トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)
白尾山 (1613m 郡上市) 2008.7.12 晴れ 3人
しらおスキー場駐車場(8:25)→ペアリフト乗り場(9:04)→ゲレンデトップ(9:48-10:00)→カワズ洞国有林標識(10:31-10:39)→白尾山山頂(11:23-13:00)→カワズ洞国有林標識(13:27)→ゲレンデトップ(13:48-13:54)→駐車場(14:31)
昨年、高沢山に一緒に登ったGOMAさんと、春に再び同行する計画を立てた。互いに多忙で、都合がつかず、計画は延び、この休みまでずれ込んだ。この時期の山の選定は最も難しい。前日になっても行き先は決まらず、比較的近いところで登っていない山として白尾山を選んだ。あまり考えずに安易に選んだ山であったが、調べてみると1時間以上のゲレンデ歩きが・・・。
GOMAさんを拾って、東海北陸自動車道を北上。白鳥ICを下りたら右折して自動車道の高架を潜って道の駅「白尾ふれあいパーク」でトイレ休憩。直売所にはアスパラやヤングコーンなど地域の特産物が並んでいる。帰りには売り切れているに違いない。「しらおスキー場」の案内に従って、道の駅の東の集落を抜け東進。3kmほど走ると左に「白尾山登山口」の標示があった。細い道に入り、山を登っていくと、未舗装の大きな広場に飛び出す。しらおスキー場の駐車場のようだ。草の茂る広場を横断すると、建物がありゲレンデの下に出た。ゲレンデ下の駐車場に停める。
真夏のスキー場に人の気配はなく、駐車場脇の谷にはサワグルミが緑色の実をたくさんつけている。地図でコースを確認。しらおスキー場の一番左にあるダウンヒルコースのゲレンデトップが登山口となる。このコースは3000mの上級者向けで、最大斜度は30度。登りがいがありそうだ。ゲレンデに入るところに看板があり、「白尾山登山口左折」の標示がある。看板が傾いており分かりにくい標示であるが、「ゲレンデを左へ行け」という意味のようだ。
なだらかなゲレンデに入り、右に回り込むようにゲレンデを登っていく。木のチップが撒かれており、クッションとなって歩きやすい。9時前ではあるが、すでに太陽は高く、真夏の日差しがゲレンデに照りつける。日を遮るものは何も無い。斜度がしだいに高まり、ゲレンデは遥か上まで続いている。周囲の草むらのオカトラノオやヤマオダマキを見ながら高度をかせぐ。
久しぶりのGOMAさんと山談義。彼女も多忙で、この3ヶ月ほどは本格的な山に登っていないとのこと。我々も、最近は3週間に1回の低山になっており、今日はバテるかもしれないと話しながら歩いた。30分以上歩いたが先が見えないのでGPSを確認するとゲレンデトップまではまだまだ。過去の思い出に残るゲレンデ歩きの話をしながら歩いた。荒島岳はきつかった、位山は暑かった、大日ヶ岳の桧峠コースも長かった、やっぱり乗鞍新道の最後のゲレンデ下りが一番印象に残っている・・・今日のゲレンデも半端ではなさそうだ。
強烈な暑さに水補給をと思っていたところ、左に赤茶けたリフトが現れた。第7ペアリフトの乗り場である。まだゲレンデ歩きは半分残っている。水補給のため小休止。上部にはペアリフトの終点が見えない。木のチップは消え、夏草が茂る緑色のゲレンデを黙々と登って行く。時折、吹き上がってくる風が涼しい。草の中にササユリ発見。朝露で濡れた草を分けて写真を撮った。
左に向きを変えながらゲレンデが続く。カール状の緑の急斜面が眼前に広がり、青い空に白い雲が浮かぶ。スキーシーズンには白銀の斜面に大勢のスキーヤーやボーダーがシュプールを描くこの斜面も、この時期、人の姿は無く、ツマグロヒョウモンが草原の緑の上を自由気ままに飛び回っている。ウグイスの鳴き声がこだまする。振り向けば、白鳥の田園が望めた。
ますます急な斜面が近づいた頃、リフトの鉄塔方向へ折り返すように道がある。直進して斜面を登ると、リフトから離れていくような気がしたので、折り返してリフト下に向かう。ノリウツギが咲き始めている。道はリフト下を直登しているわけではなく、リフトを左に再び斜面上部に出た。急斜面を迂回する車道のようだ。ヨツバヒヨドリの花が咲くのを待ちきれないようにアサギマダラが舞っていた。
ゲレンデ中央に戻ると、ようやく正面にリフト降り場が小さく見えた。遠い。草の多くなった斜面をひたすら登るとコースは左へ水平にトラバースしてリフトのケーブルを潜る。この辺りにもササユリが見られた。リフトの左下を一直線にゲレンデトップに向かう。暑さでさすがにバテてきた。足もとのバライチゴの花に元気づけられてゲレンデトップの広場にたどりついた。草に覆われた広場には白尾山の方向を示す木柱が立つ。
とりあえず、木陰で休むことにして、広場を横切り登山口から山道に入った。少し下ったところで休息。冷えたブドウで元気になる。それにしても、木立の中は涼しい。息が収まったところで出発。ここからは、山頂目指して一直線の登りが始まる。とはいっても、登山口からは少し下る。前方にはこれから歩くピークが見える。左側が開けた尾根を登り返して小さなピークを超える。
道は広く、踏み跡もしっかりして迷うことはない。ササ付きの天然林は美しく、ブナの木が続く。木漏れ日の中、適度な登りが続く。花期末期のギンリョウソウがいくつか見られた。真っ赤なきのこはベニヒガサ。明るい尾根を右に谷を見ながら歩く。急緩繰り返しながら高度をかせぐ。右手に見える山は母袋烏帽子岳のようだ。ゲレンデトップから30分ほど歩いたところで「ここはカワズ洞国有林」と書かれた木製の立派な標識が現れる。ここで、再び小休止。パンを食べてエネルギー補給。
急緩繰り返しが続く。周囲のササは背丈以上ある。一部の枝が紅葉しているナナカマドやミネカエデの落葉も見られた。倒木の多い杉林を抜けて、咲き始めたオトギリソウを見ながら急登をこなすと、ササに囲まれた小さな広場を通過。展望はない。境界見出票がある。GPSでかなり山頂が近づいたことを確認。ブナの大木の下、草つきの道を、花の終ったオオバノヨツバムグラを足元に見ながら歩くと、目の前に大きなピークが迫ってきた。このピークを登り切ると山頂である。ピークを登る道は一直線でかなりの斜度。おまけに直射日光が照りつける。水分を補給して斜面に取り付く。一歩一歩、ゆっくり登っていく。きつい登りであるが、登り切れば山頂だとがんばる。なだらかになると広い山頂に着いた。
山頂には方位盤が鎮座していた。ザックを下ろして、まず展望の写真を撮る。しかし、遠望はきかない。山頂から北へ延びる尾根がいくつかのピークを作っており、その先には鷲ヶ岳の頭が望めた。今年の冬には北側の見当山から雪の鷲ヶ岳を望んだが、今日は南側から緑の鷲ヶ岳を眺めている。濃い緑の山肌を雲の影が流れる。真っ白な積乱雲が、まるで巨大な飛行船のように北の空に浮かんでいる。キアゲハが舞う山頂は、夏色の景色に囲まれ、目を開けられないほど眩しい。真夏の山は鼓動が聞こえるくらい躍動感にあふれ、生き生きして美しい。久しぶりに真夏の山に溶け込んでうれしい気分になった。山頂にはダケカンバやブナなどが切らずに残されており、木陰ができている。ランチ場所には最適である。ランチ場所を選ぶのに迷うほど良い場所がたくさんあった。
方位盤近く木陰にシートを敷いて、ランチにした。冷やっこ、冷やしソバ、ドライカレー、ミニトマト、コーヒーにお菓子とフルコースの昼食をとりながら3人で山談義に花が咲いた。合唱しているセミはエゾハルゼミであろうか。涼しい風が吹き、昼寝をしたい気分。北に目をやると、先ほどまで見えなかった白山が空中に浮かんでいるように望むことができた。
ランチの後、鷲ヶ岳へ続く北の尾根に踏み込んでみた。この先にあるピークは北アルプスの展望地らしい。ヤブを分けると、刈り取られたササの尾根が現れた。これなら歩けそうだと思ったが、刈り取られた太いササの茎が地面に30cmほど残っており、やたらとつまずく。また、ササの芽が伸びて行く手を遮る。危なくてとても歩ける状態ではない。30mほど歩いて引き返した。ササのワックスで手やズボンが真っ白になった。
1時間半ほど山頂でゆっくりした後、ヒオドシチョウに見送られて下山。山頂直下の急な斜面からは正面に母袋烏帽子岳が望めた。下山は早い。50分ほどでゲレンデトップまで戻った。ゲレンデに出る直前の木陰で休憩。水を飲んで炎天下の下りに備える。太陽の高度が上がり、ゲレンデは真上から真夏の午後の日差しが照りつけている。かなりの暑さを覚悟して下りにかかったが、さわやかな上昇気流の風が吹き、また地面は草地であるため思ったほど暑くなかった。
帰路は滑走コースを真っ直ぐ下る。斜度30度の斜面で、さすがに足が痛くなった。リフト乗り場より下は木のチップが撒かれており、足にやさしい。イノシシが掘り返してフカフカになったところを選んで下った。なかなか到着地の建物は見えない。ゲレンデ3000mはかなりの距離であることを改めて知る。よく登ってきたものだ。標高が下がるにつれて、さわやかな風は生暖かくなり、汗だくで下る。後方に目をやると大きな積乱雲が我々を見下ろしている。梅雨明けは間もなくだろう。かなり足がくたびれてきたころ、ようやく駐車場に着いた。
山の選定を誤ったかと思った今回の山歩きであったが、真夏のゲレンデやブナの尾根、気持ちのいい山頂など意外にいい山であった。GOMAさんも同様の意見。今度は残雪期に登ってみたい山である。奥美濃の山はいい。
★白尾山からの展望
★白尾山の植物
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