左門岳の写真
左門岳 (1223m 根尾村) 2002.4.28 曇り 2名

上大須ダム舗装道路終点駐車場(8:50)→道を誤る→駐車場(10:50)→昼食→上大須ダム舗装道路終点駐車場(11:36)→林道終点(11:44)→第2モノレール小屋(11:55)→尾根(12:55)→左門岳山頂(13:25-13:37)→林道終点(15:00)→駐車場(15:12)

 連休の山行は交通渋滞のない方面がいい。根尾村の山をまだ歩いていないことから、左門岳に決める。かつてはヤブ山であったが上大須ダムができたことから、アプローチが容易になり、登山道も良く、2時間で登れる山である。しかし、奥山だけに、昨年は遭難者も出ている。気を引き締めての山行であったが、思わぬ苦戦の山歩きとなった。

 国道418号線を北上し、美山町から根尾村へ。上大須長瀬大野線を根尾東谷川に沿って新緑の中、快適なドライブ。上大須ダムまですばらしい道路が続く。福井県境近くまで行くことになるが、道がよく、思ったより時間がかからない。やがて、前方に巨大なロックフィールドの上大須ダムが現れる。堰堤を過ぎ、ダム左岸の公園のきれいなトイレに寄る。ダム最上流の茶色い橋を渡り、右折すれば舗装道路終点。クマ注意の看板とプレハブ小屋がある。その先に未舗装の空き地もあり、車10台以上の駐車は可能。9時前ではあるが、数台の車が停車していた。後に分かったが、大部分が山菜取りに来た車のようだ。

●前編
 駐車場から鉄板の橋を渡ってすぐ左にモノレール小屋がある。やり過ごして林道を進んだが、「待てよ、確かモノレール小屋からレールに沿って歩く」とガイドブックに書いてあった。小屋まで戻って、よく見ると明瞭な道が谷の奥へと続いている。

 これに間違いないと、道をたどった。何度も谷を渡り返し、30分程度歩くと、細い道は谷から右に上がり、かなりの急斜面を若木の植林地帯へと続いている。人の足跡もなく、道は不明瞭になるばかり。おかしい。トランシーバーを持って偵察に出る。道は、谷の最上部の巨大な雪渓のところで完全に消失している。カモシカの足跡だけがある。イワウチワの絨毯がある植林の上部に上がってみたが、道はない。小さなハエが無数に顔の周りを飛び回り、こんなところで長居はできない。今から思えば、モノレールのレールに沿って登っていない。どうも出発点から間違っていたようだ。

 今来た道を下山。登山口手前で、山菜取りに登ってくる男性に出会った。左門岳の登山口は林道を進んだ所にあるそうだ。道を誤り、2時間のロス。今日の登りはあきらめようと思ったところ、男性の方は、「2時間で登れるからまだ大丈夫。私は1時間半で登ったことがある。」とのこと。それを聞いて、気を強くし、行けるところまで挑戦することに決定。車で湖畔の公園までもどり、素早く昼食をとり、再び駐車地点へ。11時30分を回ったところで、再スタート。

●本編
 先ほどのモノレール小屋をやり過ごし、崖のある林道終点まで行く。終点から右上部に道があるが、すぐに崖崩れで道が途切れている。再び道が分からない。林道終点手前から植林の中へ下りる道にピンク色のテープが付けてある。数字が書かれており、林業用の目印であると思われるが、ワラをもつかむ気持ちでこの道に入る。

 谷川にかかる丸木橋を渡り少し行くと、なんと、先ほど見た同じ形のモノレール小屋があるではないか。モノレール小屋が2つある。まさか、2つあるとは思わなかった。針金で縛った2本丸木橋を渡って、小屋からモノレールのレール沿いに歩く。間違いなくこの道が登山道であると確信。ピンクのテープは右の植林の中に入っていくが、登山道はレール沿い。モノレールを2回ほどまたいで、谷沿いに進む。

 やがてモノレールと分かれ、谷を渡り、せせらぎを右に見ながら緩やかな道を歩く。キケマン、ネコノメソウ、ワサビ、チャルメルソウ、ハシリドコロなどなんと花の豊富なことか。下山してくる数名のパーティーと出会った。「これから登るのですか」と聞かれた。先は長そうである。

 再び谷川を渡り返して谷を左に、ピンクや白のカタバミを見ながら進むと、ヘルメットと「左門岳左へ」と書かれたオイル缶が現れる。不安定な丸木橋を渡り、一度左にトラバースてから、右に向けて美しい天然林の斜面をトラバースしていく。谷川の音がどんどん小さくなる。クマよけの鈴が谷間に響き渡る。

 この辺りの広葉樹はかなり間引きされており、谷の向こうの尾根筋の緑がすばらしく美しい。足下の植生はスミレやニシキゴロモの紫色へと変わる。この斜面のトラバースはとにかくすばらしい。かなり息が切れる急登もあるが、このすばらしき光景に疲れを忘れる。1株ではあるが、ハルリンドウを見つけた。ほとんどの木の根元が大きく曲がっている。雪の多い山である。今だに、谷筋には雪渓が残る。

 ササが現れ、尾根に出る。向きをやや東に向け尾根歩きが始まる。北西に真っ黒な堂々たる大きな屏風山が樹間から見える。道はプラスチックの階段でよく整備されている。尾根に出れば山頂は近いと思ったが、なんのなんの、急登は続く。

 やがて、右側に若木が植林されたところに出る。振り向けば、雪をかぶった能郷白山が雲の切れ間から差し込んだ光で輝いている。息を呑む光景である。南には、白く輝く上大須ダムとその右には大白木山が大きい。180度大パノラマである。

 大きなブナの木が尾根道に並ぶ。白いタムシバが満開で美しい。やがて腰までササに沈めてヤブを歩けば直ぐに山頂に着く。1時間50分で着いた。今日、この山頂にたどり着けるとは思っていなかっただけに、この喜びはいつもの2倍である。ビールがうまい。

 ササと樹木に囲まれた空間の中央に三等三角点がある。北西のヤブが切り開かれ、屏風山がよく見える。記念写真を撮っていると、先ほどの谷にいた小さなハエが集まってきた。汗の臭いに集まるようで、ザックがハエまるけになった。ここで昼食にしなくてよかった。確か、昨年の貝月山でもこのハエに襲われたことを思い出す。山頂でコーヒーブレイクを予定していたが、これではコーヒーどころではない。

 時間もないので早速下山。山頂直下の伐採地から、先ほど迷い込んだ雪渓の上部が見えた。とんでもない方向に迷い込んだものだ。今来た道を引き返し、1時間30分ほどで駐車場に着いた。再びダム湖畔の公園にもどり熱いコーヒーを楽しんだ。今登ってきた左門岳の山頂が昼下がりの陽に赤く輝いてきれいだ。

 今日の左門岳への入山は2パーティー。これから人気が上昇する山であろう。花の谷歩き、明るい天然林の斜面トラバース、ブナのある展望の良い尾根と、3つに分かれるルートはこの山の魅力である。車でのアプローチも良く、2時間足らずで山頂に到達できるこの名山はお気に入りの1山となった。くれぐれも手前の谷に迷い込まないように。
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