トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※点線は推定トレース 

竜ヶ岳 (1100m 三重県) 2009.11.23 晴れ・曇り 2人

宇賀渓駐車場(8:26)→林道終点・ホタガ谷分岐(8:45-8:50)→ホタガ谷出合(9:16)→小滝(9:43)→炭焼き跡(10:18)→ササの谷(10:27)→稜線(10:41)→治田峠分岐点(10:53)→竜ヶ岳山頂(11:05-12:24)→重ね岩(12:47-12:54)→石榑峠(13:18)→国道分岐・小峠(13:36)→砂山分岐(13:48)→長尾滝(13:56)→中道分岐(14:03)→中道分岐・60番(14:14)→魚止滝(14:41)→林道・ホタガ谷分岐(14:46)→売店(15:05)

 今年登った鈴鹿の山は、鈴北岳、御池岳、藤原岳。次に登る山は藤原岳の南にある竜ヶ岳となる。この連休の最終日に竜ヶ岳に登ることにした。登山口となる宇賀渓にナビをセットし、いなべ市街を抜けて国道421号線を西進。前方に鈴鹿の山が迫ってくる。竜ヶ岳の山容が美しい。ナビの案内に従い山麓の集落に迷い込んだりもしたが、再び国道に合流して石榑峠への道を上る。宇賀渓の入口ゲート手前の道の左右に駐車スペースがあり、すでに8割ほどが車で埋まっている。4人の若い男女が身支度をしている隣に駐車。この後、この4人には何度か出会うことになる。

 車を後に国道を歩き、すぐに「歓迎 宇賀渓」の大きなゲートを潜ると広い有料駐車場が現れた。駐車場の隅にトイレがある。これから登る竜ヶ岳の頭が望めた。駐車場を横切って売店の前の分岐で地図と標示を確認。左は砂山、右は竜ヶ岳である。右のアーケードの下を歩いて、車両進入禁止標示を見て橋を渡り林道歩きが始まる。アスファルト舗装の道は地道となり、左の宇賀渓に沿って歩く。今朝まで降った雨で、路上が川になっているようなところもある。土砂崩れで壊れたガードレールを過ぎると、東屋が見えてきた。駐車場で会った4人の若者が休息中。東屋の向こうにはトイレがあった。

 竜ヶ岳へのホタガ谷コースはここから人工林の山道に取り付く。4人を追って左山で山道に入る。最近、周囲の木々が伐採されており、右の谷から水のざわめきが聞こえる。いきなりの急登で暑い。登山口から10分ほど歩いたところでシャツを脱ぐ。営林署の錆びた看板が現れ、折り返すように尾根を登る。この尾根は竜ヶ岳山頂から東へ延びる長大な遠足尾根に駆け上っている。尾根歩きはすぐに終わり、尾根を跨いで今度は左に谷を見る。

 落ち葉の積もったトラバース道を歩く。道が狭いところや岩場があり、ロープが設置されているところもある。さらに丸木橋が現れる。急斜面で道が消えているところに丸木3本を束ね、横木が打ち付けられた橋があり、雨で濡れて滑りやすいので、ロープを掴んで慎重に渡る。再び丸木橋を渡り、左から上がってきた谷に合流。涸れた谷で休息中の4人を抜いて、谷を渡るが、すぐに谷に突き当たり右に向きを変えて人工林を登る。右の谷には滝が見える。黄色と赤のルートを示す目印が続く。ロープ付の谷を左へ渡り、ジグザグと登って、クランクの丸木橋を通過。谷を離れて人工林のジグザグ急登をこなすと、再び左に谷が現れトラバース道となる。斜面の丸木橋を通過して、近づいてきた谷に直角に架かった橋を渡る。谷のすぐ上に小さな滝があった。

 岩場を越えて谷を離れ、人工林の登りとなる。高度を稼いで丸木橋を渡る辺りで、前方を歩く二名の男女に追いついた。かなり細くなった谷沿いの道となり、25番のプレートを通過。竜ヶ岳のコースには随所に番号が付けられており、地図をネットで事前に入手していたが、番号プレートは所々しか見られない。ロープ場を抜け左山でトラバース。いつしか谷は涸れ水溜りが見える。二名を追い抜く。女性の靴がスニーカーだったのに驚いた。水の無い谷を渡ったところで初めての休憩。パンを食べて5分ほど休む。

 右、左と谷を渡り人工林を抜けると、周囲の様相が変わり、美しい二次林となる。谷は狭まり、水は無く、石がごろごろした道を歩く。木の葉がほとんど散って、前方の稜線の上には青空が眩しい。21番プレートを通過。すぐに20番プレートがあり、炭焼き跡と思われる石積みが見られた。後方から登ってくる若い男女が見えた。桃色のマユミの実を頭上に見ながら、石が敷き詰められた谷を歩く。気持のいい登りである。谷がどんどん狭まり、ホタガ谷源流に流れる水は全くない。

 やがてササが現れ、樹木が少なくなり、シダの多い谷道となる。谷が二つに分かれている地点を通過し、そして、ついに樹木の無いササの谷となる。稜線鞍部の上の青空を白い雲が高速で流れる。稜線は近くに見えるが、ここからが結構きつい。谷の道は背丈以上のササに囲まれた道となり、後方からの二名に追われるようにひたすら登る。後方には今登ってきた谷の向こうに下界の平野が広がる。ササの道が開け、右方向へカーブして歩くと稜線に出た。
 
 二名の登山者が休息中。北側の展望が開け、白い雲を乗せた藤原岳が目の前に見える。薄い道が稜線を東へ下っており、遠足尾根に続くルートのようだ。後方の二名に先に行ってもらい、休息無しで左方向へ稜線を登る。ここも思わぬ急登である。息を切らして一歩一歩登っていく。15番のプレートを通過してようやくなだらかな道になると、前方に丸い穏やかな山が現れた。目指す竜ヶ岳である。ササに覆われた山肌を雲の影が這うように動く。急登の疲れも忘れてササの稜線を右方向へ歩く。ぬかるんだ地面にはいくつかのシカの足跡が見られる。強い北風が稜線を越えていく。

 潅木地帯を抜けると13番のプレートがある分岐点に着く。北へ道が分岐しており、治田峠・銚子岳・静ヶ岳の標示。1053mピークの南側を通過して潅木群を抜けると竜ヶ岳が全貌を現す。山頂に続く一本道が印象的である。先ほどまで遠くに見えたが、今は目の前に迫っている。すばらしいロケーションの中を歩き、鞍部から最後の登りにかかる。かなりの急登を予想していたが、傾斜は以外に緩やかだ。一気に登りきって山頂に着いた。

 樹木のない広い山頂の中央に三角点があり、その周囲に標示柱や方位盤などがある。強烈な風が吹き、すぐに体が冷える。ジャケットを着て、展望を写真に収めた。北西から流れてきた雲が山頂付近を覆い、鈴鹿山脈を越えたところで雲が消える。伊勢湾方面は晴れているに違いない。東側の下界が雲の薄いベールを通して見える。河川やため池が輝いている。南の鈴鹿の山々や藤原岳方面は雲の中。南の下方にアンテナと道が見下ろせ、石榑峠のようだ。また、南東には谷の間に宇賀渓の駐車場が見えているようだ。

 頭上を雨が降り出しそうな黒い雲が流れていく。風を遮る木々がない山頂の東側に移動。風は弱くなったが、時折突風が吹き抜ける。次々に登山者がやって来たが、強風のため山頂に長く滞在するパーティーは少ない。登山口で出会った4人の若者が到着したが、「風のないところで昼食にします」と、すぐに中道の急な斜面を下っていった。

 強い風の中でランチにする。今シーズン初めてガソリンストーブを持ってきた。風が強いときには、ガスよりも威力を発揮する。アルミの防風板で囲って、海鮮ナベを作る。ナベの後は、パックご飯を入れて雑炊にした。風の音はストーブにかき消されているが、先ほど登ってきた鞍部を抜けるガスが遠足尾根を背景に高速で流れるのが見える。下界では想像できない天気。太陽が雲に隠されており、真冬の雪の山よりも寒いくらいだ。ホットコーヒーで体が温まった頃、南の雲が少なくなり、三池岳が見え始めた。たまには、こんな過酷な自然条件の中でご飯を食べるのもいい。

 後片付けして、下山は石榑峠経由の表道を下る。なだらかなササ尾根を緩やかに下って登り返す。左には大ガレと呼ばれる崩壊地が見える。豪快なロケーションに、何度もシャッターを切った。しばらく歩いて大ガレを覗き込むと砂防堤が見える。山頂から10分ほど歩くと、急傾斜の下りが始まる。眼下の石榑峠を目指して真っ逆さまに下っていく。雲間から時折差し込む光線に照らされて、蛇行する国道や尾根のザレ場が白く光る。転げ落ちないようにササの中をジグザグと下る。やがて道は真っ直ぐになり、左に谷を見ながら潅木帯を抜ける。ロープにつかまってザレ場を下ると、重ね岩に飛び出した。ザレた斜面に奇岩が重なって、まさに名前のとおり。ここからの展望は、晴れていれば抜群。それでも雲がいくらか消えて、釈迦岳が望めた。
 
 展望を楽しんだら、目の前に近づいたアンテナ目指して下山開始。左へトラバースしていくと、すぐに深く掘れた溝状の道に突き当たったが、溝の道手前から樹間の中を一直線に下る新しい迂回路があり、テープが付けられている。滑らないように下っていくと、溝道に合流し、溝の中を歩く。花崗岩の山では、雨水に浸食されてこうした道になることが多い。ザレているのでスリップに注意して歩く。ところどころに溝に沿ってつけられた道も見られた。二名の登山者を追い抜き、ザレ道を下ると右半分が砂地になった小ピークに出た。道を見失いかけたが、ピークのてっぺんから道が続いている。振り返れば、日が当たって黄緑色になった竜ヶ岳の山頂が美しい。

 なだらかに歩き、再び溝の道へ。溝を抜けるとザレた斜面のロープ場に出た。浮石が多く、落石しやすいので要注意の場所である。国道が目の前に見える。樹林帯を抜けススキの斜面を下って石榑峠に到着。国道は工事中であり、工事用の柵の隙間を抜けて峠に立った。現在、国道は通行止めであり、上ってくる車はない。峠には大きなブロック柱が並べられており、普通車の車幅いっぱい。こういう国道も珍しい。
 
 ホタガ谷で出会ったご夫妻に再び出会った。愛知県の方で、まだあまり山を登っていないとのことで、スニーカーだったことがうなずける。土石流で崩壊したガードレールを見ながら国道を下る。美しい紫色の実をたくさん付けたムラサキシキブを見ながら舗装道路を歩き、再びブロックのゲートを抜けて、峠から15分ほど下ると、道路の左に「宇賀渓バス停・長尾滝・砂山」の標示があり、山道に入る。小峠と呼ばれる場所で、ここから再び谷歩きが始まる。

 涸れた谷を渡って、人工林を谷沿いに歩く。次第に広くなる谷を右左と渡りながら落ち葉を踏んでゆるやかに下って行く。炭焼き跡も見られる。国道を外れて10分ほどで、左からの谷との合流点に出て、堰堤に突き当たる。堰堤の左を巻いて谷に下り、右岸を歩くとすぐに砂山への分岐点を通過。透き通った水が流れる小さな滝を見ながらザイルに沿って川を渡り、左山で落ち葉の道を歩くと、岸壁のトラバースの先に鉄梯子が現れる。鉄梯子を慎重に下ると、エメラルドグリーンの滝つぼが見えた。ゴーゴーと音を立てる美しい滝があった。長尾滝である。滝を見上げてシャッターを切った。

 さて、道は? バス停の「→」があるが、道があるように見えない。滝つぼの周囲をぐるりと見回すと、滝と反対側の岩に1本のロープを見つけた。ロープのある岩壁は落葉が積もって人が登ったような痕跡が見られないが、とりあえずロープをつかんで登ってみると道が続いていた。
 
 岩の赤ペンキや木に巻かれた赤テープを拾って谷を下ると、中道への分岐点が現れた。小滝の前で川を渡り、再び渡り返す。急斜面の落ち葉の道をトラバースして、崩壊した丸木橋を迂回すると、再び中道の分岐点が現れる。ここに60番の標示がある。谷を高巻きして、「危険」標示から左へ折り返すように向きを変える。ロープの柵を下っていくと左からの蛇谷に出合う。ロープを伝って大岩を飛び越え谷を渡る。この下に滝が見えた。そして再び急峻な小さな谷の岩場のロープを伝う。次から次へと現れる難所に下りでもスピードが出ない。まるでフィールドアスレチックコース。次は何が現れるかと楽しくなってくる。しかし、踏み外せば谷底まで滑落する場所も多い。慎重に歩く。

 日が差し始めた。ノンストップで下ってきたのでウラジロのあるトラバース道で休憩してミカンを食べる。休息の後、岩の道をジグザグと谷に向かって下る。つばめ滝の分岐を過ぎ、ロープ付きの岩場を下って再びつばめ滝の分岐を通過。つばめ滝方向は川中コースと書いてあり谷歩きのコースとなる。宇賀渓は沢登りのメッカでもある。掘り割れの道を下ると「魚止滝・行き止まり」の標示があったので、谷に下りてみると小さいながらも美しい滝があった。

 引き返してすぐに青い魚止橋と白滝吊橋を渡ると、トイレのある林道終点に出た。ホタガ谷コース入り口で、ここで一周したことになる。またまた東屋で4人の若者に出会った。昼食場所を尋ねると中道の堰堤で食べたとのこと。若い登山者には滅多に会わないが、こうした若者に出会うと学生時代に仲間と霊仙岳や藤原岳に登ったことを思い出す。時のたつのは速いものだ。
 
 宇賀渓を散策する観光客とすれ違いながら、林道を歩いて売店まで戻った。閑散とした売店の前に炭火の周りに並んだ「焼きだんご」があったので買ってみた。ヨモギだんごに味噌を塗って炭火で焦げ目がつくまで焼いたもので、味噌味の甘い団子が絶妙な味となって美味しかった。駐車場から今日登ってきた竜ヶ岳の山頂を振り返る。変化に富んだいい山だった。今度は中道や砂山コースを歩きたいと思った。駐車場に到着した4人に挨拶して、国道を下った。

 竜ヶ岳は何と言っても山頂付近のササの雄大な光景がすばらしい。また、ホタガ谷を源流まで詰める谷歩きや宇賀渓の何度も谷を渡るコースは魅力的である。しかし、谷歩きは滑りやすい丸木橋や滑落の危険がある細いトラバース道が多く、慎重な行動が必要。危険度が星1つと記されたガイドブックもあるが、初級向きの山ではないと思った。山頂付近はシロヤシオが多く、花の時期はすばらしいと聞く。その時期に登ってみたいものだ。
★竜ヶ岳からの展望

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