三ノ峰、別山の展望と花と地図を見る
三ノ峰〜別山 (2128m 2399m 高山市) 2006.9.23 晴れ 2人
上小池駐車場(5:38)→林道合流(5:44)→登山口(5:53)→六本桧(7:04-7:12)→剣ヶ岩(7:59)→ピーク・標識(9:13)→三ノ峰避難小屋(9:19-9:26)→三ノ峰山頂(9:35-9:41)→別山平・御手洗池(10:40-10:45)→別山山頂(11:27-12:20)→別山平(12:44)→三ノ峰(13:35-13:43)→三ノ峰避難小屋(13:48-13:54)→剣ヶ岩(14:48)→六本桧(15:31)→登山口(16:29)→上小池駐車場(16:48)
2年前、集中的に白山山系に登った。南から白山へ続く稜線には名峰が並ぶ。銚子ヶ峰、一ノ峰、二ノ峰、三ノ峰、そして別山、白山へと続く。まるでキングの白山を守るチェスの駒が並ぶように。
2年前には、まず最初に銚子ヶ峰から二ノ峰までを歩いた。次に別山、そして白山を踏んだ。取り残しているのは三ノ峰。また、チブリ尾根から登った別山は、雨とガスで展望ゼロ。別山もリベンジしなければならない山と決めていた。
それならこの2つの山を同時に登ることはできないか・・。その1つのコースが福井県の上小池から石川県との県境を登り岐阜県境の三ノ峰を経由して別山に至るコースである。上小池登山口から別山までの距離は9.8km。標高差は約1400m。駐車場からの登山口までの距離や、三ノ峰から別山への登り返しを加えると実際の距離・標高差は更に増える。三ノ峰避難小屋で1泊するのが普通であるが、ネットでは日帰りのレポートも見られる。よほどの健脚でないと、不可能なコースと考えていたが、無謀にもらくえぬは密かにこのコースの日帰り登山計画を練り上げていた。
この休みは北アルプスの秋山を1泊で楽しむこととしていたが、仕事の都合で日帰りの山行に変更。いつものように山の選定を前日に検討した。北陸地方の天気予報が最もよかったことから、三ノ峰を選んだ。らくえぬの登山計画書には別山の文字も・・・。ネットの情報を踏まえて協議の結果、正午に到着している地点で引き返すこととした。三ノ峰山頂に午前10時前に到着できれば、別山登頂は不可能ではない。上小池の駐車場を遅くとも朝5時半には歩き始める必要がある。
午前3時過ぎに自宅を出て、東海北陸自動車道の白鳥ICを降り、中部縦貫道を経由して国道158号線に入る。和泉村から大野市に入り、荒島岳の登山口となるカドハラスキー場を通過したところで折り返すように右折して、勝原の町に入る。鳩ヶ湯への道でもある。この曲がり角に小池まで21kmの小さな表示がある。
川沿いに下って左折し、橋を渡ったら後は1本道。山道のドライブが30分ほど続く。5時を過ぎて明るくなり始め、周囲の山の稜線がきれいに見える。予報どおり天気はいい。コンクリート舗装が現れ、ジグザグで一気に高度を稼ぐと、上小池の自然探索路やキャンプ場のある開けたところに出る。
登山口に最も近い一番上の駐車場まで車を進める。立派なトイレのある40台ほど駐車可能な舗装された広い駐車場があり、ここに車を停めた。すでに3台が停まっており、身支度をする登山者ばかり。おそらく別山を狙う人たちに違いない。予定の5時半を10分ほどオーバーして駐車場を後に、登山届け電話ボックスの横から山道を下る。
「上小池大栗の木」を見ながら数分で林道に合流。大きな堰堤を左に見ながら林道を10分ほど歩くと、左に三ノ峰登山口の表示。ラショウモンカズラやミズヒキの咲く急斜面を登る。すぐに汗だく。シャツを脱いでいると、単独男性に追い抜かれた。なだらかになり、水が流れる道となる。左から谷川の音が聞こえてくる。登山道でミゾソバやツリフネソウに混じって満開のアケボノウソウ発見。この時期、花はあまり期待していなかったが、この先、秋の花が期待できそうだ。
「六本桧・三ノ峰」の道標があるベンチを通過し、トチの実を踏みながら歩く。トチの実は半分に割れて皮だけが残っていた。動物が食べたようだ。大きなミズナラの木やホウ、カエデなどの美しい天然林の中を歩く。なだらかな道は続く。カメバヒキオコシ、アキノキリンソウ、ヒナノウスツボ、ツルリンドウなどの花を楽しみながら、斜面をジグザグと登っていく。右手に二ノ峰方向の稜線。後ろを見て、思わず声が出た。樹間に荒島岳が三角形のシルエットで雲の上に浮かんでいる。堂々たる100名山の風格。美しい山だ。
1時間ほど歩いたので、休息場所を探すが展望のよい場所がない。もう少し先と言いながら、止まる気配のないらくえぬ。二ノ峰方向の稜線から日が差し始め、ブナの木々が金色に染まる。浅い沢を渡る。カメバヒキオコシの淡い紫色とラショウモンカズラの濃い紫色が対照的で美しい。リンドウが今にも破裂しそうに水色の蕾を膨らませている。この辺りのリンドウはオヤマエゾリンドウと思われた。まだ、サラシナショウマが真っ白な花を咲かせていた。
崩壊して赤土が露出した谷の左を登り、草付きのジグザグ道へ。トモエシオガマがこの辺りに群落を作る。可憐な花が疲れを癒してくれる。左手にも峰が見え始めた。赤兎山方面の峰だ。そして展望の良い尾根に登り詰めた。
六本桧と言われる場所であり、尾根に大きなヒノキがあった。ヒノキの回りには太いロープが置かれていた。先ほど追い抜かれた男性が休息中。尾根の左右に道があり、左は杉峠。三ノ峰は右である。そして正面に巨大な山が聳えていた。朝日の左に鋭角の山がシルエットで聳える。それに向かって長々と続く稜線。あれが三ノ峰なら、なんと遠く高いことか。あそこまで歩けるだろうか。実は、この時見ていた尖りの山は三ノ峰の手前のピーク。左の丸い山が三ノ峰があることに、この先、気付くことになる。
南には願教寺山や荒島岳、その奥は能郷白山。左手は赤兎山。すばらしい展望である。先は長い。スポーツドリンクを作って、パンをかじった。ペースの早い単独女性がノンストップで登っていく。もう一人の単独男性も登ってきた。遙かなる頂を前に、我々のペースでは三ノ峰までが限界だろうと思った。
六本桧を後に、たくさんのリンドウを見ながら樹林帯の尾根を歩く。10分ほど歩いて展望のいいササ原に出た。正面に朝日が輝き、その左には三ノ峰手前の尖りピークが青空を突く。ササが銀色に輝いて美しい。初めてのコースであり、この先、どのように歩くのか全く見当がつかなかったが、ここから、歩くルートのほとんどを見渡すことができる。目の前の樹林帯を抜けて、剣ヶ岩までの斜面を登り、長く急な稜線から水平道を経てピークへ登るという行程である。ピークは霞んで見えるほど遠い。
鞍部から一登りしてベンチを通過。ヤブのようなササを分けて、再び360度の展望地に出る。正面の太陽が眩しい。アカモノやイワカガミの葉を見ながらササ尾根を歩くと、左の山には、朝日に白い幹を輝かせたダケカンバがたくさん見えた。正面ピークの剣ヶ岩が近づき、ダケカンバがあるササの斜面に取り付く。ごろごろ石の急登になる。らくえぬの足が止まり気味。六本桧から比較的平坦な道が続いたので、登りのピッチがつかめないようだ。この状況では三ノ峰山頂も厳しいかもしれないと思った。
美しいダケカンバを見ながら、ササの斜面を登りきると、すばらしい展望が広がった。
ここには三ノ峰や高山植物の写真が入ったきれれいなプレートが設置されており、剣ヶ岩の表示がある。正面に三ノ峰の手前にある尖ったピークが高い。その右斜面には鋭利な岩が荒々しい様相を見せる。左へは、これから登る急稜が空まで続いている。前方を歩く登山者が小さく見えた。
剣ヶ岩では、喉を潤す程度でササの稜線に取り付く。ゆっくりゆっくり登る。剣ヶ岩の1つ上のテラスで、後方の男性に道を譲って休憩。シャリバテ防止にここでもパンを食べて、出発。ハクサンタイゲキであろうか、全体が真っ赤に紅葉してすばらしくきれいだ。この辺りのリンドウは六本桧辺りにあった種類とは違い、花の色が濃く、花や葉の付き方も違う。帰って調べてみると、これが普通のリンドウのようだ。やや遅いがタテヤマウツボグサも見られた。
さわやかな秋風がササを揺らし稜線を駆け上がってくる。青空の下、遮るものは何もない。右手には銚子ヶ峰から一ノ峰、二ノ峰へ、後方には願教寺山の峰が緑に輝いてる。カシミール3Dの立体画像を見ているようだ。花と展望に疲れも忘れて、いつのまにかペースを掴んで歩いていることに気付いた。谷を隔てた左の山にはササ原にダケカンバが散在して、美しい。これからの紅葉の時期にはさらに美しくなるに違いない。
剣ヶ岩から約40分で急な稜線を登り切った。結構いいペースで歩けた。ここからはなだらかな尾根歩きとなる。左手には、手前の尾根の向こうに白山と室堂の赤い小屋が望めた。また、別山の頭も見える。別山は白山よりも高く遠くに見えるような気がした。正面にはかなり下から見えていた尖りのピークとその左に丸い山が見える。丸い山が三ノ峰である。このペースなら、あそこまではたどり着けそうだ。
たくさんのリンドウの花を見ながら、次に待ち受けるピークへの急登に取り付く。いつの間にか別山は三ノ峰に遮られて見えない。ピーク目指して真っ直ぐに急なササの尾根道が上がっており、急斜面右の中腹には荒々しい岩がむき出しになっている。先ほどのゆっくりペースに戻って、足下を見ながら登っていく。
真っ赤な実を付けたナナカマドが紅葉し始めていた。苦しい登りだが、花と展望とさわやかな風に癒されて、正面の太陽に向かってぐんぐん標高を稼ぐ。ピーク手前はジグザグ道。ウメバチソウが最後の花を咲かせ、タカネマツムシソウとウスユキソウが美しさを競っている。
15分ほどでピーク上部にある標識を通過。ここから、ピークの左に回り込んで、右山で正面に三ノ峰を見ながら、日陰のなだらかな道を歩く。左側に遭難碑のプレートがあった。帰路、ここで悲話を聞くこととなる。
標識から数分で正面に三ノ峰避難小屋が見えた。時間は9時半前。ここまで4時間以内で登ってきたことに驚いた。別山登頂への可能性がでてきた。避難小屋に着いて、まず目に飛び込んできたものが別山の全貌。2年前に二ノ峰から見た残雪の山ではないが、男性的な姿はすばらしく美しい。主峰白山を守る山にふさわしい姿をしている。白山がクィーンで別山がキングと例えたほうがイメージが合う。小屋の中はきれいで、昨晩、ここで泊まったと思われる登山者のザックが1つデポしてあった。ここでもパンを食べ、トイレを借りて、目の前の三ノ峰を目指す。
ササの丸い山には所々にハクサンタイゲキの草紅葉で赤いモザイクができている。10分ほどで誰もいない山頂到着。別山行きの目安とした10時よりも前だ。このコンディションなら、別山を踏めそうだ。中判カメラで別山の写真を撮って、先を急ぐ。
ここから、正面に白山と別山を見ながらササ原をジグザグと下っていく。今日のコースのハイライト。大展望の稜線を、正面に目的地の美しい頂を見ながら歩く雰囲気は、今年登った鹿島槍を思わせる。別山へ続く稜線はゆるやかにS字を描く。三ノ峰から別山までのコースタイムは2時間。それよりも遠い距離に思えた。
下りの斜面のササの草丈は腰ほどであるが、道が狭く足下が見えない。木の根や石、溝があり、何度もつまずいた。足下に注意して慎重に下った。下りきって鞍部からやや登り返す。もう下りはないかと思ったところ、再び急降下。帰路の登りがきつそうだ。斜面途中にあるザレた場所を通過して、前方にいくつかのピークを見る。
鞍部から平らな道をヤマハハコやトリカブトを見ながら、左側に針葉樹のある稜線を歩いて、いくつかのピーク越えが始まる。一ヶ所だけ岩の壁を登るところがあるが問題はない。ピークを右山で巻いて次のピークへ。別山の頭だけが見える。さらにピークを越えて、最後のピークで六本桧で追い抜かれた女性とすれ違った。別山からの下山と聞いて、この驚異的なスピードにびっくり。
急登を登りきって広大な草原に出た。ここが別山平である。ハイマツの混じる草原に続く1本道を、正面にかなり近づいてきた別山を見ながら歩くのは最高の気分。こんな気持ちのいいところはいくつもあるものではない。標識があり、消えかけた文字は「御手洗池」と書かれている。右への道のすぐ先に小さな池が別山を水面に映している。この御手洗池周辺は夏にはすばらしいお花畑になるという。
池と別山の写真を撮って別山平を後にした。いよいよ別山山頂に向けて一直線の稜線の登りにかかる。白山、釈迦から別当出合いへの稜線が美しい線を描く。別当出合いへの車道が曲がりくねっている。手前にはチブリ尾根とその途中にある赤い小さなチブリ避難小屋が見下ろせる。2年前には、全く展望のないあのチブリ尾根を往復したことが懐かしく思い出された。日本海が見えそうで見えない。
痩せ尾根から小さな樹林帯を抜けて、正面に尖った別山を見る。さすがに足が疲れてきた。山頂手前であるが、立ち止まって一息。小ピークを越えながら稜線を登る。一歩一歩山頂が近づいてくる。尾根を右山で巻いて、ジグザグ道に入る。登り切ったところが山頂かどうか分からなかったが、間近になって別山神社の石垣が見えた。佇む登山者の姿も見える。山頂に間違いない。足が疲れてきたことも忘れて、一気に別山神社から山頂へ。
5時間49分かかった。登れると思っていなかっただけに、今日の感動は大きい。2年前のリベンジ達成。あの時、晴れていればこのすばらしい光景を見ることができた。北に白山、その右に三方崩山。南には今登ってきた別山平から三ノ峰、さらに二ノ峰・一ノ峰、銚子ヶ峰。その隣には大日ヶ岳がすそ野を広げる。鷲羽岳や今年登った見当山も見える。願教寺から野伏に続く山塊。荒島、能郷白山、その左には屏風山が二等辺三角形を作る。高賀山群も見える。西には赤兎山や大長山、その向こうに経ヶ岳。御嶽、乗鞍、槍・穂高も霞んではいるがよく見える。
とりあえず、記念写真を撮った。山頂は10名程の登山者で賑わっていた。三ノ峰を見下ろす場所でランチ。目標達成を祝ってビールで乾杯。ガスカートリッジを2つ並べて作った卵入りの味噌煮込みうどんが美味しかった。別山平の御手洗池が輝いていた。時間もないので、コーヒーの代わりに緑茶を沸かした。白山から登ってきたご夫婦に、今日のご来光がすばらかったと聞いた。次は白山テント泊したいと思った。この山へはまたいつか来ることを約束して、別山神社でお賽銭を投げ、無事の下山を願って山頂を後にした。
別山平や三ノ峰を見下ろしながらの下山もすばらしい。天空を歩く感覚で、花の写真を撮りながら別山平まで下った。ここで登ってくる単独男性に出会った。聞けば、石徹白大杉を7時に出発したとのこと。これも健脚である。鞍部から三ノ峰への登り返しも思ったより苦しくなかった。三ノ峰山頂で冷たいミカンを食べ、避難小屋のトイレに寄って、小屋を後にする。
遭難碑のところで居合わせた登山者から遭難の話しを聞くことができた。遭難された方は新婚さんで、10月に吹雪に遭遇し、この場所で手をつないで倒れてみえたそうだ。小屋まで200m程の場所であろうか。なんとも痛ましい話しである。より気を引き締めて、ピークから急斜面の下りにかかる。
こんなに急だったのかと思うほど高度感のある稜線を下る。いつの間にか雲が湧き上がり、ガスの流れる尾根を下った。行きに撮れなかった花の写真を撮りながら下る。朝、ほとんどが蕾だったリンドウは、今、全ての花が開いており、登山道に倒れ込んでいるものがたくさんあった。避難小屋泊まりと思われる何人かの登山者とすれ違った。思ったより人気のコースである。
剣ヶ岩もノンストップで下るらくえぬ。おかしいと思ったら、らくえぬの立てた計画書では、5時前に下山するために、帰路の休息時間がとってなかった。何と無謀な・・・。六本桧手前まで下って、木陰でフルーツ缶詰を食べた。ちょっと生き返る。六本桧からの下りはさすがに足が疲れてきた。横向きに歩いたりして、何とか林道に出て、駐車場まで歩いた。それでも5時前には駐車場に着いた。泊まり組のたくさんの車が停まっていた。駐車場に座り込んで、靴を脱ぐ。充実した長い1日だった。秋の虫の鳴き声に送られて、上小池を後にした。
このコースは最初の2時間ほどを除けば、大展望の稜線歩き。花も多い。想像したよりも遙かにすばらしい山歩きが楽しめた。別山までは歩行距離が長く、日帰りは日が長い時期の早朝出発でないと難しい。三ノ峰までなら登り4時間で、花や展望も十分に楽しめる。無理をしないで、三ノ峰までとした方がいい。道はよく踏まれておりコースを誤ることはないが、2000mを越えることから、防寒具などの装備は完璧に。文句なしの充実の山歩きができるお勧めのコースである。
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