釈迦ヶ岳 (1092m 三重県) 2004.11.21 晴れ・曇り 6人

朝明ヒュッテ前駐車場(8:56)→林道から谷へ(9:12)→庵座滝(10:00-10:10)→谷川の岩場急登手前(10:40-10:45)→パイフ砂防堤(10:55)→谷川より右斜面への取り付き(11:02)→急登中間点(11:16-11:23)→松尾尾根頭(11:38)→釈迦ヶ岳山頂(11:44-11:49)→猫岳分岐点・昼食(11:53-13:17)→猫岳(13:37)→白滝谷道分岐(14:15)→林道コース分岐(14:21)→羽鳥峰・羽鳥峰湿原(14:24-14:57)→砂防堤(15:08)→林道合流(15:22)→朝明ヒュッテ前駐車場(15:48)

【参加者】TOSIさん、kayoさん、れぶんさん、りんどうさん、RAKU、らくえぬ

 今年、金草岳オフ会でkayoさん、れぶんさん、りんどうさんと出会い、話をしているうちに、我が町内の同じ班のTOSIさんを知っているということが分った。数年前に武奈ヶ岳で3人はTOSIさんと出会い、その後偶然にも銚子ヶ峰や経ヶ峰で再会したとのこと。そんな経緯があることから、今度は一緒に登りたいとkayoさんからメールが届いた。

 すぐに話はまとまった。TOSIさんの家はウチのすぐ近くで、私の大先輩に当たる。山大好き人間で、ほんとんど毎週仲間と一緒に山に出かけられている。我々も金華山や簗谷山で偶然にお会したこともあるし、昨年、北穂に登ったときは涸沢でお会いした。毎年ウチの庭で行う班の花見や町内のお日待ちなどでお会いするたびに、山の話になる。とにかく、行っていない山はないというほど山を歩いておられる。

 以前から、TOSIさんと「一緒に登りましょう」と言いながら、なかなか実現しなかった。今回、kayoさんのおかげで、この約束がようやく実現することとなった。人の縁とは不思議なものである。TOSIさんからは、前から「鈴鹿の山を案内してあげる」と聞かされていたので、今回の山は迷わず鈴鹿の山とし、TOSIさんに山を選んでもらった。「鈴鹿で一番好きな山は釈迦ヶ岳だけど、今回は三池岳でもいいよ」との返事がきた。kayoさんに伝えると「釈迦ヶ岳に行きた〜い」。と、言う訳で、不思議な糸で繋がった6人の山行となった。

 鈴鹿の山はさっぱり分らないので、登山計画を立てるためにTOSIさんの家を訪れた。TOSIさんの部屋は、山の写真や本に埋まっていた。話好きなTOSIさんから次々と山の話をお聞きし、鈴鹿の山の本をお借りして、計画を立てた。今回はベテランガイド付きで大船に乗った気分。

 釈迦ヶ岳登山口となる朝明ヒュッテ前登山口に8時半集合とし、自宅を6時半に出発。長良川左岸を下り、多度の大鳥居をくぐっていなべ市に入る。鈴鹿の山々がぐんぐんと近づいてくる迫力はすごい。正面の削られた山は藤原岳、その南に竜ヶ岳、三池岳、そして本日の目的地である釈迦ヶ岳、さらに御在所岳、鎌ヶ岳、入道岳など、TOSIさんからの山のガイドが続く。

 石榑北交差点から国道306号線を南下。大きな灯籠が道を塞ぐように建つ変則交差点を右折(直進?)し、306号線を離れる。奥郷橋を渡り、信号から1km弱走ると、左手にうどん屋さんの看板が現れる。この次の交差点を右折。右手には釈迦ヶ岳が大きい。ゲートボール場のようなグランドを右手に見て次のたんぼの中の交差点を右折。この交差点には朝明キャンプ場と書かれた小さな表示があった。ここを曲がれば後は一本道。山道をゆるやかに登っていく。途中、釈迦ヶ岳松尾尾根コースの登山口があるが、さらに進んで大きな朝明ヒュッテ前駐車場に着く。ちょうど1時間半で着いた。

 すでに多くの車が停まっており、身支度する登山者が多い。駐車料金は500円。トイレ有り。登山届けを出すため届け場所を駐車場係の方にお聞きすると「ご丁寧にありがとうございます。出す人は少ないようです。」と言われ、駐車場奥の右手山側のボックスを教えてもらった。前回出された日付は11月14日であり、確かに出す人は少ないようだ。設置場所を登山口脇にすれば、届け出る人は多くなるような気がした。

 kayoさん、れぶんさん、りんどうさんの3人が集合時間を少し遅れて到着。3人とTOSI さんの久しぶりの再会で大騒ぎ。身支度するのも忘れて話しが尽きない。いつになったら出発できるのだろう・・・。こうして、話し好きのTOSIさんと、大垣3人娘さん(TOSIさん命名)と、我々の騒がしいパーティーの山歩きがスタート。

 登山口はバス停横。犬にほえられながら、林を抜けるといきなり谷川へのロープ付きガレ場の下り。まさにこの山のプロローグ。谷川を渡り、真っ赤に紅葉したバンガロー群を抜け林道に合流。林道にはウリハダカエデの落ち葉が敷き詰められ、モザイクの絨毯が実にきれいだ。登山道案内の看板があるところから、右の谷へ降りる。谷川を渡り、右山で天然林を歩く。この辺りはツバキが多く、所々に落ちた赤い花が見られた。

 2名の登山者を追い越したところで道が薄くなり、先頭から「道がない」との声。目印のテープも見当たらない。2人の登山者も道が分からなくなり探してみえたようだ。後からの単独男性も同じ状態に。迷ったら戻るという鉄則に基づき赤テープのあるところまで戻ったが道はない。もう少し戻ると庵座谷へ下る道があった。落ち葉が積もって分かりにくい。下り口付近には今迷い込んだ道に枯れ木が横たえてあった。たくさんの枯れ木を横たえて分かるようにし、谷へ下る。

 谷から離れ、道脇に小さな仏様を見ながら歩く。左下は庵座谷。ガレ場を登るような場所もある。やがて、前方に滝が見えた。庵座滝である。谷川に降りて休息中の登山者も何人か見下ろせる。滝壺まで行ってみることにした。谷川までは崩壊しやすい崖を降りなければならない。ロープのある急斜面を落石しないように下り、滝まで谷川を渡り返しながら歩いた。このあたりの木々はすっかり葉を落としているが、紅葉の時期にはすばらしいに違いない。虹を従えて青い空から落ちる滝は絶景である。水しぶきのこないところで10分ほど休憩。

 再び引き返して、先ほどの崖を登り、ガレ場の斜面に取り付く。斜面にできた涸れ沢を横断。イワウチワの葉が見られるようになった。展望のいい崖縁の場所もあり、対岸の山が望める。この山の岩は花崗岩であり、風化して砂地となっている場所がところどころに見られる。浸食されやすく、堀割になった道もある。再び谷川に出て、流れを幾度か渡る。

 谷が二又になったところを通過すると大勢の人が休息中。この先、川の左にある岩の急斜面を登ることになる。息を整えて、岩場に取り付く。下から見ると恐ろしいほどの崖であるが、登ってみると難しいことはない。一気に登り切ると、再び広い川原のゆるやかな登りになる。前方に猫岳の頭が見える。気持ちのいい場所だ。これだけ長い間、谷を遡る山も久しぶりだ。赤さびた年代物のパイプ砂防堤が現れる。この巨大な鉄パイプをどうやって運んだかを話題にしながら、左側の鉄板の脇を抜ける。

 ここから数分歩いて右へ谷を離れる。いよいよ本コースのクライマックス、松尾尾根頭を目指し一直線の急登が始まる。まずは細い谷のガレ場を急登。10分も登ればススキの斜面に出て展望が開ける。振り向けば猫岳が大きい。前方には丸い山。これは松尾尾根頭であり、山頂はその奥らしい。あまりにも急で見上げても先がよく分からない。西風が強くなり手が冷たい。

 一歩一歩の登りに息が切れる。「もう少し上に休める場所があるのでそこで1本入れよう」とTOSIさん。前方にも後方にも登山者が続く。皆、きつそうに登っている。岩のあるザレた場所に到着。南には国見岳や御在所岳の大きな山塊がすばらしい。そして、ノコギリ状の荒々しい松尾尾根とそこから切れ落ちる絶壁が目の前に大迫力で迫っている。写真を撮って、身体が冷えないうちに腰を上げる。

 今度はササ付きの潅木の急斜面にできたほぼ垂直の溝を登っていく。紅葉したイワウチワが美しい。岩に足をかけ、潅木の根につかまって、ぐいぐいと身体を持ち上げて登っていく。ちょうどいいところに木の根が張り出し、掴むのに都合がいい。木の根はピカピカになっている。ストックが邪魔で、輪に手を通した状態で両手両足の登りが続く。抜け落ちそうな岩があり、つかまる岩や根を選びながら登る。「楽しい山やろ」とTOSIさん。確かにこんな山はそうない。この臨場感を写真に撮ろうと何度もシャッターを切ったが、なにしろ潅木の中の垂直の溝で全く絵にならないのが残念。

 知らぬ間に後方の猫岳がすっかり下方に見えるようになり、一気に標高を稼いだ。右から松尾尾根が近づき、ひょっこりと空き地に出た。松尾尾根頭である。山頂と間違えそうな場所だ。休息中の登山者に挨拶をして山頂を目指す。ここからは気持ちのいい稜線歩き。木々の切れ間からは三重県の平野が見下ろせる。ちょっとモヤっているのが残念。猫岳への分岐をやりすごし、頭から数分の尾根歩きで三角点のある狭い釈迦ヶ岳山頂に着く。

 山頂の東側が開けているが展望は今1つ。数人が昼食中で、山頂は満員状態。ササの中に三脚を立てて、記念写真を撮った。TOSIさんは携帯で撮った山頂での写真をいつも一緒に登られる仲間に写メール。釈迦ヶ岳山頂からはさらに三池岳への道が続いていた。

 ランチは今来た道を戻って、猫岳へのコースの分岐辺りの空き地でとることにした。平らな場所を見つけて、シートを広げた。kayoさんグループはキムチ鍋、ウチはフカヒレ雑炊とあいかわらずの燻製、TOSIさんは日間賀島の土産のアナゴとフグの直火焼き。美味しいものいっぱいで、わいわい言いながらの楽しい食事。ご近所ならではの話題も多く、いつもの山談義からご近所談義となり、ちょっと照れくさい話しも・・・。すっかり曇り空になって、肌寒い。トウガラシの効いた温かい鍋や雑炊が美味しい季節になってきた。コーヒーにケーキのデザートの頃には、すっかり登山者がいなくなっていた。

 後片づけをして、帰路は猫岳経由で下山。ササ尾根を前方の猫岳目指して下る。砂地が大きく浸食されて堀割になったところもある。小さなピークを越え、左に御在所岳、右に猫岳を見ながらササの道を鞍部目指して下る。実に気持ちのいい道である。小雨が降り出した。黒い雲が頭上を通過中。しぐれているようだ。東の空は晴れている。雨具を出すほどでもない。左に松尾尾根とその頭、そして先ほど登ってきた急斜面が見える。あの斜面をよく登ってきたものだ。

 鞍部から猫岳を目指す。思ったより簡単に山頂到着。また、小雨が降り出した。山頂で雨具に着替えているパーティーがいたが、もう少し様子をみることにした。記念写真を撮って、猫岳を後にする。雨は止んだ。ササ尾根を下る。途中、あまりにも侵食されて登山道が消失し、ササのヤブをこぐような場所もある。右には三池岳など北の山が見える。御在所岳が左になったり正面になったりして、蛇行しながら歩いているのが分る。

 小さなピークや掘割の道を通過し、猫岳から30分以上歩いて白滝谷道への分岐点。右への白滝谷方面は杠葉尾(ゆずりはお)と書かれている。ここから10分ほどで羽鳥峰に出るので、そこで休憩することとし、先へ。左への林道コースを通過。このコースは羽鳥峰を経由せずに林道を歩いて下山するコースであり、羽鳥峰からの谷状の歩きにくい道を通らずに下ることができる。

 前方が開け、黄土色の砂地に花崗岩のオリベスクが見えた。羽鳥峰である。岩の上まで登る。燕岳を思い出すような場所だ。岩の上で記念写真。今歩いて来た紅葉の尾根が後方に見える。TOSIさんの案内ですぐ近くにある羽鳥峰湿原に行ってみた。羽鳥峰峠から西に続く道があり、道は途中から川になっている。大きく足を開いて土手を歩いた。川の先に平らな湿原があり小さな池も見られる。夏にはさまざまな湿原植物が花を咲かせるそうだ。帰路、川にはまり込んで泥だらけになった人も・・・。峠でいただいたミカンが美味しかった。羽鳥峰峠からは金山、水晶岳、国見岳、御在所岳へと続く縦走路が伸びている。

 ここから南へ涸れた沢の岩がごろごろしている道を下る。10分ほど下ると堰堤が現れ、その右の崖を下りる。もう1つの堰堤を過ぎ、谷を渡って林道に出た。ここには明治21年にオランダのヨハネス・デレーケが設計した縄だるみ堰堤がある。縄のようにゆるみを持たせて造られていることからこの名前が付いたようである。車が通行できないほど荒れた林道を下ると、右手の対岸に別荘らしき建物が見えてきた。この辺りまでは車が入り込めるようだ。紅葉が美しい。水晶岳への登山口となる中峠への分岐を右に見て林道を下ると、朝明砂防学習ゾーンの公園に出る。ここには菰野の水車があった。西山荘などの建物を見ながら紅葉の朝明渓谷を下って駐車場に着いた。

 帰路、温泉に寄ることとし、今年オープンした駐車場からすぐ近くの「三休」に行くことに。山を削り取って造成された一段高いところに作られた施設で、お風呂は小さいがサービス満天。冷たい麦茶を風呂に入る前と後にいただき、黒砂糖のお菓子までサービス。駐車場で大垣3人娘さんと別れて、帰路は2時間かけて岐阜までもどった。

 釈迦ヶ岳は変化に富み、実に個性のある山だ。鈴鹿の山の中でもこんな山はないそうで、TOSIさんが一番好きだといわれる理由が分る。ほんとうに楽しい山である。鈴鹿の山が身近であることを知ることができ、道も教えてもらった。今回ご案内をいただいたTOSIさんや大垣3人娘さん、たいへん賑やかな山歩きを楽しむことができ、ありがとうございました。
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