トレースマップ (カシミール3Dで作成)
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)

高洞 (494m 山県市) 2006.12.16 晴れ後曇り 2人

伊自良長滝・墓地(9:18)→登山口(9:22)→60番鉄塔(9:29-9:33)→59番鉄塔(9:35)→58番鉄塔(9:49-9:52)→57番鉄塔(9:58)→56番鉄塔(10:08)→55番鉄塔(10:15)→鉄塔巡視路からの巻き道への分岐点(10:21)→巻き道からピーク尾根へ(10:35)→ピーク(10:38-10:49)→54番鉄塔・昼食(10:55-12:06)→再びピーク(12:11)→巻き道と合流(12:15)→高洞山頂(12:24-12:34)→ピークへの分岐(12:45)→鉄塔巡視路合流(12:57)→55番鉄塔(13:02)→56番鉄塔(13:08)→58番鉄塔(13:18)→59番鉄塔(13:26)→60番鉄塔(13:29)→登山口(13:34)→墓地(13:39)

 高洞は「岐阜の山旅100コース・美濃「上」」に掲載されており、旧伊自良村にある伊自良湖の東に位置する里山である。湖を挟んでちょうど釜ヶ谷山と向き合う位置にある。身近な山であり、前から何度も登ろうと考えていたが、なかなか実現しなかった。

 この山は鉄塔巡視路を経由して、途中から踏み跡の薄い山道を歩くことから、昨年、GPSにウェイポイントを細かく落とし、登山計画を立てたが、天気都合で計画は実行されていない。今回もGPSに地図を転送したが、以前の記憶から、ウェイポイントは落とさなかった。地図も用意したが、高洞山頂の名前は記載されておらず、伊自良湖を取り巻くいくつかのピークの最初のピークが高洞であると決め込んでいた。この思い込みが、珍道中を招く事になる。そして、パッキングの最後に、いつもは持っていかない前述のガイドブックをザックに入れたことが、幸運を招く事になる。

 いつもより、遅めに家を出て、伊自良湖を目指す。伊自良湖畔のトイレに寄る。今冬は、伊自良湖の水が抜かれており、工事中で湖岸道路は東半分が侵入禁止。登山口には時計周りに湖を回って近づくことは不可能だったので、もう一度、湖の南にある長滝集落のバス回転場付近で駐車場所を探した。

 長滝集落の消防倉庫から北側の道に入ったところに墓地があり、ここから伊自良湖岸道路への道は通行止めとなっていたので、墓地の駐車場をお借りして、出発。ちょうど工事車両が通行止めのトラ柵を開けているところだった。作業員の方から、水抜き期間を利用して工事中であり、来年の3月までが工事期間と聞いた。

 工事車両の後を、橋を渡って舗装道路を登っていくと伊自良湖の堰堤に出る。このカーブの山側にフェンス付きの階段があり、鉄塔巡視路の黄色い表示板があった。ここが登山口である。細い階段を登ると赤い鳥居が建っており、潜ると小さなお社が岩とコンクリートの上にあった。手を合わせて、右の尾根を登る。眼下にはバス回転場、ゲートボール場、伊自良湖の工事現場や堰堤に大きく書かれた伊自良湖の文字が見えた。

 落ち葉の急斜面をジグザグと登っていくと、上方に鉄塔が見えてきた。太陽が眩しい。斜面を登りきって60番鉄塔に到着。暑いのでシャツを脱いで、Tシャツ1枚に。鉄塔からなだらかな尾根を緩やかに下り、登り返す。行く先、すぐ近くに次の鉄塔が見える。その向こうに重なるピーク。その一番奥のピークが高洞と思い込んでいた。実は、その左に続くでこぼこしたピークが高洞であることなど、この時点で、全く考えもしなった。左には、尖がった531mピークが格好いい。

 すぐに59番鉄塔を通過して、適度な登りが続く。左にヒノキの幼木を見ながら、ドウダンツツジが刈り込まれた巡視路を歩く。ドウダンの紅葉はまだ残っており、赤や黄色の葉がモザイク状になってきれいだ。スギからアカマツの多い林を歩く。松くい虫の被害も多い。鳥獣保護区の赤い看板を通過して、散ったばかりのコナラの落ち葉を蹴散らしながら、尾根を直線に登っていく。後方には樹間から釜ヶ谷山が見え隠れする。

 58番鉄塔の右下を通過。稜線に出て僅かな距離を鉄塔まで戻ると、釜ヶ谷方面が開けて、すばらしい展望が得られる。また、鉄塔付近は開けていて、これから歩く方面がよく見える。ここから数分で、次の57番鉄塔に到着。この周辺も伐採されていて、展望は抜群。伊自良湖に水があれば、さらにすばらしい景色だろう。

 鉄塔手前に石碑があったので、ここでも手を合わせる。登ってきた鉄塔が後方に続く。鉄塔からゆるやかに下って登り返し、大きな紅葉したドウダンツツジのあるところから、急登となる。頭上に電線。正面に次の鉄塔。急斜面の途中に大岩が現れ、通過して56番鉄塔へ。55番鉄塔はほぼ水平の状態で先に見える。アベマキやアカマツの実を踏みながら、左側が開けた尾根を通過。正面にピークが近づいてきた。この辺りのドウダンツツジもきれいに紅葉している。この時期に、これだけきれいな紅葉が見られるとは思わなかった。

 稜線を外して、左の巻き道を通り、55番鉄塔の脇を通過。落ち葉のなだらかな道が続き、頭上の電線は右へ離れていく。イノシシが地面を掘った跡を見ながらジグザグと歩いて、55・54番鉄塔の表示板。赤テープがあり、左へ道がある。ここが巻き道の分岐らしい。巡視路をそのまま進めば、先には54番鉄塔が望めた。

 脇道に入ると、道は薄くなった。倒木をまたぎ、潅木をよけて、テープを追う。GPSを見ると、右のピークを巻いている。このピークを高洞と信じきっていたので、どこかで折り返して山頂に向かう道があると思った。切れ落ちた斜面に突き当たり、テープは右に折れて斜面をトラバースしている。このまま進むと、この先のピークに行ってしまうと思った。この先のピークが高洞なのだが・・・。

 右に曲がる辺りで、GPS頼りに斜面に取り付いて、高洞と思い込んでいるピークに向かって登る。道は確認できないが、疎林であり、かなりの急斜面をどのようにでも登っていける。途中にテープもあった。10分ほどでピークに着いた。ピークには黄色いプラスチック杭が1本。林の中で展望は無く、山名表示板も無い。

 記念写真を撮って、時間も十分にあるので、この先、どうしようかと考えた。山頂には今登って来た西尾根のほかに、北への尾根と南への尾根がある。案1は北尾根をさらに先まで歩いて、次のピーク(高洞山頂)に行く。案2は南尾根を下って54番鉄塔でランチにする。案3はここでランチにする。協議の結果、案2の54番鉄塔に下ることにした。この後、案1の選択をすることになるのだが、・・・。

 南には、尾根上にかすかな道があったので、これを下る。5分もしないうちに道は消え、潅木の激ヤブに。しかし目の前に鉄塔が見えて、ヤブは少しのようだ。サルトリイバラと格闘して、ススキのある鉄塔下に飛び出した。こんなにすぐ、鉄塔に出られるとは思わなかった。

 ここからの展望もいい。釜ヶ谷山が半分ほど見え、歩いてきた稜線が続く。釜ヶ谷山へ続く送電線もよく見える。鉄塔南側の盛り上がりに登れば、矢坪ヶ岳から、今淵ヶ岳、高賀山へ続く山並み。その手前には相戸岳が美しい山容を見せる。北側には大黒山。この山で、これだけの展望が見られるとは予想もしなかっただけに嬉しかった。

 鉄塔下で味噌煮込みうどんを作って、ランチにした。風も無く、陽だまりの中、初冬の里山を楽しむ。子どもの頃、日が沈むまで裏山で遊んだ記憶が蘇った。コーヒーを飲みながら、ガイドブックをめくっていたらくえぬが、「今、登ったのは山頂じゃない!」と叫んだ。「何?」 ガイドブックの地図を見ると、山頂はこの先のピークの494mピークではないか。巻き道はさらに先に続いていた訳である。ガイドブックを持ってきてラッキーだった。コーヒーもそこそこに、後片付けしてパッキングした。

 さて、山頂へはどうやって行くか。55番鉄塔方向へ巡視路を戻って巻き道を行くか、ヤブからピークに戻って、北尾根を下り巻き道に合流するか。最短距離の後者を選んで、再びヤブに突入。ヤブは20mもないので、すぐに抜けてピークへ。北への尾根を下ってすぐに巻き道と尾根で合流した。

 根の張る痩せ尾根を歩いて、右手にヒノキ林、正面に高洞を見る。左手に531mピークが見える。ここでこのピークが見えるのが不思議な感じがしたが、道は山頂と間違えたピークから左に直角に折れているためだ。倒木の尾根道を歩き、山頂手前の急斜面にかかる。落ち葉に埋め尽くされているが、道は確認できた。やや左にトラバースしながら稜線に出て折り返せば、高洞山頂であった。今度は間違いない。

 岩が多い細長い山頂で、山名表示板は無かったが、三等三角点がある。山頂にある1本のタカノツメから黄色い葉がひらひらと落ちていた。すぐ先まで歩いてみると、アカマツの樹間越しではあるが、田園や周囲の山並みが眺められた。危うく山頂を踏めなかったところであった。事前の下調べをしてこなかったことに反省。

 記念写真を撮って山頂を後にした。山頂から北に続く稜線を100mほど歩いてみたが、人工林となりさらに先まで歩けそうな雰囲気だ。531mピークまで歩けるかもしれないと思ったが、今日はここまで。急斜面を滑るように下って、ピーク手前から先ほど歩いていない巻き道に入る。

 巻き道は急な斜面につけられており、道幅も小さい。谷を渡ったり岩場を越えたりと、ちょっと危険だと思うようなところも。テープがあり、それなりに踏み跡もある。岩場にイワウチワと思われる大きな群落があった。この低山にイワウチワがあるとは思わなかった。春には花を確認したいところだ。

 ピークへ登った位置を通過し、鉄塔巡視路に合流。鉄塔を数えながら、稜線を下った。いつの間にか青空は、曇り空に変わっていた。午後から崩れると言う天気予報は当たったようだ。裾野から響く猟銃と思われる音を聞きながら、誰にも出会うことなく、山頂からジャスト1時間で登山口に着いた。駐車場近くの道端にたくさんのオドリコソウがひっそりと咲いていた。

 高洞は思わぬ拾い物をした、いい山だと思った。巡視路の道はしっかりしているし、いくつかの鉄塔からの展望もいい。山頂手前のピークの巻き道は慎重な行動が必要。巻き道を経由しないで、54番鉄塔まで歩き、鉄塔から左のヤブを抜けてピーク経由で巻き道を回避したほうが歩きやすいかもしれない。山頂を間違えて発見した道である。ただし、ピークからは3つの尾根が派生しており、高洞山頂への尾根の方向が変わる場所でもあることから、地図とコンパスで常に自分の位置を把握しておく必要がある。周囲は急斜面も多く、怪しいと思ったら引き返すことが鉄則。ドウダンツツジが紅葉する時期やイワウチワの開花期に、もう一度歩いてみたい山である。
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