↑カシミール3Dで作成 (途中、トレースに失敗したため青い点線は推定)
*このHPの地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)

高天良山 (908m 下呂市) 2006.9.2 晴れ 2人

火打峠(9:45)→ヒノキ樹林帯(10:22)→高天良山(10:57-12:06)→神社跡400m・林道への分岐点(12:15)→権現宮跡(12:25-12:31)→林道への分岐点(12:40)→林道終点・広場(12:57)→三叉路(13:05)→火打峠(13:38)

 この夏、3度、アルプスを歩き、夏山を十分に楽しんだ。大勢の登山者で賑わう全国区の山が続くと、やはり岐阜県の山が歩きたくなる。岐阜県の静かな山を探した。中濃、飛騨方面の数箇所の山を候補に、GPSに広範囲の地図を取り込んで、結局は当日の朝、近くに温泉があるという理由だけで、高天良山を選んだ。

 高天良山は旧金山町、現在は下呂市にある標高1000mに満たない低山。レポートも少なく、全く予備知識なしで、とにかく火打峠に行くことにした。登りに2時間もかからない山なので、いつもより遅めに自宅を出発。旧金山町のドライブインのトイレに寄って、下呂方面に国道41号線を走る。

 ドライブインからすぐ北にある国道のトンネルを抜けて、飛騨川にかかる青い橋を渡る。渡りきった変則交差点を直進すれば三棟山の登山口に行くことができるが、火打峠へはこの交差点を左折する。JR高山線の踏切を渡り、後は道なり。途中、広い道が分岐しているが、「下呂」の案内に従って直進する。

 かなり谷奥まで続く福来の集落を抜け、山道をひと登りすると、草つきの数台駐車可能な広場がある火打峠に着く。峠までの道は舗装されており普通車でも問題なく登れる。広場には大きな石の記念碑が建ち、1台のライトバンが止まっていた。

 身支度する前に、峠の登山口を探す。峠から南にゲートで閉められた未舗装の林道が伸びている。帰路はこの林道を下る予定。登りに使う登山口は、峠を越えた南側にあり、きれいに草が刈り取られていた。峠の反対側にもプラスチック階段の続く山道があり、鉄塔巡視路の表示があった。峠の両側には、かなり古いお地蔵さんが一体づつ草の中から峠を見下ろしている。古くから下呂と金山を結ぶ重要な峠道であったに違いない。

 鉄塔巡視路から、作業着の男性が降りてきた。林業関係者の方で、ライトバンの持ち主だった。高天良山の登山口を確認すると、登ったことはないが、たぶん南側の道であろうとのこと。林道を登って行く人はあるそうだ。身支度をして、登山道に入る。山頂まで約1時間50分の表示。

 時計回りに登って、ヒノキの植林地帯の尾根に出る。ヒノキは4〜5mの背丈。作業小屋の脇を抜けてワラビやササの茂る道を、クモの巣を払いながら歩く。ヒノキが幼木であり、右側が開けている。鉄塔と電線、その向こうに車で上ってきた福来の集落が見下ろせた。

 登山道は幼木と成木の境を登る。次第に下草が深くなり、まるで雨直後のように朝露が降りている。ズボンが濡れるのがいやらしい。急登と小ピークを繰り返す。うねうねと尾根は前方に続いている。幼木地帯の下方には赤土の林道がよく見える。ススキのヤブはさらにひどくなった。イバラが肌を刺す。この時期は最も草が茂っている時期。樹林帯に入るまでの少しの我慢である。

 青い空には、はけ雲が絵を描き、西からさわやかな風が吹く。ツクツクボウシの鳴き声が過ぎゆく夏を教えてくれる。下界ではまだまだ暑い日が続いているが、山では確実に秋が忍び寄っている。境界見出票や赤・青のテープが所々に現れる。いくつかのピークを越え、ヒノキの幼木はさらに小さくなり、草もよく刈られている道になった。カナヘビが足音に驚いて逃げまどう。

 幼木地帯が終わる辺りのピークからは西から北にすばらしい展望が開ける。登ってきた尾根がよく見える。西には高賀山群と思われる峰が美しい。北には下呂御前山方面の山並がぎりぎりの所で望めた。

 ここから、すぐに人工林の樹林帯へ入る。樹林帯入口にコウヤマキがあることに気付いたが、コウヤマキはこの先山頂まで切れることなく続いていた。根が張る緩やかな尾根を歩いて、急登にかかる。赤テープが続く。コウヤマキのオレンジ色の落ち葉の道を歩く。この木は夏に古い葉が落ちるようだ。

 急緩の繰り返しが続く。人工林の中、草花は無いがコウヤマキの幼木がたくさん芽生えている。木漏れ日の中、適度に風があり、それほど暑くもない。足下にザトウムシを見ながら、尾根道はしだいに右に向きを変える。大きな根株に突き当たり、回り込んで道は続く。前方に、樹間から盛り上がった山が見えた。GPSで確認すると、山頂までは後300mほど。

 コウヤマキの尾根は続く。そして、山頂手前の急斜面に取り付く。急な斜面に付けられた道が山頂まで一直線に続いている。正面から太陽の日差しが差し込む。遠くからチェーンソーの音が聞こえてきた。コウヤマキの落ち葉を踏んで、急斜面を10分ほどで登り詰めると、二等三角点のある山頂に到着。一時間15分足らずで、休息なしのノンストップで山頂に着いた。途中で、林道からの道と合流している地点があったと思われるが、気がつかなかった。

 山頂は背の高いヒノキ林の中で、展望はない。山頂付近の数本のヒノキが最近切り倒されたようで、頭上にはぽっかりと青空が覗いている。古い山名表示板は壊れており、南側の枝に小さな表示板が掛けられていた。権現宮跡まで1000mの表示。山頂からは今登ってきた尾根とは別に、二方向に尾根が伸びており、西への尾根をたどれば、権現宮跡に行けるようだ。林業用の印であろうか、タフロープが地面に張られ、境界のプラスチック杭が束ねて置いてあった。

 記念写真を撮って、時間は少し早いが山頂でランチにする。カレーうどんと缶詰、コーヒーといつものようにフルコース。誰も登ってこない山頂で、ランチを楽しんだ。全く展望はないが、さわやかな風と木漏れ日の中、ひと眠りしたい落ち着く場所である。頭上を見上げると、青空に白い雲がゆっくりと流れていた。何匹かのアブがホバリングして縄張りを守っている。クロアゲハが舞う。

 今日の目的である、静かな山を十分に楽しんで、帰路は神社跡を見て林道経由で下山することとした。山頂から西に急な斜面を下る。道は明瞭。この辺りは広葉樹も多く、人工林の下草もよく繁っており、林はよく手入れされている。山頂から10分ほど下ると小さな表示板が現れた。高天良山山頂まで600m、神社跡まで400mの表示。

 この表示から急斜面を登り、10分ほどで権現宮跡に着いた。小さな神社でも祀られているのかと思ったが、神社は3000m先の場所に移動したとのこと。大きな看板には神社の歴史が書かれてあった。今では、一面、立派なヒノキの林になっており、平らな地形が神社のあったことを物語っている程度。

 今来た道を引き返し、先ほどの標識のある鞍部へ。この地点が林道への近道となる。谷川にぶら下がっている赤いテープが目印。GPSで林道の方向を確認して、赤テープから谷に入る。谷も一面ヒノキが植えられており、道は薄いものの明瞭である。テープも賑やかだ。

 涸れた谷を左右に移動しながら下っていく。しだいに谷が合流して、水の流れも見え始めた。右手の尾根上を登ってきたことになる。尾根直下から左方向に向きを変えて、谷の合流地点を渡り、古い標識を見ながら、水の流れる道を緩やかに下ると、木橋を渡って、林道終点の広場に出た。三角点まで30分の標識があった。

 ここからは林道歩き。赤茶けた林道は、周囲の枝が切り払われた直後であり、荒れてはいないが、時折、落石の跡が見られた。数分歩くと、林道が3方向に分かれていた。側溝が整備された左側が正しい道だと思ったが、念のために二人で別れて右側と中央の道を偵察。どの道も100mほど進んで行き止まりとなった。

 左の道を下る。回り込んだ展望地で下の林道が見えた。まだ、先は長い。正面には登りに歩いてきた植林の尾根が見える。それにしても、落石跡が多いので、なるべく林道の谷川を歩いた。途中でヤマジノホトトギスの花を見つけた。花の少ない山だけに、林道の脇に咲く小さな花に感動。同じ金山町の三棟山にもこの花がたくさんあったことを思い出した。ここでも小さな秋を見つけた。

 正面に鉄塔が見えた。あの鉄塔は火打峠の向こうにあるか、こちらにあるかを話題にしていると、ゲートが現れた。峠に到着。鉄塔は火打峠の向こう側のものだった。林道歩きに30分かかった。

 この山は、ほとんどが人工林の中を歩き、面白味のない山と思っていたが、展望のいい植林地や、急緩繰り返すコウヤマキの尾根歩き、谷歩きと、変化に富んでいる山だ。こんな静かな山歩きもたまにはいいものだ。峠から南下するイメージは二ツ森山や八尾山に似ている。帰りには金山町のかれんの湯などの温泉施設が近いのもうれしい。三棟山とセットで登りたい山でもある。
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