天然公園の花と地図を見る
天然公園【田立の滝】 (1580m 長野県) 2005.7.30 曇り一時小雨 2人

田立の滝駐車場(8:03)→不動岩展望地(8:42)→螺旋滝分岐(8:47)→螺旋滝(8:53)→霧ヶ滝(9:06)→天河滝(9:13)→天河吊り橋(9:23)→不動滝(9:27)→龍ヶ瀬(9:33)→雲上橋・不動岩分岐(9:36)→不動岩(9:47)→林道合流(9:56)→素掘りトンネル(10:01)→滝方面分岐(10:08)→林道終点(10:41)→避難小屋(10:48)→天然公園・山頂(10:59-11:58)→林道終点(12:20)→滝方面分岐(12:49)→箱淵(13:04)→雲上橋・不動岩分岐(13:09)→天河滝(13:30)→霧ヶ滝(13:33)→螺旋滝分岐(13:39)→不動岩展望地(13:44)→駐車場(14:12)

 7月下旬は夏山に最もいい時期であり、1泊で北アルプスを計画した。ところが、今年の天気は今一つ不安定。この休みも前線が通過し、雨の確率が高い。前日まで迷ったが、3000mはあきらめ、天気が悪くてもいい場所として、田立の滝を選んだ。滝巡りなら雨でも楽しめそうだ。

 田立の滝は長野県南木曽町にある。日本の滝100選に選ばれており、最奥には天然公園と呼ばれる山頂がある。せきすいさんのレポートを参考に、中津川ICを下りて、国道19号線を北上する。今年2月に、長野県の山口村が岐阜県の中津川市に合併した騒動は記憶に新しい。

 県境は以前よりもかなり東に移り、賤母道の駅を右に見て約1kmほど走って、木曽川を渡り、南木曽町に入ったところで田立の滝の案内標識に従って折り返すように左折し、JR中央本線を越えて逆戻りするように西進。2km程走ったところで、田立の滝の案内を見落とさないように右折して中山間地域の美しい農山村を北上。分岐には案内板があるので間違えることはない。

 田立の滝オートキャンプ場を抜け、さらに上り詰める。まだ上るのかと思う頃、広い未舗装の駐車場に到着。ここが登山口となる粒栗平駐車場である。先着は2台。一組のご夫婦が出発されるところであった。トイレや東屋が整備されており、冷たい水場もある。登山口には登山届け用紙や散策マップが置いてある。また、協力金のポストも設置されている。1人200円の協力金を払って、「気をつけて行ってらっしゃい」の看板を後に山道に入る。今回はハイキング気分。しかし、この先、実に充実した山旅になるとは・・・。

 すぐにゴーゴーと音を立てて流れ落ちる八ヶ瀬を右に、遊歩道を歩き、天河滝まで2.3km40分の標識を通過。ここに田立の滝の案内があり、それには雨乞いの滝として干ばつの時だけ入山が許された尾張藩の留山と書かれてある。谷の対岸に5本のサワラの木が大岩に乗っかっているものやイノシシを追いつめたら消えてしまったと言われるシシ岩などを見ながら、大木の多い美しい林の中を歩く。

 モミやケヤキの大木にはモミ太郎とかケヤキ君などという面白い名前が付けられており、また木の特徴なども記されて退屈しない。駐車場から890m地点を通過。急斜面につけられたジグザグの登山道を歩く。登山道を横切る小さな谷には木道がかけられている。崩壊した谷も見られ、木道の管理も大変に違いない。木道は濁河温泉から御嶽山への登山道にあるものとよく似ているが、かなり粗雑で梯子のように隙間ができている。中にはかなり朽ちて折れたところもある。よそ見は禁物。木道の中央を避けて縦木の上を選んで歩いた。雨で濡れているときには滑らないように更なる注意が必要である。

 それにしても滝巡りとは名ばかりで、30分近く樹林帯を歩いている。GPSは「空が開けた場所に出てください」と反応していない。高木の林で衛星がキャッチできないようだ。小さなヒノキの人工林を抜けて左山でカーブ。登山口から35分ほどで、再び右に深い谷を見るようになる。

 左にコウヤマキの大木が現れると駐車場から1620m地点。不動岩展望地の標識とベンチ。この表示を勘違いして不動滝展望地と読み間違えて、谷底を見下ろすが滝など見えない。見上げれば谷を隔てて山水画に描かれているような大岩が見えることに気が付いたのは帰路のことである。

 崖に張り付いた木道を通過。黒い雲が頭上を通過して行くがなんとか雨は落ちてこない。雨になったら、この木道を歩くのはあまり気持ちのいいものではない。1780m地点でツガの大木「ツガ右衛門」を通過し、すぐに「螺旋滝」の表示。螺旋滝は右手の谷に下りていかなければならない。また登るのがいやだと思いながら、急斜面の道を5分ほど下っていくと、谷の奥に2段にねじれて落ちる滝が目の前に現れる。滝展望地の後ろには高賀山の岩屋を思い起こさせるような大岩が迫っている。黒い岩、緑の木々、白い水。ひんやりした潤いの中にタマガワホトトギスの黄色い花がひっそりと咲いていた。

 ゆっくりしたい場所であるが、先を急ぐ。登山道まで戻り、深い渓谷を見下ろしながら吊り橋を渡る。近くに木道の残骸が放置されている。吊り橋ができる前は、木道がかけられていたようだ。先心滝を通過し、崩壊した谷を越えて、登山口から1時間ほどで霧ヶ滝が目の前に大きな姿を現す。かなり上から落ちる迫力はすばらしい。しばし、滝を見上げる。

 滝を右に見ながら隙間のある木の階段を一登りすると、またまたすばらしい大滝が轟音を響かせている。田立の滝の中でメインとなる天河滝だ。カメラを縦位置にしないと収まらない。花崗岩の直方体の岩を落ちる滝はすばらしい。滝の左側を回り込んで登り、天然公園まで3.5kmの表示を見ながら、息を切らして天河滝上部まで登り詰める。今度は上から滝を見下ろすことになる。

 この先の吊り橋で谷の右側に渡る。この吊り橋は天河吊り橋で3人以上が一度に渡ってはいけないとの表示がある。橋を渡ったところに左へ道がありすぐ先に避難小屋が川沿いに建っていた。雨の日にはうれしい施設である。滝の音を聞きながら、すぐに再び吊り橋が現れる。吊り橋の上流には大きな一枚岩を滝が落ちる。不動滝だ。一枚岩にピンク色の花が見られた。シモツケソウでらる。先発のご夫婦が岩の上でシモツケソウの写真を撮ってみえた。

 吊り橋の上から滝を楽しむ。この辺りが田立の滝のクライマックス地点。吊り橋を渡りきったところから垂直の崖に木道階段がジグザグに登っている。千鳥桟橋の表示。荒削りの階段はスリルがある。まるでインディージョーンズの世界に迷い込んだようなアドベンチャー気分。

 登り切ると谷は穏やかになり、全く違う様相を見せてくれる。なめらかな岩を滑るように水が流れる。龍ヶ瀬と呼ばれる場所である。左側にかけられた木道を気持ちよく歩く。時間があれば、川岸の岩の上で寝ころんでマイナスイオンを浴びたいところである。

 ここからすぐに対岸に渡る橋が現れる。雲上橋であり、ここでコースは二手に分かれる。直進すれば谷を登り詰めて、天然公園まで3km60分。右に雲上橋を渡れば、不動岩まで300m20分。不動岩経由で天然公園に至る。今回は、不動岩経由で行くことにする。

 雲上橋を渡って正面の不動岩目指して登りにかかる。ヘビやカエルにびっくりしながら橋から10分ほどで展望のいい不動岩の一角に飛び出した。あいにく湧き上がるガスで、展望は全くないが、岩の縁まで寄るのが怖いほどの高度感がある。このすぐ先にさらにすばらしい展望地がある。時折ガスの切れ間から山間の田園地帯が望めた。足下にはノギランやママコナに似た白い花が見られた。岩には金具が打ち込まれていた。この岩を登るためのものであろうか? 

 高度感を十分に楽しんだ後、シジュウカラの群れを追って林道に合流。天然公園まで3.5km60分の表示。この距離の大半は林道歩きだと思うとあまり気が進まなかったが、登り終えてみると、この林道でいろいろな発見があり結構楽しめた。林道にはヨツバヒヨドリ、ノギラン、トリアシショウマ、タマガワホトトギス、ヤマハハコなどが彩りを添える。

 林業鉄道を通すために、大岩をくり貫いて作られた素堀りのトンネルを抜け、プレハブ小屋を見ながら、簡易トイレのある滝コースへの分岐へ。ここには天然公園まで2.5km45分の表示。この先、林道の傾斜も増し、一部コンクリート舗装があるものの大部分は石の多い歩きにくい道である。ヨツバヒヨドリの上を舞うアサギマダラやヒョウモン、ヒカゲチョウなどいろいろな蝶に出会った。林道でネットを手に走り回った昔が懐かしい。オトギリソウやジガバチソウ、そして林道終点近くにはたくさんのオヤマリンドウが美しい青い花を咲かせていた。リンドウは今年初めて見る。何と美しい青色であろうか。

 リンドウの花を見ながら広場になった林道終点に。ここから右に天然公園への木の階段が上がっている。立派なササ付きのヒノキ林を歩く。道は雨水で浸食された赤土で石がごろごろしている。バイカオウレンの葉がたくさん見られた。林道終点から数分で右に避難小屋が現れる。覗いてみると、トイレもあり泊まれそうだ。雨の時には便利な施設。今日のランチも雨が降ればここを利用できそう。

 ここからなだらかな道を数分歩いて湿原に出た。湿原にはたくさんのモウセンゴケがあり、白い小さなかわいい花を咲かせていた。モウセンゴケの花を見たのは初めて。トンボソウもいくつか見られた。湿原の木道を時計と反対回りに歩いて、すぐに山頂に到着。1580mの平らな山頂には木道の材料で作られたような大きな展望台がある。展望台には山名盤があったが、曇り空で遠くの山は見えなかった。

 ベンチで煮込みうどんのランチ。暑い時期にこのメニューはミスマッチだと思ったが、トウガラシたっぷりで美味しかった。山頂から10m先に水場があり、岩の間から冷たい水が湧き出ていた。湿原を持つ広い山頂だからこそ水場があるのであろう。雨が降る気配はなく、薄曇で暑い。記帳ノートがブリキ缶の中に入れてあったが、アリの巣になっていて記帳できなかった。

 コーヒー付きの1時間ほどランチの後、山頂の遊歩道を一周して湿原の取り付きまで戻った。林道に出て少し下ったところで、ゴイシシジミを見つけた。アブラムシを食べる肉食の蝶である。30年ほど前に一度だけ見た蝶に出会えたのはラッキー。

 暗くなった空からついに雨が落ちてきた。ザックカバーをつけて林道を下った。今日は雨を覚悟していたが、降りだした雨もすぐに止んでこれまたラッキー。林道途中から滝コースに入り、壊れかけた木の階段を下って、ヒノキ林を抜けて谷まで急降下。足元のツルアリドウシの白い花がきれいだ。

 左からの支流の橋を渡り、本流にかかる木道をL字型に渡り、ヤグルマソウやホトトギスを見ながら谷の右側を歩く。この辺りは丸淵、その下には箱淵と呼ばれるエメラルドグリーンの淵がある。そうめん滝、鶴翼滝を見ながら行きに渡った雲上橋に合流。キャンプ場の利用者と思われる若者たちが水遊びをしていた。下りの木道は踏み外さないように慎重に下った。不動岩展望地で不動岩を眺め、一気に駐車場まで下りた。

 ハイキングではなく本格的な山歩きができた。天然林と川と岩が作るすばらしいコースだった。キャンプ場利用者はスニーカーで登ってくるが、荒削りな木道は、それなりの靴と装備で望まないと事故につながる危険がある。特に雨の日は滑りやすいので注意。天然公園までは林道歩きが長いので、滝と不動岩を楽しむコースで十分。夏の暑い時期にマイナスイオンと涼しさを求めてぜひ訪れていただきたい場所である。
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