鎗ヶ先山 (966m 春日村) 2005.1.18 雨・雪・曇り 9人

駐車地点(8:16)→県道脇登山口(8:19)→イノシシ柵入口(8:28)→林業作業小屋(9:09)→寺本委分岐点(9:34)→稜線出合い(10:14)→鎗ヶ先山山頂(10:27-10:41)→寺本分岐・昼食(11:16-12:56)→イノシシ柵(13:29)→駐車地点(13:40)

【参加者】ミツルさん、カッペさん、弟子のKさん、キーノさん、和たんさん、らぶさん、kuさん、RAKU、らくえぬ

 一昨年の秋に登った鎗ヶ先山は強烈な印象が残っている。シロモジの黄葉が登山道を埋め尽くし、真っ黄色なトンネルの急坂を歩いた。入る人も少ない、美しい大好きな山である。年末に、ミツルさんから1月にこの山に登りたいという話しがあった。ミツルさんは、昨年の冬、この山に挑んだが、深い雪と急坂に阻まれ、途中で断念したことから、そのリターンマッチである。

 あの一直線の急坂を雪を分けて歩いてみたいと以前から思っていたこともあり、ベテランのミツルさんと同行できればこんなチャンスはない。早々と参加表明をした。ミツルさんはオフ会のためにしっかりと下見をしていただき感謝。掲示板での呼びかけを通じて集まったメンバーは8人。kuさんのドタサンを得て、冒険好きの9人が集まった。

 昨日から降り続いた雨は朝方には上がっていたが、揖斐方面は厚い雲に覆われている。揖斐の山に美しい虹が弧を描く。霞む山は雨のようだ。揖斐川町に集合して、車2台で春日村を目指す。なお、後に分かることになるが、集合場所を出発した直後に伊吹山に登るmakotoさんが来ていただいた。会えなくて残念。

 春日村の路面に雪はなく、雨が本格的に降り始めた。鎗ヶ先山の登山口は2つある。前回は寺本の集落から登ったが、今回は中瀬から登る。中瀬からの道は登山口にたどり着けば後は尾根歩き。寺本からの道よりも分かりやすい。中瀬の登山口は県道の東側に大きな看板が掲げてあり分かりやすい。西側は表川が流れている。登山口の目印は中瀬の集落で表川にかかる橋を渡る少し手前にある。この辺りの道路は狭く対向車とすれ違うのが精一杯の道幅である。

 駐車場が無いため、登山口を行き過ぎて広い路肩のある部分の雪の上に車を寄せて停めた。大型車でもすれ違うことができる道幅を残しているので大丈夫だ。小雨が降る中、オーバーズボンとジャケットを着込んで靴を履き替えた。南東には、雨にもかかわらず鎗ヶ先山の山頂が望めた。

 カッペさんを先頭に、車道を戻って橋を渡った東側の登山口表示のある細い階段を登る。草の農道を歩くと右からの細い道と合流して左へ。民家が現れ立派な舗装の農道に出たところで右に再び登山口の大きな看板。隣の民家から出てきたおじさんに声を掛けられた。「こんな日に登るんか。」「山頂まで行って来ます。」「まあ、がんばりゃあ。」(^^)

 看板から雪に埋もれた細い斜面を登る。再び田園の中に真っ直ぐに伸びた舗装道路に出る。登山口はこの道路の突き当たりの人工林である。人工林と水田の境にはイノシシ侵入防止の柵があり、登山口には扉が付けられている。開けたら閉めるように書かれていた。

 まずは、杉林の中を歩く。雪は浅い。「昨年はこの場所で膝まで雪があった」とミツルさん。迷いやすい場所には赤布が付けられている。下見の時に、ミツルさんが付けていただいたものだった。人工林を抜け、天然林の中を登っていく。先人のトレースはない。カッペさんはいつも雨や雪の日には傘をさして登る。「トトロみたい。」と誰かさん。

 落ち葉の上の雨で濡れた雪は滑りやすい。暑くなり、ウエアー調整で小休止。雨は次第にみぞれに変わってきた。山頂は雪に違いない。所々に新旧の赤テープが付けられているが、雪も深くなく道は分かりやすい。このコースは尾根をたどればよく、寺本コースのように複雑ではない。

 尾根に沿って高度を稼ぐ。次第に道は尾根から右に外れ、左山で細い斜面の道を歩くようになる。斜面の細道を滑らないように慎重に歩く。和たんさんとらくえぬはすぐに登山道は尾根に合流するだろうと予想して尾根を直進するが、道は離れる一方。ヤブになり、2人は尾根から登山道へ合流。いつの間にか雨はすっかり雪になり、しだいに深くなってきた。天気が良ければ後方には貝月山が望めるのだが、この雪で遠望はきかない。

 牡丹雪が激しく降り、見る見るうちに木々が白くなっていく。子供の頃、雪の日に裏山が真っ白になっていく光景が思い出され、懐かしい。黙々と歩く男性陣に比べて、女性3人は話しが尽きない。「ウチは電気毛布」「ウチは湯たんぽ」・・・・どんな話題でも盛り上がる。「女性は元気ですね」とミツルさん。

 深くなった雪に先頭のトトロさんはえらいだろうなと思いながら後方を歩く。右手の谷からスギ・ヒノキの人工林が上がってきており、その境を歩くところが何カ所かあった。林業者の休息場所と思われる簡易な小屋も見られる。寺本からの分岐がなかなか現れない。登山口から1時間ほど歩いて人工林の境で休息。かなり登ってきた。何本かの木に赤テープが巻かれている。ここが寺本の分岐だった。寺本方面に入らないように横たえられた見覚えのある木が雪の中に埋まっていた。

 雪は降り続き、すっかり銀世界に。左の谷の落葉樹の林が特にきれいだ。一昨年の秋には黄色に埋め尽くされたカラフルな世界が、今は一面真っ白。日本の四季はなんと美しい光景を創り出すのであろうか。決して人工ではできない自然の芸術。アスファルトとコンクリートの街の中ではとうてい想像できない世界が、少し野山に踏み込めば見ることができる。また、晴れていればこんな光景には出会えない。こういう状態に巡り会えるのはかなりラッキーなのかもしれないと思った。

 休息後、尾根を歩く。すぐに612mピーク。ここから一旦下って本格的な登りにかかる。先頭のラッセルはパワフルなkuさん。積雪は50cm程。ワカンを付けてもいい深さであるが、ツボ足で進む。雪は粉雪になり、気温が下がってきたことが分かる。枝の雪も増えてきたが、気温が低く枝から雪が落ちてくることはなく、すばらしい銀世界が続く。この美しさに登りの辛さは感じられない。

 右側の人工林を過ぎるといよいよ岩のある急登。前方に岩が雪から顔を出している。この積雪量なら登れそうだ。岩を左に巻いて上部へ。ここから低く垂れ下がった枝のトンネルを潜って急坂を登っていく。ここも秋には地面も頭上も黄金に染まっていたが、今日は白いトンネルである。

 人工林が現れると稜線は近い。風が強くなった。北西から粉雪が舞い上がってくる。尾根に出ると風は一段と強くなった。先ほどとは全く違う状態だ。カッペさんとミツルさんが遅れているので、強風の中で待つことにした。ここまで来れば山頂まではなだらかな稜線を歩いてすぐの距離。

 横殴りの強烈な風が樹間を吹き抜け、枝や幹には風の来る方向に見る見るうちにエビのシッポが成長している。幹の間を抜ける強風は地上の雪に風紋を造り、風上の雪は吹き飛ばされて浅くなっている。厳しい冬の山を全身で感じ、吹雪で霞む後方の見ながら、2人が追いつくのを待った。この時間がやけに長く感じた。カッペさんが膝をいためたようでペースが落ちていたようだ。

 追いつくのを確認して、足跡を追ってひと登りで山頂に出た。狭い山頂は雪に覆われ9人でいっぱいになった。雪の深さは1mはある。ホウワイトアウトの状況で展望は全くない。強い風で雪が吹きつけられ、ゆっくりランチなどという状況ではない。とりあえず記念写真。降りしきる雪の中で、風上にカメラを置く。狭い山頂なので三脚を思いっきり後ろに下げてセルフタイマーを切った。

 引き返して風のないところでランチにすることとし、山頂を後にした。稜線出合いの東側辺りの風の無いところでkuさんと昼食場所を探したが見当たらず、人工林を抜けて登ってきた急坂を下った。らぶさんがミツルさんの落としたペットボトルを拾う。kuさんとらぶさんは持ってきたハート型ソリで滑りながらの下山。

 ピークを過ぎて寺本分岐点で昼食にする。風もなく、やや斜面ではあるが9人のスペースは十分にある。ここで、我が家の物置で出番を待っていたタープが登場。いくつかあるタープのうち最初に購入してあまり使用されなかったタープである。タープを張って昼食会場を作った。和たんさんは購入したばかりのツェルトの張り方をKさんなどに聞いて講習会。そのツエルトも一役かって、タープの下で宴会開始。時々、木に積もった雪がバラバラとタープの上に落ちてきて、それを落とすのに大騒動。

 今回は、料理が残らないようにという条件付きであり、みんなミツルさんに期待。前回の飯盛山は、全て料理人で料理が多すぎたという教訓を活かす。いつも作る人が今回は食べる人(山ひも)になる。ミツルさんは中鍋持参。どうみても大鍋。ガスカートリッジを暖めるために湧かしたお湯の中に入れるという裏技。鍋でお湯を湧かしていると、不安定な雪の上でひっくり返ってキーノさんが水難。

 Kuさんからの萩原の美味しいお酒に始まり、ミツルさんのキムチ鍋、キーノさんのラーメン、らぶさんのおつまみにお伊勢さんのお菓子、うちは定番の燻製にカレーうどん、京都の土産八ツ橋。かっぺさんは酒の肴だったかな。頭上の雪が騒々しい。タープに乗った雪を払いながらの昼食であった。

 気温は氷点下2度C。ダウンなどをしっかり着込んで温かかった。コーヒーの後、後片づけをして下山開始。いつしか薄日が差し、木の上の雪が落ち始めていた。正面の木々の間から大きな貝月山が望めた。北には鍋倉山への山並み。先ほどの厳しい天気はどこへやら。山頂でこの光景を見たかった。

 標高が下がるにしたがって、雪はシャーベット状態。滑って転倒した人も若干名。クロモジの花芽は年末の鍋倉山で見たときよりも、倍ほどに膨らんでいた。春の訪れを待ちかまえて手を広げているようだ。イノシシの柵を抜けると前方に雄大な貝月山が望めた。南には真っ白な国見岳が頭を雲に隠して勇壮な姿を見せる。振り向けば、今登ってきた鎗ヶ先山が白く聳える。いい山だ。今度は新緑の時に登りたい。また、新たな発見ができるに違いない。

 帰路、喫茶店でしゃべり納め。伊吹山に登ったmakotoさんから「猛吹雪! 七合目撤退」のメールが届いた。伊吹山も鎗ヶ先山以上に厳しい状況であったに違いない。冬の鎗ヶ先山は装備を万全にして、経験者と一緒にグループで登るのがいい。昨年の秋には遭難騒ぎも起きている。中瀬からのルートは分かりやすいが、一度、雪のない時期に登っておくのがベストだ。
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