鎗ヶ先山 (966m 春日村) 2003.11.2 曇り 2人
寺本登山口(9:21)→中瀬登山口分岐点(10:04)→鎗ヶ先山山頂(10:37-12:27)→中瀬登山口分岐点(12:49)→寺本登山口(13:20)
濃尾平野から小島山の向こうに頭を出す鋭角の峰。国見岳スキー場からの下りで正面に堂々とそびえる山。この山容を見るたびに、必ず登ろうと決めていた山。これが鎗ヶ先山である。名前のとおりヤリの先の形をした特徴ある山容は、伊吹北尾根から最初に目に入る山でもある。
この山の登山口はどの辺りであろうかと、いつも寺本や中瀬の県道32号線を通過していたが、登山口らしき表示は見つからない。ネットなどで調べてみると、登山口は中瀬と寺本の2つがあり、中瀬から登られているほうが多いようだ。今回は、せきすいさんのレポートを参考に寺本から登ることとした。
春日村の生活道路である県道32号線を遡り、さざれ石公園の分岐を直進し寺本の集落を目指す。せきすいさんのレポートによると、登山口は「うまく説明できないが寺本の村の中の道を、閑窓寺を目標に上がっていく」とある。地図を見ると寺元の集落を南北に抜ける道がある。これに入れば簡単に分かるだろうと思い、集落への道を探した。
南から集落へ入る道は最初の民家が右手に現れ白河のバス停を過ぎた所の右側の上り坂。ところが、この道の入り口はゲートで閉じられ、「開けたら閉めてください」と書かれていた。イノシシの進入を防ぐ柵のようだ。ゲートを開けて、車を進めると、そこにはすばらしい農村風景が広がる。棚田に1本の大木。見上げれば鎗ヶ先が天を突く。
狭い道を少し下って集落に入り、谷を渡ったところで4差路に出た。谷川に沿って登るべきと思ったがお寺がないので直進するとすぐに3叉路(T字路)がある。この3叉路を右手山側に登れば閑窓寺があり、その先に登山口があるのだが、3差路で閑窓寺を見落としさらに進んで県道に出てしまった。再び引き返して、3叉路でお寺を発見。3叉路のお寺の前には携帯電話のアンテナもある。3叉路を山側に入り、閑窓寺の前を通過し再び3叉路。この3叉路を左折すれば登山口に着くが、山側への道はあまりにも細く、民家への進入路と思い直進して下り先ほどの4差路に出てしまった。もう一度お寺まで戻り、この民家への進入路と思った道に入り、左手に藁葺きの廃屋を見ながら50mほど登って登山口の竹藪の小広場に着いた。
なお、県道から寺本の集落に入るもう1つの道は、大きな赤いローソクが立つ国見岳スキー場への分岐から長者平スキー場方面に100mほど入った民家の間の細い道路を右折して急坂を上り詰める。先ほどの川沿いの4差路に出るので、ここを左折して次のT字路を右折すれば閑窓寺前に着く。寺本の集落内の道は狭く分かりにくいので、県道32号線沿いの空き地に車を止めさせていただき、登山口まで歩いた方が無難かもしれない。
竹藪の小広場は、Uターンを考慮すれば駐車は2台が限度。溝にはまらないように数回切り返して車の向きを変え、南側にある谷に寄せて止めた。ここから2本の道があり、登山口は左。入り口には茶色に緑のペンキで書かれた「鎗ヶ先登山口」の表示板がある。よく見かける表示板あり、作者に感謝。
竹藪に入ってすぐに左へ道が派生しているが、谷川沿いに登る。フェンス付きの大きな砂防堰堤を右に見ながら通過し、次の小さな砂防堰堤を右に渡って谷を離れる。掘割の道をクランクしていくと潅木で堀割の道はヤブで通れなくなり、左の土手に上がり、細道を登る。ここもかなりヤブの急登。ヤブっぽいが道はよく踏まれている。ムラサキシキブやサルトリイバラ、ヤブコウジの実がきれいだ。ウスノキがこの時期に赤い実を付けていたのには驚いた。コシアブラの白っぽく抜けた黄葉が美しい。イワウチワの緑色の葉が生き生きしている。
ヤブを抜け、道は左に曲がり、枯れ木の散乱したゆるやかな堀割の道を登る。左側はヒノキ林、右側は天然林。やがて天然林の道になり、赤松が目立つようになる。黄に色づいた木々が増えてくる。テープが随所に付けられており、道は明瞭である。ドングリやクリ、松ぼっくりがたくさん落ちている。堀割の道は続き、時折人工林が現れるが、大部分は落葉樹の中を歩く。右に、石垣と穴があり、過去に人の手が入った跡と思われた。
堀割の道は消え、30分ほど歩くと大きな岩が点在する斜面を通過する。岩の斜面の上を歩く所があり、砂の上に乗ると滑りやすいので慎重に通過した。この辺りまで来ると、シロモジなどの黄葉はかなり進んでおり、陽の光に透けた金色の世界がすばらしい。すぐに谷に突き当たり、道は左に向きを変える。谷は紅葉で埋め尽くされ、その向こうには植林された山が大きい。道から谷側に出て展望のいいところから見上げれば、山頂へ続く紅葉した尾根が望める。ここで冬眠前のヘビに出会った。
再び道は急になり、前方のヒノキ林をめざして登っていく。この辺りの紅葉もすばらしい。アキノキリンソウが最後の花を咲かせている。斜面を登り詰めると、尾根に出た。コンクリート柱が埋め込まれており、左へ下る道がある。これが中瀬に下る尾根道。テープも付けられている。今登ってきた寺本への道には倒木が横たえてあることから、中瀬からの登山者が多いことが伺える。
山頂は左。前方には樹間から紅葉の山が望める。後方にも山が望めるが、木の葉ではっきり見えない。道は平になったが、ササが現れヤブっぽい。最近刈り取られたと思われるササが道に散乱していた。今渕ヶ岳の尾根を思い出させる。分岐点から3分ほどでピークを通過し、少し下る。左側は深い谷で、紅葉がすばらしい。正面には樹間から鎗ヶ先山が大きく見える。そして、いよいよ山頂への急登が始まる。
見上げればはるか上方まで続く急坂。右前方から黄色い葉を通して陽が差し込む。散り始めた枯葉を踏みながら一歩一歩ゆっくり登る。左手の紅葉の谷が美しい。むき出しになった木の根を踏み台に、周囲の潅木を掴んで登る。秋風に吹かれて木の葉がパラパラと音を立てて落ちてくる。辛い登りであるが、ペースを掴めば足が前に出る。周囲の美しい天然林が疲れを忘れさせてくれる。
左側が人工林となり再びコンクリート柱が埋まっていることころを通過。途中、立ち止まって見上げれば、さらに先の道が見える。まさに頭の上に道がある。山の名前に恥じない坂だ。前方に岩が現れ、この左を通過。その先の急坂はまさに黄金のトンネル。地面も頭上も真っ黄色。
30分程度でこの坂を登りきる。急登のゴールはヒノキ林。なだらかな疎林であり、帰路に道を間違えないように振り返りながらテープを確認した。尾根に突き当たり、東側の山が望めた。道は左に曲がる。1時間ちょっとしか歩いていないことから、もう一度登りがあると思っていたが、道が北を向いたことから山頂は間近。
ここから山頂までの5分間の緩やかな道は、今回のハイライト。シロモジを主体とする黄葉の最盛期。黄色一色のこんな道は歩いたことがない。今年は紅葉は最悪と言われているが、ここは例外のようだ。この時期に登ってよかった。葉は散り始めており、2.3日遅ければこんなすばらしい光景は見られなかったであろう。
黄金の道を抜けると、狭い山頂に着いた。1時間15分。思ったよりも早く到着して、少し物足りなかったが、急登をこなした後だけあって、達成感は十分。途中、展望がなかっただけに山頂からの景色に感動。一部木々に遮られているが、潅木の中に踏み込めば、周囲の山がほとんど望める。あいにくの曇り空ではあるが、西には伊吹北尾根とアンテナの立つ国見岳。その右に虎子山、ブンゲン、そして貝月山が大きい。遠くに金糞岳や蕎麦山がうっすらと望める。東には小島山と池田山が大きく、その間から濃尾平野が望めた。眼下には手前の山の鉄塔や林道、春日村の集落などが見える。
ヤリの先だけあって山頂は狭い。中央には三等三角点とその脇に山名表示板が置かれていた。11時前ではあるが昼食にする。今回は、川上岳に続いて鍋にした。この秋、涸沢岳で出会った兵庫県のご夫妻に教えていただいた缶詰鍋。昨日、家庭菜園で取ってきたコマツナ、キクナ、ミズナ、ミブナ、ミツバ、茎タマネギ、鷹の爪をコッヘルに放り込み、マイタケを入れて沸騰したところへ、味噌味の鯖の缶詰を入れる。ダシの素や雑炊の素を加えて味加減を整える。片側から野菜を入れ、反対側から食べる。これなら、火力調整の苦手なMSRのガソリンコンロでもひたすら沸騰させ続けるだけで問題なし。最後にパックご飯と卵を2個割って雑炊の出来上がり。これが美味しい。
料理に一生懸命で、知らない間にシェラカップのビールの中で大きなナメクジが泳いでいたのにはびっくり。ビールの誘因効果を実証。雲間から陽がこぼれる山頂は暖かい。なぜ、こんなすばらしい山に誰も登ってこないのだろう。きっと夜叉ヶ池や冠山は大勢の人で賑わっているに違いない。時折吹くさわやかな風が木々の葉を揺らし、時がゆっくり流れる。ヒメアカタテハが山名板で日向ぼっこ。ツルリンドウの赤い実は深まりゆく秋の宝石。中瀬の集落から正午を告げる「恋は水色」のなつかしいメロディーが聞こえてきた。熱いコーヒーが美味しい。
2時間近く、山頂でのんびりしたが、ついに誰も登ってこなかった。後ろ髪を引かれる思いで、再び黄金のトンネルを下った。急坂は滑らないようにゆっくり下り、1時間弱で駐車地点に戻った。車が落ち葉で埋まっていた。帰路、モリモリ村の薬草風呂に寄り、時間があったので小島山の登山口を下見して帰宅した。
鎗ヶ先山はあまり人が入っておらず、手つかずの自然の中を静かな山歩きが楽しめる。一部、ヤブっぽいところもあるが、道は踏まれており、またテープも多く迷うことはない。新緑の時期もいいだろうし、雪道も歩いてみたい。次回は、中瀬から登ってみよう。
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