トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)(トレースの一部にGPS誤動作があります)


高屹山 (1303m 高山市) 2007.9.8 3人

登山口駐車場(10:01)→右折れ岩(10:24)→ゴジラの背(10:50-10:55)→ふれあい広場・高屹山山頂(11:09-12:55)→キンサン・ギンサンカラマツ(13:09)→林道通過(13:13)→登山口駐車場(13:44)

 地域活動でいつもお世話になっているMIZUさんから、「一度、山に連れてってください。」と話があった。MIZUさんは公民館活動などで休日もほとんど空き時間がない多忙なスケジュール。9月8日が空いているので、8日に山へ一緒に行くことを8月に約束した。

 曇り気味の週間天気予報は台風の通過後、晴れに変わった。ならば展望がよく、涼しくて、歩行時間の短い山として、以前から登ってみたいと思っていた高屹山に行くことを前日に決め、MIZUさんに連絡。

 高屹山は「たかたわやま」と読む。「屹」という字はワープロ変換しても出てこないような馴染みのない漢字であるが、「険しい」という意味らしい。それにしても、「たかたわやま」という響きは美しい。数ある岐阜県の山の中で、好きな名前の1つである。この山は、ガイドブック等にあまり掲載はされていないが、御嶽、乗鞍、北アルプスなどの展望地として知られ、いくつかのホームページで紹介されている。

 7時にMIZUさんを拾って関・金山線を経由し、国道41号線を北上。下呂市街辺りから雲が厚くなり、周囲の山々には雲がなびいている。晴れることを信じて、旧久々野町のトンネル手前から市街地方向の左の道に入り、JR久々野駅前の信号機を右折して鈴蘭高原方面へ。JRの線路をくぐって1kmほど東進したところで、右手にある赤い橋を渡る。渡ったところの交差点に高屹山の案内板があり、それに従って右折。河川公園の脇をエゴマの畑を見ながら道なりに進み、山に当たって右折しクリーンセンター前から林道に入る。

 未舗装の林道は所々に排水用の溝が掘られ、ゆっくりと通過。すぐに高屹山の標識がある林道が分岐している広場があったのでここに駐車。ゲンノショウコやツリフネソウが咲く広場で靴を履き替えて出発しようとした時、「案内板が無い!」とらくえぬ。HP情報では、確かに登山口にはルート案内図と簡易トイレがあった。この広場は登山口手前の駐車場、すなわち第一駐車場であることが分かった。

 さらに車を進めることにして、標識に従って左の林道に進む。石ころの多い道で、溝もある。それに、かなりの急斜面。凹凸を避けながらゆっくりと運転していくと、案内板のある広場に着いた。ここが登山口に最も近い第二駐車場。車高の低い普通車は第一駐車場に停めた方が無難と思われた。第一駐車場と第二駐車場間の車と歩行の時間差は15分ほどであろうか。山頂までの歩行時間は比較的短いことから、準備運動のつもりで、第一駐車場から林道を歩いたほうがいい。

 4〜5台駐車可能な第二駐車場には、先客の車が一台あった。簡易トイレが林道脇の草むらに設置してある。谷川は満開のツリフネソウで埋まっていた。キンミズヒキやヒヨドリソウも咲いている。案内板でルートを確認。左へは草に覆われた林道が続いており、右にも山道が分岐している。案内どおり右回りで周遊することとし、左の草の林道を進む。昨夜の雨で草が濡れており、ズボンの裾が濡れた。

 「オオバコが多いね。」とMIZUさん。林道にはオオバコがたくさん繁殖しており、人の出入りの多さが伺える。天生湿原のオオバコ駆除を思い出す。MIZUさんは、自然に対する関心が高く、動植物についての知識も豊富。この先、登山道周囲の植物観察が始まる。

 すぐに林道終点。暗い山道に入ると、アキチョウジの青い花が咲き乱れていた。石の多い谷を登っていく。石が濡れており、また苔に覆われた石も多いことから、滑りやすいので慎重に登る。人工林が谷まで迫っているところもある。地面に白い合弁花が落ちていた。何の花だろうかと、見上げてみるが分からない。後ほどクサギの花であることが分かった。

 すらりと伸びた一本の茎に丸い蕾がたくさんついている植物があった。サラシナショウマに似ているが明らかに違う。帰って調べてみるとオオバショウマだった。カザグルマの葉も見られ、岩にはゼニゴケがへばりついている。太いヤマブドウの木やコシアブラの落ち葉など、目に入るものをきっかけに植物談義をしながら、ミンミンゼミの蝉時雨の中を登っていく。

 20分ほど谷を登り詰めると「右折れ岩」の表示。名前の通り、右に折れて谷を抜け出す。エンレイソウが葉を広げている。ここにもヤマブドウの大きな木があり、標示がある。登山道の所々に木の名前と解説が付けられた表示板があり、勉強になる。急な斜面に取り付き、天然林の中、つづら折れの道を登る。たくさんの大きなシダが葉を広げて林床を埋める。クサソテツと思っていたが、山頂のパンフレットによるとオシダのようだ。斜面を埋めるオシダの林は美しい。

 上方が明るくなり稜線が近づいてきた。台風の風で落ちたホウノキの青葉がたくさん落ちており、MIZUさんは数枚拾ってみえた。ホウノキやトチ、カエデ類が多い。ムシカリが黒や赤の実を付け、山は夏から秋へ衣替えをしようとしている。

 ヒメコマツのある尾根に出て休憩。ここから出っ張った尾根に取り付いてひと登りで展望のいい岩の上に出た。「ゴジラの背」と書かれた表示板があり、薄いギザギザの岩が地面から突き出ている。スキー場のある船山と位山が女性的な丸い山容を見せるが、その間に見えるはずの川上岳は雲に隠れている。眼下には久々野の町が見下ろせた。ホツツジの白い花が咲いていた。

 「ゴジラの背」のすぐ上の展望地を経由して、ササの尾根歩きとなる。傾斜が増し、かなりの急登。時折現れる人工林を左右に、カラマツやヒメコマツの尾根をまっすぐに登っていく。花の終わったナルコユリやミゾホウズキを見ながら登ると、なだらかな道となり、右に青いフェンスの支柱が並んでいる。再び急登となり、カラマツの落ち葉を踏みながら登っていく。MIZUさんも急登をバテることなく登って行く。週に何回か自宅の裏山に登っておられるとのこと。健脚である。

 「ゴジラの背」から20分ほどで明るい切り開きに出た。「山頂ではありません」の標示。ここが「ふれあい広場」で、山頂のすぐ隣のピークである。植物を見ながらゆっくり登った割には、一時間ちょっとで到着してしまった。広場は草に覆われ、花の終わったフジバカマがいくつか見られた。ヨウシュヤマゴボウがここまで侵入しているのには驚いた。広場を歩き回れば360度の展望が得られるが、今日は予想に反して遠望はない。御嶽、乗鞍、北アルプスは雲に隠されている。展望を第一目標としたが、またの機会に楽しむこにしよう。

 ふれあい広場には登頂祈念のキーホルダーの無人販売機があった。高屹山の焼き印が押された木のキーホルダーが1つ300円で購入できる。この収益は登山道整備に活用されるそうだ。キーホルダーを購入した。また、高屹山のパンフレットも置いてあり、手書きのコースマップにはこの山で見られる動植物が描かれていた。保存版にしておきたいと思うほどのパンフレットだ。

 草むらの中に大粒の真っ赤なイチゴがたくさん実っていた。名前が分からないが、1つ食べてみると、甘味も酸味も少なくあまり美味しいものではなかった。また、この辺りにはツルニンジンの花がたくさん咲いていた。ベル状のアンティークな色をした地味な花は蝋細工のようで美しい。

 広場からわずかに下って登り返す。鞍部辺りにフユイチゴがたくさんの実を付けていた。これは酸味があって美味しい。斜面を登って、三角点のある山頂に着いた。キアゲハが舞っている。山頂は狭く、草が覆い、平らな場所も少ない。山名表示板の前で記念写真を撮った。

 山頂には誰もいないので、ここでランチにする。まず、ビールとノンアルコールビールで乾杯。メニューは焼き肉とドライカレー、焼そば。デザートはグレープフルーツとMIZUさんが久々野の道の駅で購入したミニトマト。飛騨はトマトの産地であり、このミニトマトが美味しかった。コーヒーとクッキーを最後に、いろいろな話をしながらランチを楽しんだ。

 雲の間から青空が見えるようになり、川上岳や御前山が望めるようになったが、北アルプス方面の雲は消えることがなかった。ランチの途中で一名の単独登山者が登ってみえたが、先に下りていかれた。時折、日が差すと暑いが、さわやかな秋風が吹き、30度を超える下界とは別世界。MIZUさんは山頂の表示板のスケッチをしてみえた。

 下山は山頂の西にある急斜面の道を下る。ササ付きの急斜面を下ると、左側が開け、眼下には畜産施設やビニールハウスが望めた。カラマツの落ち葉が積もったフカフカしたまっすぐの道を下っていく。イチヤクソウは花が終わったところ。青い実を付けたチゴユリの群落も見られた。急斜面の途中に幹が曲がった細いカラマツが2本並んでおり、キンサンカラマツ、ギンサンカラマツの標示があった。

 ここより5分ほど下って林道へ。ノギランの群落を見ながら、林道を100mほど歩くと、右に標識がありここから再び山道に入り、人工林を下る。人工林は間伐がされておらず、暗い林には下草が少なく、ホトトギスの葉が見られたが、花は見つからなかった。林道から15分ほど下って、谷に沿って歩く。ウワバミソウの花を見る頃、右手に水場が現れた。冷たくて美味しい水を思いっきり飲んだ。水場からなだらかに下って駐車場に出た。

 下りは50分ほどだった。MIZUさんの健脚からして、高屹山はちょっと物足りかったようだ。また、目的とした展望も無く残念。それでも、草木を観察しながら、初秋の飛騨の山を楽しむことができた。MIZUさんとは、もう少し登りがいのある山に、また登ることを約束して41号線を南下した。高屹山には、空気が澄んだ晩秋など展望のいい時期にもう一度訪れたい山である。

 2日後、MIZUさんから絵手紙が届いた。
「昨日はありがとうございました。いろいろな花にも出会えて楽しい1日でした。とりわけ山頂でのバーベキュー・思いもよらぬビールの一杯はまさに命の洗濯でした。また、お誘いくださいますいようお願い申し上げお礼とさせていただきます。」
葉書に描かれたピーマンの絵が、過ぎ行く夏の思い出のように思えた。
こちらこそ、思い出に残る楽しい山歩き、ありがとうございました。
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