トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平22業使、第490号) 

東殿山 (578m 郡上市) 2011.4.16 曇り 2人

愛宕公園駐車場(8:49)→お社(9:02)→ベンチ(9:16)→赤谷分岐点(9:30)→赤谷山城跡分岐点(9:38)→赤谷山城跡(9:41-9:46)→赤谷山城跡分岐点(9:48)→周回路分岐点(9:56)→東殿山山頂(10:06-10:12)→休息所(10:18-10:24)→周回路分岐点(10:41)→赤谷分岐点(10:53)→谷横断(11:34)→赤谷不動明王(11:46)→愛宕公園駐車場(11:59)

 東殿山と書いて「とうどやま」と読む。郡上八幡市街の南側にある578mの低山で、ちょうど郡上市役所の裏にある。東海北陸自動車郡上八幡ICを下りる時に、東に市街地から駆け上がる急峻な山が見える。この山が東殿山である。

 岐阜市周辺の桜はほぼ散り終えた4月半ば、桜前線を追って東海北陸自動車道を北上する。郡上市に入ると、周囲の山々に桜やタムシバの花が美しい。八幡ICを下りて、郡上市役所方面に向かう。市役所を右に見てすぐに大きな駐車場が現れる。愛宕公園駐車場であり、この時期、この駐車場は無料になっている。数台しか停まっていない広い駐車場に車を停めて靴を履き替えた。駐車場の一角にはきれいなトイレがある。駐車場の南の高台には愛宕公園や寺があり、周囲の桜がちょうど満開。

 登山口がよく分からなかったが、山側に登れば何とかなると思い、駐車場中央の階段を登った。満開の桜のトンネルの下、タチツボスミレやキランソウが石垣を飾る。寺の本堂に突き当たると、右へ石段が上がっている。入り口に「愛宕山西国三十三霊場」の案内板。石仏が並んでおり、また「東殿山生活環境保全林整備事業」の看板もあり、登山道が描かれている。しかし、この図はかなりの略図である。赤谷山城(東殿山城)の説明板もあり、この城が築かれたのは1541年。東殿山の戦いにより、城は1554年に落城。この後、悲劇の帰雲城へと歴史はつながっていく。
 
 人工林の中、スギの落ち葉を踏みながら歩くと、一番目の仏像が佇んでいる。折り返すごとに2番、3番と石仏が現れた。公園上部の周回遊歩道に三十三体の石仏があるようだ。10分ほど登ると山側へ分岐点があり、これを登るとお社があった。手を合わせ、今回も震災復興を祈願。お社の裏に遊歩道入口の標示があり、これに従って人工林の尾根を歩く。間伐されており、明るい森林の中、正面の朝日が眩しい。

 お社から10分ほど登ると傾斜が緩やかとなり、左手が開けた。目の前には堀越峠に向かって山腹を縫う国道256号線と、その向こうにアンテナの立つ稚児山が望める。ダンコウバイの黄色い花を見ながら下っていくと防火用水やベンチ、地図などがある鞍部を通過。地図には現在地点が示されているが、登山道の標示が分かりにくい。

 見上げれば、急な斜面に張り付く丸木の柵が見える。丸木階段をジグザグと登っていく。ヒノキ林であると思っていたが、地面にはコウヤマキの落ち葉が降り積もっており、見上げてコウヤマキの多いことに気がついた。ヒメコマツも見られる。丸木階段が切れたところにはザイルが設置されている。小ピークを越えて一旦下り、再びロープ場・丸木階段の急斜面を登る。木の根を掴んで登るようなところもある。

 急斜面を登りきると標識が現れた。右は赤谷方面へ下るルートであり、下山時は赤谷方向へ下ることにする。乙姫方面の標示に従って直進する。なお乙姫方面とは、東殿山山頂を通過して西側に下りるコースである。真っ白なアセビの花を見ながらひと登りで防火用水のあるピークに着いた。樹間から東側がわずかに開け、タムシバの白い花も見られた。ピークにはシキミの花やコウヤマキの幼木もある。前方からサルの鳴き声が聞こえた。

 ピークからロープのある道を登りトラバースしていくと赤谷山城跡への分岐点に到着。東殿山は右であるが、城跡に寄ることにして左方向へ登る。すぐに赤谷山城跡へ。コウヤマキの落ち葉が積もる平らな城跡にはいくつかのアセビの木が自生しており、雪が積もったように白い花が咲いている。南側には「危険進入禁止・この先行き止まり 来た道をもどる」と書かれた標示板が地面に置いてある。

 登ってきた道を下って分岐点から乙姫方向へ歩く。左山で下っていくと折り返して木道の下りとなる。木道には横木が打ち付けてあり滑り止めになっているが、昨日の雨で濡れた木道はよく滑る。慎重に渡りきって折り返すと次は岩壁のトラバース道で太いステンレスのクサリが設置してある。慎重に通過してホオノキの落ち葉の斜面を登る。頭上のシロモジの黄色い花が美しい。

 いつの間にか日差しが消え、西から黒い雲が近づき、今にも雨が降りそうな気配。天気予報では、午前中に北陸を低気圧が通過する。しかし、雨雲の予想では郡上八幡はぎりぎり雨が降らない範囲なのだが・・・。案内板が現れ、道が左右に分岐している。山頂へは左に行く。右山で歩き、折り返しながら左方向に歩いて稜線に出た。アカマツやヒノキが立つ展望の無い稜線を西へ歩くとすぐに東殿山山頂に着いた。
 
 山頂には立派な山名標示板がある。白山や別山が描かれたプレートも設置されているが、山頂は林の中であり、晴れていれば樹間から山の同定をすることになる。稜線を抜ける強風がゴーゴーと音をたてる。高木が大きく揺れている。山頂から西に向かい北斜面を戻って周回できるコースが設置されているので、それを歩くことにする。
 
 ホオノキの落ち葉が散乱する稜線を西へ歩く。木の名前が書かれたプレートも見られる。緩やかに下り始めた辺りで北斜面に折り返す分岐が現れた。もう少し西へ下ってみると、東屋が現れた。休憩所であり、急な西斜面にせり出して建っている。木々が視界を遮っているが、それでも郡上八幡の町並みが見下ろせ、コウヤマキとヒノキの枝のわずかな隙間から郡上八幡城が望めた。黒い雲が通り過ぎ、日が差し始めた。ここでランチにするところだが、強烈な西風で食事どころではない。時間も早いので、下山して愛宕公園のサクラの木の下で昼食にすることに。
 
 引き返してすぐに「市役所方面」と書かれた左方向への北斜面のルートを下る。丸木階段を一気に下って崖に設置された木道を歩く。急斜面をトラバースしていくと岩壁に咲くイワウチワを発見。岩壁のかなり高い位置までイワウチワが張り付いて、美しい花を咲かせている。ちょうど満開の時期である。1年ぶりに出会う可憐な花に感動。まさにイワウチワの名前のとおり岩肌に群生する姿は美しい。この山のイワウチワは淡い色が多く、白花もたくさん見られる。水滴の付いた花の写真を何枚も撮った。

 イワウチワの咲く崖に沿って、木道やクサリ場が続く。谷にはアカヤシオやタムシバも見られ、春の花が満開。さらに歩くと、今度は頭上にアカヤシオ。少しだけ崖が崩れているところもある。写真を撮りながら北斜面を15分歩き、往路に合流。登ってきた道を下った。赤谷の分岐点まで戻って、ここから左の赤谷方向へ向かう。

 ここからは天然林の道となる。折り返しながら斜面を下り、ホオノキの白い落ち葉が散らばった道を通過。そしてシロモジの黄色い花のトンネルを抜ける。シロモジの花がこれほど頭上を覆うような場面に遭遇するのは初めて。実に美しい。水呑場跡石積を見て、今度は頭上に満開のシキミの花。これだけ咲き誇ったシキミも初めてである。シロモジの道をぐんぐん下っていく。アカヤシオやオオカメノキの花も現れ、春の花の道が続く。

 赤谷分岐から15分ほど下ったところで尾根に出た。尾根上を直進すると道が消えたので、尾根の取り付きまで戻ってルートファインディング。右へ斜面をトラバースする明瞭な道があったので、右に進む。20mほど歩くと、赤テープと杭があり、道はここまで。再び引き返して道を探すが道が分からない。もう一度、尾根上を進むと、左下に道を見つけた。尾根の取り付きで尾根を右に見て左へ下るのが正解。ホオノキの葉が道を覆って分からなかったようだ。
 
 右山で下ると谷川が現れ、谷に沿って下る。谷はかなり下のほうに見えるようになり、木道で折り返して丸木梯子を下りる。丸木は濡れて滑りやすく、一歩一歩慎重に下りる。梯子の後は、急斜面のロープ場。結び目のあるゼブラロープに捕まって下る。この辺りにも白いイワウチワがいくつか見られた。ジグザグと細い道を谷に向かう。急なところもあり、緊張しながらの下りである。

 ようやく水の少ない赤谷を横断して対岸へ。谷沿いの木道、トラバースを経てタラヨウの大木がある大岩の横を通過。岩を巻くと赤谷不動明王の建物が現れた。紫色の幕が付けられた本堂の周囲には赤い幟がたくさん立てられている。不動明王までは垂直の崖に設置してある長い丸木梯子をくだらなければならない。この山旅のクライマックスにふさわしいスリルある梯子。丸木がかなり乾いており、滑りにくくなってはいるものの、高度感は半端ではない。三点支持でゆっくり下りた。
 
 谷底に下りて、黒い岩壁を落ちる細い滝を左に見て谷を渡った。花の終わったオウレンが見られた。不動明王に寄って参拝し、参道を下った。参道脇のスギ林の中にミヤマカタバミの白い花が見られたが、曇り空の下、ほとんどの花が半開きの状態。発泡スチロールで作られたロボットを見て墓地を抜け、橋を渡って市役所の前を通り、愛宕公園駐車場に戻った。文化センターの行事のため、駐車場は満車に近い状態だった。
 
 ちょうど正午を告げるチャイムが鳴った。愛宕公園の桜の木の下で昼食にする。隣の東屋にはバーベキューを楽しむグループ。桜の花びらが散る中で、おでんとチャーハンを作った。花見に訪れる人はまばら。軽装で登山口に向かう人も見られた。シェラカップに浮かぶ花びら入りのコーヒーを飲んで、今日の山旅を終えた。

 東殿山は想像以上にいい山だった。これほど花に出会うとは思わなかった。特に東殿山北斜面の岩壁に咲くイワウチワは印象に残った。赤谷へ下る斜面のシロモジもすばらしい。案内板はよく整備されているが、遊歩道と言えないような場所も多い。幅の狭いトラバース道も多く、また木道も濡れているときには滑りやすいので要注意。特に赤谷へ下る道は山道であり、道迷いしやすい場所もある。また、赤谷にはヤマビルがいるそうだ。生活環境保全林とはいえ十分な装備で入山されたい。次は乙姫方面のコースを歩いてみたいと思った。
★東殿山の花

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