銚子ヶ峰の展望
銚子ヶ峰の花
大きな方位版と三角点。すぐ先の崩壊しかけた最高点にも柱が立っている。北には一の峰、二の峰、三の峰と脈打つ峰、そして右に別山と壮大なパノラマが広がる。ただ感動に立ちつくす。南には銚子ヶ峰から続く峰が美しく、願教寺山、よも太郎山、薙刀山、野伏ヶ岳が折り重なる。単独峰の荒島岳や能郷白山、遠くには高賀山群も見える。西には経ヶ岳や赤兎山。360度の大パノラマを中判カメラに収めた。

 よく見れば、山頂には誰もいない。あれだけ車があったのに・・・。一の峰方向へ歩く登山者が見える。行けるところまで行こうという計画どおり、10分ほどで銚子ヶ峰山頂を出発。一の峰までは、2つの小さなピークを越え、大きく下って登り返すというコース。山頂すぐ北には、「雲石ももすり岩」がある。ここから展望のいい急坂を下る。この辺りにはミツバオウレンに混じってツマトリソウやヒメイチゲが見られた。満開のムラサキヤシオが美しい。ノウゴウイチゴやキヌガサソウも発見。花の道は続く。

 鞍部まで下る途中に2・3箇所の雪渓を通過する。夏道が雪に埋もれ、一箇所は僅かではあるがササをこぐ。びっしりと密生したヤブはササの茎で滑りやすく、両手でササにつかまって下った。すれ違った単独男性から雪渓の歩く位置を教えていただき、滑らないように慎重に通過。鞍部まで下って、6km地点。かなり歩いた。別山は見えない。

 いよいよ一の峰への登りにかかる。この登りが今回の最大の難所。かなり歩いた後の急登はきつい。息を切らしながらゆっくりゆっくり登る。キヌガサソウが美しい。イワカガミやオオバキスミレなど可憐な花に癒されながら、時折吹き抜けるさわやかな風に助けられて、ヘトヘトで一の峰到着。山頂からは別山が一段と大きく見えた。ザックを下ろして、一息。ハエがたくさん飛び回っていて、落ち着かない。

 二の峰方向のササの中から単独の女性登山者。初対面ではあるがすぐにお互い誰であるかが分かった。庚申草さんだ。庚申草さんは三の峰まで登って引き返してみえたところだった。三の峰登りには雪渓があり、アイゼンが必要らしい。30分ほど山談義。庚申草さんは掲示板から想像したとおりのイメージがぴったり。さすが山の大先輩、ベテランの風格を感じた。いろいろと話をした後、我々は二の峰まで行くこととし、庚申草さんとは再会を約束して別れた。ウコッケイのゆで卵をいただいた。昼食時にいただき、とってもおいしかった。ありがとうございました。

 一の峰からは再び下って二の峰に登り返す。二の峰への登りは一の峰ほどではないにしろ、結構きつい。登りの途中で7km地点を通過。雪が融けた直後の山肌から頭を持ち上げたサンカヨウがまさに花を咲かせようとしている。山頂手前に「鬼の鼻面岩」がある。後方には、今歩いてきた一の峰や銚子ヶ峰とササの中の道がよく見える。すばらしい展望地だ。

 なだらかになって、道脇に二の峰の表示板。通過地点といったところ。北側の展望を見るために、もう少し先まで歩いた。左から回り込んで下り始めのところで別山が大展望。かなり大きく見える。三の峰も目の前。庚申草さんが言っていた三の峰の大雪渓もよく見える。今日はここまで。別山までは次回のお楽しみ。いつかは縦走したいと思った。

 ここもハエが多いので、少し戻って西側が切れ落ちた稜線の上で昼食にすることにした。通り道であるが、風があってハエは少な目。昼食を作っていると、三の峰方面から戻ってきた単独男性に出会った。雪渓の前で引き返してきたそうだ。「HPを作ってみえる方ですか?」と尋ねられて、びっくり。いつもウチのHPを見ていただいているAさん。聞けば、ノンキ君とは山の店で、せきすいさんとは小秀山で、花房山でお会いしたGさんとは高賀山で出会ってみえた。ytnetさんもご存知とか。これには驚いた。

 赤兎山や経ヶ岳を前にいろいろな山の話をお聞きした。目の前に見える経ヶ岳は5月中旬がお勧めだそうだ。コーヒーまで付き合っていただいた。三の峰から引き返してきた男性2名。1人は連れが三の峰を目指すというのでここで待っているとのこと。もう1人は、危険でとても雪渓を渡りきれないため、迂回してヤブをこいだが無理だったそうだ。今日、三の峰に到達したのは、男女2名。1人は庚申草さんである。

 Aさんと別れ、後片付けをして、別山へはまた来ることを約束して、今来た道を引き返した。帰路は往路より楽だ。二の峰からの下りは初夏の日差しにササが輝き銚子ヶ峰がすばらしくきれいだ。一の峰下りで前を行くご夫婦の後を歩く。お尋ねすると福井県からみえたそうだ。雪渓を渡ると往路で歩いていないところを歩いている。やがて、道は背丈以上ある雪の壁に突き当たった。道を間違えたことに気がつき、滑らないように雪渓を戻る。間違えた理由は、ヤブをこいで雪渓に出た地点を見落としたためである。こういう場所には赤布を付けるべきだったと反省。

 銚子ヶ峰山頂で休息。福井県のご夫婦と山談議。行きにはこの山頂でゆっくりできなかったので、方位盤で山の名前を確認。20分ほど休憩して、避難小屋めざして下る。小屋で、ノートを見て、またまたびっくり。「クーの山小屋」のキーノさんも追いかけていただいたのだ。後に、キーノさんは一の峰までだったことが分った。出会えなかったのが残念。次回の遭遇が楽しみ。

 水場まで行ってみようと下りかけたところでサンカヨウの大群落を発見。ちょうど満開で、木漏れ日に浮き上がった白い花が美しい。かなりの急坂で、途中で下ることをあきらめた。小屋で今日泊まるパーティーにお聞きしたところ、70〜80m下ると水場があるそうだ。帰宅後、キーノさんの情報によると水場にはリュウキンカが咲いていたそうだ。水場まで行ってみればよかったと後悔。

 軽快に下って、おたけり坂の途中で行きに出会った花の写真を撮っている男性に出会った。「最後のあがきです」と、マクロレンズを覗き込んでみえた。花の写真を撮る山旅もいいものだと思った。いとしろ大杉は午後の陽に照らされ、朝とは全く違う雰囲気で輝いていた。まだまだ長生きしそうな気力を感じた。

 石階段を数えながら下った。途中、草刈をする作業男性から「今日は山に入る人が多いですね」と言われた。三の峰に到達したのは2人だけという情報もしっかり伝わっていた。暑い中での草刈には頭が下がる。4時過ぎに階段を下り切った。充実の山歩きに、登山口に引かれた冷たい水が最高に美味しかった。花と展望と人との出会いの三拍子そろった今日の山行は言うことなし。そして、また新たな目標ができた山行でもあった。次回は別山だ。
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