが書かれていたことを思い出した。地元の山岳会にも所属しておられ、市民登山なども計画してみえる。山の楽しさ・面白さを多くの市民に伝える活動をされてみえるのには頭が下がる。「またどこかの山で・・・」 男性と別れ、尾根を登った。

 地面から突き出すような大岩を見ながら登っていくと、前方に東屋のある232mピークが見え始めた。南には尾崎権現山が横たわる。「草原の展望台」を通過すると、コシダの群落の中の木柱に「あづまやへちかみち」の標示。この細道に入ってショートカットして東屋に到着。登ってきた東尾根を見下ろした。小さな男の子が息を切らして中央登山道から登ってきた。聞けば、おばあちゃんと妹と3人で登ってきたとのこと。誰もが登れることが、この山の魅力であろう。

 既に11時半近い。お茶の用意をしてきたので、西尾根の岩のテラスに向う。東屋を後に、北の吊尾根を渡り、北のピークへ。8年前にはこのピークが展望のない山頂だった記憶がある。東へ歩けば1時間前にいた山頂に至るが、ここは西へ。日野方面50分の標示がある。今回の山歩きで最高にお気に入りの場所がこの西尾根。正面に岐阜市内の美しい山並みを見ながら尾根を下ると、岩場が現れる。アルプスの雰囲気さえ感じられる。岩の上に立てば、そこには絶景が待っている。こんな身近な場所にこんなすばらしい場所がある。お気に入りの岩のテラスでコーヒーを沸かし、お菓子を食べる。ここで飲むコーヒーはどんな名店のコーヒーよりもうまい。

 20分ほどのコーヒータイムを楽しんで、下山開始。急な岩場を足元に注意しながらゆっくり下り、尾根を北に外して岩のロープ場を下る。電柱のあるところから北に道があり、小さなプレートには周回できるようなコースが描いてある。いつか検証したい道である。登り返してピークに出る。今日の朝、このピークから北尾根に入った場所である。次のピークまで歩き、ここの分岐点は直進して軍人墓地を目指す。

 このコースも展望のいい尾根であり、眼下には東海学院大学の建物やグランドが見える。尾根をすばやく飛び交う蝶を発見。久しぶりに出会うテングチョウだ。今年の春は早い。岩の展望地からは、大きくカーブする東海北陸自動車道が見下ろせた。樹林帯に入り、急斜面を一気に下った。登山口近くにある白い看板のある分岐点に合流する予定だったが、右の谷を渡らないのでおかしいと思っているうちに、登山口とは異なる場所に出た。登りに使った登山口よりも上部の舗装道路に出た。分岐を見落としたのであろうか。これも今後の検証が必要だ。軍人墓地に戻り、3時間の尾崎権現山一筆書きの旅を終えた。

 今回は尾崎権現山の北斜面を中心に歩いたが、南斜面も交えて1日かけての山歩きが楽しめそうだ。絶景の展望地が各所にあり、雰囲気のいい場所も多い。しかし、コースによっては岩場や急斜面もあり、低山と甘く見ないで慎重な行動が必要。今回はショウジョウバカマやシュンランなどにも出会え、季節を変え、コースを変えて登れば意外な発見があるに違いない。懐の深い尾崎三峰山であることを発見した山旅でもあった。

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