トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作・トレース未記録あり
笙ヶ岳〜養老山 (908m 859m 養老町) 2008.12.13 晴れ 2人
養老の滝駐車場(8:34)→シュートカット分岐点(9:35)→もみじ峠(9:49-9:52)→大洞谷コース分岐点(9:59)→渡河(10:03)→炭焼き跡(10:22)→稜線・市之瀬林道への分岐点(10:36)→笙ヶ岳山頂(10:41-10:57)→もみじ峠(11:39)→笹原峠まで0.5km付近のベンチ・昼食(12:12-13:06)→笹原峠(13:17)→小倉山(13:17-13:27)→養老山(13:48-13:53)→小倉山(14:08)→笹原峠(14:16)→三方山(14:24)→ベンチ(14:40)→養老の滝駐車場(15:12)
養老山は8年前に登った。小倉山から見た養老山系最高峰の笙ヶ岳の堂々たる山容を忘れることができない。それ以来、いつかは笙ヶ岳に登りたいと思いながら、夏場はヤマビルが多いことから、登頂はなかなか実現しなかった。今年はこの時期でも美濃の山に雪が無いこともあって、笙ヶ岳に登ることに。あわせて、8年ぶりの養老山にも足を運ぶ計画とした。
養老公園の最上部にある滝駐車場が登山口となる。養老公園の案内に従って車を走らせ、公園入り口の400mほど手前から右折し、旅館街を抜けてカーブの続く山道を上がっていくと有料駐車場のゲートがある。管理人さんは不在だったが、ゲートが開いており車を入れた。大きな駐車場には2台が駐車してあり、山登りの仕度をする人もいる。仮設のトイレも設けられている。靴を履き替えていると管理人さんが到着。8時半が駐車場のオープンのようだ。
管理棟で駐車料金1000円を支払い、登山届け帳に記入。「年間、何人が登りますか?」と8年前と同じ質問をしてみた。「多いときには1万人ほどあったけど、最近は減っている。」との回答。登山届けに昨日までの年間の合計人数が記入されており、3300人ほどだった。書かない登山者もいるとのことで、実際にはこの数字より多いが、8年前は1万人と言われたことから、減少傾向のようだ。高齢化の影響か・・・? 笙ヶ岳へ行くことを告げると、ハイキングクコースのような道でないことや、大洞登山口分岐付近は道が細く友人が滑落しそうになったことがあり注意するようアドバイスを頂いた。イラストマップを入手してスタート。
舗装された林道を歩き始めてすぐに養老山への道を左に見る。8年前には、ここを左折し、帰路はこれから登る林道を下った。この林道歩きが長かった記憶がある。今回は、この林道を登る。この分岐の標識には、アセビ平(旧牧場跡)まで90分とある。また笙ヶ岳へのコースがマジックで書かれており、林道のほうが早いとある。林道はすぐに未舗装となり人工林を抜けると、銀色の鳥居がある神社の前を通過。神社から5分ほど歩くと、標識があり、旧牧場まで3.4kmの標示。ここに、右の人工林に入る山道があったので、ショートカットできるかもしれないと思い踏み込んでみたが、道は林道とは反対方向に延びており、次第に踏み跡が薄くなったので引き返した。森林作業の道のようだ。10分のロス。
朝日に照らされて林道を歩く。展望のいい場所から、養老町の田園地帯が望めた。この先の谷を通過するところで、今年の大雨で林道が崩壊している場所があり、土砂や倒木が林道を半分ほど塞いでいる。急な斜面であり、すぐ先には立派な治山堰堤が建設されていた。栗の木平の標示がある小広場を通過し、ひたすら林道歩きが続く。時折、左へ林道が派生しているが、右に進む。歩き始めて、ちょうど1時間がたったころ、林道分岐点に軽トラックが停まっており、下方からチェーンソーの音が聞こえてきた。その先の右手山側に黄色いポールに茶色の小さな標識があり、もみじ峠の矢印。「笙ヶ岳方面近道・急登15分」とある。これがもみじ平へのショートカットの道のようだ。ようやく林道歩きから開放されて、山道に入る。
落ち葉の積もった斜面を登る。谷状にえぐれた道で、結構な急騰である。右は谷への急斜面で人工林帯、左は岩の崖で天然林。道は左に弧を描き、5分ほど歩くと緩やかな道となった。明るい天然林の中、林床にササが現れる。急斜面の崩壊が進み、トラバース道にはロープの設置してあるところが一箇所あった。右は深い谷であり、慎重に歩く。前方に稜線が近づき、樹木にオレンジ色の陽が当たって美しい。
稜線に出ると、大きな標識があり、左右に広い道が続いている。もみじ峠である。パンと水分補給で一息。右は大洞登山口40分の表示。笙ヶ岳65分の標示もある。左へは丸木階段が上がっており、笹原峠を経て養老山へと続く。こちらへは、この後歩くこととし、右へ行く。背丈の低いササの谷を下って、吸殻入れのあるベンチを通過。スギの大木が散在する谷を縫うように抜ける。スギの樹皮が根元付近で剥がされているのはシカの被害のようだ。単独男性とすれ違った。大洞登山口からの登山者だと思ったが、笙ヶ岳から下山した方だったことが後に分かる。ほとんど水の無い谷を左にさらに下っていくと、ヌタ場の水溜りが見られた。
岩壁の横を抜けると、再び標識が現れた。直進すれば大洞登山口へ30分、右折すれば笙ヶ岳まで50分の標示。右折するといきなり急斜面のトラバース道となった。道幅は細く、落ち葉で埋まっている。駐車場の管理人さんの滑落の話は、この地点のようだ。谷底に落ちないように、ゆっくりと進んだ。トラバースを終えると小さな谷を渡り、「笙ヶ岳へ」の案内板を見ながら登り返してすぐに左へ。再び細道のトラバースが続く。正面の太陽が眩しい。目まぐるしく方向が変わっているのが分かる。
雪をかぶったように真っ白な綿毛の実を付けたツル植物が潅木に巻きついていた。小さな谷の源頭部の渡り木が落ちて、上部を歩くように道がつけられている。右山で時計回りに歩くとウリハダカエデの多い天然林の中を抜ける。後方からの太陽に照らされて、幹が真っ白に輝いて美しいストライプの世界が広がる。落ち葉も深い。こうした光景は冬の山歩きの楽しみの1つだ。ここまで本格的な登りはほとんどなく、どこで標高を稼ぐのだろうかと思った。
トラバースが続き、回り込んでいくと谷の向こうのピークが見えた。左の深い谷は次第に上がってくる。道はこの谷をつめるように続く。白い石ころが斜面を流れるように散乱し、まるで残雪のように見える。この辺りの木々は細木を束ねたように、根本から何本も立ち上がっており、かつて人の手が入った二次林となっている。その証拠を示すように石積みと穴が現れた。おそらく、炭焼きの跡であろう。
石垣の横の木に小さなプレートが付けられており、山頂まで25分の標示。GPSを見ても山頂まではまだある。結構急な登りではあるが、美しい二次林に癒されて疲れを忘れる。いつの間にか、涸れた谷はすぐ左にあり、白い石ころが地面を覆っている。赤テープがたくさん木に巻かれているが、道は明瞭。やがて谷が消え、斜面の登りが始まる。息が切れる。どこでも歩けそうな斜面であるが、コースを外すと浮石を踏むので、忠実にテープを追った。足元にはクリのイガが落ちていた。また、この辺りの潅木もシカの皮剥ぎが目立つ。ネット情報によると、ヤマビルの多い場所のようだ。
石ころが消え、稜線の上に青空が近づいてきた。落ち葉の絨毯の斜面を登り切ると、稜線の鞍部に出た。真っ先に、遠くの真っ白な山が目に飛び込んだ。白山だ。「笙ヶ岳5分 がんばれ」の標示を見ながら、左へ向きを変える。右にも道があり、一之瀬林道と書いてあった。右には人工林が稜線まで上がってきている。ところどころの切り開きから伊吹山や白山、御嶽山などが望めた。再び単独男性とすれ違った。今日、2番目に登頂したとのこと。先ほどすれ違った方が1番目の登山者だった。
ゆるやかに稜線を登っていくと、笙ヶ岳山頂に到着。狭い山頂には三角点と山名標示板があり、東方向が切り開かれている。濃尾平野の向こうに名峰が並んでいる。御嶽山、乗鞍岳、白山、恵那山など位置を変えながら山の同定。御嶽山の手前に百々ヶ峰が見える。その右には金華山も確認できた。人工林のヒノキはまだ小さいが、いずれこの展望を隠してしまうだろう。西側には「この付近に養老山系で唯一のブナ林がある」との標示があった。
11時前だったので、昼食はここではとらず、記念写真を撮って下山。逆光の美しい天然林を下って、慎重にトラバース。曲がって道に飛び出していた木にらくえぬが頭をぶつけて、目から火が・・・。冬用の厚い帽子をかぶっていたためコブができた程度ですんだ。細い道では足元の注意も必要だが、前を見て歩かないと思わぬアクシデントに見舞われる。
山頂から40分ほどでもみじ峠まで戻って、次は養老山を目指す。正面に太陽を見ながら丸木階段を登る。階段は足にこたえる。登りきって牧場跡であるアセビ平を通過。この付近はアセビの原生地があり、登山道脇にも多くのアセビが見られた。笹原平まで60分の標示。8年前には、養老山からここまで縦走して林道を下った。この先はかつて歩いた道である。
丸木階段が続く。出会う登山者も増えてきた。登り下りを繰り返す。長い階段のあるピークは830mピークである。正午を回り、だんだんシャリバテになってきた。ベンチがあったらランチにしようとがんばる。次のピークに2つのベンチがあったので、昼食。チャーハンと餃子鍋、缶詰、そしてコーヒーのフルコース。少し風があったが、日が当たってそれほど寒くもない。養老山方面から何人かの登山者が通過していった。
日が最も短い時期なので、1時間ほどで昼食を終え、養老山を目指す。ランチ場所のすぐ先に、笹原峠まで0.5kmの表示があった。午後の日差しで縦縞模様のできた遊歩道を歩き、大きく下って10分ほどで笹原峠に着いた。マップには「笹が原」と書いてある。ここから小倉山まで丸木階段を登っていく。後方には濃尾平野が広がる。御嶽山はまだ姿を見せている。息を切らして小倉山に着くと、大勢の登山者にびっくり。後に、この40名ほどの登山者は同じパーティの人だったことが分かる。西の東屋まで行って、笙ヶ岳や霊仙を眺めた。8年前の記憶が蘇った。セピア色をした笙ヶ岳は今も全く変わっていない。しばし、山を眺めた。
薄れかけた記憶をたどるために、もう1つの今日の目的である養老山を目指す。小倉山からさらに南へ稜線を歩く。養老山は目だって標高が高いわけではなく、どれが山頂なのか分からないくらいだ。下ったり登ったりして右に林道を見ながら15分ほど歩くと林道への脇道があった。GPSで林道の横の小さなピークが養老山であることを確認して登り口を捜すが見つからない。確か折り返すようにヤブ道を登ったことを思い出し、さらに遊歩道を下り登り返したところで養老山への道を見つけた。以前はヤブのような道であったが、今ではしっかりした道となっている。山頂は展望がなく8年前と同じような状態だった。大きな一等三角点がある。
2時近かったので写真を撮って早速引き返す。笛の音やざわめきが聞こえてきた。小倉山で出会った大勢の団体さんだった。挨拶をかわしながらすれ違い、誰もいなくなった小倉山で記念写真を撮って、濃尾平野の大展望を楽しみながら笹原峠まで下り、ここから三方山方向へ。長い影を落ち葉の遊歩道に落としながら、なだらかな道を歩き、三方山に寄り道した。三方山からの濃尾平野の展望も見事である。
展望の写真を撮ったら、すぐに引き返して分岐から下る。尾根道となり、右手に人工林、左には谷を挟んで今日の朝登った林道が樹間から見える。三方山から15分ほど下ると、ベンチが現れ、左に向きを変えて斜面のジグザグ道に取り付く。取り付きには「転落注意 この先急坂が続きます 養老の滝まで0.9km」の標示。斜面の傾斜は急で、樹木も少なく、道幅も狭い。ロープの手すりが設けられているところもあり、滑らないようにゆっくりと下った。時折、強い西風が木々を揺らし、落ち葉が谷に落ちていく。日は山に隠れ、寒い中、もう少しで林道に出ると思いながら下るが、この下りは結構長い。
ベンチから20分ほど下ってようやく大きな堰堤が見えた。大きな管から水が落ちるのを見ながら、水の流れを渡って林道に出た。左手の高台に小さなお社があったので、無事に下山できたことに一礼をした。林道を歩くと、すぐにアセビ平に続く林道に合流し、駐車場に戻った。養老の滝の観光客の車が数台停まっていた。
笙ヶ岳は養老山のハイキングコースから外れて、本格的な山歩きができる。山頂からの展望もあるが、何と言っても山頂手前の稜線に出るまでの二次林がすばらしい。春には花が多いとも聞く。大洞谷からも登ってみたい。なお、笙ヶ岳へは道幅の狭いトラバース道を歩くため、雪の時期は危険である。
山のリストへ